有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/11 15:00
【資料】
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【項目】
133項目
(1) 経営成績等の状況
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a 経営成績の状況
第21期事業年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
当社では、「見えない真実を、見に行こう」をコーポレートスローガンに、大企業でなければ活用できなかったビッグデータを、専門家のいない中堅・中小企業でも個人でも活用ができ、あらゆる業種や地域が、その恩恵を受けられるような社会にするために、「日本最大級の購買ビッグデータをすべての人へ」「小さくても勝てる社会の実現」「ビッグデータの掛け算で新しい価値を創出」「業種、国の枠を越えたサービスを展開」の四本柱を推進し、購買ビッグデータ活用のフィールドをあらゆる分野へ広げるべく事業を展開しております。
当社が購買データの提供を受けている小売業界におきましては、新型コロナウイルス感染症によってもたらされた生活習慣の変化に伴う需要の高まりが継続し、足もとの売上は堅調に推移しているものの、企業収益や雇用環境の悪化、個人所得・消費マインドの低下などが続いており、今後、小売業界も景気後退の影響を多分に受けることは避けられない状況となっております。スーパーマーケット業界では、新型コロナウイルス感染症の影響の他に、高齢化や人口減少によるマーケット規模の縮小、その状況下における各社の出店攻勢によるオーバーストア状態、人手不足の問題や、人件費や物流コストの増加など、従来に増して厳しい経営環境が続いております。また、ドラッグストア業界においても、競合他社の出店や価格競争が引き続き激化しているほか、大手企業・上場企業を含めた統合・業界再編への動きがさらに強まっており、異業種を含む競争の激化や、物流コストの増加等も重なり、依然厳しい状況が続いております。
これらの経済・経営環境から、ビッグデータを効果的に活用したマーケティングにより経営効率を高めようとする企業活動は益々活発化しており、当社におきましては、消費財メーカー・卸・小売業界の顧客企業への開拓深耕が一層進み、その他の業界企業とも、事業提携等の協業や当社のサービスを提供する取引関係の構築が進みました。
当事業年度につきましては、新たな企業理念「データと知恵で未来をつくる」のもと、Google CloudよりCo-Sellパートナーに認定され、GoogleとTrue DataがSaaS販売の協働体となるなどの連携を実現し、競争力の高いマーケティングソリューションを提供してまいりました。また、主要なグローバルプラットフォームとの間でDX(デジタルトランスフォーメーション)の協業体制を構築し、グローバルで競争力を持つDXソリューションと当社のデータや分析基盤を組み合わせて、クライアントに提供する体制構築に取り組みました。
基盤システムの機能向上については、基盤システムをデータの量的ニーズ拡大に抜本的に対応すべく「オンプレミスからクラウドへの構造転換」を推進しておりましたが、2020年6月に完了、新基幹システムによる運営を開始しております。従来と比較し、パフォーマンスが大幅に向上しただけでなく、セキュリティ面も向上したことにより、ご利用企業からの評判も良く、新規取引先の獲得にも貢献しております。
事業拡大の基盤構築においては、「イーグルアイ」「ドルフィンアイ」のストック型の売上が前期比118%成長し、安定した収益の確保に貢献するとともに、さらに「KURASHI360」等の新サービスを展開し、顧客ニーズへの対応強化に努めました。またスーパーマーケットやドラッグストア以外の購買データや、生活・気象等購買データ以外のビッグデータとのかけ合わせにより、デジタルトランスフォーメーションなど新領域での事業拡大が進行しております。
購買データの安定と充実においては、提供するソリューションを質・量ともに向上に努め、新たに小売業4社と契約いたしました。
広報活動においては、True Dataのブランド力向上に取り組み、メディアを中心に情報掲載が拡大し、当事業年度では、新聞52件、雑誌29件、テレビ11件、ウェブ98件、その他2件に取り上げられるなど、認知度は確実に高まりつつあります。
以上の結果、当事業年度における当社の売上高は1,166,060千円と前事業年度と比べ154,704千円の増収となりましたが、新基盤システムの運用開始における減価償却費の増加等による売上原価の増加(前事業年度に比べ86,347千円増加)、従業員数の増加による人件費(給与手当等)の増加等による販売費及び一般管理費の増加(前事業年度に比べ38,395千円増加)の影響により、営業損失は64,433千円、経常損失は64,335千円、当期純損失は60,804千円となりました。
なお、当社は、データマーケティング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
第22期第2四半期累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年9月30日)
当第2四半期累計期間(2021年4月1日から2021年9月30日)におけるわが国経済は、世界規模での新型コロナウイルス感染拡大の影響により経済活動が長期にわたり停滞し、依然として厳しい状況にあるものの、ワクチン接種の促進もあり、新規感染者数は減少傾向となり、今後の経済回復が期待される環境になってきております。また、新型コロナウイルスの感染拡大は、取引先の研究費やマーケティング予算の縮小など、当社事業にも少なからず影響を及ぼしておりますが、当社の主力サービスは、クラウド上で提供する商品・サービスへの使用料を受け取るビジネスモデルであり、継続的な収入が見込まれるストック型の収益構造を持っておりますので、安定的な収益は確保しております。
このような中、当社は「データと知恵で未来をつくる」という企業理念のもと、誰もが新しいデジタル時代の道具であるビッグデータとテクノロジーをマーケティングに活用できるようになり、あらゆる企業の持続的な成長に貢献することを目指しております。
当第2四半期におきましては、引き続き持続的な事業成長を確固たるものにするため、ストック型売上の消費財メーカー向け主力サービスである「イーグルアイ」「ドルフィンアイ」の拡販に注力し、小売り企業向けサービスである「ショッピングスキャン」に関しましても、新規取引先の開拓を進めております。
以上の結果、当第2四半期累計期間における当社の売上高は622,994千円、営業損失は3,076千円、経常損失は2,728千円、当四半期純損失は3,043千円となりました。
なお、当社は、データマーケティング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
b 財政状態の状況
第21期事業年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(資産の部)
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べ16,456千円増加し890,488千円となりました。流動資産は、主に現金及び預金の増加により、563,777千円と前事業年度末に比べ66,764千円増加しました。
固定資産は、主にソフトウエアの減価償却が進んだことによる無形固定資産の減少により、326,711千円と前事業年度末に比べ50,307千円減少しました。
(負債の部)
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べ77,261千円増加し352,322千円となりました。流動負債は、未払消費税の増加や「オンプレミスからクラウドへの構造転換」の推進による新基幹システム開発のための1年内返済予定の長期借入金が増加したことにより、255,171千円と前事業年度末に比べ62,169千円増加しました。
固定負債は、上記開発のための長期借入金が増加したことにより、97,150千円と前事業年度末に比べ15,091千円増加しました。
(純資産の部)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べ60,804千円減少し538,166千円となりました。これは、当期純損失計上による利益剰余金の減少によるものであります。
第22期第2四半期累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年9月30日)
(資産の部)
当第2四半期会計期間末における資産合計は、前事業年度末に比べ33,982千円減少し856,505千円となりました。流動資産は、売上の入金などにより現金及び預金が増加し、584,242千円と前事業年度末に比べ20,465千円増加しました。固定資産は、主にソフトウエアの減価償却が進んだことによる無形固定資産の減少により、272,263千円と前事業年度末に比べ54,447千円減少しました。
(負債の部)
当第2四半期会計期間末における負債合計は、前事業年度末に比べ30,939千円減少し321,382千円となりました。流動負債は、消費税等の納付等により未払消費税等が減少したことにより、239,394千円と前事業年度末に比べ15,776千円減少しました。固定負債は、主に「オンプレミスからクラウドへの構造転換」の推進による新基幹システム開発に要した長期借入金の返済が進み、81,987千円と前事業年度末に比べ15,162千円減少しました。
(純資産の部)
当第2四半期会計期間末における純資産合計は、前事業年度末に比べ3,043千円減少し535,122千円となりました。これは、当期純損失計上による利益剰余金の減少によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
第21期事業年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物は434,025千円と、前事業年度末に比べ80,261千円増加しました。当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況及び変動要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、135,720千円の支出となりました。主として、ソフトウエアの減価償却費を117,503千円計上し、未払消費税等が38,854千円増加、さらに「オンプレミスからクラウドへの構造転換」を推進したことで、それまで利用していたソフトウエアライセンスが不要になったことにより前払費用が10,596千円減少いたしましたが、一方で税引前当期純損失を64,335千円計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、80,979千円の使用となりました。主として、有形固定資産の取得による支出が2,923千円、「オンプレミスからクラウドへの構造転換」の推進による新基幹システム等、無形固定資産の取得による支出が77,263千円発生したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、25,520千円の獲得となりました。主として、「オンプレミスからクラウドへの構造転換」の推進による新基幹システム開発のための長期借入による収入が50,000千円発生し、長期借入金の返済による支出が24,480千円発生したことによるものです。
第22期第2四半期累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年9月30日)
当第2四半期累計期間末における現金および現金同等物は459,158千円と、前事業年度末に比べ25,133千円増加しました。当第2四半期累計期間における各キャッシュ・フローの状況および変動要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期累計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは、52,554千円の獲得となりました。これは主に、ソフトウエアの減価償却費を71,558千円計上し、売上債権の回収による現金及び預金が5,753千円増加いたしましたが、一方で消費税の納付により未払消費税等が16,395千円減少したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期累計期間における投資活動によるキャッシュ・フローは、12,241千円の支出となりました。これは主に、社内共有サーバーの入替による有形固定資産の取得による支出4,801千円、ショッピングスキャンの機能追加による無形固定資産の取得による支出4,249千円及び投資有価証券の取得による支出2,000千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期累計期間における財務活動によるキャッシュ・フローは、15,180千円の支出となりました。これは、長期借入金の返済によるものです。
③ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b. 受注実績
生産実績と同様の理由により、受注状況に関する記載はしておりません。
c.販売実績
第21期事業年度の販売実績は、次のとおりであります。
サービスの名称第21期事業年度
自 2020年4月1日
至 2021年3月31日
第22期第2四半期累計期間
自 2021年4月1日
至 2021年9月30日
販売高(千円)前年同期比(%)販売高(千円)
メーカー向けソリューション662,637120.3360,743
リテール向けソリューション249,799141.3148,355
あらゆる産業向けソリューション253,62489.2113,896
合計1,166,060115.2622,994

(注) 1.当社は、データマーケティング事業の単一セグメントであるため、取扱データ分野別に記載しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が10%未満のため、記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この財務諸表を作成するにあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、それが資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。
経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
② 経営成績等分析
第21期事業年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(売上高)
当事業年度の売上高は前事業年度に比べ154,704千円増加し、1,166,060千円となりました。
要因として、当社ストック型売上の主力サービスである「イーグルアイ(Eagle Eye)」、「ドルフィンアイ(Dolphin Eye)」の顧客数増によりメーカー向けソリューションが順調に成長しており(前事業年度に比べ112,216千円増加)、さらに「ショッピングスキャン」においても新たな小売業との契約もあり、リテール向けソリューションも増加(前事業年度に比べ73,046千円増加)しております。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は新基盤システムの運用開始における減価償却費の増加等の影響により、前事業年度に比べ86,347千円増加し、662,906千円となりました。
この主な内訳は、労務費149,830千円、データセンター使用料121,392千円、減価償却費113,289千円であります。
以上の結果、当事業年度における売上総利益は前事業年度に比べ68,356千円増加し、503,153千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当事業年度の販売費及び一般管理費は従業員数の増加による人件費(給与手当等)の増加等の影響により、前事業年度に比べ38,395千円増加し、567,587千円となりました。
この主な内訳は、給与手当276,978千円、役員報酬53,606千円によるものであります。
以上の結果、当事業年度における営業損失は64,433千円(前事業年度は営業損失94,395千円)となりました。
(経常損失)
当事業年度における営業外収益は511千円(前事業年度は818千円)を計上しております。これは、主に雑収入であります。当事業年度における営業外費用は413千円(前事業年度は91千円)を計上しております。これは主に支払利息であります。
以上の結果、当事業年度における経常損失は64,335千円(前事業年度は経常損失93,668千円)となりました。
(当期純損失)
当事業年度における当期純損失につきましては主に法人税、住民税及び事業税3,267千円の計上をしたことにより、60,804千円(前事業年度は当期純損失96,859千円)となりました。
③ 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1) 経営成績等の状況 ① 財政状態及び経営成績の状況 b 財政状態の状況」に含めて記載しております。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社の資金需要のうち主なものは、システムの運用費及び人件費となっております。当社の資金需要については、自己資金、金融機関からの借入れ及びエクイティ・ファイナンス等で資金調達することを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。また、資金の流動性については、当事業年度における現金及び現金同等物の残高が、前事業年度末より80,261千円増加し、434,025千円となっており、流動比率は220.9%と高い水準となっております。しかし、今後の一層の事業拡大やそのための投資を想定しますと、予定されている株式上場時の公募増資などにより財務基盤の増強が必要であると認識しております。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
(6) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、「データと知恵で未来をつくる」という企業理念の下、誰もが新しいデジタル時代の道具であるビッグデータとテクノロジーをマーケティングに活用できるようになり、あらゆる企業の持続的な成長に貢献することを目指しております。当社保有のビッグデータとオープンデータや協力企業が保有するデータ等、ビッグデータ同士を掛け合わせるプロジェクトが進行中であり、小売業、消費財メーカーだけでなく、金融・保険、広告等、業種や企業規模に関わらず当社データの活用は広がっております。
そのため、現在、経営指標を成長性については売上高の対前期増加額、収益性については営業利益の対前期増加額を設定しております。当事業年度における当社の売上高は、前期比で154,704千円(前年同月比15.2%)増加し1,166,060千円となりました。営業利益は、前期比で29,961千円改善し△64,433千円となりました。
この原因としては、「イーグルアイ」「ドルフィンアイ」の新規顧客が増加し、さらに新たな小売業との契約により「ショッピングスキャン」の取引も増加しております。なかでも「イーグルアイ」は売上成長率17.8%、期末契約者数が前期比16件増加しており、これらの月額課金のストック型売上が順調に成長したためとなります。
また、ショッピングスキャンについても、新たな小売業との契約により、分析対象となる小売業の購買データ(一年間に集信された購買データの合計金額)が、前期比3,300億円増加し4兆5,098億円となりました。