有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/11/16 15:00
【資料】
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【項目】
145項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「次の人、次の世代を想い、行動する社会の循環を創る」をミッションとし、シェアする=分かち合うためには、人を想うことが大切と考え、人を想い行動する社会の循環を創ることに価値を置いております。また、「多様な可能性を見いだし、ボーダレスな価値を育み世界をつなぐ」をビジョンとし、世界を紡ぐシェアリングサービスのプラットフォーマーとして、ボーダレスに人々の想い・文化を紡ぐサービスをカタチにすることで価値ある未来を切り開いていくべく、日々新たな事業やサービスを模索しております。
当社グループは、各ローカルのヒト、モノ、コトにユニークな可能性を見いだし、カルチャーやビジネスの垣根を越えて展開できるような存在に進化させることで世界をブリッジしてまいります。
昨今のスマートフォンの爆発的な普及やデータ通信量の増大に伴い、現代生活における充電問題は大きなテーマとなっていると考えております。5Gがもたらすイノベーションは、生活をより便利に変えていく一方、スマートフォン端末の消費電力の増加速度が内蔵バッテリーの性能向上速度を上回る状況に拍車がかかっております。この中長期的な社会課題を解決するうえで、また、SDGsの観点からも社会全体で利用をシェアする、分かち合うスマートフォン補完充電のインフラ整備が不可欠であります。そのために当社グループは、ChargeSPOT事業を主力事業として注力しております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、ChargeSPOT事業において、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、月間レンタル回数、月間アクティブユーザー数及びバッテリースタンド設置台数を重要指標として経営を行っております。
月間レンタル回数は、対象月に「ChargeSPOT」からモバイルバッテリーがレンタルされた回数を集計したものであります。当該指標は、レンタル収益の源泉として経営の進捗を測る指標として利用しております。
月間アクティブユーザー数は、月に一回以上「ChargeSPOT」を利用したユニークユーザー数を集計したものであります。当該指標は、月間レンタル回数の基礎となる指標として、サービスの普及度合や消費者の利用動向、キャンペーン等の施策の効果を測るために利用しております。
バッテリースタンド設置台数は、計数時点で稼働中のバッテリースタンドの台数を集計したものであります。当該指標は、月間アクティブユーザー数の基礎となる指標として、事業拡大の進捗を測るために利用しております。
(3)経営戦略
当社グループの事業や事業領域には次のような特徴があり、これらを総合的に勘案したうえで中長期的な経営戦略を立案しております。
① ChargeSPOT事業の魅力
ChargeSPOT事業の魅力は3つあり、第一に短い投資回収期間、第二に大口顧客に対する低い依存度、第三にバッテリースタンド設置台数及び粒度とレンタル稼働率の相関関係であります。
a.短い投資回収期間
ChargeSPOT事業で使用するモバイルバッテリーの2022年9月末の国内レンタル稼働率※1に基づく投資回収期間※2は30.5日となっており、短期間で投資が回収されるビジネスモデルとなっております。また、バッテリースタンドへの投資はリース契約を基本とすることによりキャッシュ・フローに余裕を持たせた事業展開を行っております。
※1 レンタル稼働率=モバイルバッテリーレンタル数÷市中流通のモバイルバッテリー数
※2 投資回収期間=モバイルバッテリーの仕入単価÷(1レンタル当たりの平均収益×レンタル稼働率)
b.大口顧客に対する低い依存度
ChargeSPOT事業の主力であるモバイルバッテリーシェアリングサービスの収益は、少額課金の積み上げにより構成されており、特定の大口顧客に依存するリスクが相対的に低いビジネスモデルとなっております。
c.バッテリースタンドの適切な設置とレンタル稼働率の相関関係
当社グループの実績によると、バッテリースタンドを視認性が高くユーザー利用が見込める場所にて適切に増加させることができれば、モバイルバッテリーのレンタル稼働率が上昇することが確認されております。これは、設置効率に関する実績データが蓄積され、効果的な設置戦略が推進されること、市中でバッテリースタンドを見かける頻度が増すことで広告効果が高まり「どこでも借りられて、どこでも返せる」という利便性や返却に関する安心感が訴求されることが大きく関係していると分析しております。
また、当社が学習院大学と共同で実施している実証実験によると、バッテリースタンドの設置粒度(人口当たりのバッテリースタンド設置台数)とレンタル稼働率にも同様に相関関係があることが確認されております。2018年9月に同大学キャンパス内に初期設置を行ったバッテリースタンドから得られた観測データによると設置粒度を調整することでレンタル稼働率は最大45%まで上昇するという結果が得られました。今後、実社会においても設置粒度の最適化を図ることで稼働率は上昇していくものと分析しております。
なお、2022年9月末のバッテリースタンド設置台数は国内で35,352台、レンタル稼働率は27.2%となっております。
d.有望な市場ポテンシャル
当社グループでは、国内事業のターゲットとする市場をTAM(Total Addressable Market)、SAM(Serviceable Addressable Market)、SOM(Serviceable Obtainable Market)に区分し、それぞれに対するアプローチを検討しております。
具体的には、それぞれ以下の考え方により、販売促進を図っております。
当社グループが国内事業のターゲットとして設定するSAMは、スマートフォンのユーザー数9,324万人※のうち、外出時間中に1回以上充電を行うであろうユーザーの割合(当社推計値)を乗じることで算出される規模に設定しております。なお、当該対象者の割合は今後5Gの普及によるバッテリー消費量の増加により拡大していくものと考えております。
SAM =スマホユーザー数×外出時間中に1回以上充電を行うであろうユーザーの割合
次に販売ターゲットとなるSOMについては、SAMのうち、モバイルバッテリーシェアリングサービスの潜在的利用者(モバイルバッテリーシェアリングサービスの利用に関心があるユーザーの割合(当社推計値)を乗じることで算出される規模に設定しております。
SOM =SAM×モバイルバッテリーシェアリングサービスの潜在的利用者の割合
当社グループでは、「ChargeSPOT」の設置台数の拡充によりSOMの拡大を図っております。
さらには、これらのモバイルバッテリーシェアリングに直結するマーケットに加えて、「ChargeSPOT」を活用したデジタルサイネージの活用機会の拡大やモバイルバッテリー以外のデバイスの充電利用等を進めるなど収益機会拡大を図ることで、SAMを上回るTAMを拡大していくことを目指しております。
※日本の総人口(参照情報:総務省統計局「人口推計 2021年10月1日現在」)に2021年におけるスマートフォン保有者割合(参照情報:総務省「令和3年通信利用動向調査(個人)」)を乗じて、当社が算出した推計値

<ターゲットとする市場>0202010_001.png
② 海外展開
当社グループは、海外では、台湾、香港、中国本土及びタイでChargeSPOT事業を展開しており、台湾、中国本土の一部及びタイにおいては、フランチャイズ契約に基づき他事業者と協働で展開しております。
なお、今後は、フランチャイズ等を中心に欧米や中東への進出も計画しております。
上記を踏まえた具体的な経営戦略は、以下のとおりであります。
当社グループはChargeSPOT事業のさらなる拡大を実現するため、設置代理店を通じたバッテリースタンドの増設や、テレビCM、1円レンタルキャンペーン※等を通じた利用者数増加のための各種施策を実施してまいります。また、使い放題定額制の導入やPayPay・d払い・auPayといった決済アプリから当社サービスを直接利用可能にするなど引き続き利便性の向上を図ってまいります。
※ 特定の期間中、新規利用者等を対象に24時間未満の利用料金が1円になるキャンペーン
(4)経営環境
当社グループの事業が属する経営環境は次のような特徴があります。
① 市場分析
ChargeSPOT事業が対象とするモバイルバッテリーシェアリングサービスの市場規模について、同サービス世界最大のマーケットである中国では、2021年3月末現在約360万台(出所:Lead Leo社 「2021年上半期中国モバイルバッテリーシェアリングサービス市場洞察レポート」)のバッテリースタンドが稼動しており、国民400人当たり約1台の設置割合となっております。これを日本の人口を基に換算すると約30万台の設置規模と算出されます。中国と日本では、市場、技術及び文化等の相違はあるものの、スマホ社会において「充電不足を解消したい」という根本的なニーズは変わらず、また、今後もさらに増大していくと考えられることから日本においても当該算出台数を超える設置ポテンシャルはあるものと考えております。
また、一般社団法人シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所が共同で発表した「シェアリングエコノミー関連調査2021年度調査結果 2022年1月18日公表」によれば、2021年度のシェアリングエコノミーの市場規模は過去最高となる2兆4,198億円となり、さらに2030年度にはその約6倍の14兆2,799億円※となると予測されております。このうち、「モノ」の市場規模は、2021年度で1兆1,882億円、2030年度で3兆3,444億円※となると予測されております。
また、株式会社CARTA HOLDINGSによる「デジタルサイネージ広告市場調査 2021年12月9日公表」によれば、2021年の国内のデジタルサイネージ市場規模は、前年度比114%の594億円の見込みとなっており、2025年予測は2021年比約2倍の1,083億円にまで成長すると予測されております。
サイネージサービスの市場動向につきましては、東京近郊で都市の再開発・街づくりが活発化したことで、新たに建設された商業施設やオフィスビル、ホテルなどでデジタルサイネージの設置が進みました。地方においても、地方創生の盛り上がりから道の駅や観光地などを中心に、デジタルサイネージの設置が広がっております。
※ 課題解決シナリオ下での最大予測金額
② 競争優位性
当社グループは、競合他社に先駆けてモバイルバッテリーシェアリングサービスを日本に導入しており、「ChargeSPOT」の国内マーケットシェアは、バッテリースタンドの設置台数ベースで約8割※1と業界トップのシェアを有しております。これは、ニューヨーク大学 Stern School of BusinessのScott Galloway教授が提唱する「Unregulated Monopoly」※2に該当し、競合他社との競争優位性を獲得している状況にあると考えております。
また、当社グループは、自社で製品開発を行うことで市場のニーズをタイムリーに製品へ反映できる体制を構築しております。現在リリースしているモバイルバッテリーは、SIAA(抗菌製品技術協議会)基準に適合した抗ウイルス・抗菌処理やUSB-C、iOS、Micro USBの3種に対応した高い汎用性のバッテリーケーブルなど利便性の高い製品をタイムリーにリリースすることで競合他社との競争優位性を保持しているものと考えております。
※1 2022年9月末時点の当社グループの設置台数と競合他社が公表している台数を基に当社で算出
※2 高い市場占有率が参入障壁として機能している状態
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ChargeSPOT事業は国内初の事業であり当社グループはそのマーケットリーダーでもありますが、競合企業の出現や、新型コロナウイルス感染症の流行による外出控えなど、事業環境は予断を許さない状況であります。
このような環境の中、当社グループは「Mission/Vision/Values」をテーマに、海外発のビジネスモデルを日本に、そして、日本の技術力を海外に展開していくことで、様々な国や文化の垣根を超えより多くの方々に当社グループのサービスをご利用いただけるよう邁進してまいります。
当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の通りであります。
① 認知度の向上
当社グループは、収益基盤であるモバイルバッテリーのレンタル収益向上を最優先の経営課題としており、そのためには当社サービスの認知度向上が重要であると考えております。
これまで当社グループは、人気アニメキャラクターを起用したテレビCM、人気アプリサービスとのコラボキャンペーン、人流が多い生活導線への集中設置等、認知度向上に向けた様々な取り組みを行ってまいりました。
今後も当社サービスのより一層の認知度向上に向けて広告宣伝及びプロモーション活動の強化、バッテリースタンド設置台数の増加に注力してまいります。
② 選択と集中
当社グループは、投資効率の向上を図るため「選択と集中」を考慮したバッテリースタンドの設置戦略が重要であると考えています。
これまで当社グループは、エリア別・業種業態別のバッテリー稼働率を継続的に分析してまいりました。今後は、当該分析結果を踏まえて稼働率の高いエリア・業種業態に集中して投資することで、レンタル稼働率の向上を図ってまいります。
③ 経営基盤の強化
当社グループは、企業価値を高め、株主の皆様をはじめとするステークホルダーに信頼され、支持される企業となるために、コーポレート・ガバナンスへの積極的な取り組みが不可欠であると考えております。
そのため、内部統制システムの強化、マネジメントの強化、人材育成、損益管理の徹底等、持続的な成長を支える経営基盤を強化してまいります。
④ 事業資金確保
当社グループは、更なる事業拡大を見据え、資金調達手段の多様化を図ることで、安定的な事業資金の確保に取り組んでおります。今後も持続的な成長を実現するため引き続き財務体質の強化に努めてまいります。
⑤ 業績の黒字化
当社グループは、スピード重視の経営と積極的な投資という考えに基づき継続的な投資を行っており、研究開発費や減価償却費等の負担から2021年12月期までの連結業績は連続した親会社株主に帰属する当期純損失となっております。今後も一定期間赤字が継続するものと考えておりますが、各種施策の実施により中期経営計画期間内での黒字化を図っていく予定であります。