有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/02/20 15:00
【資料】
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【項目】
157項目

対処すべき課題

本書提出日現在における経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、以下のミッションを掲げ、「建設業界のニッチ領域の課題を解決するデジタル事業を創造し続ける企業」として、職人が持つ高度な暗黙知をシステムとして具現化することで、顧客企業の業務効率化から新事業の創出へとつなぐ新たな形のDXを実現します。
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領域:建設業界
建設業界は、非効率なレガシーシステムによる課題を抱える、数多くのニッチ領域で構成された市場
建設市場は国内だけで60兆円超(※1)の規模を持つ巨大な市場でありながら、SaaS化されている領域は施工管理等のごく一部に限られており、未だ非効率なレガシーシステムによる課題を抱えた数多くのニッチ領域が存在します。
当社グループは、「3Dを核としたシステム開発の技術力」、「建設業に特化した開発実績により蓄積したナレッジ」、「課題発見~プロダクト開発~事業化までの全工程をハンズオンで実施する事業創出力」の3つの強みを活かし、建設業界における労働生産性の低迷や就業者の高齢化の進行等の深い課題を解決することができる企業として、DX化において大きなポテンシャルを持つ建設業界内でのユニークなポジショニングを構築してまいります。
※1 国土交通省総合政策局 情報政策課建設経済統計調査室「2021年度建設投資見通し」
事業:デジタル事業
業界の大手企業と共創プロダクトを開発し、共に販売していく
当社グループは、パートナー企業との継続的な協同関係を通じて、DXにかかる課題発見から、課題を解決するプロダクトの共同開発、プロダクト販売の事業化までのプロセスを、一気通貫で支援いたします。開発した共創プロダクトは、パートナー企業を通じて、又は当社とパートナー企業とのジョイントベンチャー等の設立を通じて、外部へ販売することにより、単なるソフトウエア開発の受託にとどまらない継続的な収益拡大を目指します。
特徴:ニッチ領域をBIM/SaaS化
ニッチ領域のレガシーシステムに置き換わる新たなシステムを開発し、高いマーケットシェアを獲得する
当社グループは、建設業界にある数多くのニッチ領域に狙いを定め、自社及び共創でBIM化・SaaS化されたプロダクトを開発し、こうしたニッチ領域の非効率的なシステム(レガシーシステム)を置き換えていくことで、高いマーケットシェアを獲得し、高利益率を実現してまいります。
(2)経営環境
・建設業界の状況
建設業の労働生産性は製造業の約50%であり、業界の高齢化が進んでいる状況にあります。当社グループは、建設業界は細分化された多重下請け構造が長年の課題を複雑化し、DXが非常に難しい業界であるため、高齢化に伴い職人の暗黙知が消滅していく危機にあると考えており、こうした高度な暗黙知を、高い数学力・深い業界知識で解き明かし、モデル化する力でシステムへと昇華させ、誰もが使えるよう「知」の民主化を進めます。
建設業の労働生産性建設業就業者の年齢層別割合

0202010_002.jpg0202010_003.jpg出所:一般社団法人 日本建設業連合会「2021建設業ハンドブック」
・建設業界を取り巻く法規制
建設業界のDXの基盤となるBIM利用について、国土交通省は、建設業界の長年の課題である生産性向上を解決する手段として、以前から導入の検討を続けておりましたが、近年、新型コロナウイルス感染症の影響により、各企業でのデジタル化が進んだことを背景に、2023年からの公共事業におけるBIM利用の原則化を決定、その後のBIM利用の対象範囲を順次拡大していく方針を発表しております。(出所:国土交通省「令和5年度のBIM/CIM原則適用に向けた進め方」)
また、建設業への適用が5年猶予されていた時間外労働の上限規制について、猶予期間が終了し2024年4月より36協定の厳守が求められるようになります。(出所:2019年施行 改正労働基準法 第36条)
このような法規制の状況により、業界の生産性向上はまさに喫緊の課題となっています。当社グループは、3Dを核とした建設業界のDXに必要な技術を網羅しており、特にBIMに関しては、空間自動設計システム「PlantStream®」や、自動配筋ソフト「LightningBIM自動配筋」といったBIM関連製品を生み出してきた実績があります。こうした技術力を活かし、建設業界の大幅な生産性向上を実現します。
・市場規模
建設業界のIT投資は、建設投資62兆円(出所:国土交通省総合政策局 情報政策課建設経済統計調査室「2021年度建設投資見通し」)に占めるIT投資割合1.31%(出所:企業IT動向調査報告書 2022)から、8,122億円と試算できます。そのうち当社グループがターゲットとする市場規模は、建設業界大手の売上シェア55%(出所:Strainer「建設業 売上高ランキング」の建設大手(売上高1,000億円以上)の建設業全体に占める割合)より、4,467億円と見込んでおります。
その市場規模の中、前述のBIM原則適用、36協定の適用開始の法規制の追い風の元、25%のシェア(売上高1,116億円)を目指し、建設業界の深い課題を解決することができる企業として、DX化において大きなポテンシャルを持つ建設業界内でのユニークなポジショニングを構築していきます。また、建設業界においてIT投資が占める割合は他産業と比べて低く、これまで述べたような課題も残されているため、未開拓の市場が多く存在し、将来的には市場規模の更なる拡大も見込めるものと考えております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、クライアント企業に付加価値の高いサービスを提供し続けることにより、事業の継続的な拡大と企業価値の向上を図ることが重要だと認識しており、事業の成長性を表す売上高成長率と、収益力を表す売上高営業利益率を重要な経営指標と考えております。
(4)経営戦略等
当社グループは、短期~中期的には、現在のメイン事業であるパートナー企業とのプロダクト共創開発を着実に遂行しながら、共創プロダクト販売及び自社プロダクトのセグメントでは、既存プロダクトの拡販に注力してまいります。また、長期的には、建設業界の各領域が抱えるレガシーシステムを、当社が保有する「技術力・ナレッジ・事業創出力」の強みを活用し置き換えていくため、M&Aの積極的な活用を検討しております。
短期~中期的に実行する具体的なアクションは以下のとおりです。
・パイプラインの堅実な遂行
当社グループは、現在、建設業界の複数社よりプロダクト共創開発の大型案件を受注し、開発を継続しております。こうした案件を確実に事業化し、更なる収益拡大へとつなげるために、現在受注している開発を堅実に遂行し、高品質なプロダクトの作成に注力いたします。
・開発体制の強化
当社グループの技術力を維持しながら、事業規模を拡大するためには、優秀なエンジニアの採用が必要不可欠です。当社グループは、フルリモートワークも可能な環境を整備し、国内・海外を問わない積極的かつ柔軟な採用活動を展開することで、開発体制の強化を進めております。
・既存プロダクトの販売の強化、営業体制の構築
当社グループが開発したプロダクトである空間自動設計システム「PlantStream®」、自動配筋ソフト「LightningBIM自動配筋」について、販売を本格化するため、CRO(Chief Revenue Officer)を任命し、営業体制・戦略の抜本的な見直し・強化を進めております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりであります。なお、財務上の課題は、本書提出日現在において、当社の財務は安定しており、優先的に対処すべき課題がないため記載しておりません。
①PlantStreamの顧客拡大、営業強化
当社グループの想定する顧客は、大手EPCコントラクター(国内外で約30社)、プラントオーナー(国内外で約25社)、中小EPCコントラクター(国内で30社、国外では150社以上)であり、現状は国内顧客を主なターゲットとしておりますが、国外への販売拡大を目指し、営業活動を展開しております。それにより売上は社数×ユーザー数で右肩上がりでの伸長を図っていく方針です。
②デジタル新事業の拡大
当社グループは、千代田化工建設株式会社とのプロダクト共創開発の成果である「PlantStream®」のリリースをはじめとして、建設業界・プラントエンジニアリング業界におけるDX支援の実績を重ねることで、着実に知名度が上がり、各クライアントからの受注が増加しております。このような状況の中、売上高の成長及び売上高営業利益率の向上を目指すには、当社グループの強みである「技術力・ナレッジ・事業創出力」の3つを活かしながら、新事業の創出を実現できる案件を見きわめる必要があります。当社グループは、建設業界のニッチ領域におけるシェア拡大につながる案件を積極的に獲得する方針です。
③採用の強化、組織体制の整備
当社グループの事業規模の拡大が想定される中、一連のプロセスの実行において、コンサルタント、エンジニア、プログラマー、プロジェクトマネージャー等の様々なIT人材が必要となります。積極的な採用活動を推進していく一方で、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、人事制度の構築やカルチャーの推進等を進めてまいります。
④管理体制の強化
当社グループは成長段階にありここ数年で組織が急速に拡大しておりますが、事業の継続的な成長には業務運営の効率化やリスク管理のための十分な内部管理体制の整備、マネジメント人材の拡充が重要だと考えております。このため、業務効率化のための社内基幹システムのリプレイスやバックオフィス業務の整備、経営の公正性及び透明性を確保するための内部監査の強化、監査役監査によるコーポレート・ガバナンスの充実などを行ってまいります。また、組織の拡大ペースに合わせる形でマネジメント人材の採用や育成、教育研修等を実施していく方針です。