有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/03/10 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
155項目

対処すべき課題


文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営方針
①ミッション「ときを映し、こころと生きる」
出生から七五三、入学式、成人式、結婚式などのライフイベントや、学校や趣味の日常生活など、写真は全世代に広く楽しまれています。フォトプリント事業やスタジオ・撮影事業などを通じて一人ひとりのお客様にとって大切な「瞬間」「思い出」「記憶」といった「とき」を写真や映像というカタチにしたり、リユース事業を通じてかけがえのない「もの」を次世代に繋ぐ、そうしたお手伝いを通じて、すべての人が心の充足を得られる社会を実現することが当社グループのミッションです。
②ビジョン「世界を代表するフォトライフ・カンパニー」
当社グループは、写真や映像といったイメージングに関連する多様なサービスを提供しています。写真やカメラ販売、中古カメラを中心としたリユースに関する専門店として「カメラのキタムラ」や「スタジオマリオ」といった店舗網を日本全国に有する株式会社キタムラを筆頭に、写真プリントのECサービス「しまうまプリント」を運営する株式会社しまうまプリント、プロカメラマンによるイベント撮影写真のECサービス「オールスポーツコミュニティ」や「スナップスナップ」を運営する株式会社フォトクリエイトなど、写真関連の各サービス領域において高いシェアを有しています。また、当社グループには2社のラボ会社(生産会社)があり、イメージング製品の製造において国内最大級の規模を有しています。
写真・映像に関する各事業領域において品質・規模の両面でNо.1のサービスを提供し、全世代のフォトライフを豊かにすることが当社グループのビジョンです。オムニチャネル型の顧客接点・データを活かし、すべての世代それぞれのライフスタイルに応じた「思い出をつなげる」サービスを提案していきます。
(2)経営環境及び経営戦略
①経営環境
当社グループは、写真や映像といったイメージングに関する『フォトライフサービス』とカメラ販売・リユース事業を展開する『カメラ&リユース』の事業領域に集中して事業を展開しています。
当社グループはフォトライフ事業の単一セグメントとなっていますが、商材・サービス別では、『フォトライフサービス』として「フォトプリント事業」 、「スタジオ・撮影事業」、「ソリューションサービス事業」、「BtoB事業」の4区分に、 『カメラ&リユース』はカメラ販売事業とリユース事業の2区分、それに「その他物販事業」を加えた7つの事業に区分しています。
『フォトライフサービス』の各事業は、写真プリント市場、スタジオ・撮影サービス市場など、複数の業界に跨っています。ライフスタイルの多様化により写真の楽しみ方は拡大していますが、SNSでの画像共有・送信サービスなどの広がりにより、写真プリントサービスの市場規模は縮小しています。一方、過去画像から作成するフォトブックはお客様のリピート率が高く、市場が拡大しています。
『カメラ&リユース』におけるカメラ市場では、高機能なスマートフォンの台頭によりデジタルカメラ全体の販売台数は減少傾向にありますが、当社グループが得意とする高機能高価格のカメラは堅調に推移しています。また、新品カメラの販売台数が減少しているのに対し、中古カメラのリユース市場は着実に拡大しています。
このような事業環境の中、当社グループは株式会社キタムラが創業80年余りの期間で築き上げ、蓄積してきた5つのアセットを活用することで、『フォトライフサービス』と『カメラ&リユース』の2軸で成長を図っています。
0202010_001.png
2022年12月末現在、全国に1,056ある直営店舗は、お客様と直接お会いできる重要なタッチポイントであり、且つフォト・イメージング商品の撮影・制作・加工を行なう「ラボ(工場)」でもあります。これらに加えて、大型ラボを3ヶ所保有しており、自社で一気通貫したサプライチェーンを構築しています。直営店舗は、都市部・郊外の両方をカバーしており、業界における参入障壁といえます。直営店舗にカメラ販売等に精通した専門人材を有していることも当社グループの強みとなっております。
また、リユース事業において、商材の買取り・販売の拠点として全国の店舗網が活用できることは大きな強みとなっています。
さらに、当社グループ各事業のネット会員数は2022年3月末時点において単純合計で約2,156万人となっています。このような大きなグループ顧客基盤があることによって安定した収益を確保できるとともに、新商品や新サービスの導入時に多くのお客様にご案内できることも強みといえます。ネット販売で購入された商品を最寄り店舗で受け取っていただく(BOPIS:Buy Online Pickup In Store)販売及びECサイトでの販売が売上高に占める割合(EC関与売上比率)も年々増加して、リアル店舗とネットが融合したBtoC事業体となっています。
0202010_002.png
これらの既存アセットが競合他社との差別化になっており、当社グループの成長の源泉であります。
②経営戦略
当社グループでは、安定的な成長を続ける『フォトライフサービス』の収益をベースに、市場が拡大している『カメラ&リユース』への投資、事業拡大により収益性と成長性の2軸で企業価値の拡大、ブランド力の向上を目指しております。
0202010_003.png
『カメラ&リユース』は、カメラ販売事業とリユース事業という2つの事業区分から構成され、当社グループの今後の成長は『カメラ&リユース』が牽引する想定でおります。当社グループは、知名度、信頼感、顧客接点といった強みを活かしCtoBtoCのリユース事業に参入、2020年に旗艦店「新宿北村写真機店」をオープンし、リユースカメラのブランドを進めてまいりました。リユース事業においては、AIを活用した買取査定システムなど、デジタル技術を駆使した中古カメラの買取り・販売ノウハウを中古ブランド時計や中古スマートフォンといった商材に横展開し、成長するリユース市場におけるシェア拡大を目指しております。また、全国にある店舗はオムニチャネル型であり、今後は主要都市圏にエリア旗艦店をオープンしながら、富裕層やインバウンド需要の取込みを志向しております。将来的には高い収益性が見込まれる中古カメラの海外ECや、中古品オークションといった新規事業にもチャレンジしていきます。
『フォトライフサービス』においては、写真プリントや撮影といった伝統的なサービスから、ビデオテープや写真アルバムのデジタル変換といった新規サービスまで、多様なサービスを提供しながら安定的な事業基盤を有しております。今後も新しい商品・サービスを開発しつつ、複数事業の併設店化による固定費効率化を進めながら、収益性の向上を目指してまいります。
これら各事業において、お客様とそのご家族の人生(ライフタイム)に寄り添う商品サービスを提供し、グループ横断の顧客データベースを構築することで『ファミリーLTV』(家族単位のライフタイムバリュー(=顧客生涯価値))最大化の実現に取り組んでまいります。その実現のため、今後拡大するシニア層を核に全世代へマーケティングを強化しており、『フォトライフサービス』で獲得した顧客を『カメラ&リユース』の分野へ送客するなど、グループ全体での効率的なクロスセルにも繋げてまいります。
今後、当社グループが有する各事業のネット会員データを、一つの顧客データ基盤(Customer Data Platform)に統合していきます。お客様のデータをグループ横断で統合し、顧客データ基盤の活用によりOne-to-Oneマーケティングを強化し、オムニチャネル戦略の深化を図るほか、新しいコンセプトのサービスを創り続け事業の拡大を目指してまいります。
0202010_004.png
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、①客数の向上、②フォトライフサービスの新ビジネス創出、③シーズナリティ(業績の季節変動)の軽減、④業務効率の改善、⑤顧客データ活用促進、を事業上の課題として認識しております。これらに対応するため、以下について重点的に取り組んでまいります。
①客数の向上に向けた出店エリアの最適化
カメラのキタムラは、各地域のマーケット環境に合わせた最適な店舗配置を実現するため、商圏が重複する店舗の移転・統合を進める一方、固定費が効率化できる「カメラのキタムラ×スタジオマリオ×修理サービス」の複合サービス併設店や、中古カメラを中心としたリユース商材の買取り・販売に特化した都市型店舗など、従来のローカルエリアのロードサイド店舗よりも客数のトラフィックが多く収益率が高い店舗の出店を進めてまいります。
②フォトライフサービスの新ビジネス創出
当社グループのフォトライフサービスは、若年層・子育て層・シニア層といった幅広い世代のお客様にご利用いただいており、各世代のニーズを見極めながら新商品や新サービスを独自に企画・開発しております。
例えば、シニア層・子育て層をターゲットに、サブスクリプション型の写真・動画クラウドストレージサービス「PicStorage」を2022年に開始しております。また、主に若年層の女性をターゲットに「PICmii」というセルフ写真館を東京都心エリアにオープンしており、従来のイメージング商品・サービスの枠を超えた新しい提案をしております。
今後もお客様のニーズを把握し、グループ会社の商品・サービス開発力を活用して、お客様の思い出を残す新商品・新サービスをお届けしてまいります。
③シーズナリティ(業績の季節変動)の軽減
過去数年間において、「フォトライフサービス」については下期により多くの収益が計上される事業構造と なっており、商品・サービスによっては一定程度の繁閑差が見られます。成長領域として位置付けている「カメラ&リユース」の事業拡大や、「フォトライフサービス」のなかでも季節性を伴わない新サービス(②に記載のサブスクリプション型サービス等)の創出により、収益構造における季節変動を軽減してまいります。
④業務効率の改善
当社グループの店舗では、正社員を中心とした店舗運営で高い専門性と接客品質を追求していますが、店舗スタッフのマルチタスク化やデジタル技術活用により接客品質を維持したまま、効率的な接客を実現します。
また、製造工場の稼働率についてもシーズナリティの平準化を進めつつ、バリューチェーンの川上から川下まで物流を最適化し、継続的な業務効率の改善を図ります。
⑤顧客データ活用とリアル×デジタルの融合によるサービス強化
当社グループが有する各事業のネット会員データを、一つの顧客データ基盤(Customer Data Platform)に統合してCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)を強化することを目指しております。顧客データをグループ横断で統合して分析することにより、「フォトライフ・カンパニー」として、ユニークなニーズを持つお客様1人1人に対して、それぞれのライフイベントに応じた最適な提案を行なうことを目指しております。
また、顧客データを基盤として、従来のオムニチャネル戦略を更に進めて、リアル店舗とECサービスを融合(カメラのキタムラ×しまうまプリント等)することにより、お客様の利便性を向上させ、フォトライフにおける購買体験を改善してまいります。
また、当社グループでは、その他の経営課題として、財務基盤の維持・強化といった従来の取り組みに加えて、不確実性の高まる経済・社会における事業の持続可能性を高めるためにサステナビリティ経営を推進しております。
⑥財務基盤の維持・強化
当社グループは、不確実性の高まっている経営環境や季節性を伴う事業構造に適切に対応し、事業運営を安定的に、成長投資を機動的に実施できる財務基盤の維持、強化に努めております。収益力の強化、収益性の改善、資本効率の改善を通じた財務体質の強化に努めるとともに、十分な手元流動性の確保や金融機関との関係性強化、調達手段の多様化に取り組んでまいります。
⑦サステナビリティに関する考え方及び取組
当社グループのサステナビリティに関するガバナンスとして取締役会の直下に代表取締役社長執行役員を委員長としたサステナビリティ委員会を組織し、サステナビリティに関する推進及びリスク管理を担当する部署としてサステナビリティ推進室を設置しております。当該体制のもと社会的責任を果たすとともに事業の成長と両立した経営に取り組んでまいります。
当社グループはサステナビリティを経営戦略の中心と位置付けており、「ときを映し、こころと生きる」というミッションのもと、事業を通じて持続可能な社会に貢献することで、社会に「人生100年に寄り添い、あらゆる世代に笑顔を」提供することを目指してまいります。今後取り組むべき重点課題として「気候変動対策と循環型社会の実現」「フォトライフ充実による幸せで豊かな社会への貢献」「働きがいのある環境づくり」「ダイバーシティ&インクルージョン」「持続的な成長を実現するガバナンス&コンプライアンス」の5つのマテリアリティを設定しました。率先して温室効果ガスの排出削減に努めるとともに、リユース・リペアといった事業を通じて、循環型社会に貢献していきます。また、気候変動対策として当社グループはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しており、当該フレームワークに沿った情報開示を進めてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、企業価値の向上を最終的な目的として、売上高営業利益率及び営業利益成長率並びに資本効率を図る投下資本利益率(ROIC=税引後営業利益÷投下資本(純有利子負債+株主資本))を目標とする経営指標として採用しています。
また、目標とする経営指標を達成するため、中間指標として事業毎に、客数・客単価、顧客獲得単価(CPA)、人時生産性、在庫回転率、固定費率といった、利益率や効率性を重視した経営に資するKPIを設定しております。
  • 有価証券届出書(新規公開時)