有価証券報告書-第7期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/27 15:30
【資料】
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【項目】
128項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、事業を通じて実現したい姿として以下の経営理念を掲げており、更なる価値の創造に挑戦し続けてまいります。
① 国民生活の充実と食文化の繁栄に貢献する
当社は、食品の生産・販売事業を通じ、まいたけをはじめとした健康に良い高品質な食品を社会に提供し、国民生活の充実と食文化の繁栄に貢献することを基本理念としております。
② 地域社会、株主への貢献と役員、社員の豊かさを実現する
当社は、役員・社員全員の不断の努力を通じて、企業力を高め、地域社会の発展に貢献し、株主に報いるとともに、自らの豊かさを実現いたします。
③ 企業倫理を尊重する
当社は、企業活動に際し、常に基本理念を踏まえ行動し、法の遵守はもとより、全てに高い倫理性を求め、これを尊重いたします。
(2) 中長期的な経営戦略等
当社グループは、事業を取り巻く環境の変化が、2021年11月に策定いたしました中期経営計画の基本戦略の推進に大きな影響を与えていることを踏まえ、中期経営計画の更新が必要であるとの判断に至りました。これにより、2023年12月19日付にて中期経営計画(2024年3月期~2028年3月期)を策定、公表いたしました。
なお、当社は、2024年6月26日開催の第7期定時株主総会にて、商号の変更及び定款の一部変更について承認をいただきました。新商号は、ユキグニファクトリー株式会社(英文商号:YUKIGUNI FACTORY CO., LTD.)とし、2025年4月1日を商号変更予定日としております。当社は、今までも、そしてこれからも、自然からの恩恵であるきのこの可能性を、雪国で磨いた技術や探求心により最大限引き出し魅力的な製品を開発することで、持続的な成長へとつなげてまいります。
〈中期経営計画の基本方針〉
これまで掲げてきた中長期ビジョンである「プレミアムきのこ総合メーカーとしてグローバルに展開し成長する」は変更せず、事業環境変化に対し適切に対応するため「高収益を実現する収益基盤の再構築」、「海外新規拠点の統合と更なる事業展開」を中期経営計画の更新方針として戦略の見直しを図りました。これにより、今回の中期経営計画においては以下の3つの基本方針のもと事業展開を行い、目標達成のため取り組んでまいります。
A.国内きのこ市場:既存のプレミアム事業の強化と新たな事業創出
・既成のプレミアムポジショニングを強化し他産地との差別化を進め、消費者の品質志向ニーズを着実に捉え、国内事業の更なる強化を図る
・他産地にないプレミアムアイテムの販売を強化し、更に生きのこ事業以外の新規事業も本格的に着手する
B. ビジネスプロセス: 聖域無き全プロセスの合理化
・全社横断的なBPRによって事業プロセスの改善を行い、コスト削減を実現
・新規投資による省人化と省エネの推進
C. グローバル展開:新たに取得した海外企業のPMI(経営統合)と他のターゲットの探索
・当社のノウハウを生かして、取得した海外企業の更なる業績拡大を目指す
・国内の事業強化の進展や地政学的リスクを考慮し、追加買収の可能性を追求
・オーガニック戦略は、アジアに加え欧米地域での自社製品販売も検討
〈定量目標(連結ベース)〉
項目2028年3月期(計画)条件が整った場合の
アップサイド計画 ※1
売上収益420億円超600億円超
海外売上収益比率6~7%前後30%前後
コアEBITDAマージン ※218%前後18%前後
投下資本利益率(ROIC)10%前後-

※1 国内の事業強化進展状況や地政学的リスクを考慮し、前提条件が整えば、主に海外事業進展・拡大を目指す計画をアップサイド計画としております。
※2 コアEBITDAマージン:コアEBITDA ÷ 売上収益
コアEBITDA:IFRSの営業利益からIAS第41号「農業」適用による影響額、その他の収益及び費用、一時的な収益及び費用を除外したものに減価償却費及び償却費を加算したもの
なお、各施策の詳細につきましては、2023年12月19日付にて公表いたしました「中期経営計画(2024年3月期~2028年3月期)説明資料」をご覧ください。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、安定的な増収・増益と企業価値向上を目指す観点から、当社グループの業績を評価するために有用な財務指標として、コア営業利益、コアEBITDA、コアEBITDAマージンを採用しております。
(4) 経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く環境は、国内においては少子高齢化に伴う人口減少等により、食品市場全体は縮小傾向にあり、国内労働人口の減少による労働力確保が困難になるなど、社会構造的な要因による課題を抱えております。また、原油高騰等による原材料費、エネルギー関連コストの高止まりや、国際情勢の悪化により国内外経済が不安定になるなど、企業活動への継続的な影響が想定され、引き続き動向への注視が必要であります。更に、世界的な気候変動による環境変化は、今後の消費活動や調達活動に大きな影響を与えるリスクを有しており、持続的な成長を維持するために注視すべき事項は複雑化かつ増加しております。
このような環境の中、当社は、急激な事業環境の変化に的確に対応し、国内での事業基盤を更に強化しつつ、中長期はグローバル展開を推進することでプレミアムきのこ総合メーカーとして成長し続けることを目指して2023年12月に中期経営計画を更新いたしました。本中期経営計画の詳細は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な経営戦略等」に記載のとおりであり、以下の点を今後の事業展開における対処すべき課題と認識し、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。
① 高収益を実現する事業基盤の再構築
当社は、まいたけ、エリンギ・ぶなしめじにて長年培ってきた当社の生産技術・ノウハウ、販売力を、本しめじ、はたけしめじ、マッシュルームにも活かし、プレミアムきのこ総合メーカーとしての基盤確立に努めております。日用品等の物価上昇が続き、消費者の節約志向の継続、選別消費の傾向から、当社は、プレミアム戦略を軸とした着実な成長を図る必要があります。ベース事業である国内きのこ市場については更なる高収益化に向けアイテム構成を見直しつつ、利便性を加えた新設計の商品も拡充し、顧客満足度と収益性の向上を両立いたします。また、プレミアムイメージに更に磨きをかけるべく、CM・デジタル・パッケージを連動した、高級感のある立体的なプロモーションを継続展開するなど他産地との差別化を図ってまいります。そのほか、当社がこれまで築き上げてきた当社独自の広範囲かつ強固な直接取引を引き続き活用してまいります。また、既存事業だけにとらわれることなく、さらにニッチ・プレミアム事業の拡大として国内生産のマッシュルーム等希少性の高いアイテムの拡充、加えて、きのこ原料を使用する代替肉と組み合わせた新規事業領域の拡大などを進めてまいります。これら戦略の確実な実行は、企業価値向上には必須であると考えております。
② コスト削減のための企業活動全般にまたがる効率化の推進
燃料価格、電気料金の高騰や円安といった原価上昇要因の緩和が見通せない中、全社横断的なBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)によって、事業プロセスの改善を行い、コストの上昇を売上収益の上昇が上回る事業構造の構築を進めております。本取り組みは生産部門や営業部門といったセクショナリズムの中では最大限の効果を発揮することができないため、既存プロセスや慣例等にとらわれず、DXの活用も検討しつつ全社横断的に聖域なき全プロセスの合理化に取り組んでまいります。
③ 海外新規拠点の統合と更なる事業展開
世界的な健康意識の高まりを受け、海外のきのこ生産量は安定成長が見込まれております。海外きのこ市場における生産・販売の自社基盤の構築及びきのこ栽培及び周辺領域での事業機会の獲得は、当社グループの持続的成長のため重要となります。オーガニック戦略としては北米、欧州、アジアをターゲットとし、国内で培った独自のチャネルモデルで販売開拓のスピードを加速しつつアライアンスも検討してまいります。加えて、海外の他社チャネルの活用も検討してまいります。インオーガニック戦略としては、まずは2023年12月に株式を取得しましたオランダ企業に対し着実なPMIを実施し、国境を越えて優れた技術や製品を共有し、グループ全体の競争力を強化してまいります。そのほか、戦略展開に応じて追加買収の可能性も探索してまいります。
また、当社グループの持続的な成長と社会課題の解決に向けて取り組むべき重要なテーマ(マテリアリティ)として7つを特定し、それぞれに施策の方向性と目標を定め、取り組みを進めております。マテリアリティを含むサステナビリティ活動の詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。
このほか、当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し多額の借入れを行っており、2024年3月末における有利子負債比率((借入金+1年内返済予定の長期借入金+リース負債)÷資本合計)は161.6%であります。当社グループでは、金利上昇によるリスクを軽減するため、既存の借入金の借入条件を見直し、借換えを行いました。引き続き、有利子負債の圧縮と自己資本比率の向上により財務基盤を強化し、企業経営の健全化に努めてまいります。