有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/08/14 15:00
【資料】
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【項目】
89項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、事業を通じて実現したい姿として以下の経営理念を掲げており、新しい価値をもった商品を提供できる「食文化のパイオニア」を目指してまいります。
① 国民生活の充実と食文化の繁栄に貢献する
当社は、食品の生産・販売事業を通じ、まいたけをはじめとした健康に良い高品質な食品を社会に提供し、国民生活の充実と食文化の繁栄に貢献することを基本理念としています。
② 地域社会、株主への貢献と役員、社員の豊かさを実現する
当社は、役員・社員全員の不断の努力を通じて、企業力を高め、地域社会の発展に貢献し、株主に報いるとともに、自らの精神的、物質的な豊かさを実現します。
③ 企業倫理を尊重する
当社は、企業活動に際し、常に基本理念を踏まえ行動し、法の遵守はもとより全てに高い倫理性を求め、これを尊重します。
(2)経営戦略等
当社は、まいたけの人工栽培に成功した後、まいたけの量産化、流通ルートの開拓、品質管理体制の整備を図るとともに、そのノウハウをエリンギ、ぶなしめじの商品化に活かし、きのこ総合企業としての体制を確立し、きのこ業界のリーディングカンパニーとしての地位を築いております。
また、生産技術の革新を、効率的な生産体制の構築や新商品の開発に活かすことで、独自のポジションを確立しております。
当社では上記の独自の強みを活かし、以下の6点を中期的な基本戦略として、成長に向けた施策を実施してまいります。
① プレミアムきのこ総合メーカーとしての基盤確立
まいたけ、エリンギ、ぶなしめじにて長年培ってきた当社の生産技術・ノウハウ、販売力を、本しめじ、はたけしめじ、マッシュルームにも活かし、プレミアムきのこ総合メーカーとしての基盤を確立していきます。
② まいたけでの圧倒的No.1の達成と維持
既存市場シェアアップ、マーケット需要創造、エリア、並びにシーズン格差解消を柱とし、国内市場での高成長を図ります。
③ 生産・包装の技術革新の追求
新生産方式の改善による収穫(培養)日数の削減、既存センターのキャパシティ最大化、きのこ事業への選択・集中によるきのこ原料の小売向け販売シフトにより、効率化をさらに追求します。
④ 需要拡大につながる機能性、きのこ高品質化研究
健康食品・化粧品・医薬品等への原料供給、ライセンスアウト、生きのこ需要拡大につながる機能性訴求のエビデンスを残す機能性研究、並びに高効率、高品質に向けた生産技術開発により、生産能力増強・品質向上、需要拡大につなげます。
⑤ 財務体質の強化
企業価値を向上させるための「財務の最適化」を推進します。
⑥ 当社独自モデルの海外展開への準備
まいたけを中心に国内にて構築した当社独自モデルを海外へ展開していく準備を進めます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、安定的な増収・増益と企業価値向上を目指す観点から、経営管理上の基礎的な指標として「調整後営業利益」を最も重要な指標と位置付けており、2020年1月に公表した「2020年3月期~2023年3月期 中期経営計画」においても、「調整後営業利益」の持続的な成長を目標として掲げております。なお、「調整後営業利益」の定義については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (参考情報)」をご参照ください。
(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大による国内外景気や、海外実習生受入等の人材確保など企業活動への影響が想定され、引き続き動向への注視が必要であります。
半面、新型コロナウイルスの感染拡大により、内食需要の高まりやまいたけをはじめとするきのこの免疫力向上機能のメディア露出など、これまで、少子高齢化が進むなか、日本人の食生活は健康を強く意識したものへと変化しつつあったところから、さらに強く「健康」への意識が高まっております。きのこはヘルシーなだけでなく、病気に負けない身体づくりをサポートするさまざまな機能性を持っていますが、一般にはあまり知られていません。当社グループは、まいたけをはじめとするきのこの健康機能性を世に広め、より健康的な食生活の実現を下支えすることで、国民生活の充実と食文化の繁栄に貢献してまいります。
このような経営環境の下、当社が継続的な成長を実現していくために、以下の点を今後の事業展開における対処すべき課題と認識し、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。当社グループは、特に2015年6月の非上場化以降、まいたけに注力して事業を展開してまいりました。当社のまいたけ(生茸)販売高は、2016年3月期の10,903百万円から、2017年3月期には12,232百万円、2018年3月期には13,912百万円、2019年3月期には17,763百万円、そして、2020年3月期には19,075百万円と、成長を続けてまいりました。今後も、以下で述べるとおり、引き続きまいたけ事業を中心としてさらなる成長を目指してまいります。
① 健康需要の拡大を捉えた、まいたけ事業を中心とするさらなるトップラインの成長
健康ニーズの高まりを背景とするさらなる需要創造
近年の健康需要の拡大を背景に、消費者の間できのこ類の健康促進効果に対する注目が高まり、きのこの国内消費量は増加傾向にあります。中でも当社の主力製品であるまいたけは、ビタミンDやグルカン、食物繊維をはじめとする栄養成分を豊富に含んだ食材であります。当社は、まいたけの健康促進効果のさらなる発掘と普及を通じて、全国におけるまいたけ需要の拡大に取り組んでまいります。
消費の地域差の解消による販売拡大
需要拡大に向けた取り組みの一つとして、まずは「消費の地域差の解消」を目指します。特に当社が従来まいたけの販売量を伸ばせていなかった西日本を中心とするエリアでの販売拡大を目指します。株式会社神明ホールディングスとの協業による顧客開拓やクロスセルも活かしながら、各エリアでの需要創造とシェアアップを目指してまいります。
消費の季節差の解消による販売拡大
次に、「消費の季節差の解消」にも取り組みます。鍋料理などに多く使われる秋冬に比べてまいたけの消費量が少なく、「非需要期」と言われる春夏における販売拡大を目指します。健康需要の取り込みに加え、柔軟なアイテム展開やシーズンにあわせた売り場提案といった施策を継続して展開することで、まいたけを一年通して食べられる食材に育成してまいります。
外食・中食への進出による販売拡大
また、これまでの主要販売チャネルであるスーパーマーケットに加え、外食や中食といった新たな販売チャネルの開拓にも取り組んでまいります。生のまいたけのみならず、加工食品などの新商品開発を通じ、スーパーマーケットの中でも、青果売場から総菜売場などへの販路拡大を図ってまいります。外食や中食に進出することは、まいたけと消費者とのタッチポイントの拡大を通じて、前述した消費の地域差や季節差の解消にもつながるものと考えています。
生産キャパシティの増強による事業規模拡大
これらの施策によるまいたけ需要の拡大に対応するため、生産キャパシティの増強も図ってまいります。既存センターにおける生産ラインの増改築を進め、さらなる事業規模の拡大を目指してまいります。
② アグリテックの追求による生産性の向上
トップラインの成長に加え、独自の生産技術や商品開発力の継続的な発展を通じて、さらなる収益性の改善を図ってまいります。
生産技術の面では、新菌や培地の研究開発を通じた培養日数の短縮や収量の増加、生産効率及び品質の向上等に取り組んでまいります。加えて、まいたけの生産やカット、包装や箱詰め等、センターのさらなる自動化・FA化を進め、コスト削減や省人化を通じた生産性の向上を進めてまいります。
また、生産プロセスにおけるユーティリティの見直しも進めてまいります。こうした取り組みを通じて、コスト削減だけではなく、商品の廃棄やCO2排出量の削減にもつながり、環境に配慮したサステイナブルな生産体制を実現してまいります。
③ Eコマースを中心とした健康食品事業の拡大
まいたけの持つ豊富な栄養成分を活用し独自に開発した健康食品を、主にEコマースチャネルを通じて販売してまいります。特に自社Eコマースサイト「雪国まいたけONLINE」のブラッシュアップ、Webを通じたプロモーションの強化、専門人材の獲得と体制の強化を進め、直販チャネルを中心に据えた健康食品事業の売上高拡大と収益性向上を目指してまいります。
④ M&Aも活用した事業ポートフォリオの強化
当社はこれまでM&Aによる非連続的な成長にも取り組んでまいりました。世界で初めてぶなしめじの栽培に成功したタカラバイオ株式会社の茸事業を2019年3月に買収し、本しめじ・はたけしめじといったプレミアムきのこのラインナップ拡充及び高度な培地技術や優良菌株の獲得を果たしております。また直近2019年10月には、マッシュルームの製造販売を行う有限会社三蔵農林(現 株式会社三蔵農林)を買収しております。これにより、創業45年超の歴史があり、マッシュルーム市場において高い知名度を誇る「ミツクラ」ブランド、及び堆肥製造から一貫して製造するノウハウを獲得しております。
上記①~③を中心とした既存事業の拡大によるオーガニック成長に加え、当社グループは引き続きM&Aも活用したプレミアム商材、生産・培養技術の獲得、そして海外市場や川上分野への進出を通じて、事業ポートフォリオのさらなる強化に取り組んでまいります。
上記の他にも、当社は、輸出を通じた市場調査や、KOL(Key Opinion Leader)の活用及び現地小売店での販売促進活動を通じたまいたけの認知度向上と需要創出を進めており、本格的な海外進出に向けた様々な取り組みを行ってまいります。
また、当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し多額の借入を行っており、2020年3月末における有利子負債比率((借入金+1年以内返済予定の長期借入金+リース負債)÷純資産)は490.9%であります。当社グループでは、金利上昇によるリスクを軽減するため、金銭消費貸借契約の変更によるスプレッドの引き下げなどの施策を講じております。加えて、有利子負債の圧縮と自己資本比率の向上により財務基盤を強化し、企業経営の健全化に努めてまいります。