有価証券報告書-第29期(平成26年7月1日-平成27年6月30日)

【提出】
2015/09/29 12:41
【資料】
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【項目】
98項目

対処すべき課題

(1)当社を取巻く環境
当社の社名ホーブ「HOB」は、「Horticultural Biotechnology(施設園芸の生命科学技術)」及び「Hokkaido Biotechnology(北海道の生命科学技術)」の2つのことから名付けられており、「研究室の中だけで行われていた組織培養のバイオテクノロジー技術を実際の農業の中で活かしていこう、そのバイオテクノロジー技術を活かすことで北海道の農業を活性化させる一助となろう」という想い、「バイオテクノロジー技術を北海道の大地に根付かせよう」というのが、当社の出発点でありました。
当社グループは、農業を基盤とし農業に立脚しながらも、農業そのものを事業として行っていくのではなく、農業生産者と消費者をつなぐかけ橋となり、当社の有する種苗、技術、情報を積極的に提供していくことによって、農業の活性化に寄与していくことを事業の根幹としております。
①国内農業の現状
国内農業については、依然として厳しい状況が続いております。農作物の価格は低落傾向にあり、原油価格の高騰は農業用資材コストに反映されることとなり、国内農業生産者の所得も減少しております。また後継者不足、高齢化が言われ、農業生産者の減少といった現状に直面しているものと認識しております。
一方、農産物の輸入自由化が進み、海外から様々な農産物が安価で入ってくるようになり、輸入量は増大し、国内農産物の自給率は依然として低いままで推移しております。
農業の活性化策として期待された農地法の改正も、農業生産者を保護するという名目により、法人が事業として行う農業に対して参入を厳しくし、規制されております。
しかしながら、最近の食の問題から消費者の安全、安心志向は強まり、国産の農産物に対する消費者の関心は高まっており、より良いものあるいは安全、安心という付加価値農産物を作る動きもあります。また新規就農者や農業生産法人を積極的に設立する動きも増え、企業が農業ビジネスへ参入するなどの変化が生じております。
②業務用いちごの現状
いちごは、農業生産物の中では極めて付加価値の高い作物と言われております。しかし、いちごは高い鮮度が要求され、衝撃、高温等の環境変化に弱いため、輸送や長期保存が難しい農業生産物であります。
現在、業務用いちごは、概ね12月から5月頃までは栃木県や福岡県を中心とした一季成性いちご※1が中心となっております。また6月から11月まではアメリカ産輸入いちごが大部分を占めており、平成25年の輸入量は
約3.5千トン(大部分が6月から11月までの6か月間に輸入される)であります。
アメリカ産輸入いちごは、一般に、国産に比べ食味、食感に大きく劣ると言われており、果皮が硬く、輸送性が高いため、国産いちごの供給量が少ない夏から秋にかけて、業務用として国内に入ってきております。
※1 いちごには、花芽分化形成(花となる芽のもとが作られること)に一定の条件を必要とする一季成性いちごと条件を必要としない四季成性いちごがあります。一般に知られているいちごの多くは一季成性いちごであり(とちおとめ等)、一定の条件(夜の長さが12時間以上となる日が連続する短日条件と温度の低下という低温条件)が整ってはじめて花芽が形成され、果実ができます。
(2)当社グループの対処すべき課題
①いちご果実・青果事業の収益確保
当社は、夏秋期において自社いちご品種販売を中心にしております。今後も自社いちご品種の販売に注力し、利益の確保に努めるとともに、他品種いちご及び輸入いちごも併用した販売体制を構築してまいります。また、促成いちご品種の販売時期は、いちご市場相場の高騰が収益に影響を与えることがあるため、仕入産地の分散化を推し進め、仕入価格の抑制に努め、利益の向上を図ってまいります。また、事前に販売価格を決定する販売先については、いちご市場相場価格を勘案した販売価格設定の要請を継続してまいります。
さらに青果の販売においては、多様化する販売先のニーズに応えるため、提案型の営業を展開しながら、取扱品目及び取扱量の拡大を図り、いちご果実と併せた収益の確保に努めてまいります。
②夏秋いちごの新品種開発
当社ではこれまで、高温時でも品質の安定した耐暑性に優れた品種を開発するなど、近年の猛暑等の環境変化に対応し、ユーザーからの要望にも応えてまいりました。今後につきましても、栽培の省力化が図れ、収量性の高い品種などの開発に注力してまいります。
③自社いちご品種産地栽培面積の維持
自社いちご品種の栽培面積は、生産者の高齢化、後継者不足などで減少してきております。出荷量を向上させることが生産者所得の安定につながることから、この栽培指導を徹底しており、徐々にその成果はでてきております。引き続き促成いちご品種との端境期となる5、6月及び秋以降の出荷量の拡大を図る栽培指導を徹底して、自社いちご品種産地の栽培面積の維持に努めていく方針であります。
④馬鈴薯事業の確立
馬鈴薯事業を行う子会社「株式会社ジャパンポテト」は、種馬鈴薯の生産販売及び仕入販売と、青果馬鈴薯の仕入販売を行っております。
販売している馬鈴薯には、同社が国内販売権を有している海外オリジナル品種と、通常販売されている一般品種があります。同社は利益率の高い海外オリジナル品種の販売比率を高めることで、事業基盤の安定に努め、青果馬鈴薯の販売を強化することで種馬鈴薯の販売拡大に繋げ事業の拡大をめざします。
⑤運送事業の収益の維持向上
運送事業を行う子会社「株式会社エス・ロジスティックス」は、営業基盤を関東圏に特化し、配送業務の効率化により、収益の確保に努めてまいりました。今後は、自社配送と提携業者配送を効率的に運用することに加え、新規荷主からの運送受託に向けた営業をより一層強化して、収益の維持向上を図ってまいります。
⑥人材の育成について
当社の事業は、農業に密接に関わっております。気象条件等の自然環境の変化に対応し、その影響を軽減するためには、机上の学習だけではなく、経験をとおして学ぶことも多々あります。当社では、事業経験をとおして社内に蓄積されるノウハウや技術を共有・継承することで、今後も優秀な人材の育成に努めていく方針であります。