有価証券報告書-第100期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/06/25 13:59
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対処すべき課題

(1)中長期的な経営戦略および会社の対処すべき課題
①当社および当社グループは、前中期経営計画「MVIP2014」(平成24年度~26年度)において、経営資源をGlobal Links(注)の機能強化に集中させ成長の推進力とし、①新TGL計画で仕掛けたもののリターンをとり詰める、②既存の一貫事業の周辺で扱いの幅と量を増やす、③ニッスイブランドのイメージを向上させる、④財務体質の改善を行い、2015年度以降の飛躍に備える、という4つの施策に取り組んだ。
その結果、当社独自の技術を活かした事業では成長を実現できたが、医薬品事業における政府のジェネリック推進政策の影響を始めとする、想定を越えた環境変化への対応等に若干遅れが生じたことから、利益目標については未達となった。
(注)Global Linksとは、ニッスイグループと志を共有し、Win-Win の関係を通じて、共に価値を創造する企業のネットワーク。
ア.新「中期経営計画MVIP2017」経営の基本方針
以下の前中期経営計画の考え方を受け継ぎ、水産物を核とした成長を実現する。
「私たちは、水産資源の持続的利用と地球環境の保全に配慮し、水産物をはじめとした資源から、多様な価値を創造し続け、世界の人々のいきいきとした生活と希望ある未来に貢献します。」
1)企業として目指す姿
当社および当社グループは、変化に対応し、差別化できる独自の技術力を持つメーカーを目指す。そのため、①成長に向けて積極的に投資、②資源アクセス力を強化、③健康機能食品・高付加価値商品を提供、④海外でのパフォーマンスを拡大(北米・ヨーロッパに続きアジアに注力)に取り組む。また、当社は、「使命感」・「イノベーション」・「現場主義」・「グローバル」・「お客様を大切にする」という、創業以来受け継いできた5つの企業遺伝子のもと、CSR に根差した経営を推進し、広く社会に貢献すると共に、財務体質を強化し企業価値を高めていく。
2)主な事業戦略
水産、食品、ファインケミカルの主要3事業の個々の強化に加え、それぞれの事業領域の境目となる分野で融合を進めることで、より高い成果を目指す。ファインケミカル事業をさらに先鋭化させると共に、長年培ってきた水産事業を核としつつ、水産および食品事業の連携をさらに強化することで成長を実現していく。
(ⅰ)ニッスイの主要3事業とその融合分野で強化するポイント
戦略展開のポイントとして、事業の枠を超え、事業境目領域での融合・連携を深めることで、当社および当社グループの事業を拡大し成長を実現する。

(ⅱ)事業の融合を実現するキーワード
<食品、水産、ファインケミカル事業の融合>・機能性脂質技術の全事業での活用
・調味料・水産エキスビジネスの拡大
・海外での伸長
<食品と水産事業の融合>・惣菜型食品・水産食材品の進化・深化
・養殖の高度化
<食品とファインケミカル事業の融合>・EPA事業の拡充と新用途、医薬への挑戦
イ.主要事業の戦略
<水産事業戦略>・資源へのアクセスを強め価値の最大化を図る。
・安定した利益を出し続ける事業構造に進化させる。
<食品事業戦略>・収益基盤を強化すると共に当社の強みを活かした成長分野を開拓する。
<ファインケミカル事業戦略>・機能性脂質R&D技術による競争力とEPA情報資産のフル活用により健康分野で抜群の存在感を示す。
<グループ経営戦略>・グループ個々の企業戦略を尊重しつつ、グループとしてのガバナンスを強化すると共に、専門組織を置き、企業個々の進捗管理体制を強化する。
・競争力があり、差別化が可能な独自技術に根差した開発を進める。
・中長期の開発を重視したR&D推進体制を構築する。
ウ.財務・配当戦略
1)投資計画
当中計期間中、成長を実現するため戦略事業への設備投資を実施する。
投資総額:700億円(個別230億円 グループ470億円)
水産事業 220億円 食品事業 194億円
ファインケミカル事業 109億円 物流事業 70億円
その他 109億円
減価償却費:535億円
2)財務戦略 -有利子負債の削減、自己資本比率の改善-
経営環境の変化に対応できる財務体質を構築するため、在庫管理の徹底等により資産効率を高めることで、自己資本を充実させると共に有利子負債を削減する。また、グループ会社を含めROAを指標とした投資管理の強化を進めていく。なお、本中計では将来の成長に向け、大型投資を計画しており、資金調達方法についても引き続き検討を進める。
(成長分野への投資と株主還元)

②平成27年1月に「さんま辛みそ煮(100g)」に缶容器の金属片が混入したことから自主回収を行った。当社では、従来から取り組んでいる原材料由来の異物混入対策、生産工場内の作業者由来、設備・器具由来で発生する異物混入対策をより一層強化し、予防管理体制の徹底を図るとともに、製造工程のトラブル発生時の対応を厳格に順守すべく再発防止対策を講じている。今後もフードセイフティー、フードディフェンスの両面を強化し、「食品の安全・安心」に万全を期すべく取り組んでいく。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
①当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
上場会社である当社の株券等については、株主をはじめとする投資家による自由な取引が認められていることから、当社取締役会としては、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方は、最終的には株主全体の意思により決定されるべきものであり、特定の者の大量取得行為に応じて当社株券等を売却するか否かについても、最終的には当社株主の判断に委ねられるべきものであると考えている。
その一方で、会社の取締役会の賛同を得ずに行う企業買収の中には、(ⅰ)重要な営業用資産を売却処分するなど企業価値を損なうことが明白であるもの、(ⅱ)買収提案の内容や買収者自身について十分な情報を提供しないもの、(ⅲ)被買収会社の取締役会が買収提案を検討し代替案を株主に提供するための時間的余裕を与えないもの、(ⅳ)買収に応じることを株主に強要する仕組みをとるもの、(ⅴ)当社グループの持続的な企業価値増大のために必要不可欠なお客様、取引先および従業員等のステークホルダーとの間に築かれた関係を破壊するもの、(ⅵ)当社グループの技術と研究開発力、グローバルネットワークによる水産物のサプライチェーン、安全・安心な商品・サービスの提供など当社グループの本源的価値に鑑み不十分または不適当なもの、など当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益に反するものも想定される。
当社としては、このような大量取得行為をおこなう者は当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、この不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するため、当社グループの企業価値ひいては株主の皆様の利益を確保し、向上させる目的をもって当社株券等の大量取得行為に関する対応策(以下「本プラン」という。(注))を講じることが必要と考えている。
(注)当社は、平成21年6月25日開催の第94期定時株主総会における承認に基づき、本プランを導入し、その後平成23年6月28日開催の第96期定時株主総会における承認に基づき、本プランを一部変更し継続した。また、この本プランが平成26年6月26日開催の第99期定時株主総会終結の時をもって有効期間満了となったことに伴い、同定時株主総会における承認に基づき、本プランを一部変更し、継続した(以下継続したプランを「本プラン」という。)。
②基本方針の実現に資する取組み
当社では、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させるための取組みとして次の施策を既に実施している。
イ. 中期経営計画による企業価値向上への取組み
当社および当社グループは、前中期経営計画「MVIP2014」(平成24年度~26年度)において、経営資源をGlobal Links(注)の機能強化に集中させ成長の推進力とし、①新TGL計画で仕掛けたもののリターンをとり詰める、②既存の一貫事業の周辺で扱いの幅と量を増やす、③ニッスイブランドのイメージを向上させる、④財務体質の改善を行い、平成27年度以降の飛躍に備える、という4つの施策に取り組んだ。
平成27年度以降の経営計画については、前中期経営計画の考え方を受け継ぎ水産物を核とした成長を実現することを基本方針とした新中期経営計画「中期経営計画MVIP2017」を策定し、推進していく。
(注)Global Linksとは、ニッスイグループと志を共有し、Win-Winの関係を通じて、共に価値を創造する企業のネットワーク。
「中期経営計画MVIP2017」の経営の基本方針は以下のとおりである。
[「中期経営計画MVIP2017」経営の基本方針]
私たちは、水産資源の持続的利用と地球環境の保全に配慮し、水産物をはじめとした資源から、多様な価値を創造し続け、世界の人々のいきいきとした生活と希望ある未来に貢献します。
1)企業として目指す姿
当社および当社グループは、変化に対応し、差別化できる独自の技術力を持つメーカーを目指す。そのため、①成長に向けて積極的に投資、②資源アクセス力を強化、③健康機能食品・高付加価値商品を提供、④海外でのパフォーマンスを拡大(北米・ヨーロッパに続きアジアに注力)に取り組む。
また、当社は、「使命感」・「イノベーション」・「現場主義」・「グローバル」・「お客様を大切にする」という、創業以来受け継いできた5つの企業遺伝子のもと、CSRに根差した経営を推進し、広く社会に貢献すると共に、財務体質を強化し企業価値を高めていく。
2)主な事業戦略
水産、食品、ファインケミカルの主要3事業の個々の強化に加え、それぞれの事業領域の境目となる分野で融合を進めることで、より高い成果を目指す。ファインケミカル事業をさらに先鋭化させると共に、長年培ってきた水産事業を核としつつ、水産および食品事業の連携をさらに強化することで成長を実現していく。
ロ. コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、当社グループ全体の継続的な企業価値向上を具現化していくためにはコーポレート・ガバナンスの強化が必要であると認識しており、重要な戦略を効率的かつ迅速に決定、実行していく業務執行機能と、業務執行に対する監督機能を明確化し、経営における透明性を高めるための各種施策の実現に取り組んでいる。
具体的には、株主に対する取締役の経営責任を一層明確にするため、平成18年6月28日開催の第91期定時株主総会において取締役の任期を2年から1年に短縮し、平成21年5月15日開催の取締役会において、平成21年6月25日開催の第94期定時株主総会終了後に執行役員制度を導入すること、及び第94期定時株主総会で取締役総数を削減する定款変更議案と社外取締役2名を含む取締役選任議案とを上程することを決議し、上程された議案は、第94期定時株主総会で承認可決された。
③本プランの内容
イ. 本プラン導入の目的
本プランは、基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するため、当社グループの企業価値ひいては株主の共同の利益を確保し、向上させる目的をもって導入されるものである。
ロ. 本プランの内容
(ⅰ)対抗措置発動の対象となる行為
本プランは、(a)当社が発行者である株券等について、保有者の株券等保有割合が20%以上となる買い付けその他の取得、または、(b)当社が発行者である株券等について、公開買付けに係る株券等の株券等所有割合及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付けに該当する行為もしくはこれに類似する行為またはこれらの提案がなされる場合を適用対象とする。
(ⅱ)買付説明書の提出
買付者等には、買付内容の検討に必要な情報および本プランに定める手続きを遵守する旨の誓約文言等を記載した書面(買付説明書)の提出を求め、当社は、買付説明書を受領後速やかに独立委員会に提供しその旨を情報開示する。
(ⅲ)株主意思確認手続きまたは独立委員会への諮問手続きの選択
当社取締役会は、買付者等からの情報・資料等の提供が十分になされたと認めた場合には、所定の取締役会検討期間を設定し必要に応じて外部専門家の助言を得ながら買付内容等を十分に評価・検討等し、対抗措置として本新株予約権の無償割当ての実施または不実施について、株主意思確認手続を実施するか、または、独立委員会に諮問するか、等について決議する。
(a)株主意思確認手続きの実施を決議した場合
株主意思確認総会等において株主投票を実施する。投票権を行使できる株主は、投票基準日の最終の株主名簿に記録された株主とし、投票権は、議決権1個につき1個とする。株主意思確認総会等における株主投票は、当社の通常の株主総会における普通決議に準じて賛否を決するものとし、当社取締役会は決議の結果に従い、本新株予約権の無償割当ての実施または不実施について速やかに決議する。また、当社取締役会は、株主意思確認手続きを実施する旨の決議を行った場合、当社取締役会が株主意思確認手続きを実施する旨を決議した事実及びその理由、株主意思確認手続きの結果の概要、その他当社取締役会が適切と判断する事項について、速やかに情報開示を行う。
(b)独立委員会への諮問を決議した場合
当社取締役会は、株主意思確認手続きによらず本新株予約権の無償割当てを実施すると判断した場合、その合理性及び公正性を担保するために、当社の社外取締役及び社外監査役並びに社外の有識者で構成される独立委員会に諮問する。
この場合には、独立委員会は、取締役会から買付者等の買付説明書の提供を受けるのみならず、買付者等に対して買付等の内容に対する意見、その根拠資料、代替案その他独立委員会が適宜必要と認める情報・資料等を提示するよう要求することができる。また、独立委員会は、当社グループの企業価値ひいては株主の共同の利益の確保・向上という観点から当該買付等の内容を改善させるために必要であれば、当該買付者等と協議・交渉等を行うことができるものとする。
独立委員会は、買付者等の買付等の内容の評価・検討、買付者等との協議・交渉等の結果、買付者等による買付等により当社の企業価値ひいては株主の共同の利益が毀損されるおそれがあると認められる場合、当社取締役会に対して本新株予約権の無償割当てを実施することを勧告する。また、独立委員会は、このような買付等に該当しない場合は本新株予約権の無償割当てについて株主意思確認手続を実施することを勧告する。
当社取締役会は、独立委員会による勧告を最大限尊重し速やかに決議を行うとともに、情報開示を行う。
(ⅳ)対抗措置の具体的内容
当社は、本プランに基づき発動する、大規模買付行為に対する対抗措置として、本新株予約権の無償割当てを実施する。本新株予約権の無償割当ては、当社取締役会決議において定める割当期日における当社の最終の株主名簿に記録された当社以外の株主に対し、1株につき本新株予約権1個の割合で無償で割り当てるものとする。但し、買付者等を含む非適格者や非居住者による権利行使は、原則として本新株予約権を行使することはできない。
(ⅴ)本プランの有効期間
本プランは平成26年6月26日開催の当社第99期定時株主総会において承認可決され、その有効期間は、同定時株主総会終結後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結のときまでとする。
但し、有効期間の満了前であっても、当社株主総会または当社取締役会において本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されることになる。
(ⅵ)株主・投資家に与える影響等
本プラン導入後であっても、本新株予約権の無償割当てが実施されていない場合、株主に直接具体的な影響が生じることはない。他方、本新株予約権の無償割当てが実施された場合、株主が本新株予約権の行使に係る手続きを行わなければその保有する当社株式が希釈化する場合がある。但し、当社が当社株式と引き換えに本新株予約権の取得を行った場合は、非適格者以外の株主の保有する株式の希釈化は生じない。
④本プランに対する当社取締役会の判断及びその理由
当社取締役会は、本プランが基本方針に沿うものであり、当社の企業価値ひいては株主の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないものと考えている。
イ. 買収防衛策に関する指針の要件等を完全に充足していること
本プランは、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を充足しているとともに、企業価値研究会が平成20年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」の内容も踏まえたものとしている。
ロ. 株主意思を重視するものであること
本プランは、株主の意思を反映させるため、平成26年6月26日開催の第99期定時株主総会において議案として付議し、承認可決された。
なお、本プランの有効期間の満了前であっても、当社株主総会または当社取締役会において本プランを廃止する旨の承認がなされた場合には、本プランはその時点で廃止されることになり、その意味で、本プランの消長には当社株主の意思が反映されることとなっている。
ハ. 独立性の高い社外者の判断の重視と情報開示
当社は、本プランの導入にあたり、本プランの発動等に際して、当社取締役会の恣意的判断を排除し、株主のために実質的な判断を客観的に行う機関として、独立委員会を設置した。独立委員会は、社外取締役、社外監査役、社外有識者から構成されるものとしている。また、独立委員会の判断の概要については、株主に情報開示することとされており、運用において透明性をもって行われる。
ニ. デッドハンド型やスローハンド型買収防衛策ではないこと
本プランは、株主総会で選任された取締役により構成される取締役会の決議により廃止することができるものとして設計されており、デッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交替させてもなお、発動を阻止できない買収防衛策)ではない。また、当社は期差任期制を採用していないため、本プランはスローハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の交替を一度に行うことができないため、その発動を阻止するのに時間を要する買収防衛策)でもない。