有価証券報告書-第95期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/30 16:04
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対処すべき課題

本項に記載の中期経営戦略を含む経営方針は、本年3月25日に公表した時点のものであり、その後の新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響については、有価証券報告書提出日(2020年6月30日)現在、十分に見極められていない状況にあります。
今後も国内外の情勢の把握に努め、事業環境の変化に迅速に対応していくとともに、中期経営戦略を含む経営方針について精査を行い、その内容の変更を要すると判断した場合は、速やかに公表することといたします。
1.全社課題
当社グループは、2020年3月に、次のとおり、2030年から2050年にかけての中長期的な当社グループの目標として「会社の目指す姿」及び2020年度から2022年度までを対象とした中期経営戦略(以下「22中経」といいます。)をそれぞれ策定いたしました。今後、これらに基づき、企業価値の向上に向けた諸施策を実施してまいります。
(1) 会社の目指す姿
当社グループは、「人と社会と地球のために」という企業理念のもと、「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、持続可能な社会に貢献するリーディングカンパニー」をビジョンとしております。
22中経の策定にあたっては、社会的価値と経済的価値の両立を図るという観点から、当社グループの企業理念、ビジョンの実現に向けた2030年から2050年にかけての中長期的な当社グループの目標として、以下のとおり、新たに「会社の目指す姿」を策定いたしました。
・銅を中心とした非鉄金属素材及び付加価値の高い機能材料・製品の提供を通じて豊かな社会の構築に貢献する。
・リサイクル可能な製品の提供、高度なリサイクル技術による廃棄物の再資源化を通じて循環型社会の構築に貢献する。
・地熱等再生可能エネルギーの開発・利用促進、環境負荷低減を考慮したものづくりの徹底により脱炭素社会の構築に貢献する。
(2) 価値創造の姿(価値創造プロセス)の全体像
当社グループは、「社会的価値と経済的価値の両立を図る」という考え方を基軸とし、社会課題の解決による社会的価値の創造を、当社グループの事業を通じて行うことで、経済的価値の創造を実現してまいります。このような観点から、ステークホルダーに伝えるべき情報(経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等)を体系的・統合的に整理し、次のとおり[価値創造プロセス]としてまとめております。
[価値創造プロセス]
0102010_001.png左側に、当社グループとして解決する社会課題と関連するSDGs(a・b)、及び当社グループとして認識している重要課題(c)を挙げ、中心のピンク色の円は、当社グループの事業活動そのものを表しています。中心の円の左側にある4項目は、これまで培ってきた当社グループの強み(d)を示しています。こうした強みを投入し、中央上部にある全社方針(e)のもと、それぞれの事業の長期目標・長期戦略(f)、或いは中期経営戦略(g)を支えにして、右側にある「アウトプット」につなげてまいります。「アウトプット」には、こうした事業活動を通して、当社グループが生み出し、社会に提供していく、製品・サービスを示しております。それが、当社グループの提供する価値につながり、更に、会社の目指す姿につながっていくという、当社グループの価値創造の姿全体を示しております。
なお、(a)~(g)の個別要素の詳細については、後掲(3)、(4)のとおりです。
(3) 価値創造プロセスの個別要素
解決すべき社会課題は非常に幅広く、様々な提案が為されております。そのなかで、当社グループの事業と関連が深く、解決に貢献し得る社会課題として、以下を選定いたしました。
・モビリティの高度化
・デジタルデバイスの高度化・多様化
・生産・業務プロセス自動化
・人・建造物の長寿命化
・災害に対する有効な対策
・都市廃棄物の効率的処理
・鉱物資源の効率的な活用と代替物質
・エネルギー資源の効率的な活用
・再生可能エネルギー・未活用エネルギー開発
・CO2排出量削減
2015年9月に国際連合が採択した、SDGs(Sustainable Development Goals)も、解決すべき社会課題と捉えることができます。当社グループの事業を通じて貢献し得る主な項目として、7、8、9、11、12、13を選定いたしました。
・1 (貧困)貧困をなくそう
・2 (飢餓)飢餓をゼロに
・3 (保健)すべての人に健康と福祉を
・4 (教育)質の高い教育をみんなに
・5 (ジェンダー)ジェンダー平等を実現しよう
・6 (水・衛生)安全な水とトイレを世界中に
・7 (エネルギー)エネルギーをみんなにそしてクリーンに
・8 (成長・雇用)働きがいも経済成長も
・9 (イノベーション)産業と技術革新の基盤をつくろう
・10 (不平等)人や国の不平等をなくそう
・11 (都市)住み続けられるまちづくり
・12 (生産・消費)作る責任、つかう責任
・13 (気候変動)気候変動に具体的な対策を
・14 (海洋資源)海の豊かさを守ろう
・15 (陸上資源)陸の豊かさも守ろう
・16 (平和)平和と公正をすべての人に
・17 (実施手段)パートナーシップで目標を達成しよう
当社グループでは、当社グループが解決すべき社会課題及び関連するSDGsを、ステークホルダー(株主、投資家、従業員、取引先、債権者、地域社会等)と当社グループの双方にとって重要度の高い4つの課題としてまとめ、これに、当社グループの経営基盤・基軸強化にとっての課題を併せて、重要課題としております。
<社会的課題>・素材・製品の安定供給
・循環型社会の実現
・気候変動への対応
・環境保全と環境技術
<経営基盤・基軸強化>・労働安全衛生
・ガバナンス
・多様な人材の育成と活用
・バリューチェーンにおける責任
・ステークホルダーコミュニケーション
・デジタルトランスフォーメーション
・高度なリサイクル技術と事業基盤
金属、セメント、環境リサイクル事業を中心に蓄積した、多様で高度なリサイクル技術と、幅広い事業経験、独自の廃棄物収集ネットワーク・事業基盤により、リサイクル事業を推進することができます。
・原料から製品までの価値連鎖と安定供給能力
原料資源の安定調達から製品までの一貫した製造体制により、良質な製品を安定的に市場に供給することができます。
・独自の素材開発・製造技術力
無酸素銅及び銅合金(銅加工事業)、異種材料接合(電子材料事業)、超硬原料、コーティング(加工事業)に代表されるように、原子レベルでの分析力・シミュレーション技術に裏付けられた素材開発・製造技術力は、当社の競争力の源泉です。
・課題解決に向け結束できるチーム
多様な個性と価値観を尊重し、誠実さを重んずることで、課題解決に向けて、個人の力を結束して取り組むことができます。
・事業ポートフォリオの最適化
当社がオーナーシップを取るべき事業を、ビジョン・会社の目指す姿と整合性のある事業、自社としてガバナンスできる事業、世界または特定の地域でリーダーの地位を得られる事業、及び中長期的に資本コストを上回るリターンを継続できる事業として集中を図り、その上で、収益性と成長性の2つの軸で事業ポートフォリオを構築し、各事業の方向性を定め、ポートフォリオの最適化を目指してまいります。
・事業競争力の徹底追求
ものづくり戦略、品質管理戦略、デジタル化戦略により、事業競争力の徹底追求を図ってまいります。ものづくり戦略では、それぞれの製造拠点が、事業戦略に基づくビジョンを描き、生産プロセス高度化等により、ものづくり力別格化の実現を目指します。品質管理戦略では、製品・工程設計、設備保全計画の最適化により、規格外品を発生させない、「攻めの品質」を目指してまいります。デジタル化戦略では、顧客接点の強化やデータの共有等を進め、ビジネス付加価値、オペレーション競争力等を向上させてまいります。今後5年間で約300億円を投資し、100人規模のデジタル専門人材を投入する予定としております。
・新製品・新事業の創出
将来の収益基盤となる新しいビジネス創出のため、当社グループが捉えるべき重要な社会のニーズを「次世代自動車」、「IoT・AI」、「都市鉱山」及び「クリーンエネルギー・脱炭素化」とし、持続可能性の核となる新製品・新事業を創出・育成してまいります。
(4) 22中経について
<財務計画>・財務指標及び目標
22中経では、中長期的な収益性と成長性を重視し、事業毎に収益性は主にROIC、成長性はEBITDA成長率等で評価いたします。プロセス型事業ではROAを補完的に採用し、全社の財務指標には、ROIC・ROE・ROAを併用いたします。2022年度の全社の財務目標は、ROIC 6.0%、ROA 4.0%、ROE 7.0%、連結営業利益580億円、連結経常利益750億円、ネットD/Eレシオ1.0倍以下といたします。
・投資方針
22中経期間の投資総額は、成長戦略投資が1,900億円、維持更新投資が1,700億円の合計3,600億円を見込んでおり、営業キャッシュ・フロー、事業再編及び資産売却収入を源泉として投資を実行いたします。但し、これ以外にも成長のための優良な大型投資案件があれば、ネットD/Eレシオ1.0倍以下の範囲内で積極的に投資を実行することといたします。
・株主還元方針
当社は、株主に対する利益還元が経営の最重要目的の一つであるという認識のもと、利益配分については、期間収益、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、決定する方針としております。22中経期間中の利益配分については、当社連結業績の変動時においても安定的な配当を実施することを重視し、2020年度から2022年度の配当金額は1株当たり年間80円といたします。但し、連結配当性向が25%を下回る場合は一時的な増配または自己株式の取得を行う方針といたします。
なお、本項に記載している株主還元方針及びその前提となる財務計画は、本年3月25日に公表した時点のものであり、その後の新型コロナウイルス感染症の世界的流行による影響を織り込んでおりません。
同感染症の影響により、当社グループの事業と関連の深い国内外の自動車や半導体、建設等の需要減少が生じており、今後当社グループの事業への影響が拡大することが懸念されますが、現時点で合理的に見積もることが困難であることから、2021年3月期の業績見通しは未定としております。また、2021年3月期の配当についても、未定としております。
・政策保有株式について
当社は、事業戦略上必要である場合を除き、純投資目的以外の株式(政策保有株式)を取得・保有しない方針といたします。
●高機能製品
長期目標グローバル・ファースト・サプライヤー
長期戦略・コアコンピタンス(無酸素銅・合金の開発及び製造技術、機能材料開発、接合技術等)を磨き、組合せ、新製品・新事業を創出
・マーケット起点で、勝ちパターンを追求
22中経戦略の
具体的施策
・事業部間を横断したキーアカウント責任者の設置
・AI・IoTの活用による情報分析(デジタルマーケティング等)
・製品ロードマップの顧客との共有(共創力)
・中央研究所との連携による製品開発
・ものづくり力の強化(量産技術、生産効率の向上等)
・M&A、アライアンスの検討

●加工事業
長期目標戦略市場でのトップ3サプライヤー
長期戦略・クリーンなものづくりの推進
・先端技術を活用した高効率製品の提供
・高機能粉末事業の展開
22中経戦略の
具体的施策
・超硬リサイクルの拡大と再生可能エネルギーの活用
・高効率工具とデジタルソリューションの提供
・スマートファクトリー化と物流・供給の効率化
・電池市場向け高機能粉末事業の拡大

●金属事業
長期目標環境親和型製錬ビジネスのリーダー
長期戦略銅を中心とした非鉄金属の安定供給と循環
・クリーンな銅精鉱とE-Scrapからなる持続可能な原料ポートフォリオの形成
・リサイクルの推進
・気候変動への対応
22中経戦略の
具体的施策
・新規鉱山投資によるクリーンな銅精鉱の確保
・銅精鉱中不純物除去技術の開発
・有価金属マテリアルフロー最適化
・化石燃料の削減

●セメント事業
長期目標高度な環境技術を持つ、国内外のセメント業界のリーダー
長期戦略・社会インフラ・防災インフラ等整備のための建設基礎素材の安定供給
・廃棄物処理の高度化
・CO2削減による気候変動への対応
・事業再編による強靭な国内事業基盤の構築と海外市場における成長
22中経戦略の
具体的施策
・国内事業再編による、生産体制の最適化・効率化
・廃プラ処理設備能力増強と塩素ダスト洗浄設備設置
・低温焼成技術の導入とCO2削減、回収、資源化に向けた技術開発
・米国事業の拡大と海外新規拠点の開拓

●環境・エネルギー事業
長期目標(環境リサイクル)資源循環システムの牽引者
(再生可能エネルギー)地熱開発のリーディングカンパニー
長期戦略・トレーサビリティの徹底等による安心できるリサイクルシステムの提供
・再生可能エネルギー事業の拡大による脱炭素化
22中経戦略の
具体的施策
・家電リサイクル事業の拡大、自動化推進、回収物高付加価値化
・リチウムイオン電池リサイクル技術の実証、太陽光パネルリサイクル技術の実証
・焼却飛灰リサイクル事業とバイオガス化事業の安定操業
・小又川新水力発電所の完成、安比地熱発電所建設、新規地熱地域の調査

●コーポレート戦略
22中経における、各事業戦略をサポートするための主なコーポレート戦略は以下のとおりです。
研究開発・
マーケティング戦略
メガトレンド等の外部環境変化を注視しつつ、22中経では、IoT・AI、次世代自動車、都市鉱山、クリーンエネルギー・脱炭素化の分野を中心に、当社グループの有する機能複合化技術、材料複合化技術、基盤・量産化技術、リサイクル技術等をベースに、顧客ニーズに即した高付加価値な製品・サービスを創出
ものづくり戦略事業戦略に基づく工場ビジョン策定と実現、生産プロセス高度化及び外部の知見の積極的な活用により、ものづくり力別格化を実現
品質管理戦略製品・工程設計、設備保全計画の最適化により、規格外品を発生させない、「攻めの品質」を実施
デジタル化戦略デジタルトランスフォーメーションにより、ビジネス付加価値向上とオペレーション競争力向上、経営スピード向上の3本柱を推進。今後5年間で約300億円を投資し、100人規模のデジタル専門人材を投入

●ガバナンス
22中経における、当社グループのガバナンスに対する主要施策は以下のとおりです。
コーポレート・
ガバナンスの強化
2019年6月に指名委員会等設置会社へ移行したことに加え、以下の施策の取り組み
・取締役会の継続的改善
・コーポレート・ガバナンス基本方針制定(2020年4月1日付)
・CEOの選解任・後継者育成計画の立案・実行
・役員報酬制度の見直し
・子会社ガバナンスの充実
グループ
ガバナンスの強化
親・子会社間、本社・拠点間及び各拠点・各グループ会社内で円滑かつ自律的にコミュニケーションが行われるガバナンスの姿を目指し、以下の施策の取り組み
・グループ会社取締役会の実効性評価と改善
・グループ会社役員研修
・ガバナンス監査の充実
・権限委譲と監督機能強化によるスピーディな意思決定
・研究開発、ものづくり、人材交流におけるビジネス形態の相違を意識した運営
・DX推進本部による戦略実行の加速
人事・人材戦略変化に適応する人材の確保・育成と、健全な組織風土の形成
・(人)人材の確保と育成
・(組織風土)やる気向上、グループ会社の経営力強化
・(社会的価値向上)多様な人材活用、健康経営の取り組み
組織変更(事業部門)
・環境・エネルギー事業のカンパニー化
・アルミ事業室の高機能製品カンパニーからの分離
(コーポレート部門)
・マーケティング室新設
・コーポレートコミュニケーション部新設
(全社横断組織)
・DX推進本部新設
・サステナブル経営推進本部新設

(5) 目標とする経営指標
当社グループは、中長期的な収益性と成長性を重視し、全社の財務指標にはROIC・ROE・ROAを併用いたします。事業毎には、収益性は主にROIC、成長性はEBITDA成長率等を使用するほか、金属事業、セメント事業等のプロセス型事業ではROAを補完的に使用いたします。
2.品質管理を含むグループガバナンス体制強化のための施策について
当社及び当社グループは、過去に製造販売した製品の一部について、検査記録データの書き換えや検査の一部不実施等の不適切な行為により顧客の規格値または社内仕様値を逸脱した製品等を出荷した事案が明らかとなったことから、再発防止等のため、2017年12月以降、品質管理を含むグループガバナンス体制強化のための諸施策(以下「本強化策」といいます。)に取り組んでまいりました。また、本強化策の進捗等について、会社の業務執行より独立した立場から監督することを目的として、2018年5月10日付で「ガバナンス強化策モニタリング委員会」(以下「モニタリング委員会」といいます。)を設置いたしました。
当社及び当社グループとしては、本強化策を計画通り実施してきたことにより、各拠点において自律的に品質管理やガバナンス強化に関する取り組みを継続できる見通しが立っていることから、2020年5月13日付でモニタリング委員会を解散いたしました。
モニタリング委員会の解散後は、2020年4月1日付で設置した「サステナブル経営推進本部」において、品質管理を含むグループガバナンスに関する取り組みを統括・推進するとともに、2018年4月から定期的に開催している「ガバナンス審議会」において、ガバナンス強化に関する取り組み計画の審議・進捗確認を引き続き実施してまいります。当社及び当社グループの各拠点においては、サステナブル経営推進本部等が策定する方針及びガバナンス審議会で承認されたガバナンス計画に従い、自律的にガバナンス強化に関する取り組みを進めるとともに、コーポレート部門においては、各拠点の取り組み支援を行ってまいります。更に、こうしたガバナンス強化に関する取り組みの状況を取締役会等に報告し、定期的にモニタリングしてまいります。
今後も、このような事態を再び繰り返すことがないよう、引き続き当社及び当社グループの品質管理を含むグループガバナンスの更なる向上に努めてまいります。
3.独占禁止法遵守体制強化のための施策について
当社の連結子会社であるユニバーサル製缶株式会社は、2019年9月、公正取引委員会より、2016年3月31日以前に行われた飲料用アルミ缶の一部の取引に関し、独占禁止法に違反する行為があったとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を受けました。本件につきましては、株主の皆様にご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
当社及び当社グループにおいては、この事実を厳粛に受け止め、今後このような事態を再び繰り返すことがないよう、独占禁止法遵守体制を強化することとし、規定制定によるルールの明確化、教育・啓蒙の継続・拡充、監査体制の強化等の施策を策定、順次実行しております。
4.事業別課題
今後の世界経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の沈静化まで経済活動に大幅な制約が生じることから、世界の経済成長率がマイナス成長に転じることが予想されるなど、景気の低迷が深刻化する恐れがあります。
今後のわが国経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、個人消費の低迷や投資・輸出の減少が懸念されます。
このような状況のもと、今後、当社グループの事業と関連の深い国内外の自動車や半導体、建設等の需要減少により、当社グループの事業への影響が懸念されます。
●高機能製品
高機能製品の主要市場である自動車・半導体関連の需要は、次世代自動車や大容量通信の普及により、中長期的に増加することが期待されます。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、自動車や半導体関連製品の需要の減少が懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。
このような状況のもと、銅加工品については、2020年4月1日付で三菱伸銅株式会社を吸収合併いたしました。同社との合併効果を最大限発揮するとともに、マーケティングや研究開発、販売体制の強化、生産能力の拡大を進め、開発・製造・販売が一体となって高付加価値製品を提供し、収益力を強化してまいります。
電子材料は、次世代自動車、半導体、エレクトロニクスを中心とする成長性の高い産業に、材料技術により付加価値を高めた製品を提供することで、持続的に成長する高収益事業体となることを目指してまいります。また、多結晶シリコンについては、厳しい事業環境が続くことが見込まれますが、安全・安定操業と品質向上に加え、徹底したコスト削減により収益力を強化してまいります。
●加工事業
超硬製品の市場環境は、中長期的に航空機向けや医療向けの分野での需要の増加を見込んでおります。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、日本及び海外の主要国経済の減速による需要減少に加え、原料調達リスクや顧客の生産活動の低迷等が懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。
このような状況のもと、引き続き主要顧客である自動車産業への営業活動強化に取り組むとともに、中長期的に成長が見込まれる航空宇宙産業・医療産業に優先的に経営資源を投入し、開発・製造・販売面の機能強化を図ってまいります。切削工具に関しては、DIAEDGE(三菱マテリアル株式会社)及びMOLDINO(株式会社MOLDINO※)の2つのブランドのもと、顧客の真のパートナーとして信頼を得られるよう、世界主要地域に設けた技術拠点(テクニカルセンター)を活用しながら、顧客視点に立ったソリューション提供に取り組んでまいります。また、主原料であるタングステン及びコバルトの調達については、タングステンリサイクル量の増加や、原料調達ソースの多様化を進めることにより、調達リスク及び調達コストの低減を図るとともに、鉱物資源の効率的活用による循環型社会の構築に貢献してまいります。
焼結製品等に関しては、引き続き、自動検査機の導入による省力化や歩留改善施策を進めることにより、品質及び生産性の向上を図り、収益の改善に努めてまいります。なお、焼結部品を製造・販売する株式会社ダイヤメットは、継続的な営業損失及び固定資産の減損損失の計上により債務超過になっていることから、当社は、同社に対して融資枠を設定の上、融資を行っております。
※当社は、2020年4月1日付で、三菱日立ツール株式会社を株式追加取得により完全子会社とし、同社は、会社名を株式会社MOLDINOに変更いたしました。
●金属事業
主要製品である銅地金については、中長期的に板条分野を中心とした需要の増加が見込まれます。また、主要原料である銅精鉱の調達は、中国における製錬能力の拡大ペースの鈍化と、複数の新規大型鉱山の操業開始・拡張の影響により、需給バランスが緩和することが期待されます。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、海外銅鉱山の操業率低下に伴う原料調達リスクや、銅価格の下落、銅需要の減少等が懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。
このような状況のもと、資源事業部門では、ロスペランブレス銅鉱山、エスコンディーダ銅鉱山及びカッパーマウンテン銅鉱山の設備の改善・補強、並びに新規案件の開拓に取り組み、不純物の少ないクリーンな銅精鉱を製錬所へ安定的に供給することで、製錬所操業の基礎を支えます。2020年度は、従来のプロジェクトに加え、2019年度に権益取得契約を締結したMantoverde銅鉱山の拡張プロジェクトに参画するほか、2020年4月1日付で設立した鉱業技術研究所において、銅精鉱中の不純物の除去技術の開発等に向けた研究にも注力してまいります。
製錬事業部門では、世界トップクラスの金銀滓処理能力を活かして収益力を強化するとともに、金銀滓処理量の増加に伴って工程内に増加する微量成分をも効率よく回収し再資源化するため、マテリアルフローの最適化に取り組んでまいります。更に、気候変動への対応を改めてテーマとして掲げ、環境への負荷が低い当社独自の三菱プロセスの環境的優位性を最大限に活かしつつ、化石燃料の削減や、エネルギーの変換効率・使用効率の向上、再生可能エネルギーの活用等製錬プロセス改革に取り組むことにより、脱炭素社会の構築に貢献してまいります。
●セメント事業
国内では、2020年度は、昨年度相次いだ自然災害による工事の遅延等が解消されるほか、都市再開発工事等の大型プロジェクトによる需要の増加が見込まれる一方で、建設業界の人手や輸送能力の不足による工期の遅れが懸念されており、中長期的には需要の減少が見込まれます。海外では、2020年度のセメント・生コン需要は緩やかに増加するものと見込んでおります。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、工事の遅延によるセメント出荷量の減少等が懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。
このような状況のもと、今後も継続が予想される国内セメント需要の減少に対応するため、生産体制の最適化、スケールメリットによる安定した収益基盤の確立を目的として、2022年4月を目途に宇部興産株式会社との事業統合を実施することについて、具体的な協議・検討を開始する基本合意書を締結いたしました。本統合により、国内セメント事業で創出されるキャッシュ・フローを国内外で成長が期待できる事業に集中的に投下することで、持続的な成長を図ってまいります。また、大型プロジェクトによる需要を確実に取り込み、販売数量の確保に努めるとともに、製造面において、故障率を低減し、安定供給に努めてまいります。また、廃棄物処理設備の増強や高効率設備の導入、エネルギー代替廃棄物の使用拡大を進め、循環型社会の構築に貢献してまいります。
海外では、米国の中長期的な需要を着実に取り込むため、成長市場への拠点展開を図るとともに、垂直価値連鎖体制の拡張・強化を実施することにより、事業基盤の更なる強化に努めてまいります。
●環境・エネルギー事業
環境・エネルギー関連の事業環境は、中長期的な社会課題として、都市型廃棄物の効率的処理やエネルギー資源の効率的な活用、CO2排出削減の要請といった環境問題への対応を強化することが強く求められております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、再生可能エネルギー関連工事の遅延等が懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。
このような状況のもと、エネルギー関連は、再生可能エネルギー事業を拡大し、脱炭素社会の構築に貢献してまいります。前年度から引き続き進行中の小又川新水力発電所を完工させるほか、安比地熱発電所の建設をスケジュール通りに進めるとともに、引き続き新規地熱地域の調査を進め、新規事業の開拓を目指します。
環境リサイクル関連は、自動化の推進、回収物の高付加価値化を通じて家電リサイクル事業及び自動車リサイクル事業の拡大を図るとともに、リチウムイオン電池のリサイクル技術及び太陽光パネルリサイクル技術の実証をより一層積極的に進めてまいります。更に、焼却飛灰リサイクル事業及び食品廃棄物のバイオガス化事業の安定操業に注力し、最終処分場に依拠することのないリサイクル事業の展開に努めてまいります。
●アルミ事業
飲料用アルミ缶は、通常缶の国内需要に関しては、今後急激な需要の増加は見込めないほか、ボトル缶についても、ペットボトルコーヒーの発売により伸び悩みを見せております。圧延・加工品は、次世代自動車の普及により、中長期的な需要の増加が期待されます。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、主要顧客の生産活動の低迷等が懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。
このような状況のもと、飲料用アルミ缶は、大型ボトル缶をはじめとした製品の高付加価値化を推進するとともに、環境保護の観点から、ペットボトルの代替品としてのボトル缶の拡販、製品の薄肉軽量化、使用済みアルミ缶のリサイクルに、より一層注力してまいります。
圧延・加工品は、継続的に需要が見込まれる缶材の増販や、リチウムイオン電池箔の増販及び生産設備への投資の推進を実施するほか、自動車向け熱交板材・押出加工品事業の強化を進めてまいります。また、コスト競争力を強化することにより競争力のある企業体質を構築するとともに、安定した収益確保と持続的な成長を実現するため、生産安定化及び事業・製品の選択と集中を推進してまいります。
以上の当社グループの総力を結集した諸施策の実施により、価値創造を推進してまいる所存であります。