有価証券報告書-第164期(2023/04/01-2024/03/31)
②戦略
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」に関する「リスクと機会」には、気温上昇や自然資本の棄損、資源の枯渇を避けるための規制の強化や市場の変化といった「移行」に起因するものと、気温上昇や自然資本の棄損、資源の枯渇の結果として生じる急性・慢性的な異常気象や海面上昇といった「物理的変化」に起因するものが考えられます。
この環境・社会の変化に柔軟に対応した経営戦略を立案するため、2030年を想定して「リスクと機会」を抽出し、当社グループの事業への影響を評価しました。そこから取り組み方針及び対応策を立案し、[TAISEI VISION 2030]達成計画及び中期経営計画等に反映しております。
●リスクと機会
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」に関するリスクと機会及び対応策は以下のとおりです。
●環境・エネルギー関連投資
中期経営計画(2021-2023)においては、3ヵ年の環境関連投資額を600億円、そのうち420億円を、経済と環境の好循環により成長が期待される産業分野に貢献する技術開発及び競争優位性のある技術開発に投資することとしておりましたが、環境関連技術開発投資を拡充したため、期間中に約520億円の投資を実行しました。
中期経営計画(2024-2026)においては、3ヵ年の環境・エネルギー関連投資額を750億円、そのうち600億円を、社会・環境課題に対応する技術開発に投資することとしております。
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」に関する「リスクと機会」には、気温上昇や自然資本の棄損、資源の枯渇を避けるための規制の強化や市場の変化といった「移行」に起因するものと、気温上昇や自然資本の棄損、資源の枯渇の結果として生じる急性・慢性的な異常気象や海面上昇といった「物理的変化」に起因するものが考えられます。
この環境・社会の変化に柔軟に対応した経営戦略を立案するため、2030年を想定して「リスクと機会」を抽出し、当社グループの事業への影響を評価しました。そこから取り組み方針及び対応策を立案し、[TAISEI VISION 2030]達成計画及び中期経営計画等に反映しております。
●リスクと機会
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」に関するリスクと機会及び対応策は以下のとおりです。
脱炭素社会 | 循環型社会 | 自然共生社会 | 2030年の想定 | リスク・機会 | 影響度 | 対応策 |
● | ・CO2排出規制強化、炭素賦課金・炭素税等の導入による事業者の負担増加 | (リスク) ・CO2排出規制強化、炭素価格導入による建設投資減少 ・事業活動で発生するCO2に対する炭素価格適用による事業コスト増加 ・建材や電力料金の上昇に起因する建設コスト増による収益悪化 | 中 | ・自社グループが使用する電力を賄う再生可能エネルギー電源の保有 ・TSA*重点実施項目・政策的実施項目の確実な実施 ・CO2算定システムの性能向上 *TAISEI Sustainable Action® グループ全社員が参加する環境負荷低減活動 | ||
● | ・社会からのカーボンニュートラルへの要請拡大、規制強化 ・省エネ・再エネ関連需要の増加 ・ZEB基準義務化とそれに伴う太陽光発電の一般化 | (リスク) ・対応の遅れによる信用失墜、受注機会の喪失、コスト増による収益悪化 (機会) ・低炭素設計や低炭素建材の需要増加 ・ゼロカーボンビル、ZEB、リニューアルによるZEB化、スマートシティの需要増加 ・洋上風力等、再生可能エネルギー関連工事の需要増加、CCSの事業化 | 大 | ・ゼロカーボンビル、ZEBの技術開発と普及促進 ・T-eConcrete®など低炭素建材の開発促進、関連企業との連携強化、採用促進と供給体制の確立 ・再エネ、創エネ、省エネ関連技術の開発と普及促進 ・洋上風力等再エネ関連施設施工技術の開発促進 ・CCSの技術開発促進、事業への参画 | ||
● | ・水素・アンモニア等、次世代エネルギーの活用拡大 ・原子力発電再稼働の進展、次世代革新炉のニーズ拡大 | (リスク) ・対応の遅れによる、受注・事業参画機会の喪失 (機会) ・水素・アンモニア関連施設工事や、輸配送・貯蔵等の関連ビジネスの増加 ・原発再稼働関連事業の増加や次世代革新炉の計画進展 | 大 | ・次世代エネルギー関連の実証事業への参画、関連技術の開発促進 ・原発再稼働関連事業等への参画、次世代革新炉に関する技術開発促進と関連企業との関係強化 |
● | ・地球温暖化を含む気候変動の進行による自然災害の甚大化・頻発化、海面上昇の進行 | (リスク) ・建設作業所等の被災による作業停止、工程遅延、人件費・仮設費の増加 ・取引先の被災による調達コストの増加や工程遅延 ・夏季の平均気温上昇による生産性の低下、労働環境悪化に伴う担い手減少の加速 (機会) ・災害後の復旧・復興対応、高リスク地域からの移転需要の増加 ・都市浸水対策、治山治水など国土強靭化事業の増加 | 大 | ・熱中症対策の徹底等、作業所の更なる環境改善 ・省人化・省力化施工技術の開発と普及促進 ・グリーンインフラ関連技術、防災・減災技術の開発と積極的な提案による普及拡大 | ||
● | ● | ● | ・社会からのサーキュラーエコノミーへの要請拡大、環境規制の強化 ・省資源化、廃棄時の分別徹底、再生資源使用拡大等の義務化 ・プラスチック資源循環に関する法規制強化 | (リスク) ・対応の遅れによる信用失墜、受注機会の喪失、コスト増による収益悪化 (機会) ・プラスチックをはじめとした資源の再生施設の新造・更新需要の増加 ・処分場再生や建設発生土有効利用需要の増加 ・再資源化可能な建材を使用した建物、水資源を有効活用した建物の需要の増加 ・バイオマスエネルギープラントの需要増加 ・PFAS等の今後規制が見込まれる物質に対する土壌・地下水浄化技術の需要の増加 | 中 | ・動脈産業、静脈産業との連携強化による資源再生・資源循環の促進 ・T-eConcrete®、T-ニアゼロスチール等、資源循環に配慮した材料や工法の開発と普及促進 ・ゼロウォータービル、木造・木質建築等、資源循環に配慮した設計・提案の推進 ・プラスチックをはじめとした建設廃棄物の削減とグリーン調達の推進 ・バイオマス利用エネルギー関連技術の開発促進 ・今後規制が見込まれる物質対応・自然環境に対して低負荷な土壌・地下水の原位置浄化技術の高度化 |
脱炭素社会 | 循環型社会 | 自然共生社会 | 2030年の想定 | リスク・機会 | 影響度 | 対応策 |
● | ● | ● | ・木造建物の基準が整備され高層木造建築が普及 ・木材輸出国での森林資源の減少、国産木材市場の拡大 ・資源循環・自然共生が不動産価値の構成要素化 | (リスク) ・対応の遅れによる受注機会の喪失 ・木造・木質関連技術開発の遅れ、人財不足による受注機会喪失 ・認証木材の需要増加による調達ルート確保困難化、コスト増 (機会) ・木造・木質建築の需要の増加 ・不動産価値向上に資する資源循環・自然共生に配慮した設計・開発の需要増加 | 中 | ・木造・木質関連技術の高度化、差別化、技術者確保の推進 ・サーキュラーエコノミー・ネイチャーポジティブに配慮した木材調達ルートの確保による適切な木材調達の推進 ・BIM/CIMと連携したサーキュラープラットフォームの構築による、建設物のライフサイクルでの資源循環及び見える化の推進 ・資源循環・自然共生に十分配慮した開発計画の推進 |
● | ・社会からのネイチャーポジティブへの要請拡大 ・自然資本保全のための規制強化 | (リスク) ・対応の遅れによる信用失墜、受注機会の喪失、コスト増による収益悪化 ・立地選定の困難化、規制強化等による建設投資減少 (機会) ・自然共生に配慮した建物需要や、グリーンインフラ技術を用いた事業の増加 ・ネイチャーポジティブに貢献する技術の活用機会の増加 | 中 | ・ネイチャーポジティブ評価手法の開発とプロジェクトへの適用 ・グリーンインフラ関連技術の開発と提案推進 ・大規模再開発に伴う都市における自然の創出や生態系保護の提案の推進 | ||
● | ● | ・資源の枯渇等による原材料の調達困難化 ・水不足による施工への悪影響 | (リスク) ・資源不足等による事業コスト増加、事業規模縮小 ・水資源の不足による工事中断や遅延 (機会) ・節水型の建物、施設や水資源関連施設の需要増加 ・資源循環利用に配慮した設計・資材・工法の需要拡大 | 中 | ・建設ライフサイクルにおける資源循環システムの構築 ・ゼロウォータービルの技術開発と普及促進 ・強固なサプライヤー網の構築 ・工事施工における水リスク管理の徹底 |
● | ● | ・ネイチャーポジティブの未達成による生態系、水質、土壌、大気の劣化 | (リスク) ・木材資源などの自然資本の減少による建設資材調達の困難化 (機会) ・自然を回復させる事業の増加、受注機会の拡大 ・ネイチャーポジティブに貢献する技術の需要拡大 | 中 | ・持続可能な木材利用を進める・森林資源を再生する・良質な森林を保全する取り組みの促進(つかう・つくる・まもる) ・グリーンインフラ関連技術、ネイチャーポジティブに貢献する技術開発と積極的な提案による普及拡大 ・ネイチャーポジティブ評価手法の開発とプロジェクトへの適用 ・サステナブル調達ガイドラインに基づくサプライヤーエンゲージメントの推進、グリーン調達の推進 |
●環境・エネルギー関連投資
中期経営計画(2021-2023)においては、3ヵ年の環境関連投資額を600億円、そのうち420億円を、経済と環境の好循環により成長が期待される産業分野に貢献する技術開発及び競争優位性のある技術開発に投資することとしておりましたが、環境関連技術開発投資を拡充したため、期間中に約520億円の投資を実行しました。
中期経営計画(2024-2026)においては、3ヵ年の環境・エネルギー関連投資額を750億円、そのうち600億円を、社会・環境課題に対応する技術開発に投資することとしております。