有価証券報告書-第13期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 10:02
【資料】
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【項目】
124項目

研究開発活動

セグメントごとの研究開発は次のとおりである。なお、「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」の研究開発費は、建設事業共通でかかる費用のため、「建設事業」として記載している。
[建設事業]
研究開発活動については、受注確保と施工品質向上のため、現場の目線に立ち、技術部門が連携協働し、当社ビジョンと中期経営計画を踏まえ、重点事業分野と基盤技術分野を中心に技術優位性とコスト優位性のある開発技術の早期実用化を目指した。当連結会計年度においては、以下を重点技術分野として、研究開発を進めた。
① 重点事業分野
渋谷再開発事業 ・掘削土揚重技術 ・近接施工管理等の総合管理システム
・資機材搬入揚重管理支援システム
② 基盤技術分野
Ⅰ.施工技術 ・省力化技術 ・工期短縮技術 ・解体技術 ・ICTロボット技術 ・総合評価対応技術
・環境対策技術
Ⅱ.鉄道建設 ・人工地盤技術 ・周辺環境対策技術 ・空間利用技術 ・維持管理技術
・LCC(Life Cycle Cost)算定技術
Ⅲ.安全安心強靭化 ・延命化技術 ・災害対策技術(地震、洪水等)
Ⅳ.快適空間 ・室内環境技術 ・高齢者対応技術
Ⅴ.環境共生 ・省エネ技術 ・ZEB(Zero Energy Building) ・ZEH(Zero Energy House)
・汚染対策技術
Ⅵ.街づくり ・多摩田園都市再開発のための都市計画技術 ・ストック活用技術
・木造建築多様化技術
更に、大学、公共研究機関及び関連企業との共同研究をはじめとする社外連携を進め、競争的資金の活用等により研究開発の効率を高めている。
当連結会計年度における研究開発費は、699百万円である。
主な研究開発成果は次のとおりである。
(1) CBパネル工法の開発
CBパネル工法(Combination Panel)は、当社と㈱ホクコン、公益財団法人鉄道総合技術研究所が共同で開発した高架橋等の柱部材の耐震補強工法である。本工法は、プレキャストパネルを埋設型枠として既設柱の周囲に配置し、既設柱との隙間に高強度繊維補強モルタルを充填して一体化させる工法である。従来のRC巻立て工法と比べ補強鉄筋の組立と型枠支保工の設置作業を省略することで工期短縮を実現した。更に、従来の鋼板巻立て工法では困難であった狭隘部の施工、人力のみでの施工を可能にし、溶接等の専門技能も不要とした。プレキャストパネルは、酸素や塩分等の劣化因子の浸透を抑制するため、補強後の耐久性にも優れている。本工法は、既に実工事で採用され、平成27年度中には柱64本の施工実績がある。
(2) エアフレームを利用した覆工コンクリート打設養生システムの開発
当社はカンボウプラス㈱と共同で、鋼材・重機が不要、人力のみで1日で設置できる風船タイプのフレームを用いた山岳トンネルの覆工養生システムを開発し、鹿児島県知覧トンネルにシステムを適用、コンクリートの長期的な耐久性向上に有効であることを確認した。施工性・安全性が飛躍的に向上し、また、本システムと覆工コンクリートの間にミストを1日2回送り込むことで打設直後の覆工コンクリートを湿潤状態に保つことができる。その結果、コンクリート表層の緻密性が向上し、耐久性の高い覆工コンクリートになることを確認した。現在施工中のトンネル工事件数が増大する中で、本システムの本格的な適用拡大を図る。
(3) 資機材搬入・揚重管理支援システム(現場情報共有システム)の開発
当社と福井コンピュータ㈱は、資機材搬入・揚重管理支援システム「DandALL(ダンドール)」を共同開発した。本システムは、現場に資機材を搬入する車両やクレーンによる揚重作業のスケジュールを一元管理するシステムで、工事関係者が持つスマートフォンやタブレット端末でリアルタイムに資機材搬入情報を共有できる。これにより、工事現場の物流のジャスト・イン・タイム化を実現し、搬入待ち・揚重待ちといった「手待ちのムダ」が削減できる。
(4) 建築分野ICT活用による調査・点検システムの開発
建物全体の劣化状態をウォークスルーによる外観目視のみで調査し、定性的な劣化判定を行う一次劣化診断の作業性向上を目的に、現地調査結果を簡易に効率よく報告書にまとめるソフト「建築劣化診断報告書作成システム」のプロトタイプを開発した。開発したソフトにより、デジタルカメラで撮影した現地調査情報をもとに、事務所のパソコンで建物診断報告書の作成作業を効率化できる。
(5) IoTによる建設機械の二酸化炭素排出量モニタリングシステム実証試験に着手
建設現場のスマート化に向けて、IoT(Internet of Things)による「建設機械の二酸化炭素排出量モニタリングシステム」の実証試験に着手した。本システムは、建設機械に小型な「マシン・コミュニケーション機器」を取り付け、データを集積・分析することで建設機械の稼働状況や二酸化炭素排出量をタブレット端末、パソコン、スマートフォンで可視化し、重機等の実効燃費の改善による二酸化炭素排出量削減や、環境負荷低減の評価ツールとして活用できる。
(6) 地震観測を活用した地震災害時の建物継続使用可否判断システムの検証を前進
当社と富士電機㈱が共同開発中の地震観測を活用した地震災害時の建物継続使用可否判断システムを当社の本社部門が入居する建物で継続観測を実施している。更に超高層建築物対応システムを当社の大阪支店が入居する超高層建物へ設置し平成28年1月より観測を開始した。BCP活動の拠点としての建物継続使用可否判断システムの有効性を検証中で実用化に向けた取り組みを進める。
(7) 「TQ-MIX構法」の技術審査証明取得
「TQ-MIX構法」は柱をRC造、梁をS造で架構を構築する混合構法であり、合理的な構造を実現する生産技術、省力化工法である。本構法は、実施工と普及を目指し、技術審査証明を平成27年12月に取得した。
(8) 耐震・遮音天井システムの研究・開発
当社と八潮建材工業㈱は、平成25年8月の建築基準法施行令の一部改正を機に、天井の耐震性に求められる基準として「中地震時に損傷しないこと」が制定されたことに合わせ、既に実用化している鋼製下地在来工法天井の耐震化技術に改良を加えた新システムを開発した。新旧システムとも在来工法天井システムにブレースを組み込んで耐震化を図るものであり、法改正に基づく標準的な試験・評価の方法に即した天井ユニット試験によって新システムの性能を検証した。新システムでは、下端接合部金物を中心とした両側近傍2点のクリップを補強金物で補強することで力の分散が図られている。
(9) 「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」の研究・開発
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術の研究・開発を、国立研究開発法人新エネルギー・産業開発機構(NEDO)より委託され、当社を研究代表者として東京大学、湘南工科大学と共同で「トンネル全断面点検・診断システムの開発」を実施している。また、東北大学を研究代表者とする「橋梁の打音検査ならびに近接目視を代替する飛行ロボットシステム」の研究にも参画している。いずれのプロジェクトも、老朽化が進むインフラの点検技術として各界から注目されている。
なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われていない。
[不動産事業等]
研究開発活動は、特段行われていない。