四半期報告書-第178期第3四半期(平成28年7月1日-平成28年9月30日)

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2016/11/10 15:19
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

(1) 業績の状況
当第3四半期連結累計期間(平成28年1月1日~平成28年9月30日)における世界経済は、米国のように緩やかな回復が見られる地域があった一方で、中国をはじめとするアジア新興国や資源国の景気下振れによる弱さが見られ、また、国際金融資本市場の変動、英国のEU離脱問題、中東を巡る地政学的なリスクが懸念される中で、不確実性をもって推移しました。
わが国経済は、年初以降の円高の進行と新興国経済の減速から輸出が伸び悩み、また、円高や実質賃金の伸びの弱さを背景に個人消費が横ばいであったものの、雇用情勢が改善し、やや緩やかな回復基調で推移しました。
キリングループは、2016年(平成28年)度より、新たな長期経営構想、新「キリン・グループ・ビジョン2021」(略称:新KV2021)実現に向けた前半の3か年計画である「キリングループ2016年-2018年中期経営計画」(略称:2016年中計)をスタートさせました。2016年中計では、収益力の向上を最優先課題とし、優先度を明確にした投資による既存事業の競争力強化と低収益事業の収益構造の抜本的改革に向け、取り組みを開始しました。成長に向けた投資は、キリンビール㈱の成長を最優先とし、グループ本社であるキリンホールディングス㈱と日本綜合飲料事業統括会社であるキリン㈱が一体となって取り組みを進めました。
当第3四半期の連結売上高は、日本綜合飲料事業におけるキリンビール㈱でのビール類の販売数量減少、キリンビバレッジ㈱での第2四半期から販売促進費の一部を売上高控除とした影響に加え、海外綜合飲料事業における為替の影響により、減収となりました。連結営業利益は、キリンビバレッジ㈱での大幅増益や、各社における収益性改善の取り組み進展により、増益となりました。連結経常利益は、営業利益の増加に伴い増加し、親会社株主に帰属する四半期純利益は、ライオン社の豪州における輸入ビールのライセンス販売終了に伴う特別利益計上により増加しました。
連結売上高1兆5,429億円(前年同期比5.4%減 )
連結営業利益1,106億円(前年同期比8.2%増 )
連結経常利益1,080億円(前年同期比6.0%増 )
連結第3四半期純利益 ※1751億円(前年同期比36.6%増 )
(参考)
平準化EPS ※293円(前年同期比5.7%増 )

※1 「親会社株主に帰属する四半期純利益」を指しております。
※2 平準化:特別損益等の非経常項目を除外し、より実質的な収益力を反映させるための調整
平準化EPS = 平準化四半期純利益 / 期中平均株式数
平準化四半期純利益 = 四半期純利益 + のれん等償却額 ± 税金等調整後特別損益
なお、平準化EPSは円未満四捨五入により算出しております。
セグメント別の業績は次のとおりです。
⦅日本綜合飲料事業⦆
日本綜合飲料事業では、キリンの強みである、ていねいなものづくりや品質へのこだわりが生み出す商品やサービスを通じて、お客様に驚きや感動を提供することを“Quality with Surprise”というメッセージに込めて、ブランド育成や企業活動を行いました。
キリンビール㈱は、誰よりも「お客様のことを一番考える会社」を目指して、キリンの強みを活かした価値創造を図りました。ビールについては、「キリン一番搾り生ビール」とクラフトビール※1の育成によるビール市場の活性化に、引き続き注力しました。特に、全国の47都道府県ごとに味の違いや個性を楽しめる「47都道府県の一番搾り」の年間販売目標数を当初予定の7割増に上方修正する等、「一番搾り」の販売数量は前年同期と比べて増加しました。発泡酒では、糖質等を削減した商品「淡麗グリーンラベル」と「淡麗プラチナダブル」の販売が堅調に推移しました。新ジャンルでは、お客様の飲用シーンに合わせた季節限定商品「夜のどごし」の発売に加え、9月に主力商品「のどごし<生>」の広告全面刷新と通年販売商品「のどごし オールライト」のフルリニューアルを行い、「のどごし」ブランドのさらなる強化を図りました。これらにより、ビール類全体の販売は第2四半期と比べて回復基調となりましたが、第2四半期までの販売数量減少分を挽回できず、ビール類全体の販売数量は前年同期を下回りました。嗜好の多様化により拡大の続くRTD※2カテゴリーでは、新商品と季節限定商品を順次発売し、幅広いラインナップにより基盤強化を進めた主力商品「キリン 氷結®」シリーズの販売数量が、前年同期を上回りました。洋酒カテゴリーでは、国産ウイスキーと輸入ウイスキーの販売が、共に堅調でした。
メルシャン㈱では、ワイン市場全体の中長期的な拡大と日本ワインの啓発活動を推進し、魅力あるカテゴリー・ブランドポートフォリオの構築に取り組みました。フラッグシップブランド「シャトー・メルシャン」は商品価値の伝達を進め、「Japan Wine Competition(日本ワインコンクール)2016」にて出品ワイナリーのうち最多の金賞を受賞し、日本ワインとしての評価を高めました。また、国内製造ワイン市場で最大の金額構成比を占める無添加・有機カテゴリーにおいて、ブドウの品質にこだわった新商品「おいしい酸化防止剤無添加ワイン 厳選素材」を発売しました。輸入ワインでは、2016年1月から6月の間にワイン国別輸入量第1位※3となったチリワインについて、中高価格帯の「カッシェロ・デル・ディアブロ」の販売活動に引き続き注力し、前年同期を大きく上回る販売数量を達成しました。
キリンビバレッジ㈱では、利益ある成長を目指し、継続的なブランド価値向上と抜本的な収益構造改革に取り組みました。無糖茶カテゴリーでのブランド確立を目指して3月にフルリニューアルした「キリン 生茶」の販売は、引き続き大変好調に推移し、商品の増産体制を敷いて対応しました。発売から30周年を迎える基盤ブランド「キリン 午後の紅茶」は、量販店での販売好調やダイドードリンコ株式会社の自動販売機での商品相互販売により、主力商品のストレート、ミルク、レモン、おいしい無糖の販売が伸長しました。さらに、“カラダにやさしい”がコンセプトの「午後の紅茶 こだわり素材」シリーズの発売や、各地域における「午後の紅茶 おいしい無糖」の食連動広告の展開を通じ、新たな魅力やおいしさ、飲用シーンの提案を進めました。重要カテゴリーであるコーヒーについては、発売前に商品名と商品概要を告知せず、お客様に味覚だけを評価して頂く100万本のシークレットサンプリング活動を実施し、お客様への缶コーヒーへの関心を喚起しました。これらの取り組みを通じ、市場を大きく上回る水準で、清涼飲料全体の販売数量が増加しました。なお、利益ある成長の実現に向け、小型容器を中心とした目標管理方法の徹底を進め、缶・小型ペットボトル容器についても販売数量は前年同期と比べて増加しました。加えて、販売促進費の管理強化、製造効率改善によるコスト削減等の収益構造改革に、継続して取り組みました。
なお、日本綜合飲料事業につきましては、第1四半期連結会計期間より、減価償却費の償却方法を、定率法から定額法に変更しています。
これらの結果、日本綜合飲料事業の売上高について、キリンビバレッジ㈱で清涼飲料の販売数量が増加したものの、キリンビール㈱でビール類の販売数量が減少したことに加え、第2四半期連結会計期間よりキリンビバレッジ㈱において販売促進費の一部を売上高から控除した影響で、減収となりました。日本綜合飲料事業の営業利益は、キリンビール㈱で引き続き事業基盤強化に向けたコスト削減が進捗したことや、キリンビバレッジ㈱での大幅増益に加え、メルシャン㈱での円高の影響もあり、増益となりました。
※1 クラフトビール:当社では、作り手の顔が見え、こだわりが感じられ、味の違いや個性が楽しめるビールのことと捉えています。
※2 RTD:栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料で、Ready to Drinkの略。
※3 財務省関税局調べによる「ぶどう酒(2L以下)」と「ぶどう酒(2L超150L以下)」の合計。
日本綜合飲料事業連結売上高8,512億円(前年同期比2.1%減 )
日本綜合飲料事業連結営業利益524億円(前年同期比61.6%増 )


⦅海外綜合飲料事業⦆
ライオン社は、酒類事業において、持続的な成長を目指してビール市場の活性化に取り組み、「フォーエックス・ゴールド」をはじめとする主力ブランドの販売強化を進めました。「ジェームス・スクワイア」、「リトル・クリーチャーズ」の販売が好調なクラフトビールカテゴリーでは、事業基盤をさらに強化するために、クラフトビール会社(豪州ではByron Bay Brewery、ニュージーランドではPanhead Custom Ales)の買収を発表しました。また、豪州での販売権を付与され販売してきた輸入ビールのライセンス契約を、2016年9月30日付で終了することについて合意に達しました。飲料事業では、引き続き収益力向上に向けた事業構造改革や、サプライチェーン全般の見直しによるコスト削減策を進めました。注力する乳飲料カテゴリーにおいて主力商品「デア」の販売が好調でしたが、牛乳の販売が減少しました。
ブラジルキリン社は、市場環境の変化に柔軟に対応しながら地域ごとの商品戦略を遂行し、経営の効率化と収益構造改革に取り組みました。北部・北東部では、ビール主力商品「スキン」を中心とした販売活動を行い、販売数量の回復が進みました。南部・南東部では、中高価格帯商品の販売活動に注力し、缶容器を発売した高価格帯のプレミアムビール「アイゼンバーン」の販売が大幅に増加しました。さらに、中価格帯の商品としてリニューアル発売をした「デバッサ」の販売も大きく伸長しました。清涼飲料については、炭酸飲料「ビバスキン」の販売が好調を維持しました。これらの販売活動に加えて、自社卸の経営効率化、サプライチェーンを通じたコスト削減等の収益構造改革、製造拠点の最適化に向けた取り組みを、着実に進めました。
ミャンマー・ブルワリー社は、同社が持つ強みや価値観を維持しながら、キリングループの企業理念を反映した新しい経営理念の浸透と、ミャンマービール市場首位というポジションの維持・強化を図りました。また、高まる市場の需要に対応するため、キリンの技術支援により、生産設備増強と製造の効率化を進めました。高価格帯商品「ミャンマー プレミアム」と「キリン一番搾り(KIRIN ICHIBAN)」では、3月に樽容器、6月に缶容器と小壜を発売し、商品ポートフォリオの強化を図りました。さらに、主力商品「ミャンマービール」の販売数量が増加し、低価格帯商品である「アンダマン」の販売も好調に推移しました。
これらの結果、オセアニア綜合飲料事業について、酒類事業ではクラフトビール等の販売は好調でしたが、為替の影響により売上高は減少しました。また、豪ドル安により輸入ビールの仕入れ価格が上昇し、営業利益も減少しました。飲料事業では、コスト削減が進み営業利益は増加しましたが、円高の影響を大きく受けたため、オセアニア綜合飲料事業全体では減収減益となりました。
また、海外その他綜合飲料事業の売上高については、ブラジルキリン社での販売数量の回復と収益構造改革の進捗、ミャンマー・ブルワリー社での販売数量の増加があったものの、為替の影響に加え、ブラジルキリン社において第1四半期より販売費の一部を売上高から控除した影響で、減収となりました。一方で、第1四半期から開始したミャンマー・ブルワリー社の営業利益の取込み、ブラジルキリン社でののれん等償却額の減少により、海外その他綜合飲料事業での営業損失は減少しました。
オセアニア綜合飲料事業連結売上高2,875億円(前年同期比15.3%減 )
オセアニア綜合飲料事業連結営業利益314億円(前年同期比13.4%減 )
海外その他綜合飲料事業連結売上高1,333億円(前年同期比2.4%減 )
海外その他綜合飲料事業連結営業損失△0億円(前年同期比― )


⦅医薬・バイオケミカル事業⦆
協和発酵キリン㈱が展開する医薬事業では、独自のバイオ技術を駆使し、革新的な抗体医薬品の新薬開発を進め、強みのある領域で、世界の人々の健康と豊かさに貢献できる、新たな価値の創造を目指しました。国内では、新製品である持続型G-CSF製剤「ジーラスタ」等が伸長し、9月には新たに乾癬治療剤「ルミセフ」の販売を開始し、遺伝子組換えアンチトロンビン製剤「アコアラン」の1800IU製剤の承認申請を行いました。さらに、主力製品である持続型赤血球造血刺激因子製剤「ネスプ」等も堅調に推移し、4月に実施された薬価基準引下げの影響等を補い、売上高は前年同期を上回りました。海外においては、欧州と米州で癌疼痛治療剤「Abstral」、「PecFent」等が伸長したものの、円高の影響と技術収入の減少等により、売上高は前年同期を下回りました。
バイオケミカル事業では、医薬、医療、ヘルスケア領域のスペシャリティ分野での高いシェアを活かし、“ブランド力と収益性の向上”を重要課題として取り組みました。国内では、通信販売事業で「オルニチン」のほか新製品「アルギニンEX」が好調でしたが、医薬品原薬の一部製品で価格が下落した影響と、前年同期に集中出荷があった影響等により、売上高が前年同期を下回りました。海外の売上高は、米州・欧州が堅調に推移しましたが、円高の影響等により、前年同期を下回りました。
これらの結果、医薬・バイオケミカル事業全体では、新製品は伸長したものの、為替の円高進行と技術収入の減少に加え、研究開発費の増加により、減収減益となりました。
医薬・バイオケミカル事業連結売上高2,524億円(前年同期比5.2%減 )
医薬・バイオケミカル事業連結営業利益291億円(前年同期比32.5%減 )

⦅その他事業⦆
小岩井乳業㈱では、“小岩井らしさ”を持った商品である「小岩井 生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト」や、3月に販売エリアを拡大した「小岩井 生乳(なまにゅう)ヨーグルトクリーミー脂肪0(ゼロ)」等に注力した結果、売上高が前年同期を上回りました。加えて、収益性の高い商品構成への改善が進んだことにより、増益となりました。
しかしながら、その他事業全体としては、㈱横浜アリーナでの大規模改修工事による施設の稼働率の大幅低下により、減収減益となりました。
その他事業連結売上高183億円(前年同期比2.6%減 )
その他事業連結営業利益22億円(前年同期比23.0%減 )


(2) 財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、受取手形及び売掛金、無形固定資産、投資有価証券等の減少により、前連結会計年度末に比べ2,564億円減少して2兆1,873億円となりました。
負債は、有利子負債等、未払酒税(流動負債「その他」)等の減少により、前連結会計年度末に比べ1,782億円減少して1兆3,274億円となりました。
純資産は、為替換算調整勘定の減少等により、前連結会計年度末に比べ781億円減少して8,599億円となりました。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費の総額は、449億円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。