有価証券報告書-第36期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
経営者の視点による経営成績等の状況に関する主な注記は以下のとおりです。
(非GAAP指標について)
当社グループは、当社が適用する会計基準であるIFRSにおいて定義されていない非GAAP指標を追加的に開示し
ております。非GAAP指標は、当社グループが中長期的に持続的な成長を目指す上で、各事業運営の業績を把握するために経営管理にも利用している指標であり、財務諸表の利用者が当社グループの業績を評価する上でも、有用な情報であると考えております。
調整後営業利益
営業利益(損失)から買収に伴い生じた無形資産に係る償却費、調整項目(収益及び費用)を除いた調整後営業利益を開示しております。調整項目(収益及び費用)はのれんの減損損失、リストラクチャリング収益及び費用等です。
また、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率も追加的に開示しております。これは、海外たばこ事業における当期の調整後営業利益を前年同期の為替レートを用いて換算・算出することにより、為替影響を除いた指標です。当社グループは、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率における、中長期に亘る年平均mid to high single digit成長を全社利益目標としており、その達成を目指してまいります。
なお、当社グループは、超インフレ経済下にある子会社の財務諸表について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」(以下、IAS第29号)に定められる要件に従い、会計上の調整を加えておりますが、為替一定ベースの調整後営業利益にはIAS第29号の影響は含めておりません。
(自社たばこ製品売上収益について)
たばこ事業においては、自社たばこ製品に係る売上収益を開示しております。具体的には、国内たばこ事業においては、国内免税市場及び当社の中国事業部管轄の中国・香港・マカオ市場における売上収益並びにRRP・リトルシガー等に係る売上収益が含まれていますが、輸入たばこ配送手数料等に係る売上収益は含まれておりません。また、海外たばこ事業においては、水たばこ製品及びRRPに係る売上収益が含まれていますが、物流事業及び製造受託等に係る売上収益は含まれておりません。また、為替一定ベースのドルベースの自社たばこ製品売上収益の成長率も追加的に開示しております。
なお、当社グループは、超インフレ経済下にある子会社の財務諸表について、IAS第29号に定められる要件に従い、会計上の調整を加えておりますが、為替一定ベースの自社たばこ製品売上収益にはIAS第29号の影響は含めておりません。
(RRPについて)
RRPは、E-Vapor製品及び加熱式たばこ等、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品(Reduced-
Risk Products)を指しております。
E-Vapor製品は、たばこ葉を使用せず、装置内もしくは専用カートリッジ内のリキッド(液体)を電気加熱させ、発生するベイパー(蒸気)を愉しむ製品です。
一方、加熱式たばこは、たばこ葉を使用し、たばこ葉を燃焼させずに、加熱等によって発生するたばこベイパー(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)を愉しむ製品です。
当社グループは、たばこ事業の将来に亘る持続的な成長のため、イノベーティブな製品の開発等に取組んでおります。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は以下のとおりです。
(1)経営成績の状況
① 全社実績
(単位:億円)
<売上収益>売上収益は、主に国内たばこ事業、医薬事業及び加工食品事業の減収により、前年度比3.8%減の2兆926億円となりました。なお、新型コロナウイルス感染拡大は各事業に影響を与えており、売上収益に610億円程度の悪影響を及ぼしたと見ております。
<調整後営業利益>為替一定ベースの調整後営業利益は、国内たばこ事業及び加工食品事業での減少があったものの、海外たばこ事業及び医薬事業での増加により、前年度比5.5%増となりました。為替影響を含めた調整後営業利益は、海外たばこ事業においてネガティブな為替影響を受けたことに加え、国内たばこ事業及び加工食品事業での減少により、前年度比5.6%減の4,870億円となりました。
<営業利益>営業利益は、主に旧JTビルの売却による不動産売却益の増加等があったものの、前年度に発生した医薬事業の抗HIV薬6品の国内におけるライセンス契約解消に係る収益がなくなったこと等により、前年度比6.6%減の4,691億円となりました。
<親会社の所有者に帰属する当期利益>親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の減少及び金融損益の悪化等により、前年度比10.9%減の3,103億円となりました。
② セグメント別実績
[国内たばこ事業]
(単位:億本、億円)
<紙巻販売数量及びRRP販売数量(注3)>紙巻総需要は、趨勢減、RRP市場の拡大、定価改定及び2020年4月の「健康増進法の一部を改正する法律」の全面施行に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、前年度比8.2%減となりました。当社の紙巻販売数量は、総需要減少に加え、紙巻シェアの減少により前年度比9.0%減となりました。紙巻シェアは、低価格帯での競争継続により、前年度比0.5%ポイント減の59.8%となりました。
RRPの総需要は前年度比9.1%増の402億本となり、市場占有率は約26%(出荷ベース)となりました。当社のRRP販売数量は紙巻たばこ換算ベースで前年度比7億本増加の39億本となり、RRPカテゴリーに占める当社のシェアは約10%(実需ベース)となりました。
紙巻たばこ及びRRPを合わせた総需要、当社の販売数量及び当社のシェアは、それぞれ前年度比4.2%減の1,550億本、7.8%減の727億本、1.8%ポイント減の46.9%となりました。
なお、当年度における紙巻たばこ及びRRPを合わせた国内での製造数量は、前年度に対し107億本減少し、733億本(前年度比12.8%減)となりました。
<自社たばこ製品売上収益及び調整後営業利益>(注3)
自社たばこ製品売上収益は、紙巻単価上昇効果があったものの、紙巻販売数量の減少影響、RRP関連売上収益の減少、国内免税及び中国事業の販売減少等により、前年度比9.3%減となりました。RRP関連売上収益は、RRP販売数量の増加があったものの、デバイスの売上減少及び2019年10月の定価改定時に価格を据え置いたことによる単価差影響により、前年度比50億円減の559億円となっております。なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響は、自社たばこ製品売上収益に300億円程度の悪影響を及ぼしたと見ており、うち国内免税及び中国事業における影響が半分強を占めております。
調整後営業利益は、前年度に計上した低温加熱向けカプセル製造機械の減損損失がなくなったことに加え、新型コロナウイルス感染拡大による影響の長期化を背景とした優先順位に基づく効率的な経費執行等による費用減があったものの、自社たばこ製品売上収益の減少、RRP及びデジタルマーケティング等への投資の増加により、前年度比10.2%減となりました。
(注1)紙巻総需要は、日本市場全体における紙巻たばこの販売数量を指しております。なお、当該数値にはリトルシガーを含み、RRP等は含まれておりません。
(注2)当該数値の他に、国内免税市場及び当社の中国事業部管轄の中国・香港・マカオ市場の当年度における販売数量18億本(前年度の当該数量は40億本)があります。なお、当該数値にはリトルシガーを含み、RRP等は含まれておりません。
(注3)RRP販売数量は、1パック当たり紙巻たばこ20本として換算しております。当該数値には国内免税市場における販売数量は含まれておりません。なお、RRP関連売上収益には国内免税市場における売上収益及びデバイス・関連アクセサリー等に係る売上収益が含まれております。
(注4)総需要及びシェアは当社推計値です。
[海外たばこ事業]
(単位:億本、億円)
(単位:百万ドル)
※()内は、為替一定ドルベース 前年度比増減率
<販売数量及び市場シェア>総販売数量は、新型コロナウイルス感染拡大による免税販売及び新興国市場への影響、ロシア等複数市場における総需要減少により、前年度比2.3%減となりました。ネガティブに作用した流通在庫調整影響を除いた総販売数量は、GFBが市場シェア伸長を牽引したものの、前年度比1.7%減となりました。市場シェアは主要市場である、イタリア・イラン・英国・カナダ・スペイン・台湾・ドイツ・ルーマニア等の様々な市場で継続的に伸長しました。
GFB販売数量は、ウィンストン(+2.4%)・LD(+4.2%)が牽引し、前年度比1.8%増となりました。
なお、当年度における製造委託を含めた海外での製造数量は、前年度に対し28億本減少し、4,481億本(前年度比0.6%減)となりました。
<自社たばこ製品売上収益及び調整後営業利益>自社たばこ製品売上収益は、ポジティブな単価上昇効果及び数量効果があったものの、ネガティブな為替影響により、前年度と同水準となりました。なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響は、自社たばこ製品売上収益に200億円程度の悪影響を及ぼしたと見ております。
為替影響を含めたドルベースの自社たばこ製品売上収益は、ネガティブな為替影響を受けたものの、カナダ・ドイツ・フィリピン・ルーマニア等における単価上昇効果及び市場構成が改善したことで発現した数量効果により、前年度比2.0%増となりました。為替一定ベースでは、前年度比7.0%増となりました。
為替影響を含めたドルベースの調整後営業利益は、ネガティブな為替影響を受けたものの、単価上昇効果及び数量効果等により、前年度比1.8%増となりました。為替一定ベースでは、前年度比16.8%増となりました。
[海外たばこ事業 地域別内訳](注7)
海外たばこ事業における各地域の実績は以下のとおりです。
(単位:億本、億円、百万ドル)
※()内は、為替一定ドルベース 前年度比増減率
(注5)製造受託、水たばこ製品及びE-Vapor製品を除き、Fine cut tobacco、シガー、パイプ、スヌース、クレテック及び加熱式たばこを含めております。
(注6)当社グループのブランドポートフォリオの中核を担う「ウィンストン」「キャメル」「メビウス」「LD」の4ブランドをGFB(グローバル・フラッグシップ・ブランド)としております。
(注7)当社グループの海外たばこ事業をより深く理解していただくために、当該セグメントを4地域(South and West Europe、North and Central Europe、CIS+、Rest-of-the-World)に区分けしております。
South and West Europeにはフランス、イタリア、スペイン等、North and Central Europeにはドイツ、英国等、CIS+にはルーマニア、ロシア等、Rest-of-the-Worldにはイラン、台湾、トルコ等を含んでおります。
※ 当年度における米国ドルに対する為替レートは、以下のとおりです。(注8)
(注8)IAS第29号に従い、超インフレ経済下にある子会社の財務諸表をUSDへ換算する際には、2020年12月末時点のレートを適用しております。また、USDから日本円へ換算する際も、2020年12月末時点のレートを適用しております。(USD/IRR:258,747、USD/円:103.50)
[医薬事業]
(単位:億円)
<売上収益及び調整後営業利益>売上収益は、海外ロイヤリティ収入の減少等により、前年度比10.8%減となりました。なお、売上収益における新型コロナウイルス感染拡大による影響は軽微と見ております。
調整後営業利益は、売上収益の減少があったものの、製造販売承認申請を行った開発品の試験終了等に伴う研究開発費の減少及びグループ会社である鳥居薬品の増益により、前年度比7.6%増となりました。
[加工食品事業]
(単位:億円)
<売上収益及び調整後営業利益>売上収益は、新型コロナウイルス感染拡大による影響を受け、冷食・常温事業における家庭用製品の需要増に伴う販売伸長があったものの、冷食・常温事業及び調味料事業の外食向け製品の需要減並びにベーカリー事業における需要減に伴う販売減少により、前年度比5.8%減となりました。なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響は、売上収益に110億円程度の悪影響を及ぼしたと見ております。
調整後営業利益については、製品構成の改善があったものの、売上収益の減少に加え、冷食・常温事業における物流費の悪化及びベーカリー事業における工場・店舗等の減損損失の計上により、前年度比62億円減となりました。
(2)財政状態及びキャッシュ・フローの状況
① 財政状態の状況
[資産]
当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,717億円減少し、5兆3,814億円となりました。これは、現金及び現金同等物の増加があったものの、ネガティブな為替影響によるのれんの減少及び買収に伴い生じた無形資産の償却等による減少があったこと等によるものです。
[負債]
当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度末に比べ276億円減少し、2兆7,819億円となりました。これは、劣後特約付社債の発行及び劣後特約付借入を行なったものの、短期借入金の返済、社債の償還及び未払たばこ税の減少があったこと等によるものです。
[資本]
当連結会計年度の資本合計は、前連結会計年度末に比べ1,441億円減少し、2兆5,995億円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による利益剰余金の増加があったものの、配当金の支払い及び在外営業活動体の換算差額の減少があったこと等によるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当年度末現在における現金及び現金同等物は、前年度末に比べ1,817億円増加し、5,388億円となりました(前年度末残高3,572億円)。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、5,198億円の収入(前年度は5,404億円の収入)となりました。これは、国内外におけるたばこ税及び法人税の支払いがあったものの、主にたばこ事業による安定したキャッシュ・フローの創出があったこと等によるものです。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
当年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、54億円の収入(前年度は1,236億円の支出)となりました。これは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出があったものの、投資不動産及び関連会社株式の売却による収入があったこと等によるものです。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
当年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、2,974億円の支出(前年度は3,338億円の支出)となりました。これは、劣後特約付社債の発行及び劣後特約付借入による収入があったものの、配当金の支払い及び借入金の返済による支出があったこと等によるものです。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは、国内たばこ事業、海外たばこ事業、医薬事業及び加工食品事業において広範囲かつ多種多様な製品の生産・販売を行っており、その品目・形式・容量・包装等は多種類であること、また主要な製品については受注生産を行っていないことから、各セグメントの生産規模及び受注規模を金額及び数量で表示することはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績については、「(1)経営成績の状況」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。
なお、当社グループの売上収益総額に対する割合が100分の10以上の相手先に対する売上収益及びその割合については、以下のとおりです。
(注)海外たばこ事業において、ロシア等で物流・卸売事業を営むMegapolisグループに対して製品を販売しております。
(4)重要な会計方針
① IFRSの適用
当社グループは、1999年にRJRナビスコ社から米国外のたばこ事業を取得、2007年にGallaher社を買収し、70以上の国と地域で事業を展開、また130以上の国と地域で製品を販売するグローバル企業として着実な成長を続けてきました。こうした中で、日本において国際的な財務・事業活動を行っている上場企業に対して、2009年度よりIFRSの任意適用が認められたことを踏まえ、当社グループは、2011年度よりIFRSを適用することとしました。これにより、当社グループは資金調達手段の多様化、経営管理面での品質向上を目指してまいります。
② 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断
当社グループの連結財務諸表は、収益及び費用、資産及び負債の測定並びに決算日現在の偶発事象の開示等に関する経営者の見積り及び仮定を含んでおります。これらの見積り及び仮定は過去の実績及び決算日において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。しかし、その性質上、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。
見積り及び仮定は経営者により継続して見直しております。これらの見積り及び仮定の見直しによる影響は、その見積り及び仮定を見直した期間及びそれ以降の期間において認識しております。
上記のうち、当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」をご参照ください。
(5)目標となる経営指標について
当社グループは、経営理念である「4Sモデル」の追求による、中長期に亘る持続的な利益成長が最も重要であると考えております。持続的利益成長の基盤である事業そのもののパフォーマンスを計るためには、為替影響、一時的要因及び特殊要因を除くことが適切と捉え、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率における、中長期に亘る年平均mid to high single digit成長を全社利益目標としております。
2020年12月期の為替一定ベースの調整後営業利益は、前年度比5.5%増と厳しい事業環境の中でも前年を上回りました。
2020年12月期の経営成績等の状況に関する分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況」に示しております。
全社利益目標の達成に向けた経営方針等の詳細については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(6)経営成績等に重要な影響を与える要因
当社グループの海外たばこ事業の拡大に伴い、その寄与分につき、為替の変動が連結財務諸表に影響を与えております。2020年12月期においては、為替一定ベースの調整後営業利益は前年度比5.5%増となった一方、為替影響を含めた調整後営業利益は前年度比5.6%減となり、ネガティブな為替影響を受けました。2021年12月期においても、ネガティブな為替影響を見込んでおります。
当社グループは、為替リスクを緩和すべく、収入通貨と支払通貨を合致させるナチュラルヘッジの実施に努めております。また、一部の為替リスクに対しては、デリバティブ又は外貨建有利子負債等を利用したヘッジを行っております。
以上を含む、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2事業等のリスク」をご参照ください。
(7)財務活動の基本方針
当社グループの財務活動の基本方針は、以下のとおりです。
① グループ内キャッシュマネジメント
グループ全体の資金効率を最大化するため、法制度上許容され、かつ経済合理性が認められることを前提として、主としてキャッシュマネジメントシステム(CMS)によるグループ内での資金貸借の実施を最優先としております。
② 外部資金調達
短期の運転資金については、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパー又はその組み合わせ、中長期資金については、金融機関からの借入、社債、株主資本又はその組み合わせにより調達することを基本としております。
安定的で効率的な資金調達のために、複数のコミットメント融資枠を設定する等、取引する金融機関と資金調達手段の多様性を維持しております。
③ 外部資金運用
外部資金運用においては、安全性と流動性を確保した上で、適切な収益を求め、また投機的取引を行ってはならないことを定めております。
④ 財務リスク管理
当社グループは、経営活動を行う過程において、財務上のリスク(信用リスク・流動性リスク・為替リスク・金利リスク・市場価格の変動リスク)に晒されており、当該リスクを回避又は低減するために、一定の方針に基づきリスク管理を行っております。主要な財務上のリスク管理の状況については、定期的に当社の社長及び取締役会への報告を行っております。
また、当社グループの方針として、デリバティブは、実需取引のリスク緩和を目的とした取引に限定しており、投機目的やトレーディング目的の取引は行っておりません。
なお、財務リスク管理の詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 33.金融商品 (2)リスク管理に関する事項 ~(8)市場価格の変動リスク」までをご参照ください。
(8)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資金需要
設備投資、運転資金、外部資源の獲得、借入の返済及び利息の支払い、配当金の支払い、自己株式取得並びに法人税の支払い等に資金を充当しております。
重要な資本的支出の予定及び資金の調達方法については、「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。
② 資金の源泉
主として営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入、社債及びコマーシャル・ペーパーの発行により、必要とする資金を調達しております。
<キャッシュ・フロー>「(2)財政状態及びキャッシュ・フローの状況 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
<有利子負債>当社グループの当年度末現在の有利子負債の返済・償還予定額は以下のとおりです。
(単位:億円)
(注)リース負債を除いております。
(長期負債)
社債(1年内償還予定を含む)は、前年度末現在6,666億円、当年度末現在7,023億円、金融機関からの長期借入金(1年内返済予定を含む)は、それぞれ1,153億円、2,050億円です。長期リース負債は、前年度末現在402億円、当年度末現在494億円です。
当年度末現在、長期債務格付は、ムーディーズ・ジャパン㈱ではA1(ネガティブ)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱ではAA-(ネガティブ)、㈱格付投資情報センター(R&I)ではAA(安定的)となっており、同日現在、国際的なたばこ会社の信用格付としてはそれぞれ最高レベルです。
格付は、事業を行う主要市場の発展及び事業戦略の成功、並びに当社グループではコントロールできない全般的な景気動向等、数多くの要因によって影響を受けます。格付は随時、撤回あるいは修正される可能性があります。格付はそれぞれ、他の格付と区別して単独に評価されるべきものです。JT法のもと、当社により発行される社債には、当社の一般財産に対する先取特権が付されております。この権利により、国税及び地方税並びにその他の法定債務を例外とし、償還請求において社債権者は無担保債権者よりも優先されます。
(短期負債)
金融機関からの短期借入金は、前年度末現在1,926億円、当年度末現在516億円です。コマーシャル・ペーパーの発行残高は、それぞれありません。短期リース負債は、前年度末現在135億円、当年度末現在171億円です。
③ 流動性
当社グループは、従来営業活動により多額のキャッシュ・フローを得ており、今後も引き続き資金源になると見込んでおります。営業活動によるキャッシュ・フローは今後も安定的で、通常の事業活動における必要資金はまかなえると予想しております。また、当年度末現在、国内・海外の主要な金融機関からの4,782億円のコミットメント融資枠があり、そのすべてが未使用です。更に、コマーシャル・ペーパープログラム、アンコミットメントベースの融資枠、国内社債発行登録枠及びユーロMTNプログラム等があります。
(非GAAP指標について)
当社グループは、当社が適用する会計基準であるIFRSにおいて定義されていない非GAAP指標を追加的に開示し
ております。非GAAP指標は、当社グループが中長期的に持続的な成長を目指す上で、各事業運営の業績を把握するために経営管理にも利用している指標であり、財務諸表の利用者が当社グループの業績を評価する上でも、有用な情報であると考えております。
調整後営業利益
営業利益(損失)から買収に伴い生じた無形資産に係る償却費、調整項目(収益及び費用)を除いた調整後営業利益を開示しております。調整項目(収益及び費用)はのれんの減損損失、リストラクチャリング収益及び費用等です。
また、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率も追加的に開示しております。これは、海外たばこ事業における当期の調整後営業利益を前年同期の為替レートを用いて換算・算出することにより、為替影響を除いた指標です。当社グループは、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率における、中長期に亘る年平均mid to high single digit成長を全社利益目標としており、その達成を目指してまいります。
なお、当社グループは、超インフレ経済下にある子会社の財務諸表について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」(以下、IAS第29号)に定められる要件に従い、会計上の調整を加えておりますが、為替一定ベースの調整後営業利益にはIAS第29号の影響は含めておりません。
(自社たばこ製品売上収益について)
たばこ事業においては、自社たばこ製品に係る売上収益を開示しております。具体的には、国内たばこ事業においては、国内免税市場及び当社の中国事業部管轄の中国・香港・マカオ市場における売上収益並びにRRP・リトルシガー等に係る売上収益が含まれていますが、輸入たばこ配送手数料等に係る売上収益は含まれておりません。また、海外たばこ事業においては、水たばこ製品及びRRPに係る売上収益が含まれていますが、物流事業及び製造受託等に係る売上収益は含まれておりません。また、為替一定ベースのドルベースの自社たばこ製品売上収益の成長率も追加的に開示しております。
なお、当社グループは、超インフレ経済下にある子会社の財務諸表について、IAS第29号に定められる要件に従い、会計上の調整を加えておりますが、為替一定ベースの自社たばこ製品売上収益にはIAS第29号の影響は含めておりません。
(RRPについて)
RRPは、E-Vapor製品及び加熱式たばこ等、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品(Reduced-
Risk Products)を指しております。
E-Vapor製品は、たばこ葉を使用せず、装置内もしくは専用カートリッジ内のリキッド(液体)を電気加熱させ、発生するベイパー(蒸気)を愉しむ製品です。
一方、加熱式たばこは、たばこ葉を使用し、たばこ葉を燃焼させずに、加熱等によって発生するたばこベイパー(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)を愉しむ製品です。
当社グループは、たばこ事業の将来に亘る持続的な成長のため、イノベーティブな製品の開発等に取組んでおります。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は以下のとおりです。
(1)経営成績の状況
① 全社実績
(単位:億円)
2019年12月期 | 2020年12月期 | 増減率 | ||||
売上収益 | 21,756 | 20,926 | △3.8% | |||
調整後営業利益 | 5,159 | 4,870 | △5.6% | |||
営業利益 | 5,024 | 4,691 | △6.6% | |||
当期利益(親会社所有者帰属) | 3,482 | 3,103 | △10.9% |
<売上収益>売上収益は、主に国内たばこ事業、医薬事業及び加工食品事業の減収により、前年度比3.8%減の2兆926億円となりました。なお、新型コロナウイルス感染拡大は各事業に影響を与えており、売上収益に610億円程度の悪影響を及ぼしたと見ております。
<調整後営業利益>為替一定ベースの調整後営業利益は、国内たばこ事業及び加工食品事業での減少があったものの、海外たばこ事業及び医薬事業での増加により、前年度比5.5%増となりました。為替影響を含めた調整後営業利益は、海外たばこ事業においてネガティブな為替影響を受けたことに加え、国内たばこ事業及び加工食品事業での減少により、前年度比5.6%減の4,870億円となりました。
<営業利益>営業利益は、主に旧JTビルの売却による不動産売却益の増加等があったものの、前年度に発生した医薬事業の抗HIV薬6品の国内におけるライセンス契約解消に係る収益がなくなったこと等により、前年度比6.6%減の4,691億円となりました。
<親会社の所有者に帰属する当期利益>親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の減少及び金融損益の悪化等により、前年度比10.9%減の3,103億円となりました。
② セグメント別実績
[国内たばこ事業]
(単位:億本、億円)
国内たばこ事業 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 増減率 | |
紙巻総需要(注1) | 1,251 | 1,149 | △8.2% | |
紙巻販売数量(注2) | 755 | 687 | △9.0% | |
自社たばこ製品売上収益 | 5,689 | 5,157 | △9.3% | |
調整後営業利益 | 1,872 | 1,681 | △10.2% |
<紙巻販売数量及びRRP販売数量(注3)>紙巻総需要は、趨勢減、RRP市場の拡大、定価改定及び2020年4月の「健康増進法の一部を改正する法律」の全面施行に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、前年度比8.2%減となりました。当社の紙巻販売数量は、総需要減少に加え、紙巻シェアの減少により前年度比9.0%減となりました。紙巻シェアは、低価格帯での競争継続により、前年度比0.5%ポイント減の59.8%となりました。
RRPの総需要は前年度比9.1%増の402億本となり、市場占有率は約26%(出荷ベース)となりました。当社のRRP販売数量は紙巻たばこ換算ベースで前年度比7億本増加の39億本となり、RRPカテゴリーに占める当社のシェアは約10%(実需ベース)となりました。
紙巻たばこ及びRRPを合わせた総需要、当社の販売数量及び当社のシェアは、それぞれ前年度比4.2%減の1,550億本、7.8%減の727億本、1.8%ポイント減の46.9%となりました。
なお、当年度における紙巻たばこ及びRRPを合わせた国内での製造数量は、前年度に対し107億本減少し、733億本(前年度比12.8%減)となりました。
<自社たばこ製品売上収益及び調整後営業利益>(注3)
自社たばこ製品売上収益は、紙巻単価上昇効果があったものの、紙巻販売数量の減少影響、RRP関連売上収益の減少、国内免税及び中国事業の販売減少等により、前年度比9.3%減となりました。RRP関連売上収益は、RRP販売数量の増加があったものの、デバイスの売上減少及び2019年10月の定価改定時に価格を据え置いたことによる単価差影響により、前年度比50億円減の559億円となっております。なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響は、自社たばこ製品売上収益に300億円程度の悪影響を及ぼしたと見ており、うち国内免税及び中国事業における影響が半分強を占めております。
調整後営業利益は、前年度に計上した低温加熱向けカプセル製造機械の減損損失がなくなったことに加え、新型コロナウイルス感染拡大による影響の長期化を背景とした優先順位に基づく効率的な経費執行等による費用減があったものの、自社たばこ製品売上収益の減少、RRP及びデジタルマーケティング等への投資の増加により、前年度比10.2%減となりました。
(注1)紙巻総需要は、日本市場全体における紙巻たばこの販売数量を指しております。なお、当該数値にはリトルシガーを含み、RRP等は含まれておりません。
(注2)当該数値の他に、国内免税市場及び当社の中国事業部管轄の中国・香港・マカオ市場の当年度における販売数量18億本(前年度の当該数量は40億本)があります。なお、当該数値にはリトルシガーを含み、RRP等は含まれておりません。
(注3)RRP販売数量は、1パック当たり紙巻たばこ20本として換算しております。当該数値には国内免税市場における販売数量は含まれておりません。なお、RRP関連売上収益には国内免税市場における売上収益及びデバイス・関連アクセサリー等に係る売上収益が含まれております。
(注4)総需要及びシェアは当社推計値です。
[海外たばこ事業]
(単位:億本、億円)
海外たばこ事業 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 増減率 | ||
総販売数量(注5) | 4,458 | 4,357 | △2.3% | ||
GFB販売数量(注6) | 2,770 | 2,820 | 1.8% | ||
自社たばこ製品売上収益 | 12,530 | 12,508 | △0.2% | ||
調整後営業利益 | 3,408 | 3,409 | 0.0% |
(単位:百万ドル)
海外たばこ事業 (参考:ドルベース) | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 増減率 | ||
自社たばこ製品売上収益 | 11,496 | 11,724 | 2.0% (7.0%) | ||
調整後営業利益 | 3,126 | 3,181 | 1.8% (16.8%) |
※()内は、為替一定ドルベース 前年度比増減率
<販売数量及び市場シェア>総販売数量は、新型コロナウイルス感染拡大による免税販売及び新興国市場への影響、ロシア等複数市場における総需要減少により、前年度比2.3%減となりました。ネガティブに作用した流通在庫調整影響を除いた総販売数量は、GFBが市場シェア伸長を牽引したものの、前年度比1.7%減となりました。市場シェアは主要市場である、イタリア・イラン・英国・カナダ・スペイン・台湾・ドイツ・ルーマニア等の様々な市場で継続的に伸長しました。
GFB販売数量は、ウィンストン(+2.4%)・LD(+4.2%)が牽引し、前年度比1.8%増となりました。
なお、当年度における製造委託を含めた海外での製造数量は、前年度に対し28億本減少し、4,481億本(前年度比0.6%減)となりました。
<自社たばこ製品売上収益及び調整後営業利益>自社たばこ製品売上収益は、ポジティブな単価上昇効果及び数量効果があったものの、ネガティブな為替影響により、前年度と同水準となりました。なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響は、自社たばこ製品売上収益に200億円程度の悪影響を及ぼしたと見ております。
為替影響を含めたドルベースの自社たばこ製品売上収益は、ネガティブな為替影響を受けたものの、カナダ・ドイツ・フィリピン・ルーマニア等における単価上昇効果及び市場構成が改善したことで発現した数量効果により、前年度比2.0%増となりました。為替一定ベースでは、前年度比7.0%増となりました。
為替影響を含めたドルベースの調整後営業利益は、ネガティブな為替影響を受けたものの、単価上昇効果及び数量効果等により、前年度比1.8%増となりました。為替一定ベースでは、前年度比16.8%増となりました。
[海外たばこ事業 地域別内訳](注7)
海外たばこ事業における各地域の実績は以下のとおりです。
(単位:億本、億円、百万ドル)
2019年12月期 | 2020年12月期 | 増減率 | |||||
South and West Europe | |||||||
総販売数量(注5) | 649 | 663 | 2.2% | ||||
GFB販売数量(注6) | 528 | 557 | 5.5% | ||||
自社たばこ製品売上収益 | 2,167 | 2,194 | 1.2% | ||||
自社たばこ製品売上収益 (参考:ドルベース) | 1,987 | 2,052 | 3.3% (1.3%) | ||||
North and Central Europe | |||||||
総販売数量(注5) | 559 | 634 | 13.5% | ||||
GFB販売数量(注6) | 285 | 333 | 16.8% | ||||
自社たばこ製品売上収益 | 2,362 | 2,720 | 15.1% | ||||
自社たばこ製品売上収益 (参考:ドルベース) | 2,167 | 2,549 | 17.6% (16.7%) | ||||
CIS+ | |||||||
総販売数量(注5) | 1,315 | 1,222 | △7.1% | ||||
GFB販売数量(注6) | 901 | 828 | △8.1% | ||||
自社たばこ製品売上収益 | 3,096 | 2,943 | △5.0% | ||||
自社たばこ製品売上収益 (参考:ドルベース) | 2,842 | 2,755 | △3.1% (4.9%) | ||||
Rest-of-the-World | |||||||
総販売数量(注5) | 1,935 | 1,838 | △5.0% | ||||
GFB販売数量(注6) | 1,056 | 1,102 | 4.4% | ||||
自社たばこ製品売上収益 | 4,905 | 4,652 | △5.2% | ||||
自社たばこ製品売上収益 (参考:ドルベース) | 4,500 | 4,367 | △2.9% (6.2%) |
※()内は、為替一定ドルベース 前年度比増減率
(注5)製造受託、水たばこ製品及びE-Vapor製品を除き、Fine cut tobacco、シガー、パイプ、スヌース、クレテック及び加熱式たばこを含めております。
(注6)当社グループのブランドポートフォリオの中核を担う「ウィンストン」「キャメル」「メビウス」「LD」の4ブランドをGFB(グローバル・フラッグシップ・ブランド)としております。
(注7)当社グループの海外たばこ事業をより深く理解していただくために、当該セグメントを4地域(South and West Europe、North and Central Europe、CIS+、Rest-of-the-World)に区分けしております。
South and West Europeにはフランス、イタリア、スペイン等、North and Central Europeにはドイツ、英国等、CIS+にはルーマニア、ロシア等、Rest-of-the-Worldにはイラン、台湾、トルコ等を含んでおります。
※ 当年度における米国ドルに対する為替レートは、以下のとおりです。(注8)
為替レート | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 増減 | 増減率 |
USD/円 | 109.03 | 106.76 | △2.27 | 2.1%高 |
USD/RUB | 64.74 | 72.07 | 7.33 | 10.2%安 |
USD/GBP | 0.78 | 0.78 | △0.00 | 0.5%高 |
USD/EUR | 0.89 | 0.88 | △0.02 | 1.8%高 |
USD/CHF | 0.99 | 0.94 | △0.05 | 5.8%高 |
USD/TWD | 30.90 | 29.47 | △1.43 | 4.9%高 |
USD/TRY | 5.67 | 7.01 | 1.34 | 19.1%安 |
USD/IRR | 104,046 |
(注8)IAS第29号に従い、超インフレ経済下にある子会社の財務諸表をUSDへ換算する際には、2020年12月末時点のレートを適用しております。また、USDから日本円へ換算する際も、2020年12月末時点のレートを適用しております。(USD/IRR:258,747、USD/円:103.50)
[医薬事業]
(単位:億円)
医薬事業 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 増減率 | |
売上収益 | 885 | 790 | △10.8% | |
調整後営業利益 | 159 | 172 | 7.6% |
<売上収益及び調整後営業利益>売上収益は、海外ロイヤリティ収入の減少等により、前年度比10.8%減となりました。なお、売上収益における新型コロナウイルス感染拡大による影響は軽微と見ております。
調整後営業利益は、売上収益の減少があったものの、製造販売承認申請を行った開発品の試験終了等に伴う研究開発費の減少及びグループ会社である鳥居薬品の増益により、前年度比7.6%増となりました。
[加工食品事業]
(単位:億円)
加工食品事業 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 増減率 | |
売上収益 | 1,586 | 1,493 | △5.8% | |
調整後営業利益 | 54 | △8 | - |
<売上収益及び調整後営業利益>売上収益は、新型コロナウイルス感染拡大による影響を受け、冷食・常温事業における家庭用製品の需要増に伴う販売伸長があったものの、冷食・常温事業及び調味料事業の外食向け製品の需要減並びにベーカリー事業における需要減に伴う販売減少により、前年度比5.8%減となりました。なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響は、売上収益に110億円程度の悪影響を及ぼしたと見ております。
調整後営業利益については、製品構成の改善があったものの、売上収益の減少に加え、冷食・常温事業における物流費の悪化及びベーカリー事業における工場・店舗等の減損損失の計上により、前年度比62億円減となりました。
(2)財政状態及びキャッシュ・フローの状況
① 財政状態の状況
[資産]
当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,717億円減少し、5兆3,814億円となりました。これは、現金及び現金同等物の増加があったものの、ネガティブな為替影響によるのれんの減少及び買収に伴い生じた無形資産の償却等による減少があったこと等によるものです。
[負債]
当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度末に比べ276億円減少し、2兆7,819億円となりました。これは、劣後特約付社債の発行及び劣後特約付借入を行なったものの、短期借入金の返済、社債の償還及び未払たばこ税の減少があったこと等によるものです。
[資本]
当連結会計年度の資本合計は、前連結会計年度末に比べ1,441億円減少し、2兆5,995億円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による利益剰余金の増加があったものの、配当金の支払い及び在外営業活動体の換算差額の減少があったこと等によるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当年度末現在における現金及び現金同等物は、前年度末に比べ1,817億円増加し、5,388億円となりました(前年度末残高3,572億円)。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、5,198億円の収入(前年度は5,404億円の収入)となりました。これは、国内外におけるたばこ税及び法人税の支払いがあったものの、主にたばこ事業による安定したキャッシュ・フローの創出があったこと等によるものです。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
当年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、54億円の収入(前年度は1,236億円の支出)となりました。これは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出があったものの、投資不動産及び関連会社株式の売却による収入があったこと等によるものです。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
当年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、2,974億円の支出(前年度は3,338億円の支出)となりました。これは、劣後特約付社債の発行及び劣後特約付借入による収入があったものの、配当金の支払い及び借入金の返済による支出があったこと等によるものです。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは、国内たばこ事業、海外たばこ事業、医薬事業及び加工食品事業において広範囲かつ多種多様な製品の生産・販売を行っており、その品目・形式・容量・包装等は多種類であること、また主要な製品については受注生産を行っていないことから、各セグメントの生産規模及び受注規模を金額及び数量で表示することはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績については、「(1)経営成績の状況」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。
なお、当社グループの売上収益総額に対する割合が100分の10以上の相手先に対する売上収益及びその割合については、以下のとおりです。
相手先 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | ||
金額(億円) | 割合(%) | 金額(億円) | 割合(%) | |
Megapolisグループ | 2,351 | 10.8 | 2,108 | 10.1 |
(注)海外たばこ事業において、ロシア等で物流・卸売事業を営むMegapolisグループに対して製品を販売しております。
(4)重要な会計方針
① IFRSの適用
当社グループは、1999年にRJRナビスコ社から米国外のたばこ事業を取得、2007年にGallaher社を買収し、70以上の国と地域で事業を展開、また130以上の国と地域で製品を販売するグローバル企業として着実な成長を続けてきました。こうした中で、日本において国際的な財務・事業活動を行っている上場企業に対して、2009年度よりIFRSの任意適用が認められたことを踏まえ、当社グループは、2011年度よりIFRSを適用することとしました。これにより、当社グループは資金調達手段の多様化、経営管理面での品質向上を目指してまいります。
② 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断
当社グループの連結財務諸表は、収益及び費用、資産及び負債の測定並びに決算日現在の偶発事象の開示等に関する経営者の見積り及び仮定を含んでおります。これらの見積り及び仮定は過去の実績及び決算日において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。しかし、その性質上、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。
見積り及び仮定は経営者により継続して見直しております。これらの見積り及び仮定の見直しによる影響は、その見積り及び仮定を見直した期間及びそれ以降の期間において認識しております。
上記のうち、当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」をご参照ください。
(5)目標となる経営指標について
当社グループは、経営理念である「4Sモデル」の追求による、中長期に亘る持続的な利益成長が最も重要であると考えております。持続的利益成長の基盤である事業そのもののパフォーマンスを計るためには、為替影響、一時的要因及び特殊要因を除くことが適切と捉え、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率における、中長期に亘る年平均mid to high single digit成長を全社利益目標としております。
2020年12月期の為替一定ベースの調整後営業利益は、前年度比5.5%増と厳しい事業環境の中でも前年を上回りました。
2020年12月期の経営成績等の状況に関する分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況」に示しております。
全社利益目標の達成に向けた経営方針等の詳細については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(6)経営成績等に重要な影響を与える要因
当社グループの海外たばこ事業の拡大に伴い、その寄与分につき、為替の変動が連結財務諸表に影響を与えております。2020年12月期においては、為替一定ベースの調整後営業利益は前年度比5.5%増となった一方、為替影響を含めた調整後営業利益は前年度比5.6%減となり、ネガティブな為替影響を受けました。2021年12月期においても、ネガティブな為替影響を見込んでおります。
当社グループは、為替リスクを緩和すべく、収入通貨と支払通貨を合致させるナチュラルヘッジの実施に努めております。また、一部の為替リスクに対しては、デリバティブ又は外貨建有利子負債等を利用したヘッジを行っております。
以上を含む、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2事業等のリスク」をご参照ください。
(7)財務活動の基本方針
当社グループの財務活動の基本方針は、以下のとおりです。
① グループ内キャッシュマネジメント
グループ全体の資金効率を最大化するため、法制度上許容され、かつ経済合理性が認められることを前提として、主としてキャッシュマネジメントシステム(CMS)によるグループ内での資金貸借の実施を最優先としております。
② 外部資金調達
短期の運転資金については、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパー又はその組み合わせ、中長期資金については、金融機関からの借入、社債、株主資本又はその組み合わせにより調達することを基本としております。
安定的で効率的な資金調達のために、複数のコミットメント融資枠を設定する等、取引する金融機関と資金調達手段の多様性を維持しております。
③ 外部資金運用
外部資金運用においては、安全性と流動性を確保した上で、適切な収益を求め、また投機的取引を行ってはならないことを定めております。
④ 財務リスク管理
当社グループは、経営活動を行う過程において、財務上のリスク(信用リスク・流動性リスク・為替リスク・金利リスク・市場価格の変動リスク)に晒されており、当該リスクを回避又は低減するために、一定の方針に基づきリスク管理を行っております。主要な財務上のリスク管理の状況については、定期的に当社の社長及び取締役会への報告を行っております。
また、当社グループの方針として、デリバティブは、実需取引のリスク緩和を目的とした取引に限定しており、投機目的やトレーディング目的の取引は行っておりません。
なお、財務リスク管理の詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 33.金融商品 (2)リスク管理に関する事項 ~(8)市場価格の変動リスク」までをご参照ください。
(8)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資金需要
設備投資、運転資金、外部資源の獲得、借入の返済及び利息の支払い、配当金の支払い、自己株式取得並びに法人税の支払い等に資金を充当しております。
重要な資本的支出の予定及び資金の調達方法については、「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。
② 資金の源泉
主として営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入、社債及びコマーシャル・ペーパーの発行により、必要とする資金を調達しております。
<キャッシュ・フロー>「(2)財政状態及びキャッシュ・フローの状況 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
<有利子負債>当社グループの当年度末現在の有利子負債の返済・償還予定額は以下のとおりです。
(単位:億円)
帳簿価額 | 1年以内 | 1年超~2年以内 | 2年超~3年以内 | 3年超~4年以内 | 4年超~5年以内 | 5年超 | |
短期借入金 | 516 | 516 | - | - | - | - | - |
1年内返済予定の長期借入金 | 122 | 122 | - | - | - | - | - |
1年内償還予定の社債 | 776 | 776 | - | - | - | - | - |
長期借入金 | 1,927 | - | 419 | 116 | 201 | 0 | 1,201 |
社債 | 6,247 | - | 300 | 1,143 | - | 947 | 3,896 |
合計 | 9,589 | 1,415 | 719 | 1,259 | 201 | 948 | 5,097 |
(注)リース負債を除いております。
(長期負債)
社債(1年内償還予定を含む)は、前年度末現在6,666億円、当年度末現在7,023億円、金融機関からの長期借入金(1年内返済予定を含む)は、それぞれ1,153億円、2,050億円です。長期リース負債は、前年度末現在402億円、当年度末現在494億円です。
当年度末現在、長期債務格付は、ムーディーズ・ジャパン㈱ではA1(ネガティブ)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱ではAA-(ネガティブ)、㈱格付投資情報センター(R&I)ではAA(安定的)となっており、同日現在、国際的なたばこ会社の信用格付としてはそれぞれ最高レベルです。
格付は、事業を行う主要市場の発展及び事業戦略の成功、並びに当社グループではコントロールできない全般的な景気動向等、数多くの要因によって影響を受けます。格付は随時、撤回あるいは修正される可能性があります。格付はそれぞれ、他の格付と区別して単独に評価されるべきものです。JT法のもと、当社により発行される社債には、当社の一般財産に対する先取特権が付されております。この権利により、国税及び地方税並びにその他の法定債務を例外とし、償還請求において社債権者は無担保債権者よりも優先されます。
(短期負債)
金融機関からの短期借入金は、前年度末現在1,926億円、当年度末現在516億円です。コマーシャル・ペーパーの発行残高は、それぞれありません。短期リース負債は、前年度末現在135億円、当年度末現在171億円です。
③ 流動性
当社グループは、従来営業活動により多額のキャッシュ・フローを得ており、今後も引き続き資金源になると見込んでおります。営業活動によるキャッシュ・フローは今後も安定的で、通常の事業活動における必要資金はまかなえると予想しております。また、当年度末現在、国内・海外の主要な金融機関からの4,782億円のコミットメント融資枠があり、そのすべてが未使用です。更に、コマーシャル・ペーパープログラム、アンコミットメントベースの融資枠、国内社債発行登録枠及びユーロMTNプログラム等があります。