有価証券報告書-第60期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/28 9:03
【資料】
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【項目】
154項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(経営方針)
広済堂グループは、1949年に印刷会社として創業以来、社名にある「広済」(広く社会に貢献する)を経営理念として、印刷、ITサービス、人材サービス、葬祭サービスなどの各事業を通じ、“人生100年を様々な場面でサポートする広済堂グループ”となることを目指しております。
また、お客さまに必要とされる商品やサービスを提供すべく、お客さまや生活者のニーズの一歩先を読みながら、常に新しいものに挑戦する「進取の精神」で事業展開を進めてまいりました。
当社グループは、社会環境の変化、ライフスタイルや価値観の変化の中で、お客さまに真に必要とされる商品やサービスは何かを探り、提供していく「お客さま第一主義」を今後も追求し、社会から必要とされ、また社会的責任を果たせる企業集団となるよう努めてまいります。
(経営環境及び事業の内容)
当連結会計年度におけるわが国経済は、日米金融政策の相違を主因とする円安が継続し原油や輸入品の価格上昇が続きました。国内物価もインフレ傾向にあり、材料費や燃料費、人件費が上昇いたしました。 当社を取り巻く事業環境につきましては、少子高齢化が進行し、団塊の世代の退職に伴う労働者不足と終身雇用制度の崩壊を背景に転職市場の活性化が継続いたしました。コンテンツ領域では知的財産権(IP)の獲得競争が激化し、グッズ等の周辺商材の開発・販売が過熱する一方、印刷物の小ロット化が加速いたしました。エンディング関連では、東京都内の死亡者数は前年度から減少いたしました。
このような状況のもと、当社グループは葬祭セグメントを成長領域と位置づけ積極的に事業拡大を行ってまいりましたが、より有益な開示を行うため、セグメントを分割いたしました。公益性の観点から安定したサービス提供に努める火葬事業の「葬祭公益」、事業規模と収益力の拡大を図る総合斎場運営事業・葬儀事業を中心とする「葬祭収益」、エンディングにまつわる不動産・金融領域の事業拡大を狙う「資産コンサルティング」の各セグメントを定め、戦略を明確化いたしました。
葬祭収益セグメントでは、2023年4月より東京博善の斎場を改修し、高い稼働率を誇る貸し式場を大幅に増設いたしました。 資産コンサルティングセグメントでは貸金業、不動産仲介業といった許認可等の取得が完了し事業拡大の準備が整いました。 情報セグメントでは、縮小する印刷市場で利益創出を図るため、コスト改革を進めました。他方、BPO事業では事業の拡大を見込み人員増強を図りましたが、受注拡大に至らず短期的には減収要因となりました。 人材セグメントでは、経営の効率化と東北・北陸地方に広く展開する人材事業のシナジー拡大を企図し事業会社を統合いたしました。
当社グループのセグメントごとの経営環境の認識は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度において、「葬祭セグメント」を「葬祭公益セグメント」「葬祭収益セグメント」「資産コンサルティングセグメント」と区分の変更を行っております。また、調整額として全社費用に含めていたグループ会社の経営指導料を、報告セグメントの各グループ会社に営業費用として計上する方法に変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
・葬祭公益セグメント
葬祭公益セグメントは、火葬事業で構成されており、当社子会社の東京博善株式会社の保有する都内6か所の総合斎場で行事を担っております。民営企業として収益力の向上が求められる中で公益性の高い火葬事業と利益成長を図る他の事業とを区分するため、当事業年度より葬祭公益セグメントとして開示することといたしました。
火葬事業は専ら東京都23区内で事業を営むため、売上は東京都近郊の死亡者数と強い相関関係があります。当期は冬期の気温が比較的温暖に推移し、前年比で死亡者数が減少、火葬件数も前期から減少いたしました。他方、円安やインフレの影響によりガス・電気料金の高止まりが継続いたしました。これらに対処すべくステークホルダーのご理解の下、燃料費特別付加火葬料の設定継続や繁忙期の友引営業実施等、安定継続したサービス提供のため必要な施策を講じてまいりました。その結果、葬祭公益セグメントは前年同期比で減収増益となりました。
・葬祭収益セグメント
葬祭収益セグメントは、主に総合斎場運営事業及び葬儀サービス事業で構成されており、東京博善株式会社にて総合斎場を運営する他、株式会社広済堂ライフウェル及び株式会社グランセレモ東京にて葬儀事業を展開しております。 総合斎場運営事業につきましては、当期増設した新式場の利用が順調に拡大し増収増益となりました。また、感染症への懸念が払拭され来場者数が大幅に増加したことにより提供サービス各種で増収となりました。
葬儀事業につきましては、提携先の拡大や宣伝広告等により葬儀施行数が順調に拡大し創業2年目で営業利益2億円を達成する好業績となりました。 この他、8月には前年度に譲受した日本国内最大規模のエンディング産業展「ENDEX」を主催、参加者・出展者より好評をいただきました。その結果、葬祭収益セグメントは前年同期比で増収増益となりました。
・資産コンサルティングセグメント
資産コンサルティングセグメントは、主に株式会社広済堂ファイナンスの提供する金融サービス及び東京博善あんしんサポート株式会社の提供する相続相談・不動産仲介事業で構成されております。本セグメントは、相続に関連するコンサルティングサービスの提供開始を契機に相応規模の事業として収益の目途が立ったため、当期より葬祭セグメントから独立して開示しております。 相続相談・不動産仲介事業では、グループのリソースを活用した各種営業施策が奏功し不動産仲介売上を中心とする収益モデルが確立しつつあります。 金融サービス事業では、株式会社広済堂ファイナンスにて貸金業の許可を取得し、2023年7月より利息収入の計上を開始いたしました。他方、許可の取得が期初の想定から遅延し一部収益が営業外での計上となりました。
・情報セグメント
情報セグメントは、情報ソリューション事業で構成されており、主に株式会社広済堂ネクストにて出版・商業印刷を始めとする印刷関連ソリューション、IT受託開発を中心としたデジタルソリューション、データ入力代行やコールセンター業務などお客様の事業をサポートするBPOサービス等の事業を展開しております。 印刷事業では、商業印刷領域が通年で好調となりましたが、出版印刷領域では電子書籍の台頭による案件減少が加速し不調が継続しました。
BPO事業では、第3四半期まで堅調に推移したものの、第4四半期に見込んだ案件の公示開始が遅れ、受注が大幅に減少いたしました。IT事業では、斎場予約システムの販売を開始する等、新たな収益源の獲得に向けた取り組みも進みつつあります。その結果、情報セグメントは前年同期比で減収減益となりました。
・人材セグメント
人材セグメントは、人材サービス事業で構成されており、求人媒体・HRテック事業を始めとして、人材紹介・人材派遣、RPO(リクルートメントプロセスアウトソーシング)、海外(ベトナム等)における人材紹介、人材育成・研修、日本語教育、留学サポート等の事業を手掛け、人材の発掘から採用、教育・研修までトータルな人材ソリューションを提供しております。 求人媒体・HRテック領域は、他社メディアの攻勢により減収も、当期より方針を転換し自社サービス(HRテック)への新規投資取り止めを始め、固定費を抜本的に見直したことから増益となりました。人材派遣領域では、主力とする東北・北陸地方で派遣人材の獲得が伸び悩み、小幅な増益に留まりました。人材紹介事業では、旺盛な求人ニーズを取り込むため体制を強化いたしましたが、費用増が先行し減益となりました。その結果、人材セグメント全体としましては前年同期比で減収増益となりました。
(対処すべき課題)
今後のわが国経済の見通しにつきましては、米国・欧州のインフレ継続を背景に円安・資源高の傾向が当分の間継続するものとみられ、光熱費や材料費の高騰も継続することが見込まれます。また、労働人口の減少による人手不足を原因とする賃金コスト上昇や、海外人材の活用についても継続するものとみられます。 エンディング領域につきましては、高齢化を背景に緩やかな市場拡大が継続していくものと考えられる一方、異業種参入が継続しており、競争が激化。印刷領域につきましては、縮小傾向が継続。コンテンツ領域につきましては、IP獲得競争が激化するとともにグッズ開発等の周辺領域の拡大が継続するものとみられます。
このような状況のもと、当社グループは「中期経営計画3.0」にて式場事業の成長及び資産コンサルティング事業の立ち上げを推進いたしました。市場の一層の期待に応えるべく事業拡大の機会を探ってまいりましたが更なる収益力の強化として「新たな式場増築計画」「資産コンサルティング事業の拡大」を描く「中期経営計画4.0」を策定いたしました。以前より掲げております基本方針を継続しつつも、より具体的かつ発展的な内容に更新し、2026年度までに連結売上高440億円、連結営業利益94億円を目指してまいります。
(中期経営計画)
新中期経営計画「中期経営計画4.0」について
1.基本方針
(1)業績の更なる向上
(2)長期的成長へ投資
(3)株主還元の更なる充実
2.定量目標
当社グループ
2024年度
計画
2025年度
計画
2026年度
計画
売上高39,70041,93044,000
営業利益8,0008,8009,400

3.各事業セグメントでは、以下の取り組みを実施
(1)葬祭公益セグメント
引き続き社会的使命を果たし、東京都民の利便性を向上させます。
(2)葬祭収益セグメント
葬儀式場の更なる増築に着手し、中長期的な収益力向上を図ります。
(3)資産コンサルティングセグメント
営業利益10億円の事業に育て、長期的には中心事業にできるよう推進いたします。
(4)情報セグメント
既存領域での収益を維持しつつ、広告代理事業やグッズ領域など周辺領域への拡大を進めます。
(5)人材セグメント
東北・北陸地域での強みを生かすため他社連携を強化します。派遣会社については統合によるシナジーを足掛かりにサービス提供地域の拡大を目指します。