有価証券報告書-第97期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 11:16
【資料】
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【項目】
162項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、企業活動において全構成員が共有すべき基本的・普遍的な価値観を表すものとして、基本理念と行動基準を定めております。
<基本理念>・ 「社会」、「生命」、「環境」に貢献する。
・ 株主、顧客・取引先、地域社会、従業員を大切にする。
・ 遵法精神を重んじ、透明な経営を行う。
<行動基準>・ 社会から信頼される事業活動を行うため、社会規範、法令、会社の諸規定を遵守し、高い倫理観と良識を持って行動する。
・ ものづくりに際しては、地球環境との調和を図り、常に安全確保に万全を期し、無事故・無災害に努める。
・ 相互協力、相互理解により人権を尊重し、風通しの良い働きやすい職場をつくる。
・ 企業活動の透明性を保つため、企業市民としてコミュニケーションを重視し、企業情報を適時、的確に開示する。
当社グループは、全構成員が、この基本理念と行動基準を常に意識し行動することで、時代や環境の変化に対応できる強靭な開発型企業として成長し、社会の発展に貢献できる企業を目指しております。
(2) 目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、Challenge For 2020 をスローガンとして創立100周年の2020年に“強くて、信頼されるケミカル・カンパニーとしてのブランド力のある会社”を目指しており、2020年度に向けて2018年度からの3ヵ年を対象とする「第7次中期経営計画(2018~2020年度)」(以下、本中計といいます。)を策定しております。
① 創立100周年(2020年)に向け目指す企業グループ像(あるべき姿)
“強くて、信頼されるケミカル・カンパニーとしてのブランド力のある会社”
「強いケミカル・カンパニー」
・ 自社技術によりグロ-バル競争力ある事業を展開
・ 技術革新に支えられた持続的成長と安定的収益を実現する、高付加価値・高収益事業を展開
「信頼されるケミカル・カンパニー」
・ 良き企業市民として環境活動や社会貢献活動を行い、地域住民との対話、ステークホルダーへの価値増大を重視する、従業員が誇りを持てる会社
② 本中計での取り組み方針
本中計では、既存事業と成長基盤の強化に向けて取り組んだ前中期経営計画の事業課題を基本的に引き継ぎ、既存事業の守りをしっかり固めつつ、成長に向けた攻めの取り組みを強化し、すべてのステークホルダーにとって魅力あるケミカル・カンパニーの実現を目指します。
最終2020年度には、連結売上高1,310億円、連結営業利益121億円の達成を目標に、期間利益を着実に積み上げながら株主資本の充実を進めるとともに、外部環境の変化にも耐え得る強固な収益基盤と財務基盤を築き上げ、本中計期間中の出来る限り早い時期に復配を果たせるように努めてまいります。
無機化学事業は、これまで国内の塗料・インキの各業界に酸化チタンを安定供給してきた実績を土台に市場や需要家が求める価値あるオンリーワンの素材を開発し、それをグローバルに展開することを目標に、現状の収益力の維持に向けた“守り”と成長に向けた“攻め”を骨子とした課題に取り組みます。具体的には、酸化チタンは、国内トップのシェアと技術力を徹底維持し守りを固めつつ、国内で順調に販売を伸ばす超耐候性顔料銘柄に加え、新たに開発したつや消し塗料用や意匠性の顔料など、当社独自の粒子合成技術や表面処理技術を駆使した高機能・高付加価値な製品の拡販に向けた攻めの取り組みを強化します。機能材料は、高度な微粒子化技術と豊富な製品のラインアップを強みに、今後も成長が見込める電子部品材料と導電材料を核に売上成長の加速に取り組みます。そして、開発面では、無機・有機の事業領域をこだわることなく、時代を先読みした斬新なアイディアで新しい素材や技術の開発を推し進めます。
有機化学事業は、これまで高い安全性と効果の高い農薬を生み出してきた有機合成技術と世界各国で農薬登録を取得し、現地市場に投入してきた開発・登録力に磨きをかけ、世界の農薬マーケットで存在感のある研究開発型メーカーとしての地歩を着実に強化して行きます。具体的には、世界的に農薬規制が強化されて行く中、世界各国で確実に自社剤の農薬登録の取得と維持を進めながら、販売面では当社剤の普及販売方針を徹底できる国内外の自主推進販売拠点の拡充、強化に取り組む他、生産面では製造コストの一段の引き下げに取り組み、競争力を強化します。研究開発では環境と人にやさしい革新的な新規農薬開発のステージアップに取り組みます。これら取り組みを進めることで、現有のビジネス基盤をしっかり守りつつ、主要市場での新規剤の普及拡販や新興諸国での成長需要の取り込みに向けた攻めの取り組みを推進します。
将来の成長基盤作りとして取り組む動物薬やバイオ医薬など新規事業の開発については、早期収益獲得を念頭に、財務に与える影響を軽減しながら効率的な事業開発を推進します。具体的には、動物薬は2018年中に立ち上げる国内販売から確実な成果を得て、欧米での開発を加速させます。また、大阪大学と共同で開発するバイオ医薬HVJ-Eは、臨床治験を着実に進めながら、当社グループにない機能を補完する外部との提携を早期に実現し、当社グループ初の抗がん剤を大きく育てて行きます。
③ 経営数値目標(連結ベース)
(金額:億円)2018年度
計画
2019年度
計画
2020年度
計画
売上高1,0901,2001,310
営業利益(営業利益率)44 (4%)80 (7%)121 (9%)
経常利益3369108
親会社株主に帰属する当期純利益184981
ROE(自己資本利益率)3%7%10%
為替レート(期中平均)110円/US$、130円/Eur

(3) 経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、創立100周年の2020年に目指すべき企業グループ像を“強くて、信頼されるケミカル・カンパニーとしてブランド力のある会社”と2009年に定め、以来3次にわたる中期経営計画でその実現に向け取り組んでまいりました。2018年度より取り組む第7次中期経営計画では、その最終段階として既存事業の守りをしっかりと固めつつ、成長に向けた攻めの取り組みを強化し、本中計期間中の出来る限り早い時期での復配を果たし、すべてのステークホルダーにとって魅力あるケミカル・カンパニーへと成長を遂げるべくスタートしました。
初年度となった2018年度は、酸化チタンをはじめとする無機化学事業の堅調な需要を背景に、業績は中計目標を大きく上回り、3期連続の営業増益を達成できるとともに、昨年6月には復配を果たすことができましたが、2年目となる2019年度は、想定を超える事業環境の悪化に直面し、業績は一転して中計目標を下回りました。無機化学事業では、アジアを中心とした酸化チタン需要の減退と市況の低下に加え、主原料であるチタン鉱石価格が高止まりするなどで業績は販売、原価の両面から悪化しました。有機化学事業では、主力農薬の販売は、海外で殺虫剤が大きく伸びるなどプラス面があったものの、世界各地で発生した異常気象の影響を受けるなどで業績は伸び悩みました。
最終年度となる2020年度は、新型コロナウイルス感染症のさらなる感染拡大と長期化による業績への影響が懸念されます。2020年度においては上期中の世界経済の低迷は避けられないものの、下期からは回復軌道に乗るものと想定しておりますが、今後さらに新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する場合には、少なからず当社グループの業績に影響を与える可能性があります。このような状況の中、当社グループは、事業の守りをしっかりと固めつつ、次の攻めに転じるための施策に着実に取り組んでまいります。
無機化学事業では、逆風の事業環境においても安定した収益を確保できる事業構造への転換を進めるべく、汎用品から高機能・高付加価値な製品の開発・販売に軸足を置いた取り組みを一層加速させます。具体的には、酸化チタンでは、国内で順調に販売を伸ばす超耐候性銘柄の海外での販売拡大と需要家側で評価が進む艶消し銘柄の本格的な販売に向けた取り組みを強化します。機能材料では、自動車の電装化の進展と5G(第5世代通信システム)導入により需要拡大が見込まれる電子部品向け高純度酸化チタンやチタン酸バリウム、そして帯電防止機能を持った導電性材料を核に伸び行く需要を確実に取り込むべく、開発、生産、販売のそれぞれの体制整備を着実に進めて行きます。
有機化学事業では、減収傾向にある主力農薬の業績を反転させ、早期に成長路線に回帰させるべく、自社剤の価値最大化に向けて取り組みます。販売面では、成長する海外需要を取り込むべく、地域毎のニーズを見極め、それぞれの市場特性に応じた販売戦略を策定するなどで販売量の最大化を目指します。また、売上に占める自社開発剤の比率が高い当社の特徴を活かした混合剤や新しい製剤品などで製品ラインアップを拡充する他、販売する地域や適用対象作物の拡大など開発力強化に取り組みます。生産面では、原体、中間体の最適な生産・調達体制の確立に向けて不断の見直しを進める他、製造コスト低減と品質向上に取り組み、自社剤のコスト競争力を強化してまいります。これら自社剤の価値を最大化させる取り組みを通じて、収益力の強化と持続的な成長の確保に努めてまいります。
農薬以外では、国内で上市した世界初の犬用抗膵炎薬は市場への浸透を進めながら販売拡大につなげるとともに、欧米での展開に向けた開発を加速して行きます。また、既に第2相臨床試験にまで進む大阪大学と共同で開発するバイオ医薬HVJ-Eについては、当社グループにない機能を補完すべく、外部との早期提携実現に向けて取り組みます。