有価証券報告書-第155期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/24 11:09
【資料】
PDFをみる
【項目】
167項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社は、2016年5月に策定した「トクヤマのビジョン」において、トクヤマグループの存在意義を「化学を通じて暮らしに役立つ価値を創造する」と定めました。トクヤマグループが培ってきた化学技術を用いて、新しい価値を創造し、提供し続けることを通じて、人々の幸せや社会の発展に貢献していきます。
(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
2016年5月に策定した中期経営計画において、当社は次の2点を中長期の経営戦略とし、計画初年度から10年後の2025年度までの達成を目指してまいります。
① 経済環境の変動に強く、持続的に成長する強靭な事業体質への転換
特殊品・ライフアメニティー・新規開発品などの成長事業においては、特有技術で先端材料の世界トップを目指します。セメント・化成品といった当社の伝統事業では、競争力で日本トップを目指します。
② 従来の仕事のやり方の抜本見直しによる全社的な低コスト体質への転換
原燃料、修繕費、物流費といった主要コスト項目について、従来とは異なる部門横断的なアプローチや戦略的な設備投資実施による削減を目指します。
また、目標とする経営指標は、2020年度末時点でROA(営業利益/資産合計)10%以上、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)55日以下、D/Eレシオ1.0倍以下としています。
※文中における将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末時点において当社グループが判断した一定
の前提に基づいたものです。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、その達成を保証するもので
はありません。
(3) 経営環境
セメント・化成品といった当社の伝統事業においては国内市場で人口減少に伴い需要の減少が見込まれる一方、特殊品・ライフアメニティーといった成長事業では市場の拡大が期待されています。
(4) 会社の対処すべき課題
今年度は、中期経営計画の中間年であることから、進捗状況や経営環境を踏まえ、計画の棚卸しを行いました。2025年度の目指す姿「先端材料で世界トップ」「伝統事業で日本トップ」の実現に向けて、再成長できる企業体質に変革していくため、明確な経営戦略を定め重点課題への取り組みを加速させてまいります。
また、当社グループが長期にわたって持続的な成長を目指すうえでも、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献が不可欠となっています。環境や社会の課題を的確にとらえ、グループ全体の企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指していきたいと考えています。
① 組織風土の変革
中期経営計画の達成には、組織風土の変革が最も重要であるとの認識のもと、人事制度の改革を行い、人材の育成に注力しています。管理職、シニア層の人事評価制度の改定に続き、組合員の人事評価・資格制度全般の改定を行い、2020年度からの導入を目指します。優秀な社員の早期抜擢・登用により、人材育成と組織の活性化を期待しています。
また、少人数での社長との座談会を実施し、経営トップと直接対話することで、経営理念の浸透を図り、組織風土の変革を進めてまいります。
② 事業戦略の再構築
成長事業であるICT関連分野を強化するため、フォトレジスト用現像液および高純度窒化アルミニウム粉末の製造プラントの増設を決定しました。供給体制をより一層拡充することで、さらなる安定供給を図るとともに、幅広い用途展開を推進してまいります。
また、半導体関連製品事業の拡大・競争力向上のための新たな海外拠点として、台湾に研究所を開設しました。本研究所は、半導体の微細化・高集積化に伴い半導体メーカーから寄せられるケミカル・マテリアルの高純度化要求に対応すべく、新規製品創出に向けた情報収集・マーケティング拠点として運営するとともに、現地の半導体メーカー・研究機関などと共同開発を行う開発拠点としての役割を担います。
今後はさらに、当社の技術力をベースに、新たな事業を創出していくことが重要な課題と認識しております。そのためには、社内リソースの活用だけでなく、オープンイノベーションを通じて事業の拡大やM&A等を進め、様々な可能性を追求してまいります。
③ グループ経営の強化
総合物流を手掛ける徳山海陸運送株式会社の全株式を取得して、当社の完全子会社と致しました。これにより既存のグループ会社である株式会社トクヤマロジスティクスと連携して物流ネットワークの拡充を図り、グループ全体の顧客に対する安定的な製品供給が実現されることが期待されます。
④ 財務体質改善
有利子負債の削減が進み、中期経営計画目標の一つであるD/Eレシオ1.0倍以下を2年前倒しで達成しました。
借換え手段の多様化による財務戦略の機動性と柔軟性の向上及び金融費用の削減を行うことを目的として、劣後ローンのリファイナンスを実施しました。
財務目標の達成に向けて、経営の効率化や有利子負債の削減を進め、健全な財務体質の構築に向けた取り組みを継続してまいります。
⑤ SDGs(持続可能な開発目標)への取り組み
持続可能な社会の実現にむけて、当社グループに関わる社会的な課題を抽出しマテリアリティ(重要な取り組み課題)として特定しました。これらの重要課題に取り組むことは、当社の存在意義「化学を通じて暮らしに役立つ価値を創造する」に通じています。
この存在意義のもと、マテリアリティへの取り組みにより、当社グループの企業価値向上と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(5) 会社の支配に関する基本方針
① 基本方針について
当社は、1918年の創業以来、一貫した「ものづくり」へのこだわりと顧客をはじめとしたステークホルダーの皆様との長期的な信頼関係を基盤とし、ソーダ灰・苛性ソーダ・塩化ビニル樹脂等の化成品セグメント、セメント・建材等のセメントセグメント、多結晶シリコン・乾式シリカ・窒化アルミニウム・電子工業用高純度薬品等の特殊品セグメント、微多孔質フィルム・歯科器材・イオン交換膜等のライフアメニティーセグメント、及びその他セグメントの5つのセグメントに区分される幅広い事業をグループ会社とともに展開しています。
その事業特性は、将来の事業環境変化を想定しつつ、経営資源の先行投入を行い、継続的な企業価値の向上を図るというものです。これは、事業を企画し、技術を開発し、設備を建設し、顧客をはじめとしたステークホルダーの皆様との信頼関係、連携関係を強化し、投入経営資源の回収を図るという取り組みです。こうした中長期的な視点からの取り組みの集積結果と経営資源の先行投入が当社の企業価値の源泉と考えております。
従って、このような中長期的な視点からの経営に取り組みつつ、経営の効率化や収益性向上を行うには、専門性の高い業務知識、営業や技術ノウハウを備えた者が、法令及び定款の定めを遵守して、当社の財務及び事業の方針の決定について重要な職務を担当することが、当社株主共同の利益及び当社企業価値の向上に資するものと考えております。
以上が当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針です。
② 不適切な支配の防止のための取り組みについて
当社は、大規模な当社株式等の買付行為(以下、「大規模買付行為」という。大規模買付行為を行う者を「大規模買付者」という)が行われ、その大規模買付行為が当社株主共同の利益及び当社企業価値を著しく損なうと判断される場合には、株主共同の利益及び企業価値の保護のために、対抗措置を講じる必要があると認識しています。
大規模買付行為が行われた場合、これを受け入れるか否かは、最終的には当社株主の皆様のご判断にゆだねられるべきものであり、そのためには、当該大規模買付者からの十分な情報の提供が必要であると考えます。また、当該大規模買付行為に対する当社取締役会による評価、意見及び事業特性を踏まえた情報等の提供は、株主の皆様が当該大規模買付を受け入れるか否かのご判断のために重要であり、株主共同の利益に資するものと理解しています。
当社は、株主共同の利益及び企業価値の保護のために、大規模買付行為に対して大規模買付ルールを定めました。
大規模買付ルールとは、大規模買付者に対して、買付行為の前に、当社取締役会に十分な情報提供をすること及びその情報に基づき、当社取締役会が大規模買付行為を十分に評価・検討し、意見や代替案の取りまとめの期間を確保することを要請するものです。
このルールが遵守されない場合、あるいは、遵守された場合でも株主共同の利益及び企業価値を著しく損なうと判断される場合には、当社取締役会は株主総会の承認を得ることを条件に会社法第277条以下に規定される新株予約権無償割当てによる措置(以下、「対抗措置」という)をとり、大規模買付行為に対抗する場合があります。
以上のような「当社株式等の大規模買付行為に関する対応方針」(以下「本対応方針」という)の更新につき、2018年5月22日開催の当社取締役会で決定し、2018年6月22日開催の第154回定時株主総会においてご承認をいただきました。
なお、本対応方針の詳細をインターネット上の当社ウェブサイト(https://www.tokuyama.co.jp/)に掲載しております。
③ 上記②の取り組みについての取締役会の判断について
当社取締役会は、上記②の「不適切な支配の防止のための取り組みについて」が、当社の基本方針に沿って策定され、株主共同の利益及び企業価値の保護に資するものと理解しております。
当社は、本対応方針において取締役会の恣意的な判断を防止するためのチェック機関として特別委員会を設置し、特別委員会の勧告を最大限尊重しなければならないと定めております。さらに、取締役会が対抗措置を発動する場合は、株主総会を招集し、その承認を得なければならないとしております。
従って、上記②の取り組みは取締役の地位の維持を目的としたものではありません。