有価証券報告書-第156期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 10:51
【資料】
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【項目】
172項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社は、2018年に創業100周年の歴史的な節目を迎え、次の100年に向けて新たな一歩を踏み出しました。
2016年にスタートした中期経営計画「再生の礎」では、改めて当社の果たすべき役割を明確にし、経済環境の変動に強く、持続的に成長する強靭な事業体質に転換すべく、「先端材料世界トップ」「伝統事業日本トップ」を目指し、成長戦略を推進しています。コスト競争力のある事業構造の実現に取り組み、一層の収益の拡大・安定化を目指します。
また、企業の成長と社会の成長は両輪であるとの考えのもと、地球規模での重要な課題解決に向けて尽力してまいります。昨年より、徳山製造所ではCO2の大幅削減、エネルギーの完全利用を促進する新たな改革をスタートしました。現在、トクヤマグループの持続的な成長に重要な影響を与えるマテリアリティ(重要課題)の特定を行い、世界の共通目標であるSDGs(持続可能な開発目標)を当社の事業活動に組み込み、変化を続ける社会の要請に対し、さまざまな社会問題を解決する製品の提供に努めていく所存です。
そして、次の100年においても社会に必要とされ、お客さまに選ばれ続けるトクヤマグループであり続けたいと考えています。
(2) 会社の価値創造プロセス
当社は「化学を通じて暮らしに役立つ価値を創造する」ため、100年にわたって培ってきた経営資源をベースに、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの視点から事業活動を展開するCSR経営を推進し、当社のコア技術を生かして社会課題の解決につながる製品を提供することを通じて、サステナブルな社会づくりに貢献していきます。


(3) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
2016年5月に策定した中期経営計画において、当社は次の2点を中長期の経営戦略とし、計画初年度から10年後の2025年度までの達成を目指してまいります。
① 経済環境の変動に強く、持続的に成長する強靭な事業体質への転換
特殊品・ライフアメニティーなどの成長事業及び新規開発品においては、特有技術で先端材料のニッチマーケットでマーケットシェアの拡大を目指します。セメント・化成品といった当社の伝統事業では、コスト競争力の強化を目指します。
② 従来の仕事のやり方の抜本見直しによる全社的な低コスト体質への転換
原燃料、修繕費、物流費といった主要コスト項目について、従来とは異なる部門横断的なアプローチや戦略的な設備投資実施による削減を目指します。
中期経営計画の経営指標の進捗状況は以下の通りです。

2020年度は現中期経営計画の最終年度でありますが、新型コロナウイルスの感染症拡大により世界経済への深刻な影響は避けられず、経営環境は厳しいものとなっております。
当社業績への影響は、第2四半期より徐々に薄れ、第3四半期以降当社グループの事業環境は回復に向かうものと想定しております。
※ 文中における将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末時点において当社グループが判断した一定の前提に基づいたものです。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。
(4) 会社の対処すべき課題
2025年度の目指す姿「先端材料世界トップ」「伝統事業日本トップ」の実現に向けて、再成長できる企業体質に変革していくため、明確な経営戦略を定め重点課題への取り組みを加速させてまいります。
また、当社グループが長期にわたって持続的な成長を目指すうえでも、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献が不可欠となっています。環境や社会の課題を的確にとらえ、グループ全体の企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指していきたいと考えています。
① 組織風土の変革
技術革新が加速し、世界が劇的に変化している中で成長を持続的なものとするためには社員全員が危機感を共有し、意識と行動を変える必要があると認識しています。管理職、シニア層の人事評価制度の改定に続き、社員が受け身の姿勢から脱却し、新しいことに挑戦し成長していくために一般社員の人事制度改定を行いました。優秀な社員の早期抜擢・登用により、人材育成の強化と組織の活性化を期待しています。また積極的なキャリア採用を実施して、組織の活性化を図っています。
② 事業戦略の再構築
成長事業であるICT関連分野を強化するため実施していました高純度窒化アルミニウム粉末及びフォトレジスト用現像液製造プラントの増設工事が竣工しました。これらはIoT、ビッグデータ、人工知能をはじめとしたデータ利活用に関連した技術革新に必要不可欠な原料であり、今後ますます需要が増加するものと期待されています。今回の増設により窒化アルミニウム粉末の生産能力を年産1.4倍、現像液は年産1.75倍に引き上げ、供給体制も一層拡充されました。顧客の期待に応え続けるため、安全・安定操業を継続し、さらなる事業拡大に繋げていきます。今後も成長事業に対して、積極的な設備投資等の資金投入を続けてまいります。
③ グループ経営の強化
樹脂サッシ及び関連製品、住宅用建築資材の製造・販売を行う当社100%出資子会社である株式会社エクセルシャノンに第三者割当増資によるパナソニック株式会社からの出資を受けることを決定しました。今後、パナソニック株式会社のハウジングシステム事業部が持つ建築資材の販路などを活用した新たな市場開拓、及びものづくり力強化などで協業が期待されます。お互いのノウハウを融合し事業競争力を強化することで、樹脂サッシ市場の拡大を図り、高まる省エネルギーニーズに応えていきます。
④ 財務体質改善
有利子負債の削減が進み、中期経営計画目標の一つであるD/Eレシオ1.0倍以下を2年前倒しで2018年度において達成しました。今年度は引き続き有利子負債の削減と期間利益の積み上げに取り組み、D/Eレシオは0.69倍となりました。また、収益基盤・財務基盤の強化・拡充が着実に進んでいることが評価され、発行体格付はA格に復帰しました。今後も経営の効率化や有利子負債の削減を進め、健全な財務体質の構築に向けた取り組みを継続してまいります。
⑤ SDGs(持続可能な開発目標)への取り組み
持続可能な社会の実現にむけて、当社グループに関わる社会的な課題を抽出しマテリアリティ(重要な取り組み課題)として以下の9項目を特定し各課題の解決に取り組んでいます。これらの取り組みは、当社の存在意義「化学を通じて暮らしに役立つ価値を創造する」に通じています。