四半期報告書-第158期第2四半期(2023/07/01-2023/09/30)

【提出】
2023/11/13 9:34
【資料】
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【項目】
46項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において帝人グループが判断したものです。
(1) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
1) 経営成績
帝人グループの当第2四半期連結累計期間の経営成績は、売上高が前年同期対比で0.8%減の5,065億円となり、営業利益は同30.1%減の100億円となりました。経常利益は前年同期対比49.8%減の100億円、複合成形材料の中国事業撤退に係る損失計上や税効果が認識できない海外子会社の赤字幅拡大等に伴う税負担率の上昇などにより、親会社株主に帰属する四半期純損失は5億円(前年同期は76億円の親会社株主に帰属する四半期純利益)となりました。営業利益に関して、マテリアル事業領域では、一部用途で外部要因による需要軟化影響を受けるも、販売価格改定の効果や原燃料価格の低下影響等により損失は縮小しました。また繊維・製品事業は、販売が好調に推移し増益となりました。ヘルスケア事業領域においては、痛風・高尿酸血症治療剤「フェブリク」の後発品参入による販売数量の減少や、薬価改定影響等により減益となりました。またIT事業は、販売が好調に推移し増益となりました。
当第2四半期連結累計期間におけるセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
なお、第1四半期連結会計期間より、マテリアル事業統轄、ヘルスケア事業統轄で推進していた新事業組織につき、それぞれ「マテリアル」セグメント、「ヘルスケア」セグメントから「その他」セグメントへ変更しています。これは、2023年2月に公表した「帝人グループ収益性改善に向けた改革」に基づき、経営体制の見直しを行う中、将来に向けた協創によるイノベーション創出をコーポレートが管轄し横断的に実施することを目的に、新事業組織をコーポレート新事業本部に再編・集約したことに伴うものです。これにより前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
また、第1四半期連結会計期間より、セグメントの記載順序を変更しています。
◆マテリアル事業領域:自動車関連用途を中心に需要は堅調に推移するも一部用途で経済減速による需要減の影響を受けたほか、アラミドにおける前年度の原料工場火災影響や一部生産設備の部品の調達制約等の影響で販売量が減少。一方、前年度の原燃料価格高騰に対応して進めてきた販売価格改定などの収益性改善効果発現や原燃料価格の低下が利益に貢献
売上高は2,155億円と前年同期対比70億円の減収(3.2%減)、営業損失は53億円と前年同期対比4億円の損失の縮小となりました。
アラミド事業分野では、主力のパラアラミド繊維「トワロン」において、旺盛な需要が継続しましたが、前年度第3四半期に発生した原料工場火災の影響が上期前半に残り、また一部生産設備の特殊補修部品の調達に時間を要していることなどから販売量が減少しました。一方、労務費単価の高騰を含む工場固定費等の増加や前年度コスト増加に伴う期首在庫高などの影響を受けたものの、前年度の原燃料価格高騰に対応して進めてきた販売価格改定の効果や天然ガス価格の低下が利益に貢献し、前年同期対比減収・増益となりました。
樹脂事業分野では、主力のポリカーボネート樹脂において、中国での景気回復遅延や欧州での経済減速などにより需要が低迷し、販売量は前年同期対比減少しました。一方、原燃料価格の下落を受け販売価格が低下しましたが、スプレッドは概ね前年同期並みを維持しました。結果、前年同期対比減収・減益となりました。
炭素繊維事業分野では、航空機向け用途で旅客需要の回復が継続する中、航空機メーカーでの部品調達の制約により販売増に至らず、またレクレーション用途等ではサプライチェーンにおける在庫調整等により販売量が減少しました。原燃料価格低下が利益に貢献したものの、前年同期対比減収・微減益となりました。
複合成形材料事業分野では、米国の自動車販売台数は堅調に推移したものの、Teijin Automotive Technologies*(米)では一部プログラムでの需要減を受け、前年同期対比販売量は減少しました。一方、前年度の原材料価格高騰に対する販売価格改定やコスト削減など、北米での収益性改善効果が発現し、前年同期対比では増収・増益となりました。
* 自動車向け複合成形材料事業のグローバル事業ブランド
◆繊維・製品事業
売上高は1,585億円と前年同期並み、営業利益は70億円と前年同期対比19億円の増益(38.0%増)となりました。
衣料繊維は、北米や中国向けのテキスタイル・衣料品の販売が好調に推移し、国内向けも衣料品の販売好調が継続しました。産業資材では、水処理フィルター向けのポリエステル短繊維、人工皮革、インフラ補強材の販売が好調に推移しました。
◆ヘルスケア事業領域:在宅医療機器のレンタルが堅調に推移。一方で、医薬品「フェブリク」は、後発品参入により販売量が減少し収益に影響
売上高は707億円と前年同期対比72億円の減収(9.3%減)、営業利益は82億円と前年同期対比71億円の減益(46.4%減)となりました。
医薬品分野では、「フェブリク」の後発品が2022年6月より参入したことにより、販売量が減少しました。さらに、長期収載品を中心に2023年4月の薬価改定が収益に影響しました。一方で、「ソマチュリン*1」や「ゼオマイン*2」が順調に販売量を拡大しました。また2023年1月に上市した骨粗鬆症治療剤「オスタバロ」の採用活動を進めました。
*1 先端巨大症・下垂体性巨人症/甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍/膵・消化管神経内分泌腫瘍治療剤 ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。
*2 上肢・下肢痙縮治療剤 ゼオマイン®/Xeomin®は、Merz Pharma GmbH &Co, KGaA(独)の登録商標です。
在宅医療分野では、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場において、検査数が回復基調となり、レンタル台数の増加が継続しました。また、在宅酸素療法(HOT)市場では、レンタル台数は前年同期並みの高い水準を維持しました。2023年7月には携帯型酸素濃縮装置新機種「ハイサンソポータブルαⅢ」を上市しました。
◆IT事業
売上高は342億円と前年同期対比70億円の増収(25.6%増)、営業利益は41億円と前年同期対比6億円の増益(17.7%増)となりました。
ネットビジネス分野では、電子コミックサービスにおいて広告宣伝活動が奏功し販売が好調に推移しました。ITサービス分野では、企業向けを中心に概ね堅調に推移しました。
◆その他(電池部材・メンブレン事業、再生医療・埋込医療機器事業等)
売上高は275億円と前年同期対比33億円の増収(13.8%増)、営業損失は5億円と前年同期対比2億円の損失の縮小となりました。
電池部材事業分野では、リチウムイオンバッテリー用セパレータ「リエルソート」が前年同期に引き続き、好調な販売を維持しました。また、高機能メンブレン「ミライム」は、半導体用途向けの販売が伸長しました。
人工関節・吸収性骨接合材等の埋込医療機器事業は、COVID-19の5類感染症移行後、手術件数が回復傾向にあり、販売量は堅調に推移しました。また、2023年7月に、心・血管修復パッチ「シンフォリウム」が製造販売承認を取得しました。
再生医療事業では、(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリングは概ね堅調に推移しました。またCDMO*事業の立ち上げが順調に進捗しています。
* Contract Development and Manufacturing Organization 製品の開発・製造を受託する機関
2) 財政状態
当第2四半期連結会計期間末の総資産は、主要通貨に対する円安の進行に加え、現預金の増加や棚卸資産の増加等により、前期末対比782億円増加の13,207億円となりました。
負債は、主要通貨に対する円安の進行に加え、借入金の増加等により、前期末対比570億円増加の8,484億円となりました。
純資産は、主要通貨に対する円安の進行による為替換算調整勘定の増加や保有株式の時価評価に関わる評価差額の増加等により、前期末対比212億円増加の4,723億円となりました。
なお、当第2四半期末のBS換算レートは、150円/米ドル、158円/ユーロ、1.06米ドル/ユーロ(前期末134円/米ドル、146円/ユーロ、1.09米ドル/ユーロ)となっています。
3) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加等による資金支出がある一方、税金等調整前四半期純利益の計上や減価償却費及びその他の償却費等の非資金費用があり、合計で236億円の資金収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、複合成形材料事業の生産性改善及び能力増強を目的とした設備投資の実施等により、276億円の資金支出となりました。
この結果、営業活動に投資活動を加えたフリー・キャッシュ・フローは40億円の資金支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローについては、長期借入金の返済による支出や配当の支払があった一方、主に短期借入金の借入による資金収入により、140億円の資金収入となりました。
これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額等も加え、最終的な現金及び現金同等物の増加額は125億円となりました。
(2) 経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等
当第2四半期連結累計期間において、帝人グループの経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等について重要な変更はありません。
(3) 会社の支配に関する基本方針
当第2四半期連結累計期間において、帝人グループの財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第2四半期連結累計期間において、帝人グループの会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間における当社及び連結子会社の研究開発活動の金額は、152億円です。
また、当第2四半期連結累計期間における当社及び連結子会社の研究開発活動の状況の変更の内容は、以下のとおりです。
(医薬品分野)
当社は、アクセリード(株)と2023年6月30日付で創薬研究に関する両社出資の合弁会社の設立に関する契約を締結しました。創薬のターゲットの選別から新薬候補化合物の取得並びにそれらに関連した創薬研究活動の支援を事業内容とする合弁会社を2024年4月1日に設立し、両社の保有する創薬に関するノウハウや知見、技術や資産に基づく強固な基盤を強みとして創薬の総合支援サービス企業としての成長を図ります。
この合弁会社設立により、当社及び医薬品事業を展開している当社連結子会社である帝人ファーマ(株)は医薬研究における実験科学的研究(ウエット研究) 機能を外部化することで新薬開発の効率化や迅速化を図り、革新的な医薬品の創出を目指します。また、これまで欧米の大手製薬企業等に研究成果を早期導出してきた能力や知見を活かし、研究開発機能が独自に収益を生み出しつつ、創薬研究の水平分業化という業界の需要にも応えることが可能な、製薬企業としての新たなビジネスモデル確立を図ります。