有価証券報告書-第115期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/26 14:58
【資料】
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【項目】
133項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)会社の経営基本方針
当社グループは、消費者・顧客の立場にたって、心をこめた“よきモノづくり”を行い、世界の人々の喜びと満足のある、豊かな生活文化を実現するとともに、社会のサステナビリティ(持続可能性)に貢献することを使命としています。
私たちは、企業理念である「花王ウェイ」をグループ全員で共有し、考え方や行動の拠り所として日々実践し、清潔・美・健康の領域を中心に、時代の変化に対応しながら130年余り事業を展開してきました。近年は、持続的な利益ある成長を続けていくために、脱デフレ型成長モデルの構築やコンパクトで多様性に富む取締役会を目指すガバナンス改革等を実行し、清潔で美しくすこやかな暮らしに役立つ商品や産業界の発展に寄与する工業用製品等を提供し、消費者・顧客や社会へ貢献できるよう努めてきました。
そして2009年には、人類だけでなく自然界にもよき存在であるようにと「環境宣言」を行い、自然と調和するこころ豊かな毎日を目指して、その歩みをさらに一歩進めました。2019年には新たなESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(以下、KLP)を発表し、ESGを経営の根幹に据えることを宣言しました。
しかし今、私たちが使命に掲げる「豊かな生活文化」を実現するための土台である人の生命に危機が及んでいます。そして今後もその脅威は、私たちの生活を根幹から脅かす存在であり続けることが予想されます。
このような中、私たちはこの切実な社会的課題に花王らしいアプローチで取り組んで行きます。生活や生態に加え、人の生命を守ることを強く意識し、未来の命を守る会社になっていきます。「きれいを こころに 未来に」を掲げ、地球が生きる場として持続的にきれいに保たれること、社会が持続的に豊かであること、そして人が危害から守られて笑顔で暮らせること、これらすべてを実現するために貢献していきます。
結果として、これらが財務的な成果、そしてステークホルダーへの還元へと繋がり、この仕組み自体が持続していきます。今後も花王グループは、より高いレベルでの企業価値向上を目指していきます。
(2)中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標
1.長期経営戦略
当社グループは2030年までにあるべき姿として、持続的な利益ある成長と社会のサステナビリティへの貢献との両立によって、これまでの『グローバルで存在感のある会社「Kao」』になるという将来像をさらに一歩進め、『グローバルで存在価値のある企業「Kao」』を目指します。ESGを通じて将来にわたって、人・社会・地球にとって価値のある存在になっていきます。
私たちは、環境(E)においては、ゼロ浪費、カーボンゼロを目指します。社会(S)においては、無駄な消費がなくなることを願い、その人に寄り添った唯一無二のパーソナライズを進めていきます。そして、ガバナンス(G)をしっかりと効かせながら、志を共にする仲間とともに正道を歩んでいきます。最小限の資源で最大の価値を生み出す、"Maximum with minimum"を経営の指針として、より良い明日をつくるために今後も我々は成長し続けます。
グローバルで存在価値のある企業「Kao」
■持続的社会に欠かせない企業
■高社会貢献&高収益グローバル企業
■ステークホルダーへの成長レベル還元
財務目標(結果として)
・売上高 2兆5,000億円
・営業利益 4,000億円
・連続増配継続 41期
2.中期経営計画
2021年から2025年までの5年間は、2030年までにあるべき姿を実現させていくための礎となる重要な期間です。そのために花王グループ中期経営計画「K25」では、Vision(ビジョン)を「豊かな持続的社会への道を歩む Sustainability as the only path」と定め、3つの目的を掲げます。
持続的社会に欠かせない企業になるためには、2019年に発表した新ESG戦略 KLPを積極的に進め、無駄なモノは極力つくらないサステナブルな自走社会をリードしていかなければなりません。そして、KLPに関する投資を必ず財務的な成果「未来財務」に繋げていきます。
投資して強くなる事業への変革については、「Another Kao(もうひとつの花王)」を始動します。私たちは、切実な悩みを抱える生活者のために、これまで培ってきた技術や知見、デジタルトランスフォーメーション(DX)を最大限に活用し、「未来の命を守る」新たな事業を生み出します。同時にその基盤となる従来の事業に新しい力を加え、「Reborn Kao(基盤花王)」として再活性化させます。
そして、これら2つの目的を達成するためには社員の活力は欠かせません。3つ目の社員活力の最大化については、社員一人ひとりが自ら掲げる大きな挑戦を最大化できるように新たな目標管理制度「OKR(Objectives and Key Results)」を導入します。さらには、社外からの人財登用を積極的に行うとともに社外との協業も進めていきます。
これら3つの目的を達成することで、結果として、売上・利益は過去最高(売上高 1兆8,000億円、営業利益 2,500億円、連続増配 36期)を達成し、社員、消費者・顧客、取引先、株主等会社を取り巻く多くのステークホルダーに成長に見合う高レベルの還元を目指していきます。
これからも花王グループは、花王ウェイに掲げる「正道を歩む」を実践しながら、より良い明日をつくるために同じ志をもつステークホルダーとともに、これらの目標を実現させていきます。
花王グループ中期経営計画「K25」
■Vision(ビジョン)
豊かな持続的社会への道を歩む Sustainability as the only path
■Concept(コンセプト)
きれいを こころに 未来に
■方針(目的)
目的(1)持続的社会に欠かせない企業になる
[目標]
サステナブル自走社会をリードする:ESG投資=未来財務
[主要成果]
・カーボンリサイクル(炭酸ガスを原料に転換する)
・ポジティブリサイクル(再利用により新事業を創造する)
・ストップパンデミック(感染症発生源を絶つ)
目的(2)投資して強くなる事業への変革
[目標]
もうひとつの花王始動と基盤花王を強くする:“命を守る”を軸とするグローバル躍進
[主要成果]
・新事業:デジタル・プレシジョンヘルスケア始動(高精度生体解析と恒常性強化ソリューション)
・既存事業:ダントツ商品づくりへの投資・面事業の拡大
・化粧品、サニタリー事業:Next Innovation
目的(3)社員活力の最大化
[目標]
活動生産性2倍:挑戦の見える化とオープンイノベーション
[主要成果]
・挑戦と貢献度に応じたフェアな報酬(グローバル全社員によるOKR活動実践)
・花王外の人財の積極的登用と協業成果倍増
・デジタル花王への抜本改革(2023年完了)
3.目標とする経営指標
当社グループは、投下資本のコストを考慮した真の利益を表すEVAを経営の主指標としています。その本質は、株主等の資金提供者の視点を持って、資本を効率的に活用し利益を生み出すことにあります。EVAを継続的に増加させていくことが企業価値の増大につながり、株主だけでなく全てのステークホルダーの長期的な利益とも合致するものと考えています。そして事業規模の拡大を図りながら、EVAを増加させることを事業活動の目標としており、個別事業の評価、設備や買収等の投資評価、年度ごとの業績管理や報酬制度等に活用しています。
(3)会社の対処すべき課題
感染症が世界中に蔓延し、気候変動、水や森林資源等の環境問題は深刻化しています。また人権への取り組みは重要性を増し、さらには、市場構造や消費者意識の大きな変化とともに、高齢化社会の進行等社会的課題も増大しています。このように事業を取り巻く環境が大きく変わり、持続的社会の継続そのものが危ぶまれる中、当社グループは、これまでのビジネスモデルだけでは持続的な企業成長は難しいと考えています。
できるだけ欠品を減らして購買時の機会損失をさせないことは、安定した業績につながりますが、一方では、ともすると過剰調達と過剰在庫を生み出す原因となります。また、お客様の消費欲求にお応えすることに注力し過ぎると、多種多様な品揃え、短い期間での商品の改廃等を選択しがちですが、消費されないまま廃棄される商品も生み出してしまい、結果として環境保全に負の因子となってしまいます。
これらの課題を解決に導くためには、サステナブル(持続可能な)社会を実現するための消費循環モデルの構築を急がなければなりません。「無駄なモノはつくらない、届けない。」「1日でも長くご愛用いただける、よきモノづくり」を実現する新たなビジネスモデルを実現していきます。
また、我々は未だ、持続的社会における存在価値をグローバルで確立できていないと考えています。当社グループのミッションである「豊かな生活文化の実現と社会のサステナビリティへの貢献」を実現するためには、新たな挑戦が必要です。世界に先立つESG志向の製品・サービスを提案しながら、その提案が核となり企業成長を続け、さらには多くの他企業の事業にも同時に貢献できる、リーダー企業になることを目指します。
この目標達成のためには、新たな事業を加えた独自性のある共創プラットフォームが必須です。そのためには、当社グループにおける、商品開発研究を支えてきた深い基盤研究がエンジンになると考えます。特に、人や環境に危害となるモノの性質、変化、伝搬、除去、予防等の基盤研究は、これからの社会に大きく役立つはずです。今、世界が危機を迎えている時こそ、切実な社会課題解決に軸足を据えることにしました。
花王グループ中期経営計画「K25」とは、2030年までにありたい姿を実現させるために、重要な事業基盤を構築して、これらの課題をすべて解決するための大変重要な計画です。花王グループは、今後もこうした大きな課題の解決に挑んでいきます。