有価証券報告書-第197期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/22 16:20
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【項目】
128項目

業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度のわが国経済は、個人消費や輸出の持ち直しなどにより、企業収益に改善の動きがみられるなど、緩やかな回復基調が続いております。世界経済につきましては、米国では、個人消費が増加するなど景気回復が続いており、中国では、各種政策の効果もあって景気は持ち直しの動きがみられますが、今後は、米国および英国の政策の動向、中国や新興国等の経済の先行き、金融資本市場の変動の影響などに留意する必要があります。
医薬品業界では、国内外を問わず、増大する社会保障給付費を抑制するための動きとして、先発医薬品の価格抑制策や後発医薬品の使用促進策が次々と打ち出されることにより、事業の予見性が低下するなか、新薬開発の難度の高まり、研究開発費の高騰、国際競争の激化などにより、事業リスクも増大しております。
このような状況のもと、当社グループは、日本において、高血圧症治療剤「アイミクス」、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」および非定型抗精神病薬「ロナセン」(一般名:ブロナンセリン)の戦略品3剤の売上拡大を図るとともに、平成27年度に販売を開始した2型糖尿病治療剤「トルリシティ」の早期市場浸透を図るべく情報提供活動に注力いたしました。
北米においては、サノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)が、グローバル戦略品である非定型抗精神病薬「ラツーダ」(一般名:ルラシドン塩酸塩)を中心とする主力製品のさらなる売上拡大に向けて事業活動を行いました。また、同社は、精神神経領域のパイプラインを獲得する目的で、昨年10月に、同領域の医薬品の開発に特化したカナダのベンチャー企業であるシナプサス・セラピューティクス・インク(以下「シナプサス社」)を買収いたしました。加えて、呼吸器領域の製品ラインアップ拡充を目的として、昨年12月に、ノバルティスグループ2社(以下「ノバルティス社」)から慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤3製品の米国における独占的販売権を獲得いたしました。
抗がん剤の分野では、ボストン・バイオメディカル・インク(以下「ボストン・バイオメディカル社」)が現在開発中であるナパブカシン(開発コード:BBI608)の米国での早期上市を最優先課題と位置付け、臨床開発を推進いたしました。また、当社は、当社全額出資の米国持株会社を通じて、本年1月に、がんおよび血液疾患領域における医薬品の研究開発に特化した米国のバイオベンチャー企業であるトレロ・ファーマシューティカルズ・インク(以下「トレロ社」)を買収いたしました。
当連結会計年度の連結業績は、日本では、昨年4月に実施された薬価改定や長期収載品の売上減少の影響が大きく、減収となりましたが、北米では、「ラツーダ」等主力品の売上が順調に拡大したことにより、大幅な増収となりました。これらの結果、売上高は4,116億38百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。営業利益は、売上原価が減少したことに加え、日本における販売関連費用等の削減により販売費及び一般管理費が減少した結果、527億59百万円(前連結会計年度比42.9%増)となりました。経常利益は、外貨建て資産の円貨換算等による為替差益の計上等により、543億41百万円(前連結会計年度比54.3%増)となりました。また、特別利益として投資有価証券売却益を、特別損失として早期退職制度の実施に伴う事業構造改善費用等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は289億91百万円(前連結会計年度比17.4%増)となりました。
また、当連結会計年度におけるEBITDAは728億44百万円(前連結会計年度比30.6%増)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
① 日本
「アイミクス」、「トレリーフ」、「トルリシティ」等の売上は増加しましたが、薬価改定の影響や長期収載品の売上減少を補うには至らず、売上高は1,408億47百万円(前連結会計年度比3.9%減)となりました。セグメント利益は、研究開発費を除く販売費及び一般管理費は減少しましたが、薬価改定による売上総利益の減少の影響が大きく383億7百万円(前連結会計年度比7.8%減)となりました。
② 北米
「ラツーダ」の売上が引き続き大きく拡大したことに加え、長時間作用型β作動薬「ブロバナ」および抗てんかん剤「アプティオム」の売上が伸長したことにより、売上高は1,978億89百万円(前連結会計年度比7.0%増)となりました。セグメント利益は、売上高の増加に加え、為替変動の影響等により売上原価が減少したため、832億88百万円(前連結会計年度比27.8%増)となりました。
③ 中国
主力品であるカルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の売上は、現地通貨ベースでは、堅調に推移しましたが、為替変動の影響により、売上高は176億24百万円(前連結会計年度比4.1%減)となり、セグメント利益は67億42百万円(前連結会計年度比15.6%減)となりました。
④ 海外その他
「メロペン」等の輸出や工業所有権収入が増加したことにより、売上高は115億66百万円(前連結会計年度比3.4%増)となりました。セグメント利益は、売上品目の構成の変化により売上総利益が増加したため、28億3百万円(前連結会計年度比14.6%増)となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品、診断薬等の販売を行っており、これらの売上高は437億10百万円(前連結会計年度比3.4%増)、セグメント利益は24億7百万円(前連結会計年度比32.2%増)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が増加したことに加え、仕入債務、未払金および引当金の増加等によるキャッシュの増加要因がありましたが、事業構造改善費用や法人税等の支払額が大きく増加したことにより、前連結会計年度に比べ277億90百万円収入が減少し、216億24百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、短期貸付金の回収や投資有価証券の売却による収入等がありましたが、シナプサス社およびトレロ社の買収に伴う子会社株式の取得により、前連結会計年度に比べ756億16百万円支出が増加し、597億29百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済と社債の償還がありましたが、買収に関連して短期借入を実施したことにより、前連結会計年度に比べ524億86百万円収入が増加し、98億81百万円の収入となりました。
上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物の為替換算による影響額を加えた結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,056億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ299億71百万円減少しました。