有価証券報告書-第90期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/30 15:26
【資料】
PDFをみる
【項目】
158項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループでは、2019年3月期より「エンジニアリング」をキーワードとした経営基本方針「エンジニアリングアプローチによる製品事業の付加価値向上」「受託事業からエンジニアリングサービス事業への転換」「早い変化と多様性に対応できる経営基盤の整備」のもと、事業活動を行っております。
この経営基本方針は、当社グループの強みでありコア技術である「塗る・切る・磨く」で、お客様の成功のために付加価値の高い製品・サービスの提供を目指すものであります。
① エンジニアリングアプローチによる製品事業の付加価値向上
精密分野と一般研磨分野の両方でお客様にとって付加価値の高い製品を提供するため、積極的な研究開発、新事業への取り組みを図ってまいります。
② 受託事業からエンジニアリングサービス事業への転換
受託業者からお客様にとってのエンジニアリングパートナーとなるため、お客様のニーズに対してより包括的なサービスを提供できる体制づくりを図ってまいります。
③ 早い変化と多様性に対応できる経営基盤の整備
積極的なIT投資によるさらなる効率化、BCPおよび内部統制の強化に加え、多様性を尊重した働き方や人材育成の推進を図ってまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループでは、経営基本方針に基づき安定的かつ継続的な成長を重視しており、その実現のために各段階利益を主な経営指標としております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、上記3つの経営基本方針をもとに、各種課題への取り組みを図ってまいります。
① より付加価値の高い製品・サービスの提供による安定利益の実現
安定収益を確保し、成長し続けるためには、既存製品・サービスの伸長に加え、当社独自の技術で新たな製品・サービスを創出していくことが重要な課題と認識しております。この課題に対処するために、前期新設した技術的難易度の高い分野に特化した営業・技術・製造が一体となった組織「CSE」(※“Customer Success with Engineering”の略称)を組織力の強化やスピードアップ、マネジメントの効率化を目的に機能別の役割を明確にするため、営業技術課と技術開発課に分割する組織改正を実施し、当社が早くから取り組んできた事業、成長が期待できる次世代パワー半導体分野への取り組みを一層強化します。
次世代パワー半導体は、今後様々な分野で需要が期待される「パワーデバイス」や「高周波デバイス」向けの次世代半導体のほか、データセンター(通信インフラの加速、クラウドサービスの増加、情報処理量の増加)、省エネルギー社会(電気自動車・電動化、低燃費、発電関連、高輝度照明)、安全安心(殺菌、浄化、高度医療、治療、治安問題、(殺菌浄化で深紫外の波長を出せる次世代LEDは、GaN、AlN等の化合物半導体ウェハが主材料で期待されており、こういった分野でLEDが期待されており、全てにおいて半導体が使用されている)、高速通信網 5G・6G(遠隔・働き方改革、自動運転・無人化、大容量、高速化、記録、人工知能(AI)、教育(学習)機会創出)があります。これらの次世代半導体を構成する加工が極めて困難な材料の加工プロセスにおいて、当社独自の技術パワーで高付加価値の加工サービスを提供してまいります。このように当社独自の技術を活かした高付加価値の製品・サービスの開発を強化することにより、将来の安定利益の実現を図ってまいります。
② 新たな事業、顧客の創出
当社事業に関連するエレクトロニクス業界は技術的な進歩のスピードや需給動向の変化が激しいことが課題と認識しております。今後、新たな事業分野および顧客開拓により、特定の業界・顧客に左右されない売上構成の確立を図ってまいります。具体的施策として、新たに、各種ウェハの接合処理サービスを目的として「超高真空常温接合装置」を導入しました。既存コア技術「磨く」と融合し、次世代半導体開発に不可欠な技術である「高機能複合ウェハ(異種材料接合ウェハ)」を実現させ、受託研磨事業の拡大・ウェハ製造等の新事業確立に向けた取り組みを進めております。
また、従来の研磨材だけの提案から協力企業と連携して、研磨工程だけでなく前後工程も含めた総合的なサービスを展開し、カスタマーサクセスを目指してまいります。お客様の中ではどうやって若い社員を戦力にするのか悩まれたり、職人による好みやクセに左右されたり一定の品質、サービスを維持することが難しくなってきています。一方で、ロボットや機械を扱う若い人達が増えてきている現状もあり、単に省力化や自動化だけでなく、導入後の社内の活性化も期待されます。モノづくりを維持するために当社がサポートしてまいります。職人の好みやクセに左右されない自動化、ロボットは品質評価が最優先となります。プロセス、仕組み、測定まで一括した提案に加え、ロボット用研磨材の研究開発も進めております。
新たな注力製品である「RefLite」は、当社京都工場で製造される製品で、国内で初めて再帰性反射布を製造しました。約40年間にわたり、反射材業界のパイオニアとして技術を磨いてまいりましたが、2020年3月30日に、アパレル・ファッション業界等へブランド浸透を目指すために、レフライトをリブランディングしました。認知度、ブランド力アップへの取り組みを強化し、主戦場である安全市場での売り上げアップへもつなげてまいります。ランニングブームも追い風となっており、反射材の着用が常識化している主戦場の欧州でも、作業着のおしゃれ化が進み、カラーバリエーションが特徴のレフライトをおしゃれな反射材としてリブランドすることで、既存以外の新たな潜在マーケットを見込んでおります。拡大するスポーツアパレル分野など、新たなニーズを開拓し、より強固な販売網を確立してまいります。
③ 経営基盤を強化することによる変化への柔軟な対応
引き続き、ITの活用の推進を図り、より効率的なオペレーションを追求してまいります。加え、グループにおける価値観や働き方の多様性をさらに推進することにより、優秀な人材を確保し、多面的な観点から企業価値の向上に努めてまいります。その具体的な取り組みとして、eラーニングを活用し、当社が進む方向性や考え方などの共有、知識の共有、文字だけでなく、動画、クイズ等でユーザビリティを高めて配信しています。新入社員研修にも活用できるようなコンテンツの作り込みも始めています。これらのコンテンツはすべて当社のオリジナルで社員自らが作成しています。当社が必要としている情報や教育プログラムが何かを考え、作成することで、作成する側も学びや新たな気づきにもつながり、非常に大きな効果が生まれています。また、トレーナーによるバラツキの出ない教育が可能になることも特徴です。将来的に目指す目標は、「社員が自分のキャリアを形成できるコンテンツ」を充実させ、すべての社員に「チャンス」を与えられるようにしていくことです。
そのほか、山梨工場ではIoTへの本格的な取り組みを始めました。まだ一部の生産機器からテスト的にデータ収集を取り始めた段階でありますが、今後、設備不具合による品質不良や歩留まり悪化の未然防止、故障予知による適正なメンテナンスと安全性に加えて、安心して製品を提供できるよう、さらなる顧客サービス向上を図ってまいります。将来的には受託事業の取り組みの一つとして、受託製品の生産状況を遠隔で可視化できるデータ供与サービスを検討しております。
④ 新型コロナウイルス感染症への対応
当社グループにおける新型コロナウイルスの全世界的な感染拡大による影響については、同感染症発生の初期段階より社長をトップとした「危機管理対策本部 COVID-19」を設置し、対策本部長による全体統括のもと、国内外のグループ各社等からの情報収集と政府・自治体における政策動向等に関する情報管理の一元化を行ってまいりました。従業員、お取引先様の健康と安全を最優先に、感染予防策の徹底、本社及び営業拠点勤務者には時差通勤やテレワークの徹底、Webによる営業活動、さらに工場勤務者においても一部テレワーク導入や製造・納入時の工場内の飛沫感染防止対策を徹底いたしました。その結果、ロックダウンによる海外拠点の一時操業停止もありましたが、事業活動への大きな影響はございませんが、引き続き、景気動向に与える当社グループの業績への影響について、注視してまいります。