有価証券報告書-第96期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 11:08
【資料】
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【項目】
159項目

対処すべき課題

当社グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質を確立することを重要課題と認識し、競争力ある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境及び対処すべき課題
新型コロナウイルス感染拡大による世界的な需要の落ち込みや生産活動の減退により、世界経済の減速が懸念されております。当社の主要な取引先である自動車、建設機械、産業機械業界等の活動水準にも影響が及んでおり、現段階では感染拡大による影響や収束の時期は見通すことが出来ない状況にあります。
このような状況のなか、当社グループといたしましては、主要な取引先の稼働状況に合わせて生産計画を柔軟に見直すとともに、原価低減活動のさらなる推進により、生産コストをミニマム化してまいります。BCP(事業継続計画)に関する施策としてサプライチェーンのリスクを想定し、国内外の供給体制を維持してまいります。雇用維持に関しては、各事業所において、雇用調整助成金制度を活用した一時帰休を4月から実施しております。資金面については、フリーキャッシュ・フローの悪化に備えた取り組みを進めています。
また、2020年に概要を公表いたしました「2020中期経営計画」に基づく諸施策について、着実に実行し収益確保に努めてまいります。
<2020中期経営計画>2019年度までの当社を取り巻く事業環境は、米中貿易摩擦や保護貿易主義の台頭の影響等により、主要な取引先である自動車・建設機械業界の需要低迷が見られました。また、自動車メーカーのグローバル調達方針に基づいて海外展開を進めてまいりましたが、その方針転換があったことに加え、技術開発や安定調達等の問題発生に対する抜本的解決の遅れなどの自社要因もあり、中期経営計画に対して実績が大きく乖離する結果となりました。この反省を踏まえ、2016中期経営計画は一年前倒しで終了し、2020年度から2022年度の3ヶ年を対象とした「2020中期経営計画」を策定・公表することといたしました。
「2020中期経営計画」の概要は以下のとおりです。
2020中期経営計画は、10年後を見据えた3ヶ年計画とし、赤字海外事業の事業再生を初年度に実施するとともに、製品力の強化や素材から一貫生産のビジネスの拡大を通じて持続的な成長を目指してまいります。
① 「2020中期経営計画」スローガン
素材から製品まで一貫したモノづくりでお客様に付加価値を提供する
② 目指す姿
・グループ総合力の発揮による利益率の向上と収益安定化を図る
・お客様のニーズの半歩先行く製品を開発し、新たな価値として提供する
③ 3大方針
◆海外事業の構造改革 ⦅海外拠点の早期収益力アップが急務⦆
・インドネシアJATIMの黒字化と北米MSSCの早期止血・立て直し
・海外事業・拠点の統廃合の実施
◆製品力のさらなる強化 ⦅顧客ニーズの半歩先を行く製品⦆
・お客様の声をスピーディに汲み上げ、製品に反映する総合力の強化
・メリハリをつけた技術開発項目見直しによる開発スピードアップ
◆素材から一貫生産ビジネスモデルの拡大
・三菱製鋼室蘭特殊鋼株式会社の鋼材を用いた軽量化ばねや、JATIM材を用いた板ばねの一貫生産ビジネスモデルを、建設機械用ばねやスタビライザ等に展開し、当社の素材から一貫生産の強みを発揮する
・単品的な製品ラインナップに留まっていた素形材製品を、その上下流含めた一貫生産ビジネスモデルとして強化する
④ 重要経営指標(KPI)
2022年度目標
売上高 1,500億円
営業利益 70億円
ROE 8%以上
※2022年度数値目標には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を織り込んでいません。このため、必要に応じて数値目標を見直す可能性があります。
(2)各事業における重点施策
[特殊鋼鋼材事業]
国内の生産拠点では、大幅な需要減に対応するために関連会社である北海製鉄株式会社において高炉改修のための操業休止前倒しを予定しているなど、大きな生産変動が見込まれています。室蘭コンビナートとして、これらの変動に適した操業に迅速に対応し、操業の効率化に取り組むことでコスト低減を進めてまいります。
海外事業におきましては、生産拠点である連結子会社「PT.JATIM TAMAN STEEL MFG.」の2019年上期営業利益に対して、下期は5億円の改善を達成し、営業利益黒字化の目途が付きました。しかし、2020年度の需要減に対応するため、要員を含めたコスト削減への取り組みと、品質の更なる向上を進めてまいります。
[ばね事業]
国内では、軽量化・性能向上を軸に製品力強化を継続するとともに、マザー工場として海外子会社のものづくり力サポートを積極的に進めてまいります。
また海外拠点では、喫緊の課題である北米拠点の黒字化については、巻ばねに続きスタビライザもカナダ工場に集約し生産能力の適正化を図ることにより実現してまいります。また、他の海外拠点についてもコスト改善並びに軽量化製品による新規受注も増加しており、さらなる拡大を進めてまいります。
[素形材事業]
千葉製作所内へ新設し、稼働を開始した千葉AMC(アドバンスト・マテリアルズ・センター)を最大限活用し、「製品力の向上」「新技術の開発」「モノづくり力の強化」を推進し、マザー工場として国内外拠点の支援強化を図ってまいります。
[機器装置事業]
三菱長崎機工株式会社では、コア技術の継承と開発の積極的な推進により、主力製品の拡充および新分野・新顧客への拡販に注力するとともに、継続的な設備投資により、総合エンジニアリング会社として持続的成長を目指してまいります。
また、三菱製鋼グループ内の連携を強化し、製品コスト削減と輸出の拡大を進めてまいります。