訂正有価証券報告書-第83期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2022/12/13 16:12
【資料】
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【項目】
132項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、株主・投資家の皆様、ビジネスパートナーの皆様等当社グループを取り巻くステークホルダーとの関係を築きながら、より良い社会の実現に貢献するために、社会的責任を自覚した企業活動を行うことを基本方針としております。そのために、基盤技術の高度化と新技術への挑戦によって新製品・新事業を創出し、新たな価値を社会に提供してまいります。製品の開発、製造に当たっては、次世代に引き継ぐ環境に配慮した企業活動を促進いたします。さらに、企業情報の適時かつ適切な開示、地域社会への貢献等を通じて社会とのコミュニケーションを推進して、より広範な社会の視点を経営に反映し、社会との信頼関係を築きます。当社グループは、これらの企業活動を通して企業価値の向上につなげてまいります。
当社グループでは、行動原則や判断基準となる「日立金属WAY」を定めています。「日立金属WAY」は経営理念
(MISSION)、社是(VALUE)、多様性のあるDNAを体系的にまとめたもので日立金属らしさを形づくるものです。当
社グループは、「日立金属WAY」のもと、事業を通じて社会課題の解決に貢献することにより「『最良の会社』」を
具現」してまいります。
日立金属WAY
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(2)対処すべき課題
①概況
当社は、2020年4月27日付「当社及び子会社の一部製品における検査成績書への不適切な数値の記載等について」において、当社及び子会社で製造する特殊鋼製品並びに磁性材料製品(フェライト磁石及び希土類磁石)の一部に、お客さまに提出する検査成績書に不適切な数値の記載が行われていた等の事実が判明したことを公表しました。当社では、モノづくりを行う企業として最も起こしてはならない品質に関わる不適切行為を発生させ、お客さまをはじめ関係各位に多大なるご迷惑をおかけすることになったことを重く受け止めております。当社では、2020年4月27日付で外部の専門家から構成される特別調査委員会を設置し、客観的な視点から事実関係・発生原因を調査いただくとともに、それと並行して社内対策本部が中心となり適切な品質保証体制の構築に取り組んでおります。また、組織・管理体制等経営のあらゆる面においてより一層の改革に取り組むとともに、本事案の事実関係及び発生原因の究明並びにこれを踏まえた対策の検討及び実行において客観性・公正性を担保する目的で、2020年5月末日をもって執行役社長を含む複数の執行役及び過去に執行役社長であった取締役1名が退任いたしました。さらに、2020年6月1日付で、意思決定の迅速化を図るために執行役会長が執行役社長を兼務することとした他、新たな執行役を加え、新しい経営体制に移行いたしました。この新しい経営体制のもと、公明正大に事業を行う会社に生まれ変わる意思をもって、事実関係・発生原因を徹底的に究明するとともに、経営のあらゆる面において改革に取り組んでまいります。
また、当社グループではグローバルでの再成長をめざした中長期的戦略として「2021年度中期経営計画」(対象年度:2019年度~2021年度)に取り組んでおります。当期の後半からは経営改革「日立金属トランスフォーメーション」に着手しており、2020年4月1日付で経営改革の司令塔として経営改革推進室を設置しました。今後は、同室を管掌する西山代表執行役 執行役会長 兼 執行役社長の指揮のもと、ポートフォリオ改革、コスト構造改革の推進、営業力の強化等により、稼ぐ力の強化および資本効率の改善に取り組んでまいります。
現在、当社グループを取り巻く経営環境は、世界各地域で新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、政治・経済・社会の混乱により先行きは極めて不透明な状況です。当社グループの主要な事業領域である自動車、エレクトロニクス、産業インフラの各分野においても需要の深刻な停滞がみられ、次期の当社グループの事業に与える影響は、当期と比較して甚大なものになると予想されます。
こうした中、当社グループは、先述の新しい経営体制のもと、経営改革に全力で取り組むと同時に、数年来継続している当社グループの業績不振、及び現在の感染症拡大という難局を乗り越え、企業体力の強化を図ってまいります。
②品質保証体制
先述の当社及び子会社で製造する特殊鋼製品並びに磁性材料製品(フェライト磁石及び希土類磁石)の一部に、お客さまに提出する検査成績書に不適切な数値の記載が行われていた等の事実が判明した事案について、当社では、2020年4月27日付で外部の専門家から構成される特別調査委員会を設置し、客観的な視点から事実関係・発生原因を調査いただいており、同委員会の調査結果を踏まえて、コンプライアンスの一層の強化等の再発防止策を実施してまいる方針です。これと並行して、社内対策本部が中心となり、有効な品質監査を担保するための組織の見直しや、人手が介在するプロセスを排除し不正を発生させない検査システムを構築するなどの改善策を実行し、信頼回復に向け早急に適切な品質保証体制の構築に取り組んでおります。現在、不適切な行為が判明した部署においては、取得された検査及び試験データの保全を担保するため人手の介在を防止する仕組みの導入を推進しております。また、全社的には検査プロセスの自動化及び情報保全化に向けた取り組みに着手しました。加えて、当社グループの信頼回復に向けさらなる改革を行い、本事案の調査及び対策の検討・実行において、客観性・公正性を向上させるとともに、意思決定の迅速化を図るため、2020年6月1日付で、執行役会長が執行役社長を兼務する新しい経営体制に移行いたしました。
当社では、本事案によりお客さまをはじめ関係各位に多大なるご迷惑をおかけすることになったことを重く受け止め、再発防止及び信頼の回復に向けて、事実・原因を徹底的に究明するとともに、品質保証体制の抜本的な見直しとコンプライアンスの一層の強化に取り組んでまいります。
③2021年度中期経営計画とその進捗及び成果
当社グループは事業開始以来、自動車・産業インフラ・エレクトロニクス等の各分野において特色ある製品をお届けすることを通じ、社会に貢献してまいりました。
近年、世界規模で経済構造が激しく変化し、社会のニーズが多様化するなかで、次々に新しい技術・製品・サービスが生み出されています。さらに、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に代表されるように、企業に対して、社会を構成する一員として持続可能な社会の実現に向けて主体的に取り組み貢献することが、ますます強く要請されるようになっています。また、当社グループの事業領域である素材産業においては、社会の変化に伴いニーズが高度化・多様化するとともに、こうしたニーズに対応する新素材開発のスピードが年々加速しております。
このような状況において当社は、経営理念で掲げる「『最良の会社』の具現」が当社のミッション(使命、存在意義)であるとの認識のもと、その実現に向けて2021年度を最終年度とする「2021年度中期経営計画」を策定し、推進しております。当期の後半からは経営改革「日立金属トランスフォーメーション」に着手しており、2020年4月1日付で経営改革の司令塔として経営改革推進室を設置しました。今後は、同室を管掌する西山代表執行役 執行役会長 兼 執行役社長の指揮のもと、ポートフォリオ改革、コスト構造改革の推進、営業力の強化等により、稼ぐ力の強化および資本効率の改善に取り組んでまいります。
本中期経営計画においては、「ヒトをつくり、イノベーションをつくり、未来をつくる」をビジョンとして掲げ、経営戦略・施策の推進により「持続可能な社会を支える高機能材料会社」の実現をめざしております。そのために当社グループでは、企業の基盤となる人財に対して事業運営を通じた成長と豊かな社会生活の両立の機会を提供するとともに、顧客との協創により当社グループの強みをいかした「Only1、No.1」事業・製品を強化・拡充することで、素材のイノベーションの実現をめざします。こうしたイノベーションの成果の積み重ねにより、持続可能な社会の実現、社会全体の未来の創造に貢献してまいります。
本中期経営計画の具体的なアクションプランとその進捗及び成果は、以下のとおりです。
A.高成長・高収益分野へのリソース集中
自動車の電装化・電動化をはじめとする市場・技術のトレンドに対応した製品展開と事業拡大を図り、経営資源を高成長・高収益分野に集中するとともに、ポートフォリオの継続的刷新を推進します。
[当期の進捗及び成果]
・自動車の電動化ニーズに対応しEPB用ハーネスのグローバル生産体制強化(ベトナム・タイ拠点)
・三菱日立ツール株式会社(現 株式会社MOLDINO)の当社保有の株式について、三菱マテリアル株式会社との間で、同社に対し全て譲渡する旨の契約を締結(2020年4月1日に譲渡完了)
B.組織改革によるシナジー最大化
4カンパニー制から2事業本部制に移行することでリソースの集中や迅速な意思決定により、将来にわたり注力する市場・ビジネスを主軸に据え、各事業間のシナジーの強化を図るとともに、コーポレート部門の充実や事業本部間の人財交流の活性化により横串機能を高め、戦略機能及びガバナンスの両面の強化を図ります。
[当期の進捗及び成果]
・2事業本部制への移行(2019年4月)
C.フロント強化、顧客との協創
フロント機能(営業部門、研究開発部門)を強化し、顧客との協創により当社グループの独創的な技術を組み合わせた「Only1、No.1」事業・製品を早期に市場投入することにより、市場環境・顧客ニーズの変化に対応し、力強い成長を実現します。
[当期の進捗及び成果]
・フラウンホーファーIISB(ドイツ)とオンボードチャージャーの高電力密度化技術を開発
・「超極細銅合金線とその応用製品」が令和元年度 関東地方発明表彰「特許庁長官賞」を受賞
・Mn―Zn系高周波電源用ソフトフェライトコア「MaDC―FTM」シリーズが「2019年"超"モノづくり部品大賞 環境・資源・エネルギー関連部品賞」を受賞
・金属積層造形事業強化に向けAMソリューションセンターを設立
・オックスフォード大学(英国)と「Hitachi Metals – Oxford UTC of Metallurgy」を設立
D.大型設備投資のフル戦力化
前中期経営計画において行った大型設備投資のフル戦力化、早期の効果刈り取りを行うとともに、新たな設備投資については、高成長・高収益分野に重点配分する精選投資を実行します。
[当期の進捗及び成果]
・当社茨城工場において連続鋳造圧延ラインが本格稼働し、基盤製品の強化と新材料である高機能純銅の「HiFC®」の量産体制確立
・株式会社日立金属若松において熱延鋼板圧延用鋳造ロール及び構造用鋳鋼品の鋳造・加工設備稼働
・株式会社日立金属ネオマテリアルにおいて電気自動車や携帯端末などの分野で需要が拡大するクラッド材の製造設備(圧接機、圧延機など)が本格稼働
E.構造改革、経営基盤強化施策の断行
経営改革推進室が司令塔となり「日立金属トランスフォーメーション」を推し進め、ポートフォリオ改革、コスト構造改革の推進、営業力の強化等により、稼ぐ力の強化および資本効率の改善に取り組んでおります。
低収益で十分な改善の見込めない事業や製品は、実行責任部署により縮小・撤退等を推し進め、経営資源の集中や有効活用の徹底を図ります。また、新たな経営指標としてROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)による管理を導入し、CCC(Cash Conversion Cycle:運転資金手持日数)の短縮など投下資本圧縮を推進し、キャッシュ・フローの改善と資産効率の向上を図ります。
さらに、グローバルにおける人財の採用・育成、女性の活躍促進等の施策により、ダイバーシティマネジメントや働き方改革の推進とその効果の最大化を図り、イノベーティブで挑戦意欲の高い企業文化を創造します。
[当期の進捗及び成果]
・当期のCCC(運転資金手持日数)は87.1日となり前期と比較して3.6日短縮。また、フリー・キャッシュ・フローは49,540百万円となり、前期と比較して79,205百万円改善。
・2019年度の「なでしこ銘柄」に選定
(3)目標とする経営指標
当社グループは、従来、目標とする経営指標として中期経営計画の定量的な目標値を開示してまいりました。しかしながら、現在、感染症の拡大が継続しており、その終息時期やグローバルな社会・経済活動への影響度合いを見通すことが困難であること、また、2020年6月1日付けの新しい経営体制のもと事業構造の抜本的な見直しを検討していく方針であることから、2021年度の定量的目標値を設定することが極めて困難であるため、目標値を未定とさせていただきます。
なお、当社グループでは、中長期的な指針として調整後営業利益率10%、資本コスト(7.5%)を超えるROICの達成を目標としております。
(注)「調整後営業利益」は、事業再編等の影響を排除した経営の実態を表示するために、連結損益計算書に表示している営業利益からその他の収益、その他の費用を除いた指標です。