有価証券報告書-第121期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 14:00
【資料】
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【項目】
158項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、冷延鋼板、表面処理鋼板、建材商品、エクステリア商品、各種ロール、グレーチング等鉄鋼を素材とした各種製品の製造販売を中心に、また付帯事業として鋼板加工業、倉庫業、スポーツ施設の運営、不動産賃貸業等の事業活動を行っております。当社グループはこの事業活動を通じて、「新しい個性を持った価値の創造」を基本理念に掲げ、社会から信頼され、必要とされる存在価値のある企業を目指しております。この「新しい個性を持った価値」とは、株主と顧客から信頼され期待される機能の創造(事業価値)、必要とされるベストメーカーとしての持続力(存続価値)、変革挑戦し成長する社員一人ひとりの個性(社員価値)、社会・自然環境と調和し共生する努力(社会価値)であります。これらの経営理念を推進し、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資することを経営の基本方針としております。
(2)経営戦略等
当社は独立系の鉄鋼メーカーとして、表面処理鋼板事業とその川下分野としての建材事業からなる鋼板関連事業を中心に、電炉事業を源流とする鉄鋼ロール事業および鋼製グレーチング事業、さらにはエンジニアリング、不動産事業等を擁し、ユニークな存在感を発揮する企業として成長してきました。
今後も当社の基本理念・経営理念・行動原則に基づく機動力を活かした経営を追求するとともに、当社グループの総合力と企画力を発揮することで、海外では新たな成長に向け事業の積極的な展開を進め、国内では縮小トレンドの需要環境下でさらにシェアアップを図り、事業領域の拡大に取り組みます。この「海外事業展開」と「国内需要捕捉」を成長の基軸とし、「安全」・「安心」・「環境」・「景観」をキーワードとして、商品開発・製造・販売など事業活動のあらゆる側面に展開し、ステークホルダーの皆様にさまざまな価値を提供することで、広く社会から必要とされる企業を目指します。
また、当社グループをとりまく環境が激しく変化するなか、当社グループが持続的に成長を果たしていくためには、将来を見据えたビジョンと計画を持ち、その内容をさまざまなステークホルダーと共有することで当社グループの活力を高めていくことが有効であることから、当社の創立90周年にあたる2025年に向けた長期ビジョン『桜(SAKURA)100』を策定しております。当社グループはこの『桜(SAKURA)100』のもと、当社のシンボルマークである桜のように、さまざまな環境の変化に順応するたおやかな姿、新しい事業領域に挑戦し花を咲かせる姿、グローバルに愛され永く花を咲かせる姿を目指し、連結営業利益100億円を安定して計上できる100年企業への発展を実現してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は2017年3月に、2017年度~2019年度の経営計画として『淀川製鋼グループ中期経営計画2019』(以下、「中期経営計画2019」といいます。)を策定し、既存事業における市況や為替などの事業環境に左右されず、連結経常利益100億円を安定して計上することを目標として、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
中期経営計画2019の基本戦略と主要施策の成果の概要は以下のとおりです。
基本戦略主要施策に対する成果
A.強靭な収益構造の確立・新用途分野への参入や新しい販売チャネルの開拓
・既存技術の応用によるニッチ分野への参入
・高機能外装材やエクステリア新商品の発売、高機能鋼板の受注開始
・外装材生産設備の増強
・海外事業会社間の協働による受注
B.新しい事業領域への挑戦・エクステリアと建材の技術を足掛かりとする新規事業企画に向けた
情報収集
・新事業を検討する専属部署を設置
C.強固な経営基盤の構築・株主還元として安定配当
・ガバナンス強化として社外取締役を3名体制
・ダイバーシティ実現に向けて女性社外監査役を選任
・基幹生産設備のリニューアル構想に着手

中期経営計画2019の最終年度にあたる当連結会計年度におきましては、主に海外市場における各地域での保護主義的政策の影響や、日本国内市場における建設および鉄鋼需要の減速など厳しい経営環境の中、当社グループの強みである機動力を発揮し企業努力を重ねましたが、目標を上回る連結経常利益を計上することができませんでした。
中期経営計画2019の期間中の各連結会計年度の実績の状況は以下のとおりです。
2017年度2018年度2019年度
目標連結経常利益100億円を安定計上
実績(百万円)12,2849,8297,425
差異(百万円)+2,284▲171▲2,574

当社では、連結経常利益から一過性要因(在庫評価影響、金融商品売却損益、為替影響等)を除いた2019年度時点の実力値は概ね80億円と分析しております。一方で、連結経常利益100億円を安定的に計上するためには、この実力値としての連結経常利益を約120億円まで高める必要があると考えております。
連結経常利益の実力値目標である120億円に対する40億円の未達要因は以下のとおりです。
・日本国内における戦略拡販商品(外壁パネル商品等)の未達 10億円
・海外市場における各地域での保護主義政策の台頭による影響 15億円
・YSS社(中国)、PPT社(タイ)の進捗遅れ 15億円
(4)経営環境
日本を含む世界各地域では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、「新型コロナウイルス感染症」といいます。)の拡大防止措置として市民の外出制限や商業施設の休業などの行動抑制が広範囲に行われており、個人消費のみならず企業活動に大きな影響が及んでおります。
これらの感染拡大防止措置は、世界的マクロ経済と当社グループの経営環境に相当の影響を及ぼすことは確実であり、当社グループの2021年3月期の業績に一定の影響が及ぶものと想定しておりますが、現時点においては2022年3月期以降の当社グループの経営環境への影響は重大ではないとの前提を置いております。
また、2021年3月期の業績予想につきましては、現時点で合理的に算定することが困難であり、算定が可能となりました時点で速やかに開示いたします。
なお、当社グループは、中期経営計画2019に続く、2020年度から3カ年の『淀川製鋼グループ中期経営計画2022』(以下、「中期経営計画2022」といいます。)をこの度策定しております。当社グループの足元の経営環境は極めて不透明ではありますが、当社グループの強みである機動力を最大限発揮し、環境変化に応じた施策を進めながら収益力強化を図ってまいります。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社は、中期経営計画2019に続く新たな経営計画として、2020年度から始まる3年間の中期経営計画2022を策定しました。
その骨子の概要は以下のとおりです。
なお、詳細は当社ウェブサイトに掲載しておりますので、下記をご参照下さい。
< https://www.yodoko.co.jp/ir/mmp/pdf/mmp.pdf >a.対象会社
淀川製鋼所及び連結子会社8社
b.対象期間
2020年度~2022年度の3年間
c.基本戦略
「機動力を活かした収益構造の強靭化」「新しい分野への挑戦」「持続可能な経営基盤の構築」を基軸とする以下の6項目を基本戦略とします。
A.機動力を活かした収益構造の強靭化
A-1.ビジネスモデルの深化
A-2.ものづくり力の底上げ
B.新しい分野への挑戦
B-1.既存事業を基盤とした新分野の開拓
C.持続可能な経営基盤の構築
C-1.将来を見据えた積極的投資と資本効率向上
C-2.次世代を担う人材の育成と組織力強化
C-3.全てのステークホルダーとの共生

d.資本政策と株主還元
当社は「株式会社淀川製鋼所 コーポレートガバナンスガイドライン」のなかで、資本政策の基本方針を定めております。
< https://www.yodoko.co.jp/ir/cggl/cggl20181227.pdf >中期経営計画2022の期間中については、資本政策の基本方針に加え、以下の考え方に基づき機動的に資金を活用してまいります。
ⅰ 当社グループの主力事業が属する鉄鋼業界は、日本国内では人口減少とともに長期的な市場拡大を期待することは難しく、海外ではグローバルな経済の変動と各地域・国における通商政策に大きな影響を受ける厳しい経営環境が続くことが予想されます。このような厳しい環境の中で当社グループが持続的に成長していくためには、既存事業における競争力強化と新しい事業領域開拓の双方に、優先的に資金を充当することが必要であります。
ⅱ 当社は自社の資本コストを定期的に分析しており、資本コストを上回る資本効率を実現するために、既存事業における投下資本利益率の向上、ならびに積極的投資による非事業資産の事業資産への組み換えにより、資本効率の向上に取り組みます。
ⅲ 株主の皆様への利益還元としては、業績に応じた配当金のお支払いを重視することとし、配当の指標としては、連結配当性向年間30%~50%程度を目途に実施することを基本方針とします。
なお、株主の皆様への利益還元の方針については、新型コロナウイルス感染症による当社グループの経営環境への影響の程度が明らかになった時点で、改めて開示いたします。
e.設備投資
生産効率向上やコスト低減、品質向上など競争力強化を目的とした戦略的な投資は優先的に実施し、また、既存事業の継続に必要な老朽設備・施設の更新も計画的に実施する方針とします。
中期経営計画2022期間中の具体的な投資規模およびその内訳については、新型コロナウイルス感染症による当社グループの経営環境への影響の程度が明らかになった時点で、改めて開示いたします。
f.定量的目標
中期経営計画2019においては「目標:連結経常利益100億円を安定計上」と掲げておりました。中期経営計画2022の業績目標につきましては、新型コロナウイルス感染症による当社グループの経営環境への影響の程度が明らかになった時点で、改めて開示いたします。
以上に示しましたとおり、中期経営計画2022において基本戦略としております「機動力を活かした収益構造の強靭化」「新しい分野への挑戦」「持続可能な経営基盤の構築」に沿った取り組みを進め、長期ビジョンの達成に向けた助走期間としての施策の展開を進めることが、当面の対処すべき課題であります。