有価証券報告書-第204期(2025/04/01-2026/03/31)
② 戦略
当社グループにおける人的資本に関する施策は、グループ全体で共有するパーパス及び経営方針を基盤とし、各社の事業特性、所在国の法律・制度及び労働市場環境等の違いを踏まえた上で、主体的に設計・運用しています。本項では、当社における代表的な取組みを中心に記載していますが、これらの取組みは当社が主導して推進しているものであり、グループ各社においても同様の考え方のもと、各社の実情に応じて施策を展開しています。
<ビジョン2030における人材マネジメント戦略>当社グループでは、経営上の重要課題のひとつである「人的資本の最大化」を実現するため、人材・組織実行力(人と組織のやりきる力)の強化を人材マネジメント戦略の中核と位置づけています。
経営戦略・事業戦略の実行にあたり、対話を通じて個人と組織の成長ベクトルをすり合わせることで、実行力の向上を図り、社会課題の解決及びビジョン2030の実現につなげていきます(下図)。

多様な事業内容や市場環境、収益構造を有する当社グループは、戦略遂行に必要な人材を確保・配置するとともに、その成長を組織として支援することで、一人ひとりがやりがいを持って活躍し続けられる組織風土の醸成を目指しています。こうした人と組織のありたい姿の実現に向け、経営上の重要課題の解決に資する人事施策をNeeds・Can・Willの3つの要素で捉え、具体的な活動に取り組んでいます(表1・表2)。
(表1)Needs・Can・Willの3要素について
(表2)
<当社グループ全体に影響する人的資本関連リスク及び機会>
※1 財務的影響について、当該リスク又は機会が顕在化した場合、事業機会の喪失や新たな事業創出・価値創造を通じた売上機会の拡大等が考えられますが、現時点ではその影響度を合理的に見積もることが困難であるため、定量的な数値情報は記載していません。
※2 短期:1~3年(2028年まで)・中期:5年(2030年まで)と定義しています。
※3 人材・組織実行力に関する調査「フルカワEサーベイ」における総合指標である「従業員エンゲージメント」スコアを指標・目標に設定しています。「人材・組織実行力」の構成要素である13のカテゴリー(企業理念、リーダーシップ、業務運営体制、コミュニケーション、ダイバーシティ、タレントマネジメント等)から測定しています。
※4、※5 当該指標は、生産性向上に関するリスク及び機会を直接的に測定するものではありませんが、労働環境の改善や人材マネジメント上の取組みが進展した結果として現れるアウトカムの一つと位置づけています。社会的要請も踏まえ、当社では重要な参考指標として継続的に管理しています。
<リスク及び機会への対応戦略>以下に記載する対応戦略は主に当社を中心に推進している取組みであり、グループ会社においては各社の事業特性や人材構成等を踏まえ、同様の考え方のもと個別に施策の立案・実行を行っています。
1)注力領域(データセンタ関連等)における専門人材の不足により、案件獲得機会の逸失や品質低下による収益性悪化、並びに人員負荷や離職の増加につながるリスクへの対応戦略
2025年度は、注力領域における専門人材不足への対応として、採用数の確保にとどまらず「必要な人材を、必要なタイミングで、早期に戦力化する」ことを目的に、人材採用力及びオンボーディングの強化に取り組みました。
キャリア採用については、これまでの人材紹介型の採用から、ポジション別にターゲティングを行う能動的な採用手法へ転換しました。ダイレクトソーシングの活用拡大、リファラル採用及びリターン雇用を通じて、採用コストの抑制と定着確度の高い人材獲得の両立を図りました。あわせて、事業戦略の遂行に必要な専門性の高い人材(プロフェッショナル人材)の採用にも注力しました。これらの取組みに関連する採用プロセスについては、標準化・迅速化を進め、期中で変動する採用ニーズにも柔軟に対応できる運用体制を整備しました。
新卒採用については、将来に向けた人材基盤の強化を目的として、学生に対して入社後に担う職務内容や配属先となる事業の役割・特徴を具体的に説明し、入社後のミスマッチ低減と定着を重視した採用へシフトするとともに、入社後面談等のオンボーディングを強化しました。これらの取組みは2026年度以降も継続して推進していきます。
2)パーパスの浸透により、判断の共有と日常業務における行動の変化が進み、従業員エンゲージメントの向上につながる機会への対応戦略
パーパスの浸透段階を「認知・理解」と「行動・体現」の2つのフェーズに分解し、浸透活動を展開するとともに、人材・組織実行力に関する調査「フルカワEサーベイ」を活用して浸透状況を定量的に把握・可視化しています。
2024年度末に実施した従業員のパーパス認知度調査(2025年1月)の結果、パーパスに対する「認知・理解」が十分とはいえない状況が確認されました。また、国内グループ会社及び当社の直接部門においては、「行動・体現」に関する回答が限定的であり、業務上の意思決定や行動との結び付きに伸びしろがあることを確認しました。その後、2025年6月の調査結果では、「認知・理解」は一定の改善が見られたものの、依然として不十分な水準であり、「行動・体現」は当社が目標として掲げる50%水準には到達していませんでした。これらの結果から、パーパスの内容自体は理解され始めている一方で、日常業務や現場において、どのようにパーパスを判断軸として用い、従業員一人ひとりの業務と結び付けていくかが十分に明確になっておらず、「認知・理解」と「行動・体現」のフェーズ間にギャップが存在していることが課題として認識されました。
こうした結果を踏まえ、2025年度は「認知・理解」の底上げを目的とした取組みを重点的に実施しました。具体的には、パーパス紹介動画の制作・配信や社内イントラネット上での特設ページ公開、管理職向けガイドラインの発信、ポスターやクレドカードの配付等、多様なチャネルを通じた情報提供を行いました。あわせて、部長層以上を対象とした理解浸透ワークショップの実施や、経営層によるメッセージ発信を通じ、パーパスへの理解促進に取り組みました。
2026年度以降は、パーパス浸透活動を「行動・体現」フェーズへと段階的に移行します。具体的には、理解浸透ワークショップを課長層へ拡大するとともに、パーパスを起点とした部門方針・課題設定から個人目標設定への接続、並びに日常のマネジメントや対話の場面において、パーパスの視点を組み込む取組みを進めていきます。これらの取組みを通じてパーパスを判断軸とした意思決定や行動が広がることで、従業員エンゲージメントの向上につながる機会になると捉えています。
3)人材・組織実行力の強化により、事業遂行力が高まり、生産性向上や新規事業・新製品創出につながる機会への対応戦略
人材・組織実行力(人と組織のやりきる力)の強化を人材マネジメント戦略の中核と位置づけ、従業員一人ひとりの自律的な学習と能力発揮を支える基盤づくり及び管理職層のマネジメント力向上に取り組んでいます。
2025年度は、リスキリング(※1)の考え方のもと、従来の集合型・画一的な研修に加え、従業員が自身の業務や課題に応じて、いつでも・どこでも主体的に必要な知識・スキルを学べる環境整備に継続して取り組みました。具体的には、Eラーニングシステムを活用し、個人の自律的な学びや成長を継続的に支援しています。また、2026年度のジョブ型人事制度導入に向けて、事業戦略の達成に必要な機能・役割及び職務の整理を進めるとともに、それらに求められるスキルの可視化に向けた検討を開始しました。管理職層のマネジメント力強化については、階層別研修カリキュラムの刷新に向けた検討を行いました。
2026年度以降は、従業員一人ひとりが自身に求められる役割や能力を理解したうえで、自律的に学習できる環境整備に継続して取り組みます。管理職層については、フルカワ・リーダーズコンピテンシーを軸に、事業戦略の遂行に必要なスキルを各種研修の場やEラーニングを通じて提供し、マネジメント力を強化していきます。また、新たに導入するジョブ型人事制度とフルカワ・リーダーズコンピテンシーを反映した改定版360度フィードバックを実施し、管理職のマネジメント行動を多面的に可視化することで、「チームで成果を上げる」組織の実現に向けた行動を促進します。
さらに、経営戦略・事業戦略と人事施策の連動を強化し、HRBP(※2)が事業領域ごとの業務特性や人材構成を整理したうえで、より事業部門に踏み込んで改善活動を支援していきます。これらの取組みを通じて人材・組織実行力が強化され、人材の多様性を活かした事業遂行力の向上に加え、新規事業・新製品の創出、生産性向上(※3)及び利益率改善の機会につながるものと捉えています。
※1 当社のリスキリングは「新規・既存を問わず、業務遂行において必要な知識及びスキルを自律的に学ぶこと」と定義しています。
※2 当社におけるHRBP(Human Resources Business Partner)とは、2026年4月の組織変更により、事業部門又は領域ごとに設置した人事課に配置され、人材配置・育成や組織運営上の課題解決を支援する役割と位置づけています。
※3 労働生産性の向上については、経営戦略の実行を支える重要な取組みであることから、人・組織の持続的な成長と一体で進めていく方針です。労働人口の減少や人材獲得競争の激化といった環境変化を踏まえ、デジタル技術の活用や業務プロセス改革による効率化を進めるとともに、働きやすい労働環境の整備や、一人ひとりが働きがいを感じられる職場づくりに取り組みます。当社は、短期的な売上確保のための効率追求に偏ることなく人的資本の価値を高めることが、中長期的な企業価値向上につながる機会になると捉えています。
当社グループにおける人的資本に関する施策は、グループ全体で共有するパーパス及び経営方針を基盤とし、各社の事業特性、所在国の法律・制度及び労働市場環境等の違いを踏まえた上で、主体的に設計・運用しています。本項では、当社における代表的な取組みを中心に記載していますが、これらの取組みは当社が主導して推進しているものであり、グループ各社においても同様の考え方のもと、各社の実情に応じて施策を展開しています。
<ビジョン2030における人材マネジメント戦略>当社グループでは、経営上の重要課題のひとつである「人的資本の最大化」を実現するため、人材・組織実行力(人と組織のやりきる力)の強化を人材マネジメント戦略の中核と位置づけています。
経営戦略・事業戦略の実行にあたり、対話を通じて個人と組織の成長ベクトルをすり合わせることで、実行力の向上を図り、社会課題の解決及びビジョン2030の実現につなげていきます(下図)。

多様な事業内容や市場環境、収益構造を有する当社グループは、戦略遂行に必要な人材を確保・配置するとともに、その成長を組織として支援することで、一人ひとりがやりがいを持って活躍し続けられる組織風土の醸成を目指しています。こうした人と組織のありたい姿の実現に向け、経営上の重要課題の解決に資する人事施策をNeeds・Can・Willの3つの要素で捉え、具体的な活動に取り組んでいます(表1・表2)。
(表1)Needs・Can・Willの3要素について
| Needs・Can・Willとは | ありたい姿 |
| 1)Needsを共有 組織は、個人が活躍していく場を、役割や機能、組織、取り扱う情報の編成を通じて明確に示し、個人はそれを理解できる。 | ・事業戦略遂行に必要な人材(当社グループが誠実に磨き続けてきた技術力と提案力を活かして、社会課題解決を起点とした事業創出や価値創造に向けて積極的に変革できる人材)が確保されている状態。 ・公平性の高い人事制度が公正かつ適切に運用されている状態。 |
| 2)Canを増やす 組織は、個人が活躍していくための成長を支援し(知識や経験を得る機会の提供)、個人は自律的なキャリアを描き、自ら学ぶ。 | ・事業戦略遂行の観点から必要とされるキャリアパスや能力・スキルを明示し、一人ひとりがキャリアゴールを明確に描き、自律的な学びを通じて成長できる状態。 ・当社グループの技術力と提案力を通じて顧客と共創し、顧客の課題解決と当社グループの収益拡大の両立を実現できる人材が育成されている状態。 |
| 3)Willを高める 個人がその場に魅力を感じ、やりがいを得て、さらに成長し、活躍していく。 | ・個人が当社グループのパーパスに共感し、成長し、活躍し続けたいと思えるようなエンゲージメントの高い組織風土が醸成されている状態。 ・人の成長・活躍をチームとしての成果へ繋げるリーダーシップが発揮され、チームマインドが醸成されている状態。 |
(表2)
| 3要素 | 2025年度の主な課題・主な取組み内容 |
| 1)Needsを共有 | ・事業戦略の遂行に必要な人材確保及び育成を目的として、サクセッションプラン及び育成計画の策定・実行に継続して取り組みました。経営人材については、外部アセスメントを活用した人材プールの形成や外部研修への派遣を進めるとともに、育成計画に基づくタフアサインメントを含む計画的な異動を進めています。 ・事業環境の急激な変化(データセンタ需要の急拡大)に伴う注力領域への人材確保の課題に対し、社内公募制度等を通じた人員シフトに取り組みました。あわせて、注力領域を中心とした採用ニーズに柔軟かつ迅速に対応できるよう、キャリア採用活動の改善を行うとともに、新規入社者の早期戦力化を目的としてオンボーディングの強化に取り組みました。 ・2026年度のジョブ型人事制度導入に向け、現行制度の分析や制度設計の検討等の準備に取り組みました。具体的には、事業戦略の達成に必要な役割・機能の整理や、職務要件定義書の作成や処遇のあり方の整理を進めました。 ・「人権・労働慣行」及び労務分野に関するリスクについて、人権尊重に対する企業の責任を果たすため、古河電工グループ人権方針に基づいた事業活動の推進、人権デューディリジェンスを実施しています。また、内部通報やコンプライアンス意識調査の結果を分析し、必要な改善策を実施しています。 |
| 2)Canを増やす | ・従来の階層別中心の教育体系を見直し、より多くの個人が主体的に知識・スキルを獲得できるよう、キャリア自律支援及びリスキリング(※)に関する取組みを継続しています。 ※ リスキリングの定義:新規・既存を問わず、業務遂行において必要な知識及びスキルを自律的に学ぶこと。 |
| 3)Willを高める | ・多様な個人がパーパスに共感し、能力・技術を発揮し続けられるよう、理念浸透、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進及びエンゲージメント向上に取り組みました。 ・「チームで成果を上げる」組織の実現を目指し、2020年に定めた「古河電工流上司心得七則(フルカワセブン)」を進化させ、上司に求められる行動様式として整理した「フルカワ・リーダーズコンピテンシー」を策定しました。 |
<当社グループ全体に影響する人的資本関連リスク及び機会>
| リスク及び機会 | リスク及び機会が顕在化した際に発生する事業戦略への影響と財務的影響※1 | 発現 時期 ※2 | 指標 ()は範囲 | 2030 年度 目標 | 2025 年度 実績 | ||
| 1) | リスク | 注力領域(データセンタ関連等)における専門人材の不足により、案件獲得機会の逸失や品質低下による収益性悪化、並びに人員負荷や離職の増加につながるリスク | (事業戦略への影響) ・将来案件の受注競争力低下 (受注単価や案件獲得率) ・従業員の生産性低下 ・労働環境悪化による離職増加 ・安全意識の低下 (財務的影響) ・事業機会の喪失 ・品質低下に伴う返品・改修等による追加コストの発生や収益機会の逸失による収益性悪化 ・フリーキャッシュフローの不安定化(採用・教育コスト先行) | 短期 | 従業員エンゲージメントスコア (グループ)※3 管理職層に占める女性比率 (単体)※4 男性育休取得率 (単体)※5 | 81 10% 100% | 76 6.3% 95.1% |
| 2) | 機会 | パーパスの浸透により、判断軸の共有と日常業務における行動の変化が進み、従業員エンゲージメントの向上につながる機会 | (事業戦略への影響) ・パーパスを判断軸とした意思決定や行動の浸透による、組織内の方向性の統一 ・事業戦略と日常業務との結び付きの明確化 (財務的影響) ・従業員の定着率向上による採用・育成コストの抑制 | 中期 | |||
| 3) | 機会 | 人材・組織実行力の強化により、事業遂行力が高まり、生産性向上や新規事業・新製品創出につながる機会 | (事業戦略への影響) ・イノベーションの促進 ・新規事業創出や新規製品の増加 ・事業運営のレジリエンス強化 (財務的影響) ・営業利益率の改善 ・従業員の定着率向上による採用・育成コストの抑制 | 短期 ~ 中期 | |||
※1 財務的影響について、当該リスク又は機会が顕在化した場合、事業機会の喪失や新たな事業創出・価値創造を通じた売上機会の拡大等が考えられますが、現時点ではその影響度を合理的に見積もることが困難であるため、定量的な数値情報は記載していません。
※2 短期:1~3年(2028年まで)・中期:5年(2030年まで)と定義しています。
※3 人材・組織実行力に関する調査「フルカワEサーベイ」における総合指標である「従業員エンゲージメント」スコアを指標・目標に設定しています。「人材・組織実行力」の構成要素である13のカテゴリー(企業理念、リーダーシップ、業務運営体制、コミュニケーション、ダイバーシティ、タレントマネジメント等)から測定しています。
※4、※5 当該指標は、生産性向上に関するリスク及び機会を直接的に測定するものではありませんが、労働環境の改善や人材マネジメント上の取組みが進展した結果として現れるアウトカムの一つと位置づけています。社会的要請も踏まえ、当社では重要な参考指標として継続的に管理しています。
<リスク及び機会への対応戦略>以下に記載する対応戦略は主に当社を中心に推進している取組みであり、グループ会社においては各社の事業特性や人材構成等を踏まえ、同様の考え方のもと個別に施策の立案・実行を行っています。
1)注力領域(データセンタ関連等)における専門人材の不足により、案件獲得機会の逸失や品質低下による収益性悪化、並びに人員負荷や離職の増加につながるリスクへの対応戦略
2025年度は、注力領域における専門人材不足への対応として、採用数の確保にとどまらず「必要な人材を、必要なタイミングで、早期に戦力化する」ことを目的に、人材採用力及びオンボーディングの強化に取り組みました。
キャリア採用については、これまでの人材紹介型の採用から、ポジション別にターゲティングを行う能動的な採用手法へ転換しました。ダイレクトソーシングの活用拡大、リファラル採用及びリターン雇用を通じて、採用コストの抑制と定着確度の高い人材獲得の両立を図りました。あわせて、事業戦略の遂行に必要な専門性の高い人材(プロフェッショナル人材)の採用にも注力しました。これらの取組みに関連する採用プロセスについては、標準化・迅速化を進め、期中で変動する採用ニーズにも柔軟に対応できる運用体制を整備しました。
新卒採用については、将来に向けた人材基盤の強化を目的として、学生に対して入社後に担う職務内容や配属先となる事業の役割・特徴を具体的に説明し、入社後のミスマッチ低減と定着を重視した採用へシフトするとともに、入社後面談等のオンボーディングを強化しました。これらの取組みは2026年度以降も継続して推進していきます。
2)パーパスの浸透により、判断の共有と日常業務における行動の変化が進み、従業員エンゲージメントの向上につながる機会への対応戦略
パーパスの浸透段階を「認知・理解」と「行動・体現」の2つのフェーズに分解し、浸透活動を展開するとともに、人材・組織実行力に関する調査「フルカワEサーベイ」を活用して浸透状況を定量的に把握・可視化しています。
2024年度末に実施した従業員のパーパス認知度調査(2025年1月)の結果、パーパスに対する「認知・理解」が十分とはいえない状況が確認されました。また、国内グループ会社及び当社の直接部門においては、「行動・体現」に関する回答が限定的であり、業務上の意思決定や行動との結び付きに伸びしろがあることを確認しました。その後、2025年6月の調査結果では、「認知・理解」は一定の改善が見られたものの、依然として不十分な水準であり、「行動・体現」は当社が目標として掲げる50%水準には到達していませんでした。これらの結果から、パーパスの内容自体は理解され始めている一方で、日常業務や現場において、どのようにパーパスを判断軸として用い、従業員一人ひとりの業務と結び付けていくかが十分に明確になっておらず、「認知・理解」と「行動・体現」のフェーズ間にギャップが存在していることが課題として認識されました。
こうした結果を踏まえ、2025年度は「認知・理解」の底上げを目的とした取組みを重点的に実施しました。具体的には、パーパス紹介動画の制作・配信や社内イントラネット上での特設ページ公開、管理職向けガイドラインの発信、ポスターやクレドカードの配付等、多様なチャネルを通じた情報提供を行いました。あわせて、部長層以上を対象とした理解浸透ワークショップの実施や、経営層によるメッセージ発信を通じ、パーパスへの理解促進に取り組みました。
2026年度以降は、パーパス浸透活動を「行動・体現」フェーズへと段階的に移行します。具体的には、理解浸透ワークショップを課長層へ拡大するとともに、パーパスを起点とした部門方針・課題設定から個人目標設定への接続、並びに日常のマネジメントや対話の場面において、パーパスの視点を組み込む取組みを進めていきます。これらの取組みを通じてパーパスを判断軸とした意思決定や行動が広がることで、従業員エンゲージメントの向上につながる機会になると捉えています。
3)人材・組織実行力の強化により、事業遂行力が高まり、生産性向上や新規事業・新製品創出につながる機会への対応戦略
人材・組織実行力(人と組織のやりきる力)の強化を人材マネジメント戦略の中核と位置づけ、従業員一人ひとりの自律的な学習と能力発揮を支える基盤づくり及び管理職層のマネジメント力向上に取り組んでいます。
2025年度は、リスキリング(※1)の考え方のもと、従来の集合型・画一的な研修に加え、従業員が自身の業務や課題に応じて、いつでも・どこでも主体的に必要な知識・スキルを学べる環境整備に継続して取り組みました。具体的には、Eラーニングシステムを活用し、個人の自律的な学びや成長を継続的に支援しています。また、2026年度のジョブ型人事制度導入に向けて、事業戦略の達成に必要な機能・役割及び職務の整理を進めるとともに、それらに求められるスキルの可視化に向けた検討を開始しました。管理職層のマネジメント力強化については、階層別研修カリキュラムの刷新に向けた検討を行いました。
2026年度以降は、従業員一人ひとりが自身に求められる役割や能力を理解したうえで、自律的に学習できる環境整備に継続して取り組みます。管理職層については、フルカワ・リーダーズコンピテンシーを軸に、事業戦略の遂行に必要なスキルを各種研修の場やEラーニングを通じて提供し、マネジメント力を強化していきます。また、新たに導入するジョブ型人事制度とフルカワ・リーダーズコンピテンシーを反映した改定版360度フィードバックを実施し、管理職のマネジメント行動を多面的に可視化することで、「チームで成果を上げる」組織の実現に向けた行動を促進します。
さらに、経営戦略・事業戦略と人事施策の連動を強化し、HRBP(※2)が事業領域ごとの業務特性や人材構成を整理したうえで、より事業部門に踏み込んで改善活動を支援していきます。これらの取組みを通じて人材・組織実行力が強化され、人材の多様性を活かした事業遂行力の向上に加え、新規事業・新製品の創出、生産性向上(※3)及び利益率改善の機会につながるものと捉えています。
※1 当社のリスキリングは「新規・既存を問わず、業務遂行において必要な知識及びスキルを自律的に学ぶこと」と定義しています。
※2 当社におけるHRBP(Human Resources Business Partner)とは、2026年4月の組織変更により、事業部門又は領域ごとに設置した人事課に配置され、人材配置・育成や組織運営上の課題解決を支援する役割と位置づけています。
※3 労働生産性の向上については、経営戦略の実行を支える重要な取組みであることから、人・組織の持続的な成長と一体で進めていく方針です。労働人口の減少や人材獲得競争の激化といった環境変化を踏まえ、デジタル技術の活用や業務プロセス改革による効率化を進めるとともに、働きやすい労働環境の整備や、一人ひとりが働きがいを感じられる職場づくりに取り組みます。当社は、短期的な売上確保のための効率追求に偏ることなく人的資本の価値を高めることが、中長期的な企業価値向上につながる機会になると捉えています。