有価証券報告書-第172期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/08/17 13:34
【資料】
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【項目】
166項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、創立120周年に当たる2005年度を「第3の創業」の年と位置づけ、経営理念である「ミッション・ビジョン・基本的価値」を指針とし、“つなぐ”テクノロジーを通じて「顧客価値創造型」事業へ積極的に展開し、収益性重視のスピード感ある積極経営で豊かな社会づくりに貢献してゆく所存であります。
(2) 経営環境
経済環境としては、米中の通商問題の動向が世界経済に与える影響や、中国等の海外経済の動向と政策に関する不確実性等に留意が必要な経済環境となっております。
エネルギー・情報通信分野においては、国内はインフラの成熟化により、大きな需要の伸びが見込めない状況にあります。また、海外については情報通信分野において、拡大を続けていた中国における光ファイバ需要の伸びが鈍化する一方、他地域は堅調を維持するなど需要環境に変化が見られます。
エレクトロニクス分野においては、当社FPC(フレキシブルプリント配線板)、コネクタが多く使用されているスマートフォンの世界的な需要について、堅調であった主要顧客の需要動向に変化が見られる状況です。
自動車分野においては、世界の自動車生産台数については減速感が見られますが、CASE(Connectivity:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング&サービス、Electric:電動化)が主要なテーマとなるなど、自動車は100年に一度の革新期にあり、新エネルギー車の需要拡大、自動車の電子化・情報化が一層進展するものと見込まれます。
(3) 対処すべき課題
①早期事業回復に向けた戦略への転換
現在進行中の2016年度をスタートとする5か年計画「2020中期経営計画(20中期)」は、「稼ぐ力の維持強化」「財務体質の改善」を基本戦略に据え、「収益率を重視し健全な成長を図る」「顧客価値創造型企業を目指し、新陳代謝を加速して進める」「コーポレートガバナンスを確立し、併せて環境・社会側面での貢献に取り組み、企業価値の増大を図る」を基本方針として、売上高9,000億円、営業利益率7.0%以上、ROE10.0%以上、D/Eレシオ
40:60(0.66倍)の達成を目指すことといたしました。しかしながら、2019年度の業績は既に述べたとおりであり、20中期の続行は収益構造の更なる悪化を招きかねないとの判断の下、現行の20中期を断念し、基本戦略を「早期事業回復への集中」に転換することといたしました。
この20中期では、当社の強みを活かせる市場・戦略顧客への注力、当初計画に従った集中投資により事業規模は拡大しました。しかしながら、主要顧客のスマートフォン需要の減少や中国における光ファイバ価格の大幅下落など、顧客動向や市場の大きな変化に対応しきれず、「光ファイバ」「FPC」「自動車用ワイヤハーネス」の当社事業の3本柱は、いずれも大きく落ち込むこととなりました。当社の事業規模が急速に拡大するなかで、特定の市場への傾注や顧客の成長戦略への追従を重視するあまり、市場・顧客の変調に対して機動的に対応しきれなくなったこと、リソースが分散され拠点運営体制の確保や事業全体を管理するためのガバナンス体制の整備が追い付かなかったことなどが、業績悪化の大きな要因となったものと考えています。
この反省を踏まえ、2020年度は「早期事業回復への集中」を基本戦略に据え、重点施策を「既存事業の聖域なき『選択と集中』」及び「グループガバナンスの強化」の2点に絞り、事業構造改革を断行し、またグループガバナンス推進室の設置などによるリスク管理の更なる徹底を図ってまいります。当社経営として、早期の事業回復を果たすべく不退転の決意をもって臨んでまいります。
②2020年度の経営計画と事業部門ごとの重点課題
当社を取り巻く環境は、引き続き価格下落、激しい過当競争が進むものと見込まれます。加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による下押しリスクが懸念されます。各事業部門別の重点課題は下記の通りであります。
各事業部門の重点課題
『エネルギー・情報通信カンパニー』
エネルギー事業部門においては、事業継続に必要な収益を確保できる体制とするためのコスト構造に踏み込んだ改革を進めています。2019年度に改革の方向性について目途付けを完了し、順次これに沿った改革に着手しています。具体的には、配電ケーブル事業のグループ会社への統合やマレーシアにおける電力ケーブル生産拠点の廃止などを行っています。2020年度には事業構造改革の方針に従った事業の選択と集中を早急に進めます。また、2019年度までに多額の損失を計上してきた海外EPC事業(*1)は、新興国での商慣行や施工管理など事業運営の難しさ等を鑑み、撤退することといたしました。
情報通信事業部門においては、当社光ファイバの主要な市場である中国では、2020年度も光ファイバの供給過剰とこれに伴う価格下落、競争激化がいっそう進むものと見込まれます。一方、欧米では5G(第5世代移動通信システム)やIoT、データセンタ、FTTx整備(*2)を背景とした大容量通信網の構築が進んでおり、通信インフラの増強・整備の需要は引き続き堅調に推移するものと見込んでいます。加えて、足下では新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、通信容量のいっそうの増加が求められるようになっています。当社といたしましては、2019年度において多額の減損損失を計上した光ファイバ事業とファイバレーザ事業について、事業のスリム化とさらなる構造改革を行います。他方、付加価値の高い光ケーブル事業の比重を高め、収益力の向上を図ってまいります。特に、さらなる伸びが期待できる米国に加え、前年度から販売を開始した英国をはじめとする欧州を重点市場と位置付けて、当社の戦略商品「Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable™」(*3)を軸に、接続部品などの周辺機器・部品、工事、メンテナンスサービスを含めたトータルソリューションとしての販売強化に注力し、情報通信事業部門全体の早急な収益回復に努めてまいります。
(*1)EPC事業とは、電線・ケーブルの供給並びに敷設工事の設計及び施工を一体として提供する事業を言い
ます。(Engineering:設計、Procurement:調達、Construction:建設)
(*2)FTTx整備とは、通信事業者の電話局から、住宅、ビル等までの光ファイバ網整備を言います。
(*3)当社の戦略商品「Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable™」は、従来に比べ大容量・軽量・細径で工事費
も削減可能な光ケーブルです。
『電子電装・コネクタカンパニー』
(エレクトロニクス事業部門) 主力のFPC事業は、これまで品質・技術力に磨きをかけることで主要顧客の信頼を得て、その成長戦略に応え、ビジネスを展開してまいりました。しかしながら、スマートフォン需要の頭打ちによる競争環境の激化と需要変動に対し、柔軟かつ機動的に対応できなかったこと、そして自らの能力評価に過信があったことなどが大きな損失を計上するに至った主な要因と分析しています。QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)そしてサービスまで含めた事業全般にわたり自己の能力を改めて評価し、それに見合った受注をすることで収益力の回復を図ります。また、厳しい競争環境は今後も続くことから、更なる事業構造改革、競合他社に対し優位性を持つ品質の改善、よりいっそうのコスト低減活動を強化してまいります。
(自動車事業部門)
2017年度下期に大きな損失を計上したことを契機として、欧州市場におけるワイヤハーネス事業は、現地のマネジメント体制に大きな課題があることが明らかになりました。これまでの体制を刷新することで、本社からの統制を強め、顧客の要請に柔軟かつ機動的に対応してまいります。引き続き東欧からモロッコへの生産拠点の移管と事業構造改革をさらに進め、能力に応じた受注をすることで収益力を回復します。また、需要低迷の続く中国向けを含むアジア市場においても事業構造改革を進め、自動車用ワイヤハーネス事業全体で『稼ぐ力』を取り戻します。
また、成長戦略の一環として、「CASE」の分野で新たな事業機会を得るため、自動車用ワイヤハーネス事業で培ってきた基盤を活用した電子部品事業の展開を図ってまいります。
③品質管理に関する取り組み
2018年8月31日付で公表いたしました品質不適切事案の判明以降、このような事態を二度と起こさないよう、是正策及び再発防止策の徹底によりグループ全体におけるガバナンスの向上と品質管理体制の強化を図ってまいりました。具体的には、ガバナンス改革として、品質保証部門の独立性確保、増員・教育訓練等による実効性の強化や、電子システムによる人為的な操作を排除する仕組みの導入などを行ってまいりました。また、品質コンプライアンス意識の向上として、品質コンプライアンスを最優先すべしとする全社方針の明確化とその浸透活動や、グループ全社員を対象とした品質コンプライアンス研修などを行い、これらの実施を継続することとしています。加えて、内部通報制度の周知、徹底を図っています。
当社といたしましては、引き続き「フジクラ クオリティ方針」に基づく適正な品質管理を重要課題として位置づけ、当社の持続的な成長を実現してまいります。
『フジクラ クオリティ方針』
1.「品質」を根幹に据えた経営を追求し、お客様に最高のクオリティの製品とサービスを提供する。
2.社員一人ひとりが、品質コンプライアンスの重要性を改めて強く意識し、法令、公的規格及びお客様との
契約事項等を遵守して、品質不適切行為を二度と起こさない。
3.常に職場内でのコミュニケーションを図り、風通しの良い企業風土を醸成し、品質コンプライアンス上の問
題を認識した際は速やかに上司へ報告を行う。
④新規事業、研究開発
2020年度は、大きく落ち込んだ主要3事業を中心とした稼ぐ力の再生が最重要課題です。一方、再生を果たした後の持続的な成長のためには、新規事業の創出、新製品の開発の歩みを止めてしまうわけにはいきません。2017年3月に策定した「2030年ビジョン」で掲げた「Advanced Communication(高度情報化社会への貢献)」「Energy & Industry(多様なエネルギーの活用と効率的なマネジメント)」「Life-Assistance(クオリティオブライフの向上)」「Vehicle(次世代モビリティ社会への貢献)」の4つの市場分野におけるオープンイノベーションを通じた新たな価値の創出を目指し、市場ニーズや需要の動向などを見極めながら、当社のコア事業・技術を活かせる重点テーマに絞り込んで、新規事業の創出、新製品の開発を継続してまいります。

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