有価証券報告書-第77期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 15:30
【資料】
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【項目】
107項目

研究開発活動

当社グループは、長年培ってきた電線・ケーブル押出技術(導体の上に絶縁体を被覆する技術)を応用した製品開発を重要なる柱として、技術変化の激しいデジタルエレクトロニクス分野に対応した高精度・高速伝送ケーブルの研究開発、超高速大容量通信サービス/放送分野に対応した光波長分割多重伝送装置/光デジタル放送中継システム、各種災害対策機器、蓄電給電関連機器の研究開発、及び医療分野における高性能医療用特殊チューブ等、今後の当社グループ事業の中核となる製品の研究開発を鋭意進めております。
現在の研究開発は、インキュベータ的研究開発及び製品直結型の各事業部における研究開発で推進されております。
当連結会計年度における各セグメント別の主な研究テーマ、成果は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の研究開発費総額は2億50百万円となっております。
(1)電線・加工品事業における研究開発費は1億43百万円であります。
・環境対応材料の開発
RoHS指令、REACH規制、POPs条約など環境規制が強化される中、これらに対応する材料としては、環境への悪影響がなく且つ商品性能・価値を満足させることが要求されてきています。当社では、RoHS指令やREACH規制等で禁止される特定有害物質を一切使用することなく、従来材料と同等以上の性能、コストパフォーマンスをだすための材料技術を蓄積し、安心して使用できる環境対応材料の開発に取り組んでおります。絶縁電線やケーブルに採用してきた非ハロゲン難燃材料においては、より高難燃、高耐熱、低摩耗などの高機能化の要求に応えるための開発を進めております。
・デジタルインタフェイスケーブルの開発
近年IoTの出現により、ネットワークやコンピュータの要求性能は急速に高まり、より多くのデータを保存、伝送、処理する必要があります。一方で、データの転送速度の向上に伴い伝送ロスが増加するなどデータ伝送の課題は増えています。
送信部の波形品質特性、ケーブルの特性品質等、すべてに高い性能が要求され、これまではあまり問題にならなかったレーン間のクロストークも大きな問題となります。そのため実際の設計では、測定器とシミュレーションを組み合わせたトータルの開発環境も重要となります。
サーバ/ストレージ用の25Gbps対応ケーブル及びそのアッセンブリ品であるQSFP28を始め、FA及び医療向けマシンビジョンカメラ用の各種規格ケーブル(Camera Link/GigEVision/USB3Vision/CoaxPressなど)、民生用の各種規格ケーブル(HDMI/DVI/DisplayPort/USB3.2など)、その他にAOCケーブルやActiveケーブルといった、車載電子機器用ケーブル、防水ケーブルASSY等の開発・量産化を強化しております。
・超極細同軸ケーブルの開発
一般的にAWG36より細いサイズの同軸ケーブルが極細同軸ケーブルと呼ばれておりますが、その中でもAWG46より細い超極細のものは、内視鏡や超音波内視鏡などの医療用を中心として採用されております。当社は、特殊な銅合金導体をはじめ、素材レベルから検討を進め、強度・機械特性・ノイズ・伝送特性等に優れた超極細同軸ケーブルの開発に取り組んで来ました。今後は医療用のみならずデジタル機器/セキュリティーカメラの小型化・高精度化に伴い、コア製品として新たな市場が期待されます。
(2)電子・医療部品事業における研究開発費は97百万円であります。
・ネットワーク/放送機器の開発
IoT分野でのネットワーク需要が高まってくることが予想されるなか、とりわけイーサネットを基軸として、多種インターフェースとの接続を可能とするGATEWAY機器が汎用化してくると思われます。従来ネットワーク機器と連携できるGATEWAYの新規開発に着手し製品ラインアップの充実を計ってまいります。
当社といたしましては従来の標準型スイッチングHUBやメディアコンバータに加え、OA用高機能タイプ、耐環境性や各種入力電源に対応したFA用のラインナップを取り揃えております。
放送用機器におきましては、4K/8Kの放送に備えたユニットを取り揃えました。
また、4K/8Kの伝送において既存通信インフラを利活用するIP伝送装置のリリースを予定しております。”放送と通信の融合”をキーワードに2020年オリンピックに向けて、今後の需要が高まると予想されます。
・環境エネルギー/耐災害対応機器の開発
通信インフラの耐災害性を高める、無線メッシュシステム用中継器の開発も継続しております。これは、今後IoTの分野に応用展開を図っていきます。
さらにEV自動車用普通充電器のJARI認証取得品の開発、低炭素化など、EV自動車の普及に向けて充電器のインフラ拡張が叫ばれており、さらなる需要が期待出来ます。
・医療用特殊チューブの開発
診断用、治療用特殊チューブ関連製品は補強材入りチューブを中心とする製品開発の継続に加えて、ケーブル加工技術とカテーテル製造技術を融合させた電極カテーテルの製品開発も実施しております。品種増加と既存品改良により売上寄与が見込まれます。また、治療用カテーテルや医療機器向けチューブをターゲットとした開発活動は、高機能性材料開発、機能性多層チューブの開発、多穴チューブ(マルチルーメンチューブ)の製法開発等を行っています。また、清浄度の高い生産インフラを活用し、医療機器の製造を一部実施しています。今後とも精密構造の追及と高機能化が図れるよう開発を進めてまいります。