有価証券報告書-第124期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 13:50
【資料】
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【項目】
158項目

事業等のリスク

当社グループの事業その他に関する主要なリスクとして、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には、以下のようなものがあります。これらのリスクは、予測不可能な不確実性を含んでおり、将来の当社グループの事業、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を及ぼす可能性があります。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、当社グループは、これらのリスクに対処するため、必要なリスク管理体制を整え、リスクの管理および対応を行っておりますが、それらの対応が有効に機能しない等により、これらのリスクを回避できない可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、2020年3月31日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループ全体を視野に入れて当社が合理的であると判断したものであります。
① プロジェクトの受注および遂行に関するリスク
総合エンジニアリング事業においては、オイルメジャーや国営石油会社が顧客となる国際的な大規模プロジェクトを遂行しております。契約締結からプラント引渡しまで長期間にわたるプロジェクトも多く、その間の社会情勢の変化、政策の変更その他顧客を含む取引先の状況等の変化による受注後のプロジェクトの計画変更、中止、中断または延期等によりプロジェクトの遂行、採算および代金回収に大きな影響を与えることがあります。また、パートナー企業と責任を分担するジョイントベンチャーまたはコンソーシアムを組成し、受注することがあります。この場合、パートナー企業のプロジェクト遂行能力の不足、分担業務の不履行やパートナー企業の財政状態の悪化等が生じた場合、当社がパートナー企業の債務を負担することとなり、大幅な追加費用の負担が発生し、当社グループの事業、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、事業会社において、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ⑦ リスク管理体制の整備の状況<プロジェクトリスク管理>」に記載のとおり、見積・応札段階においては、コーポレート部門および各事業部門によるプロジェクトリスクレビュー会議等でプロジェクト固有のリスク分析を行い、見積方針を策定するとともに、遂行段階においては、コーポレート部門および各事業部門によるプロジェクトレビュー等の会議にてプロジェクトの進捗、採算状況等をモニタリングする等リスクの低減に努めております。また、事業会社は、当社取締役会に対し、上記各段階における主要なリスクに係る報告・審議を必要に応じて実施しております。
② カントリーリスク
仕向地や現地工事を行う国や地域で不安定な政情、戦争、革命、内乱、テロ、経済政策・情勢の急変、経済制裁等のいわゆるカントリーリスクが顕在化した場合、総合エンジニアリング事業においては、プロジェクトの中止、中断または延期、工事従事者の動員およびプラント建設に要する資機材調達の遅れ等によりプロジェクトの採算が悪化するほか、機能材製造事業においては販売取引の減少および売上債権を回収できないこと等により、当社グループの事業、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、貿易保険の利用、カントリーリスクに関する情報の収集および不可抗力条件等、顧客との契約条件設定等の対策を実施し、リスクの低減に努めております。
また、テロ、紛争等に対する海外駐在員の安全対策については、危機管理基本規程に基づき、危機管理統括部が中心となり、平時の情報収集・分析の強化、各種予防策の拡充、有事における対応等、危機管理機能のさらなる強化に努めております。
③ 自然災害・疫病等に関するリスク
当社グループが事業活動を展開する国や地域において、地震、豪雨、暴風雨等の想定を超える自然災害や新型インフルエンザ等の感染症の世界的流行(パンデミック)に見舞われた場合、総合エンジニアリング事業において建設工事の中断またはやり直し等によりプロジェクトの採算が悪化するほか、機能材製造事業において事業所・工場の操業停止や生産能力低下等が発生し、当社グループの事業、財政状態および経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、当社グループ各社の本社、建設現場、事務所・工場等の拠点ごとに自然災害発生時の対応手順を規定化し、安否確認システムの導入および防災訓練等を実施するほか、リスクに関する情報の収集および不可抗力条件等の顧客との契約条件の設定等の対策を実施する等、リスク低減に努めております。
また、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という。)の世界的な感染拡大および各国政府の対応の影響を受けて、総合エンジニアリング事業においては、遂行中のプロジェクトの海外工事従事者の移動や物資の輸送が制限され、また一時的退避が必要となるケースも発生し、そのため資機材の調達や建設工事に遅延および一時中断等の影響が生じており、今後も継続することが予想されます。さらに、原油価格の急激な下落と相伴って、当社グループの顧客企業が、最終投資判断を先送りする動きがみられ、この場合、新規プロジェクトの計画変更、中断または延期の可能性があります。
当社グループは、当社グループ役職員をはじめとする関係者の安全の確保を最優先とする方針のもと、顧客等とも密に連携し対応して参りますが、COVID-19の収束時期は不透明であり、前述した事項以外のリスクや最終的な影響については予測が難しく、顧客等との協議の結果、当社グループの事業、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
④ 為替変動リスク
当社グループは、海外売上高のほとんどが外貨建て契約となっており、為替レートが急激に変動した場合、当社グループの受注、売上および損益に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、複数通貨建てによるプロジェクトの受注契約をはじめ、海外調達、外貨建ての発注および為替予約等の対策を状況に応じて実施し、リスクの低減に努めております。
⑤ 工事従事者の不足、賃金高騰リスク
総合エンジニアリング事業においては、プラント建設地において工事従事者が不足した場合、工事従事者の賃金が高騰した場合には、建設工事の遅延および建設工事費用の増加によりプロジェクトの採算が悪化し、当社グループの事業および経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、主要プラントマーケットにおける建設労働力動向をモニタリング・予測するとともに、モジュール工法を採用し現地工事を最小化するほか、現地建設工事に豊富な実績を有する企業と協業する等により、リスクの低減に努めております。
⑥ 資機材・原燃材料費の高騰リスク
総合エンジニアリング事業においては、プラント建設に要する資機材費の見積後、発注までにタイムラグがあるため、この間に資機材費が高騰した場合、資機材の調達費用の増加によりプロジェクトの採算が悪化するほか、機能材製造事業においては、原燃材料価格が高騰した場合に利益率が低下する等、当社グループの事業および経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、原燃材料および資機材の価格動向のモニタリング・予測、予測精度向上に向けた取組みの継続、資機材の早期発注、調達先の多様化、製品価格への転嫁等の対策を実施し、リスクの低減に努めております。
⑦ 投資事業リスク
当社グループは、石油・ガス・資源開発関連事業、発電・造水事業、メディカル事業への投資を行っており、原油・ガス等のエネルギー資源の急激な価格変動等、投資環境に想定を超える事態が生じた場合、投資の一部または全部が損失となる、あるいは追加資金拠出が必要となるリスクがあります。
このリスクに対して、既存投資事業についてはモニタリングをさらに強化するとともに、新規投資対象を厳選する等、リスクの低減に努めておりますが、リスクが顕在化した場合、当社グループの事業、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性があります。
⑧ 法令および規制に関するリスク
当社グループは、事業活動において税法、建設業法等の事業関連法規、国内外の環境に関する各種法令、安全保障目的を含む輸出入貿易規制、汚職等の腐敗行為防止のための諸法令、事業および投資に対する許認可等の制約を受けております。当社グループは、これらの国内外の法令および規制等を遵守するため、コンプライアンス・プログラムの整備、実施、モニタリングおよび改善を継続的に行っておりますが、係る取組みが奏功する保証はありません。当社グループによる各種法令等違反が生じた場合や、関係する各種法令等の大幅な変更または予期しない解釈の適用が行われた場合には、当社グループの事業活動に対する制約の発生、法令遵守対応に関する費用の発生、当社グループに対する過料・課徴金・罰金等の制裁、当社グループの社会的評価の毀損等により、当社グループの事業および経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑨ 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業活動における技術情報や顧客から入手した個人情報等の機密情報を保有しており、停電、災害、ホストコンピューター、サーバーまたはネットワーク機器の障害や紛失・盗難、外部からの攻撃やコンピューターウイルスの感染等によりこれらの情報が流出あるいは消失した場合、これらに対応するために多額の費用負担が生じるほか、顧客からの信用の失墜により当社グループの事業および経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、当社グループは情報セキュリティ方針を制定し、重要な情報システム、ネットワーク設備およびIT資産については、外部からの不正アクセスの防止、ウイルス対策および暗号化技術の採用等のセキュリティ対策を講じる等情報セキュリティの強化を図り、リスクの低減に努めております。しかしながら、このような対策を行ったとしても、外部からの予期せぬ不正アクセス、コンピューターウイルス侵入等による機密情報・個人情報の漏洩、設備の損壊・通信回線のトラブル等による情報システムの停止等のリスクを完全に回避できるものではなく、被害の規模によっては将来の当社グループの事業および財政状態等に影響を与える可能性があります。
⑩ 品質に関するリスク
当社グループは、調達品等の品質不良、不具合の発生防止を含め、納入品の品質確保に努めていますが、納入品の性能、品質に起因して顧客、取引先または製品使用者から国内外で請求を受け、また訴訟等を提起された場合、大規模な納入品回収や損害賠償責任の発生等に加え、当社グループの社会的評価に影響を及ぼすことが考えられ、当社グループの事業および経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、当社グループは品質保証を所管する組織を設置し、品質マネジメントシステムの活動を推進するとともに、製造物責任賠償保険(以下、「PL保険」という。)に加入する等の対策を講じていますが、上記のリスクの発生を完全に回避できる保証はなく、また、PL保険には損害補償額等の制約に服するため損害の全てを回避できない可能性があります。
⑪ マクロ経済環境の変化に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、当社の業績も海外諸国の経済動向の影響を受けます。特に原油価格は米中貿易戦争や世界の景気動向に加えて、OPECプラスおよび米シェールオイルの生産動向、さらには米国・イラン関係等の動向によって今後も上下する状況が続くとみられます。エネルギー資源の価格の下落や世界経済の冷え込みは、当社グループの顧客企業の設備投資の低下を招き、開発案件数の減少による競合企業との競争の激化等により、当社グループの事業、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性があります。とりわけ、エネルギー資源の価格の下落や世界経済の冷え込みに起因して、総合エンジニアリング事業においては、顧客企業、パートナー企業、資機材発注先、現地建設工事会社等の取引先の財政状態の悪化等により、プロジェクトの計画変更、中止、中断または延期等および現地建設工事または資機材調達の遅れによるプロジェクト遂行への悪影響、ならびに取引先からの代金回収に影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 化石燃料および化石燃料由来の製品需要の減少に関するリスク
当社グループは、石油・天然ガス等の開発および化石燃料由来の製品等の販売等を主要な事業として営む企業を顧客としています。将来、パリ協定に見られる低炭素社会への動きが加速し、今後各国における気候変動政策の強化、環境関連法規等の変更・新規導入が実施され、想定を上回るスピードで化石燃料および化石燃料由来の製品需要が減少した場合、顧客企業の化石燃料関連への投資抑制、顧客企業の事業内容自体の変更実施等、当社グループの顧客企業の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。これにより、開発案件数の減少および限られた案件の受注を巡る競合企業との競争の激化等による価格低下が起こる可能性があります。当社グループがこれらの変革に対応できない場合には、当社グループの事業、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、将来の市場変化を踏まえグループ経営体制への移行を行い、当社グループにおける事業ポートフォリオの多様化を推進するほか、環境負荷低減を実現する技術開発・先端技術を保有する他社との協業によるバリューチェーン構築等低炭素化社会への対応・持続的成長に向けた取組みをこれまで以上に推進しております。
⑬ イクシスLNGプロジェクトに関するリスク
当社グループは、米国KBR社および千代田化工建設株式会社と共同でジョイントベンチャー(以下、「JV」という。)を組成し、国際石油開発帝石株式会社の子会社であるイクシスエルエヌジー社(以下、「顧客」という。)から2012年に液化天然ガス等を生産する陸上ガス液化プラントの設計・調達・建設役務(以下、「本プロジェクト」という。)を受注し、2018年8月にプラント設備を完成、引渡しました。
役務遂行の過程で、役務範囲の増加およびその他の要因によるコストの発生に関して契約上償還されるべきもののほか、契約金額調整されるべきものの一部において、JVと顧客との間で合意に至らず協議が継続しているものや仲裁となっているものがあります。
また、JVは、本プロジェクトの一部である複合サイクル発電設備の設計・建設をGeneral Electric Company、General Electric International, Inc.、UGL Engineering Pty LimitedおよびCH2M Hill Australia Pty. Limitedから成るコンソーシアム(以下、「コンソーシアム」という。)に固定金額契約で発注しました。しかし、コンソーシアムは、役務遂行途中に一方的に契約を破棄し追加支払いを求めて仲裁に入ったため、JVはコンソーシアムに代わるサブコントラクターを起用して複合サイクル発電設備の建設を行う一方、コンソーシアムに対して反訴の上、建設コストの負担を求めています。
上記の状況を踏まえ、JVと顧客またはコンソーシアムとの間の協議や仲裁がJVにとって不利な結果となった場合は、工事債権や立替費用の一部が回収不能になる等、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。