有価証券報告書-第84期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
有報資料
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
①当社グループの企業理念 当社グループでは、1959年に創業者・立石一真が、社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」を制定しました。その後、社憲の精神を企業理念へと進化させ、時代にあわせて改定しながら、事業発展の原動力また求心力として数々のイノベーションを生み出し、社会の発展と人々の生活の向上に貢献してきました。
当社グループでは、この企業理念を社員一人ひとりが実践することで、事業を通じた社会的課題の解決を目指しています。このためには、世界中の社員の誰もが企業理念の考え方を理解し、行動することが重要であり、現在、グローバルレベルで企業理念の実践を強化しています。
当社グループは、これからも企業理念の実践を通じて、企業の社会的責任を果たすとともに、持続的な企業価値の向上を目指します。

②当社グループの企業理念に基づく経営の構造 当社グループでは、すべてのステークホルダーに対して、事業を通じて企業理念を実践していくための経営の姿勢や考え方を示すものとして、「経営のスタンス」を宣言し、「長期ビジョン VG2020」「オムロングループ マネジメントポリシー」「ステークホルダーエンゲージメント」の各方針に体系化し、実践しています。

(2) 長期ビジョン「Value Generation 2020」の総括
当社グループは、2011年度から2020年度まで、10ヶ年の長期ビジョン「Value Generation 2020」(以下、VG2020)を掲げ、長期視点に立った経営を進めてきました。VG2020の期間においては、「成長力」、「収益力」、「変化対応力」の3つの力の強化による財務価値の向上と、サステナビリティへの取組みによる非財務価値の向上に取り組みました。この結果、企業価値の創造を表す指標である「株主総利回り(TSR)」は10年間で約4倍となり、企業価値を大幅に向上させました。
*2010年度末の終値で投資した場合の各年度末時点の値

①「成長力」、「収益力」、「変化対応力」の強化による財務価値向上
・「成長力」の強化
VG2020期間を通じて成長のための積極的な投資を実行してきました。グローバルでの事業拡大や、AI・ロボティクスなどの革新的技術獲得など、成長のための積極的な投資を実行してきました。また持続的な成長を実現するため、経営と事業をけん引するリーダー人財の育成や、多様な人財の採用・活躍などの人財戦略を推進してきました。
2017年からスタートした中期経営計画では、注力事業である制御機器事業とヘルスケア事業へ経営資源を集中投資することによって、今後の成長を支える3つの資産を構築してきました。1つ目はソリューション提供力の強化です。主力の制御機器事業において競争力のある革新的な新商品・アプリケーションの開発と、その価値を伝達するフロント人財(営業・セールスエンジニア)を強化してきました。2つ目は、新しいビジネスモデルの構築です。制御機器事業の製造現場のデータ活用サービスであるi-BELTや、ヘルスケア事業の遠隔診療サービスのように、今後、大きな成長が見込めるサービスの事業化に向けた投資を実行してきました。3つ目は、新製品や新技術の獲得です。制御機器事業ではロボット事業やモーションコントローラー事業などを買収し、商品ラインアップや技術力を拡充しました。ヘルスケア事業ではネブライザー事業の買収や新興企業への出資などを通じて、競争力を強化してきました。
これらVG2020期間を通じて実行してきた積極投資により、今後、社会的課題の解決に取り組み、自走的な成長を実現していくための資産が構築できたと認識しています。
・「収益力」の強化
ROIC経営による事業ポートフォリオの最適化を進め、収益力を着実に強化してきました。車載事業の売却や低収益事業の収束を実行し、事業ポートフォリオを利益とシェアが高い事業に絞り込み経営資源を集中させてきました。2011年度は営業利益率10%を超える事業は制御機器事業のみで、全社売上に占める割合は約4割でした。これが2020年度にはヘルスケア事業も営業利益率が10%を超え、制御機器およびヘルスケア事業の売上が全社に占める割合は約7割に拡大しました。このようなポートフォリオマネジメントに加え、高付加価値商品の売上拡大やソリューション提供力強化、変動費や製造固定費削減の取組みなどにより、稼ぐ力を継続的に向上させてきました。その結果、この10年間注力してきた売上総利益率を2011年度の36.8%から2020年度に45.5%へと向上させました。
<セグメント別売上構成比率の変化>
<売上総利益率の推移>
(注)2019年度に車載事業を非継続事業に分類したことに伴い、2017年度および2018年度の売上総利益率は非継続事業を除いた継続事業の数値に組み替えて表示しています。
・「変化対応力」の強化
VG2020を開始した2011年より、グローバルな事業拡大を支える統合リスクマネジメントに取り組み、変化対応力を向上させてきました。また、生産性のさらなる向上と、変化に強いレジリエントな体質の構築を目的に、生産拠点やサプライチェーンの最適化に取り組んできました。制御機器事業では、M&Aによる新規事業の獲得に加え、顧客のグローバル展開への対応を目的に、2011年度は4か所だった生産拠点を8か所へと倍増させました。ヘルスケア事業でも、M&Aを活用して生産拠点を2011年度の3か所から5か所に増加させました。これにより主要市場である米州と欧州の需要変動に迅速に対応することができるようになりました。一方、電子部品事業においては、11か所あった生産拠点を7か所に集約しました。小規模な生産拠点を統廃合することで、生産性を向上させました。
これらの取組みの結果、VG2020期間を通じてROICは10%水準を維持し、1株当たりの株主資本(BPS)は、2020年度末には2010年度末比で倍増の3,009円となりました。
<投下資本利益率(ROIC)の推移>
<1株当たり株主資本(BPS)の推移>
②サステナビリティ重要課題に対する取組みによる非財務価値向上
中期経営計画では、事業戦略とサステナビリティ重要課題の双方を同様に重要と位置づけて企業価値向上に取り組みました。非財務の観点では、2017年にスタートした中期経営計画にサステナビリティ目標を組み込み、取締役の中長期業績連動報酬に、第三者機関の調査に基づくサステナビリティ評価を採用しました。当社グループではサステナビリティ重要課題を「事業を通じて解決する社会的課題」と「ステークホルダーの期待に応える課題」の2つのカテゴリーに分け、取組みを進めてきました。

・事業を通じて解決する社会的課題への取組み
当社グループが注力する事業ドメインにおいて解決すべき社会的課題に対して、2020年度の目標を設定し、その達成に向け2017年度より取組みを進めてきました。
<注力ドメインのサステナビリティ目標と実績>
例えば、注力ドメインの一つであるヘルスケアは、「高血圧由来の脳・心血管疾患発症の増加」を社会的課題として設定しました。世界には高血圧患者は約10億人、高血圧に起因する脳梗塞や心不全などの脳・心血管疾患の発症者数は年間1,750万人といわれています。脳・心血管疾患の発症は、人々の生命を脅かすだけでなく、命を落とさなくても寝たきりや言語障害などの後遺症をともなうことも多く、患者自身や家族のQOL(Quality of Life=生活の質)を著しく低下させます。ヘルスケア事業の主力である循環器疾患事業において「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」を事業ビジョンとして掲げ、脳・心血管疾患の原因となる高血圧の予防・重症化防止に向けて、家庭での血圧測定をグローバルに普及させてきました。サステナビリティ目標については、血圧計の販売台数に加え、脳・心血管疾患の発症リスクが高いと言われる血圧変動を連続的に把握できる解析技術の確立を設定しました。これらの目標に対し、特に新興国を中心に家庭で血圧を測るという文化の普及に向けた取組みを強化し、2020年には年間2400万台の血圧計をグローバルに届けました。また、血圧が気になる時にいつでも測定でき、日中の血圧変動を確認できる腕時計型の「ウェアラブル血圧計」を2018年に米国で発売し、グローバルに展開を拡大しました。これは、ウェアラブル血圧計として世界で初めて医療認証を取得した製品です。これらの取組みを通じて「脳・心血管疾患イベントの発症ゼロ」を実現し、これからも世界中の人々の健康ですこやかな生活に貢献していきます。
・ステークホルダーの期待に応える課題への取組み 人財マネジメント、ものづくり・環境、リスクマネジメントの分野でステークホルダーの期待に応える課題の2020年度目標を達成することで、社会との信頼関係を構築するとともに企業の社会的責任を果たしてきました。これらの活動は同時に、中期経営計画の事業基盤の強化にもつながりました。
例えば、環境分野では、気候変動という社会的課題に対して「温室効果ガス排出量の削減」に取り組みました。2018年7月には「オムロンカーボンゼロ」を宣言し、2050年に自社(スコープ1、2(注))からの温室効果ガス排出量ゼロを目指しており、その目標達成に向けて、毎年、着実に排出量を削減しています。2020年度は、当初の削減目標である2016年度比4%削減を上回り、2016年度比50%削減を達成しました。削減の主な要因は、2019年に施工した太陽光発電の本格稼働や再生可能エネルギー由来の電力調達、滋賀県にある野洲事業所の新棟で実行したエネルギー消費量を50%以上削減するなど省エネの取組みによるものです。
<2020年度温室効果ガス排出量削減実績>
加えて、2019年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同しました。TCFDでは、シナリオ分析を通じて予想される将来の気候変動に伴う事業へのリスクと機会など、現在及び潜在的な影響を開示することが求められていますが、まずはソーシャルソリューションドメインにおけるエネルギーソリューション事業についてシナリオ分析を実施しました。2030年の気温上昇の想定が異なる二つのシナリオを採用し、それぞれのシナリオで移行リスク及び物理的リスクと事業機会を特定し、事業展開イメージを検討しました。そして、想定される事業インパクトを定量的に把握し、特定されたリスクへの備えや緩和策、事業機会に対する適応策を検討しました。2021年度以降も、気候変動問題の解決を次期長期ビジョンにおける重要課題と位置付けて、バリューチェーン(スコープ3(注))も含めた新たな削減目標を設定することに加え、主要事業におけるシナリオ分析を通じてリスクと事業機会を把握し、具体的な取組みを進め、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
(注) スコープ1: 自社での燃料の使用による温室効果ガスの直接排出
スコープ2: 自社が購入した電気・熱の使用による温室効果ガスの間接排出
スコープ3: 自社のバリューチェーンからの温室効果ガスの排出
<温室効果ガス排出量の削減に向けたサステナビリティ目標と実績>
(注)環境に関する以下の項目については独立した第三者機関であるビューローベリタスジャパン株式会社による保証等を受けています。
温室効果ガス排出量(保証対象項目)、環境貢献量(レビュー対象項目)
また、人財マネジメントにおいて、人権の尊重と労働慣行という社会的課題に対して、人権デューデリジェンスのプロセスを構築しました。人権デューデリジェンスとは、企業活動を通じて人権に与えうるマイナス影響を認識し、防止し、対処するために企業が実施すべきプロセスです。この人権デューデリジェンスのプロセスにより、グローバルで人権リスク分析を行い、2020年度は全生産拠点の25拠点のセルフアセスメントを実施しました。課題がある拠点は対策を検討し、是正措置を実施しています。また、この活動の対象は自社従業員に留まらず、国内グループ会社においては、派遣会社・委託先の従業員に対する取組みへと拡大しています。この活動を通じて、当社グループで働くすべての人たちの人権が尊重されたよりよい職場環境を実現してきました。2021年度以降は、この取組みをバリューチェーンにも広げ、当社グループのビジネスに関わる人たちの人権の尊重を徹底していきます。
<人権の尊重と労働慣行に対するサステナビリティ目標と実績>
(注)当社グループの生産高80%以上を占める生産拠点(軽微な生産は除く)
その他、人財アトラクションと育成において、海外重要ポジションに占める現地化比率:3分の2(66%)の目標に対して計画的交代実施が定着し、4分の3(75%)を達成しました。また、ダイバーシティ&インクルージョンについては、女性管理職比率:8%(グループ国内)の目標に対して、6.7%(グループ国内)になりました。女性若手社員のキャリア開発意欲が高まりつつあるものの、中長期的な候補者母集団の形成が課題となっています。これらについては、引き続き目標を設けて取り組んでいきます。サプライチェーンマネジメントについては、全重要仕入先におけるサステナビリティセルフチェックで目標点(85点:ローリスク化)が達成でき、サプライチェーンでのサステナビリティが確実に前進できました。
<その他のサステナビリティ目標と実績>
(注1) TOGA:The OMRON Global Awardsの略で、仕事を通じて企業理念の実践にチャレンジし続ける風土を醸成するためのグローバル全社員参加型の取り組み。
(注2) Boost5:心身の健康状態を把握するための重点テーマ5項目(運動、睡眠、メンタルヘルス、食事、タバコ)を選定し、指標化したもの。
(注3) RBA:Responsible Business Allianceの略。電子業界を中心とするグローバルなCSRアライアンス。
(注4) OGR:オムロングループルール。マネジメントの透明性・公平性・グローバル性を確保し、適切で迅速な意思決定を行う経営基盤として制定した社内ルール。
(注5) 海外重要ポジションに占める現地化比率、女性管理職比率、障がい者雇用率は第三者機関による保証を受ける予定です(統合レポート2021で開示)。
・サステナビリティマネジメント こうした2020年度のサステナビリティ目標の達成に向け、全社でのサステナビリティマネジメント構造を構築し、取締役会の監視・監督のもと、執行部門においてサステナビリティ取組みの推進を行ってきました。具体的にはサステナビリティ重要課題のPDCAやサステナビリティ推進委員会および執行会議での議論を通じて課題解決を推進しました。また、エンゲージメント活動を通じて得られた様々なステークホルダーからの期待や評価を活用して、取組みにおける具体的な改善点を見出し、課題への対応を着実に進化させてきました。

・第三者評価
これらの取組みの結果、多くのESGインデックスに組み込まれるなど、社外から高い評価をいただいています。特に、取締役の中長期業績連動報酬における第三者機関の調査に基づくサステナビリティ評価の対象である「Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)」には「アジア・パシフィック」に2010年から11年連続で選定されていることに加え、2017年以降は「ワールド」に4年連続で選定されています。また、2019年には環境情報開示システムを提供する非営利団体CDPによる気候変動に関する評価で「A-」を獲得、2020年度にはS&Pグローバル社のサステナビリティアワードで最高評価の「ゴールドクラス」への選定やEcoVadis社のサステナビリティ調査で最高ランクの「PLATINUM(プラチナ)」評価を得るなど、年々評価を高めてきました。
<第三者評価の推移>
③次期長期ビジョンに向けた課題
以上のとおり、VG2020の期間においては、「成長力」、「収益力」、「変化対応力」の3つの力の強化による財務価値の向上と、サステナビリティへの取組みによる非財務価値の向上により、当社グループは企業価値を大幅に向上させました。
しかしながら、「成長力」を示す売上高は、VG2020のゴールとして掲げた「売上高1兆円」に向けて、2017年度まではほぼ計画通りに成長を続けてきましたが、その後、米中貿易摩擦やコロナショックによる経済環境の変化などの逆風があり、また車載事業の売却やバックライト事業の収束もあり2020年度の売上高は6,555億円となり1兆円とのギャップは大きくなりました。経済環境の変化などの逆風を跳ね返し、自社の力だけで収益を伸ばす「自走的な成長構造の確立」は継続して取り組むべき課題と認識しています。次期長期ビジョンでは、VG2020期間を通じて実行してきたM&Aや技術開発などの投資により築いた資産を活用して社会的課題の解決に取り組み、自走的な成長を実現してまいります。
<売上高の推移>
(3) 次期長期ビジョンの方向性
2020年度と2021年度の2年間は、ウィズコロナの期間が続くことを前提に、ニューノーマル時代における持続的な成長を実現するための事業変革を加速させる期間としました。次期長期ビジョンは2022年度から開始します。
<2020~2021年度の位置づけ>
当社グループは次の10年を不確実で変化の激しい時代になると見ています。例えば近年でも、地球規模で多発する自然災害、新型コロナウイルス感染症の拡大、米中対立による世界分断リスクの高まりといった多くの社会変化が起きています。これらの変化とともに、従来の大量消費・大量生産による右肩上がりの成長を前提とした社会・経済システムが、持続可能な仕組みへと移行しつつあります。そして、多くの社会的課題が新たに顕在化します。これらの課題を解決することは、当社グループの存在意義である「事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献し続けること」そのものです。
これらの社会的課題の解決を成長につなげていくために、当社グループは次期長期ビジョンにおいて、既存事業を最強化すると同時に、4つの新たな成長機会を捉えた価値創造に取り組んでいきます。具体的には、「製造現場の高度化」、「1次・3次産業の自動化」、「慢性疾患の予防医療支援」、「カーボンニュートラルを実現するエネルギーソリューション」です。気候変動や高齢化、個人の経済格差から生じる社会的課題を捉え、その解決に向けた社会価値を創造していきます。そのために、モノによる価値提供にとどまらず、サービスを組み合わせ、パートナーとも協創することでビジネスモデルを進化させ、付加価値の継続的な拡大に挑戦していきます。
この実現に向け、全社で3つの重点テーマに取り組みます。1つ目は、「オートメーションの進化」です。人の能力を最大限引き出し、人と機械の協働・融和を実現するユニークな技術を創りこみます。2つ目は、「人財マネジメントの変革」です。今後、当社グループは、事業を通じた社会的課題の解決に欠くことのできない、専門性が高い多様な能力を有する人財を迎え入れていきます。そして、そのポテンシャルを発揮できる環境をつくることで、これまでにない新たな価値を生み出していきます。3つ目は「デジタルトランスフォーメーション」の加速です。デジタル技術を使いこなし、データの活用によるビジネスモデルを拡張し、企業運営を進化させていきます。
当社グループは、以上の取組みを通じて、次の10年においても、事業を通じた社会的課題の解決で持続的な成長を実現し、企業価値を最大化していきます。詳細は2022年2月に発表します。
(1) 経営方針
①当社グループの企業理念 当社グループでは、1959年に創業者・立石一真が、社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」を制定しました。その後、社憲の精神を企業理念へと進化させ、時代にあわせて改定しながら、事業発展の原動力また求心力として数々のイノベーションを生み出し、社会の発展と人々の生活の向上に貢献してきました。
当社グループでは、この企業理念を社員一人ひとりが実践することで、事業を通じた社会的課題の解決を目指しています。このためには、世界中の社員の誰もが企業理念の考え方を理解し、行動することが重要であり、現在、グローバルレベルで企業理念の実践を強化しています。
当社グループは、これからも企業理念の実践を通じて、企業の社会的責任を果たすとともに、持続的な企業価値の向上を目指します。

②当社グループの企業理念に基づく経営の構造 当社グループでは、すべてのステークホルダーに対して、事業を通じて企業理念を実践していくための経営の姿勢や考え方を示すものとして、「経営のスタンス」を宣言し、「長期ビジョン VG2020」「オムロングループ マネジメントポリシー」「ステークホルダーエンゲージメント」の各方針に体系化し、実践しています。

(2) 長期ビジョン「Value Generation 2020」の総括
当社グループは、2011年度から2020年度まで、10ヶ年の長期ビジョン「Value Generation 2020」(以下、VG2020)を掲げ、長期視点に立った経営を進めてきました。VG2020の期間においては、「成長力」、「収益力」、「変化対応力」の3つの力の強化による財務価値の向上と、サステナビリティへの取組みによる非財務価値の向上に取り組みました。この結果、企業価値の創造を表す指標である「株主総利回り(TSR)」は10年間で約4倍となり、企業価値を大幅に向上させました。

①「成長力」、「収益力」、「変化対応力」の強化による財務価値向上
・「成長力」の強化
VG2020期間を通じて成長のための積極的な投資を実行してきました。グローバルでの事業拡大や、AI・ロボティクスなどの革新的技術獲得など、成長のための積極的な投資を実行してきました。また持続的な成長を実現するため、経営と事業をけん引するリーダー人財の育成や、多様な人財の採用・活躍などの人財戦略を推進してきました。
2017年からスタートした中期経営計画では、注力事業である制御機器事業とヘルスケア事業へ経営資源を集中投資することによって、今後の成長を支える3つの資産を構築してきました。1つ目はソリューション提供力の強化です。主力の制御機器事業において競争力のある革新的な新商品・アプリケーションの開発と、その価値を伝達するフロント人財(営業・セールスエンジニア)を強化してきました。2つ目は、新しいビジネスモデルの構築です。制御機器事業の製造現場のデータ活用サービスであるi-BELTや、ヘルスケア事業の遠隔診療サービスのように、今後、大きな成長が見込めるサービスの事業化に向けた投資を実行してきました。3つ目は、新製品や新技術の獲得です。制御機器事業ではロボット事業やモーションコントローラー事業などを買収し、商品ラインアップや技術力を拡充しました。ヘルスケア事業ではネブライザー事業の買収や新興企業への出資などを通じて、競争力を強化してきました。
これらVG2020期間を通じて実行してきた積極投資により、今後、社会的課題の解決に取り組み、自走的な成長を実現していくための資産が構築できたと認識しています。
・「収益力」の強化
ROIC経営による事業ポートフォリオの最適化を進め、収益力を着実に強化してきました。車載事業の売却や低収益事業の収束を実行し、事業ポートフォリオを利益とシェアが高い事業に絞り込み経営資源を集中させてきました。2011年度は営業利益率10%を超える事業は制御機器事業のみで、全社売上に占める割合は約4割でした。これが2020年度にはヘルスケア事業も営業利益率が10%を超え、制御機器およびヘルスケア事業の売上が全社に占める割合は約7割に拡大しました。このようなポートフォリオマネジメントに加え、高付加価値商品の売上拡大やソリューション提供力強化、変動費や製造固定費削減の取組みなどにより、稼ぐ力を継続的に向上させてきました。その結果、この10年間注力してきた売上総利益率を2011年度の36.8%から2020年度に45.5%へと向上させました。
<セグメント別売上構成比率の変化>

<売上総利益率の推移>
(注)2019年度に車載事業を非継続事業に分類したことに伴い、2017年度および2018年度の売上総利益率は非継続事業を除いた継続事業の数値に組み替えて表示しています。・「変化対応力」の強化
VG2020を開始した2011年より、グローバルな事業拡大を支える統合リスクマネジメントに取り組み、変化対応力を向上させてきました。また、生産性のさらなる向上と、変化に強いレジリエントな体質の構築を目的に、生産拠点やサプライチェーンの最適化に取り組んできました。制御機器事業では、M&Aによる新規事業の獲得に加え、顧客のグローバル展開への対応を目的に、2011年度は4か所だった生産拠点を8か所へと倍増させました。ヘルスケア事業でも、M&Aを活用して生産拠点を2011年度の3か所から5か所に増加させました。これにより主要市場である米州と欧州の需要変動に迅速に対応することができるようになりました。一方、電子部品事業においては、11か所あった生産拠点を7か所に集約しました。小規模な生産拠点を統廃合することで、生産性を向上させました。
これらの取組みの結果、VG2020期間を通じてROICは10%水準を維持し、1株当たりの株主資本(BPS)は、2020年度末には2010年度末比で倍増の3,009円となりました。
<投下資本利益率(ROIC)の推移>

<1株当たり株主資本(BPS)の推移>

②サステナビリティ重要課題に対する取組みによる非財務価値向上
中期経営計画では、事業戦略とサステナビリティ重要課題の双方を同様に重要と位置づけて企業価値向上に取り組みました。非財務の観点では、2017年にスタートした中期経営計画にサステナビリティ目標を組み込み、取締役の中長期業績連動報酬に、第三者機関の調査に基づくサステナビリティ評価を採用しました。当社グループではサステナビリティ重要課題を「事業を通じて解決する社会的課題」と「ステークホルダーの期待に応える課題」の2つのカテゴリーに分け、取組みを進めてきました。

・事業を通じて解決する社会的課題への取組み
当社グループが注力する事業ドメインにおいて解決すべき社会的課題に対して、2020年度の目標を設定し、その達成に向け2017年度より取組みを進めてきました。
<注力ドメインのサステナビリティ目標と実績>
| 制御機器事業 | ヘルスケア事業 | 社会システム事業 | |
| 解決すべき社会的課題 | ・世界的なモノづくりの課題である労働力不足 ・生産現場における熟練技能者不足やより高度化するモノづくりへの対応 | ・高血圧由来の脳・心血管疾患発症の増加 ・全世界で増加する呼吸器疾患 | ・交通事故や交通渋滞の増加 ・CO2排出増による地球温暖化、再生可能エネルギー市場の拡大不足 |
| 2020年度目標 | 注力4業界における“i-Automation!”を具現化するアプリケーション創造、制御技術確立、新商品の創出 〜モノづくりを革新する新たな価値創出〜 | ・血圧計販売台数:2500万台/年 ・血圧変動を連続的に把握できる解析技術の確立 ・ネブライザー+喘鳴センサー 販売台数:765万台/年 | ・安全運転支援システム、技術の創出 ・太陽光/蓄電システム累計出荷容量:11.2GW ・太陽光/蓄電を活用した電力アグリゲーション事業の構築(国内) |
| 2020年度実績 | ・integrated:世界初“ロボット統合コントローラー”を発売。バーチャルとリアルの融合による遠隔でのシステム構築を可能にするなど高度に自動化されたモノづくり革新を実現 ・intelligent:5Gソリューションを検証・開発、IoTによるデータを活用した生産性向上の加速 ・interactive:モバイルロボットや協調ロボットを活用し、顧客の製造現場での組立・搬送・検査作業自動化への貢献 | ・血圧計販売台数:2400万台/年 ・臨床研究を2件実施。北米で遠隔診療サービスをスタート ・ネブライザー+喘鳴センサー 販売台数:341万台/年。欧州にて喘鳴センサー上市。欧州にてドクターを交えた喘鳴センサーに関するセミナーを開催するなど提供価値を広く訴求 | ・大学と連携した運転リスク検知の共同研究など心理状態での運転挙動変化とリスクの相関分析・検証を実施 ・太陽光システム:累計出荷容量 10.3GW、蓄電池システム:累計出荷容量 695MWh ・自家消費を最大化するパワコンや、非常時のBCP対策を実現するエネルギーマネジメントシステムを提供 |
例えば、注力ドメインの一つであるヘルスケアは、「高血圧由来の脳・心血管疾患発症の増加」を社会的課題として設定しました。世界には高血圧患者は約10億人、高血圧に起因する脳梗塞や心不全などの脳・心血管疾患の発症者数は年間1,750万人といわれています。脳・心血管疾患の発症は、人々の生命を脅かすだけでなく、命を落とさなくても寝たきりや言語障害などの後遺症をともなうことも多く、患者自身や家族のQOL(Quality of Life=生活の質)を著しく低下させます。ヘルスケア事業の主力である循環器疾患事業において「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」を事業ビジョンとして掲げ、脳・心血管疾患の原因となる高血圧の予防・重症化防止に向けて、家庭での血圧測定をグローバルに普及させてきました。サステナビリティ目標については、血圧計の販売台数に加え、脳・心血管疾患の発症リスクが高いと言われる血圧変動を連続的に把握できる解析技術の確立を設定しました。これらの目標に対し、特に新興国を中心に家庭で血圧を測るという文化の普及に向けた取組みを強化し、2020年には年間2400万台の血圧計をグローバルに届けました。また、血圧が気になる時にいつでも測定でき、日中の血圧変動を確認できる腕時計型の「ウェアラブル血圧計」を2018年に米国で発売し、グローバルに展開を拡大しました。これは、ウェアラブル血圧計として世界で初めて医療認証を取得した製品です。これらの取組みを通じて「脳・心血管疾患イベントの発症ゼロ」を実現し、これからも世界中の人々の健康ですこやかな生活に貢献していきます。
・ステークホルダーの期待に応える課題への取組み 人財マネジメント、ものづくり・環境、リスクマネジメントの分野でステークホルダーの期待に応える課題の2020年度目標を達成することで、社会との信頼関係を構築するとともに企業の社会的責任を果たしてきました。これらの活動は同時に、中期経営計画の事業基盤の強化にもつながりました。
例えば、環境分野では、気候変動という社会的課題に対して「温室効果ガス排出量の削減」に取り組みました。2018年7月には「オムロンカーボンゼロ」を宣言し、2050年に自社(スコープ1、2(注))からの温室効果ガス排出量ゼロを目指しており、その目標達成に向けて、毎年、着実に排出量を削減しています。2020年度は、当初の削減目標である2016年度比4%削減を上回り、2016年度比50%削減を達成しました。削減の主な要因は、2019年に施工した太陽光発電の本格稼働や再生可能エネルギー由来の電力調達、滋賀県にある野洲事業所の新棟で実行したエネルギー消費量を50%以上削減するなど省エネの取組みによるものです。
<2020年度温室効果ガス排出量削減実績>

加えて、2019年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同しました。TCFDでは、シナリオ分析を通じて予想される将来の気候変動に伴う事業へのリスクと機会など、現在及び潜在的な影響を開示することが求められていますが、まずはソーシャルソリューションドメインにおけるエネルギーソリューション事業についてシナリオ分析を実施しました。2030年の気温上昇の想定が異なる二つのシナリオを採用し、それぞれのシナリオで移行リスク及び物理的リスクと事業機会を特定し、事業展開イメージを検討しました。そして、想定される事業インパクトを定量的に把握し、特定されたリスクへの備えや緩和策、事業機会に対する適応策を検討しました。2021年度以降も、気候変動問題の解決を次期長期ビジョンにおける重要課題と位置付けて、バリューチェーン(スコープ3(注))も含めた新たな削減目標を設定することに加え、主要事業におけるシナリオ分析を通じてリスクと事業機会を把握し、具体的な取組みを進め、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
(注) スコープ1: 自社での燃料の使用による温室効果ガスの直接排出
スコープ2: 自社が購入した電気・熱の使用による温室効果ガスの間接排出
スコープ3: 自社のバリューチェーンからの温室効果ガスの排出
<温室効果ガス排出量の削減に向けたサステナビリティ目標と実績>
| 当社グループの取組み | グリーンオムロン2020の推進 • 電力使用量効率化および再エネ導入による温室効果ガス排出削減 • クリーンエネルギー普及に貢献する商品・サービスの提供 |
| 2020年度目標 | • 温室効果ガス排出量総量:4%削減(2016年度比) • 環境貢献量>生産拠点のCO2排出量 |
| 2020年度実績 | • 温室効果ガス排出量(注)総量:50%削減(2016年度比) • 環境貢献量(注):826kt-CO2 >生産拠点のCO2排出量:106kt-CO2 |
(注)環境に関する以下の項目については独立した第三者機関であるビューローベリタスジャパン株式会社による保証等を受けています。
温室効果ガス排出量(保証対象項目)、環境貢献量(レビュー対象項目)
また、人財マネジメントにおいて、人権の尊重と労働慣行という社会的課題に対して、人権デューデリジェンスのプロセスを構築しました。人権デューデリジェンスとは、企業活動を通じて人権に与えうるマイナス影響を認識し、防止し、対処するために企業が実施すべきプロセスです。この人権デューデリジェンスのプロセスにより、グローバルで人権リスク分析を行い、2020年度は全生産拠点の25拠点のセルフアセスメントを実施しました。課題がある拠点は対策を検討し、是正措置を実施しています。また、この活動の対象は自社従業員に留まらず、国内グループ会社においては、派遣会社・委託先の従業員に対する取組みへと拡大しています。この活動を通じて、当社グループで働くすべての人たちの人権が尊重されたよりよい職場環境を実現してきました。2021年度以降は、この取組みをバリューチェーンにも広げ、当社グループのビジネスに関わる人たちの人権の尊重を徹底していきます。
<人権の尊重と労働慣行に対するサステナビリティ目標と実績>
| 当社グループの取組み | マネジメント体制の確立と改善活動の実施 • マネジメント体制の確立(人権方針、組織体制の確立) • 生産拠点における人権リスク分析の実施と是正 |
| 2020年度目標 | • 人権デューデリジェンスのプロセスの設定・導入 • 全生産拠点における人権リスク分析の実施と是正 |
| 2020年度実績 | • 自社従業員に加え、派遣会社・委託先の従業員に対しても運用開始 • 全生産拠点(25拠点(注))でリスク分析・是正の実施 |
(注)当社グループの生産高80%以上を占める生産拠点(軽微な生産は除く)
その他、人財アトラクションと育成において、海外重要ポジションに占める現地化比率:3分の2(66%)の目標に対して計画的交代実施が定着し、4分の3(75%)を達成しました。また、ダイバーシティ&インクルージョンについては、女性管理職比率:8%(グループ国内)の目標に対して、6.7%(グループ国内)になりました。女性若手社員のキャリア開発意欲が高まりつつあるものの、中長期的な候補者母集団の形成が課題となっています。これらについては、引き続き目標を設けて取り組んでいきます。サプライチェーンマネジメントについては、全重要仕入先におけるサステナビリティセルフチェックで目標点(85点:ローリスク化)が達成でき、サプライチェーンでのサステナビリティが確実に前進できました。
<その他のサステナビリティ目標と実績>
| 2020年度目標 | 2020年度実績 | ||
| 人 財 マ ネ ジ メ ン ト | 人財アトラクションと育成 | 企業理念実践に向けたTOGA(注1)の発展的継続 | 2020年12月に開催された2019年度グローバル大会には社外ゲスト200名を含め過去最大の16,000名が参加。共感・共鳴の輪の拡がりが確実に加速した。2020年度テーマエントリーについては 6,461件(51,033名) |
| 海外重要ポジションに占める現地化比率:3分の2(66%) | 現地化比率 4分の3(75%)(注5) | ||
| 社員向けエンゲージメントサーベイ実施によるPDCA加速 | 回答率 : 90% 社員の声を聴いて改善するサイクルが定着 | ||
| ダイバーシティ& インクルージョン | 女性管理職比率:8%(グループ国内) | 6.7%(注5) (グループ国内、2021年4月20日時点実績) | |
| 障がい者雇用率:法定雇用率以上の雇用人数拡大(グループ国内) | 障がい者雇用率 : 3.0%(法定雇用率2.2%) (注5) | ||
| 従業員の健康 | 健康経営の浸透度の向上 (Boost5(注2)をベースにした活動をグローバルに浸透) | Boost5の3項目以上達成者:45.3%。コロナの影響もあり運動と食事に課題。海外では社員の健康意識を高めるオンライン・イベントを提供 | |
| 労働安全衛生 | OSH国際規格認証取得生産拠点数:生産高80%を占める拠点での取得 | 生産高80%以上を占める拠点の認証取得完了 | |
| 推進人財の継続配置(全対象サイト) | 労働安全衛生マネジメント人財配置の維持継続 | ||
| も の づ く り ・ 環 境 | 製品安全・品質 | 新規開発品の製品安全アセスメント実施率 : 100% | 新規開発品の製品安全アセスメント:100%実施 |
| 製品安全アセスメントの進化 | 新規開発品への適用101件、運用定着を確認 | ||
| サプライチェーン マネジメント | 重要仕入先に対するサステナビリティセルフチェック実施 : 100%実施 | 重要仕入先に対してセルフチェック100%実施 | |
| サステナビリティセルフチェック点数:RBA(注3)で85点以上達成 | すべての重要仕入先においてRBA基準85点以上(ローリスク)達成 | ||
| 化学物質の適正な 管理と削減 | 電子体温計と電子血圧計等の普及による水銀削減 : 69t/年 | 水銀削減 : 70t/年 | |
| フロン(CFC)の2018年度全廃、フロン(HCFC)、水銀(蛍光灯)の全廃 | 1年前倒しでフロン、水銀の全廃完了 | ||
| リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト | 誠実で公正な事業 活動 | グループガバナンスの飛躍的な進化 | OGR(注4)整備とグローバル浸透の仕組みの構築を完了 |
| 情報セキュリティ・ 個人情報保護 | 新たな情報セキュリティ体制の構築 | 法務やITなどの専門部署による施策推進、情報セキュリティ管理委員会による定常的活動など、明確化した責任に基づく活動が定着 | |
(注1) TOGA:The OMRON Global Awardsの略で、仕事を通じて企業理念の実践にチャレンジし続ける風土を醸成するためのグローバル全社員参加型の取り組み。
(注2) Boost5:心身の健康状態を把握するための重点テーマ5項目(運動、睡眠、メンタルヘルス、食事、タバコ)を選定し、指標化したもの。
(注3) RBA:Responsible Business Allianceの略。電子業界を中心とするグローバルなCSRアライアンス。
(注4) OGR:オムロングループルール。マネジメントの透明性・公平性・グローバル性を確保し、適切で迅速な意思決定を行う経営基盤として制定した社内ルール。
(注5) 海外重要ポジションに占める現地化比率、女性管理職比率、障がい者雇用率は第三者機関による保証を受ける予定です(統合レポート2021で開示)。
・サステナビリティマネジメント こうした2020年度のサステナビリティ目標の達成に向け、全社でのサステナビリティマネジメント構造を構築し、取締役会の監視・監督のもと、執行部門においてサステナビリティ取組みの推進を行ってきました。具体的にはサステナビリティ重要課題のPDCAやサステナビリティ推進委員会および執行会議での議論を通じて課題解決を推進しました。また、エンゲージメント活動を通じて得られた様々なステークホルダーからの期待や評価を活用して、取組みにおける具体的な改善点を見出し、課題への対応を着実に進化させてきました。

・第三者評価
これらの取組みの結果、多くのESGインデックスに組み込まれるなど、社外から高い評価をいただいています。特に、取締役の中長期業績連動報酬における第三者機関の調査に基づくサステナビリティ評価の対象である「Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)」には「アジア・パシフィック」に2010年から11年連続で選定されていることに加え、2017年以降は「ワールド」に4年連続で選定されています。また、2019年には環境情報開示システムを提供する非営利団体CDPによる気候変動に関する評価で「A-」を獲得、2020年度にはS&Pグローバル社のサステナビリティアワードで最高評価の「ゴールドクラス」への選定やEcoVadis社のサステナビリティ調査で最高ランクの「PLATINUM(プラチナ)」評価を得るなど、年々評価を高めてきました。
<第三者評価の推移>

③次期長期ビジョンに向けた課題
以上のとおり、VG2020の期間においては、「成長力」、「収益力」、「変化対応力」の3つの力の強化による財務価値の向上と、サステナビリティへの取組みによる非財務価値の向上により、当社グループは企業価値を大幅に向上させました。
しかしながら、「成長力」を示す売上高は、VG2020のゴールとして掲げた「売上高1兆円」に向けて、2017年度まではほぼ計画通りに成長を続けてきましたが、その後、米中貿易摩擦やコロナショックによる経済環境の変化などの逆風があり、また車載事業の売却やバックライト事業の収束もあり2020年度の売上高は6,555億円となり1兆円とのギャップは大きくなりました。経済環境の変化などの逆風を跳ね返し、自社の力だけで収益を伸ばす「自走的な成長構造の確立」は継続して取り組むべき課題と認識しています。次期長期ビジョンでは、VG2020期間を通じて実行してきたM&Aや技術開発などの投資により築いた資産を活用して社会的課題の解決に取り組み、自走的な成長を実現してまいります。
<売上高の推移>

(3) 次期長期ビジョンの方向性
2020年度と2021年度の2年間は、ウィズコロナの期間が続くことを前提に、ニューノーマル時代における持続的な成長を実現するための事業変革を加速させる期間としました。次期長期ビジョンは2022年度から開始します。
<2020~2021年度の位置づけ>
当社グループは次の10年を不確実で変化の激しい時代になると見ています。例えば近年でも、地球規模で多発する自然災害、新型コロナウイルス感染症の拡大、米中対立による世界分断リスクの高まりといった多くの社会変化が起きています。これらの変化とともに、従来の大量消費・大量生産による右肩上がりの成長を前提とした社会・経済システムが、持続可能な仕組みへと移行しつつあります。そして、多くの社会的課題が新たに顕在化します。これらの課題を解決することは、当社グループの存在意義である「事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献し続けること」そのものです。これらの社会的課題の解決を成長につなげていくために、当社グループは次期長期ビジョンにおいて、既存事業を最強化すると同時に、4つの新たな成長機会を捉えた価値創造に取り組んでいきます。具体的には、「製造現場の高度化」、「1次・3次産業の自動化」、「慢性疾患の予防医療支援」、「カーボンニュートラルを実現するエネルギーソリューション」です。気候変動や高齢化、個人の経済格差から生じる社会的課題を捉え、その解決に向けた社会価値を創造していきます。そのために、モノによる価値提供にとどまらず、サービスを組み合わせ、パートナーとも協創することでビジネスモデルを進化させ、付加価値の継続的な拡大に挑戦していきます。
この実現に向け、全社で3つの重点テーマに取り組みます。1つ目は、「オートメーションの進化」です。人の能力を最大限引き出し、人と機械の協働・融和を実現するユニークな技術を創りこみます。2つ目は、「人財マネジメントの変革」です。今後、当社グループは、事業を通じた社会的課題の解決に欠くことのできない、専門性が高い多様な能力を有する人財を迎え入れていきます。そして、そのポテンシャルを発揮できる環境をつくることで、これまでにない新たな価値を生み出していきます。3つ目は「デジタルトランスフォーメーション」の加速です。デジタル技術を使いこなし、データの活用によるビジネスモデルを拡張し、企業運営を進化させていきます。
当社グループは、以上の取組みを通じて、次の10年においても、事業を通じた社会的課題の解決で持続的な成長を実現し、企業価値を最大化していきます。詳細は2022年2月に発表します。