有価証券報告書-第80期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/23 10:32
【資料】
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【項目】
68項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループは、2011年にスタートした10年間の長期ビジョン「Value Generation 2020」(以下、VG2020) に基づいた経営を推進しており、「質量兼備の地球価値創造企業」を目指している。
VG2020の第2ステージとして、2014年度から2016年度までを3か年の中期経営計画「EARTH-1 ステージ」とし、いかなる事業環境においても自らの力で成長できる「“自走的”な成長構造の確立」を目指した。
<当期(2016年度)の結果とEARTH-1 ステージの総括>EARTH-1 ステージ最終年度である当期は、「“収益構造の再構築”と“自走的な成長のためのエンジンづくり”」を目標に掲げ、将来の成長の基盤となる収益構造の強化と、成長をけん引する事業およびイノベーションの強化に取り組んだ。当期の売上高については円高の影響もあり、前期比で減収となったが、主力の制御機器事業の成長に大きな手応えを得るとともに、売上総利益率の改善により稼ぐ力を着実に伸ばし、営業利益では前期を上回る実績を達成した。
EARTH-1 ステージの3年間では「既存事業戦略」、「超グローバル戦略」、「最適化新規事業戦略」の3つに取り組んできたが、その総括については次のとおりである。
「既存事業戦略」においては、IA事業の最強化に取り組んだ。4つの業界に注力した事業展開やオートメーションセンター立上げによるお客様の課題解決のための技術サポート体制強化、米国のモーションコントローラーメーカーとロボットメーカーの買収など、新たな価値創造を加速させ、将来に向けた成長構造の構築に取り組んだ。その結果、制御機器事業においてEARTH-1 ステージで掲げた売上目標を達成した。
「超グローバル戦略」においては、特に中国およびアジアにおいて、制御機器事業、ヘルスケア事業での高い成長を実現した。全社を挙げてタイ、インドネシアで開催した総合展示会では、多数の新規商談を獲得することもできた。またヘルスケア事業では、ブラジルのネブライザ会社を買収するなど、中南米での売上高を順調に伸ばした。さらに事業基盤強化の面では、メキシコ、インドネシアの生産拠点強化およびアジアの事業をリードする基幹人財の獲得と育成なども積極的に強化した。
「最適化新規事業戦略」においては、産学連携や他社との業務提携など外部を積極的に活用しながら、新規事業の創出に挑戦した。しかしながら、環境事業に続く十分な規模と成長力を持った事業の創出には至らず、今後継続して取り組む課題であると認識している。
以上の取り組みを中心に、EARTH-1 ステージでは売上総利益率引き上げにより稼ぐ力を着実に向上させるとともに、収益を伴う成長を持続させる事業構造への転換を加速させた。また制御機器事業を、改めて成長軌道に乗せることができた。一方、事業環境変化の影響も受け、EARTH-1 ステージの当初の定量ゴール目標であった「売上高9,000億円以上、営業利益率10%以上」の実現はいずれも未達という結果になった。「“自走的”な成長構造の確立」は道半ばであったと捉えており、次の中期経営計画においても、継続して自走的な成長構造作りに取り組む。
<「VG2.0」と次期(2017年度)の計画>EARTH-1 ステージが終了し、2020年度までの中期経営計画が、次期よりスタートするが、あえてこれまでの延長線上のEARTH-2 ステージとはせず、新たな中期経営計画である「VG2.0」として策定した。なぜならVG2020を策定した2010年と現在を比較すると、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変わったからである。特にAI、IoT、ロボティクスに代表される技術は、2010年当時の想定をはるかに超える進化を遂げ、社会に大きな変化をもたらしている。これらの技術進化は、当社が追求するコア技術である「センシング&コントロール+Think」の進化そのものであり、社会的課題の解決に向けて新たな価値を創造するチャンスとなる。「VG2.0」は、2030年をも見据えて、このチャンスを確実に捉え、新たな価値創造の実現に挑戦するものであり、定性目標として「VG2020」と同じく「質量兼備の地球価値創造企業」を掲げ、定量目標として「売上高1兆円、営業利益1,000億円」を目指す。この実現のためには技術革新を取り込み、コア技術を進化させ続けることが重要であり、全社方針を「技術の進化を起点に、イノベーションを創造し、自走的成長を実現」とし、研究開発を中心とした成長投資を積極的に実行する。
「VG2.0」における基本戦略は、次の3つである。
①注力ドメインの設定
「VG2.0」では当社の強みを活かすことができる成長領域として「ファクトリーオートメーション」、「ヘルスケア」、「モビリティ」、「エネルギーマネジメント」の4つを「注力ドメイン」として設定する。これら4つのドメインに対して、各事業部門が個別に取り組むのではなく、事業部門間、あるいは本社機能部門と連結し、基盤事業の再/最強化を進めていく。
②ビジネスモデルの進化
製品、あるいはサービスを個別に提供するだけではなく、そこにIoT、AI等の新たな技術を掛け合わせることで「モノ+情報+サービス」でのトータルソリューションで新たな提供価値を創造し、4つの注力ドメインでの社会的課題解決を拡大、加速する。
③コア技術の強化
当社グループは創業以来、お客様を起点にユニークな技術を生み出し、事業を創出してきた。「VG2.0」では、AIやロボティクスなど全社にまたがる横断的なコア技術と各事業が保有するコア技術を明確にし、徹底的に磨き続ける。そしてお客様のニーズを起点として、トライ&エラーを繰り返し、技術を手段として社会に提供できる形にし、より大きな社会的課題の解決にチャレンジし続ける。
そして、この基本戦略を加速するために、お客様、大学などの研究機関、異業種の企業をはじめとする社外パートナーとのグローバルでの協創を積極的に推進していく。
以上の中期経営計画のもと、「VG2.0」初年度となる次期は「~Start up VG2.0~“イノベーション”への確かな第一歩」を基本方針として、売上高8,100億円、売上総利益率 40.6%、営業利益 680億円、当社株主に帰属する当期純利益 485億円、ROIC 10%超を目指す。そして「最注力ドメインの牽引による全社成長の実現」、「全事業での『稼ぐ力』の向上による利益創出」、「成長領域/技術への投資の強化」を3つの基本シナリオとして、全社一丸となって邁進する。