有価証券報告書-第81期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/20 14:45
【資料】
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【項目】
66項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループは、2011年にスタートした10年間の長期ビジョン「Value Generation 2020」(以下、VG2020) に基づいた経営を推進しており、「質量兼備の地球価値創造企業」を目指している。
VG2020の最終ステージとして、当社グループは、2020年を最終年度とする新たな中期経営計画「VG2.0」を当期(2017年度)よりスタートさせた。「VG2.0」では、「技術の進化を起点に、イノベーションを創造し、自走的成長を実現」を全社方針として掲げ、2020年度の定量目標として「売上高1兆円、営業利益1,000億円」を目指している。
VG2020を策定した2010年当時と比較して、AI、IoT、ロボティクスなどの技術は飛躍的に進化を遂げている。これらの技術革新は、当社のコア技術である「センシング&コントロール+Think」の進化を加速させ、当社事業のさらなる成長につながる大きなチャンスをもたらしている。当社グループは、これらの技術革新を取り込み、当社のコア技術である「センシング&コントロール+Think」を進化させ続けるために、研究開発を中心とした成長投資を積極的に実行し、持続的な成長を目指す。
<当期(2017年度)の結果>VG2.0の初年度である当期は、「Start up VG2.0 “イノベーションへの確かな第一歩”」を基本方針に、「最注力事業である『制御機器事業』と『ヘルスケア事業』の牽引による全社成長の実現」「全事業での『稼ぐ力』の向上による利益創出」「成長領域/技術への投資の強化」という3つの重点課題に取り組んだ。その結果、当期の業績は売上高・利益共に前期を大幅に上回る実績を達成した。3つの重点課題の主な取り組みは次の通りである。
「全社成長の実現」を牽引する事業のひとつである制御機器事業においては、「自動車」「デジタル」「食品」
「インフラ」という成長業界に注力する戦略を推進している。顧客の生産現場課題を把握し、(*1)

によって革新的な価値を提供することで、前期比19.7%の増加という高い売上成長を実現した。またヘルスケア事業においては、「血圧計」、「ネブライザ」、「低周波治療器」の3つの主力商品に注力し、グローバル展開の拡大や、新たな需要創出に取り組んだ。特に血圧計においては医学界からの高い信頼に加えて、計測した血圧データを管理するサービスの展開により商品価値をさらに高め、前期比7.1%の増加という高い売上成長を実現した。
「全事業での『稼ぐ力』の向上による利益創出」においては、すべての事業で「稼ぐ力」が着実に向上し、売上総利益率は2.3ポイント上昇し、41.6%となった。全事業で付加価値の高い商品を顧客に提供したことに加えて、生産技術の革新などによる不断のコストダウンや生産設備の稼働率向上、生産ラインの自動化推進による生産性の向上などにより、売上総利益が大きく改善した。
「成長領域/技術への投資の強化」においては、制御機器事業、ヘルスケア事業、およびコア技術(センシング&コントロール+Think)への投資を強化した。制御機器事業においては、モノづくりを進化させるための
の加速に向けて、商品開発力および顧客に対する提案力の強化への投資を行い、また産業用カメラ

メーカーと産業用コードリーダメーカーを買収し、技術・商品の品揃えを強化するだけでなく、既存技術・商品との組み合わせによるシナジー効果を発揮した。ヘルスケア事業においては、脳・心血管疾患の発作の減少に向けて技術開発投資を強化した。コア技術においては、トップクラスの外部研究機関との共同研究の開始や、新技術領域人財の獲得など、コア技術のさらなる進化に向けて、AI、ロボティクス、IoT関連技術への投資を強化した。
<次期(2018年度)の計画>次期(2018年度)の経済環境は、一部地域に不透明感はあるものの、総じて堅調に推移すると想定している。VG2.0の2年目である次期は、VG2.0の成功の鍵となるイノベーションを自らが積極的に生み出すことにこだわり、全社方針として「変化創造 “イノベーションによる成長加速と収益構造の革新”」を掲げる。
その主な取り組みは次の通りである。「イノベーションによる成長加速」においては、当期同様、継続して「稼ぐ力」を向上させることで生み出した資金を、制御機器事業、ヘルスケア事業、コア技術へ投資し、イノベーションを創出することで、さらなる成長加速を実現する「成長サイクル」を回し続ける。高齢化や人手不足など、当社が解決すべき社会的課題は、より多様化し、ますます顕在化してきている。これらの課題を解決するには、世に先駆けて新たな価値を創造する「ソーシャルニーズの創造」が不可欠である。そのために、当社が解決すべき社会的課題をより明確化し、そこでの事業を具体的に描くことを目的に、近未来デザイン研究所を新設する。さらに、進化し続けるAI技術を取り込み、センシング技術や制御技術を進化させるために開発投資をさらに強化していく。
「収益構造の革新」においては、関係会社に分散していた人事、総務、理財の専門機能を、グループとして一つの組織に集約し、業務プロセスに革新を起こすことで収益構造を革新し、どのような環境変化の影響もはねのける強固な運営基盤を構築する。さらに業務プロセス革新で生み出された時間をより創造的な仕事に活かしていくなど、当社グループにおける働き方改革をリードしていく。
以上のように、当社グループは新たな社会的課題の解決に果敢に挑戦し、全社一丸となって企業理念の実践に邁進することで、売上高9,000億円、売上総利益率42.5%、営業利益930億円、当社株主に帰属する当期純利益645億円、ROIC 12%前後、ROE 12%前後を目指す。
(*1)・・・当社は、製造業のモノづくり現場を革新するコンセプトをと呼び、次の3つの“i”か

らなるオートメーションの進化によって製造現場の生産性を飛躍的に高め、付加価値の高いモノづくりの実現を目指している。「integrated(制御進化)」は、これまで熟練工に頼っていた匠の技を、誰もが簡単に実現できるよう、オートメーション技術を進化させる。「intelligent(知能化)」は、幅広い制御機器とAIを活用し、機械が自ら学習して状態を保全するなど、進化し続ける装置や生産ラインを実現する。「interactive(人と機械の新しい協調)」は、同じワークスペースで人と機械が共に働き、機械が人の動きや考えを理解しアシストするなど、人と機械の新しい協調関係を提供する。