有価証券報告書-第81期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/20 14:45
【資料】
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【項目】
66項目

研究開発活動

当社グループは、技術の育成・強化を目的に中長期的視野に立った技術戦略を定め研究開発を実行している。
自社の強み、コア技術として「センシング&コントロール+Think」を位置づけ、進化させている。これを技術戦略の核として、全社的視点から当社のコーポレート研究所である技術・知財本部が基盤的な技術開発を担い、各事業部門がその応用技術開発や商品開発を実施している。主力事業である制御機器事業をはじめ、ヘルスケアおよび車載事業に重点的に研究開発費を割当て、製品開発およびものづくり技術の強化を実施している。
当期の取り組みとしては、センシング技術、制御技術、AI技術、ロボット技術、パワーエレクトロニクス技術などの自社のコア技術の高度化を進めるとともに、オープンイノベーション、中長期を見据えた新規技術の開発の推進や人財育成・獲得の仕組みを整備・実行してきた。
知的財産活動においては、技術者の特許に対するスキルを向上させる特許道場や新褒賞制度の実行により、技術者の知財活動に対するモチベーションを向上させ、全社的に知財活動の底上げを図ると共に、将来を見据えた知財戦略の実行により、量、質ともに特許創出力を大幅に向上させた。これらの活動の成果により、昨年度に引き続きクラリベイト アナリティクス様が知財動向の分析をもとに世界の革新企業/機関トップ100を選定する「Top 100 グローバル・イノベーター2017」に選出された。
グループ全体の研究開発に関する費用の総額は、前連結会計年度は506億97百万円、当連結会計年度は591億34百万円である。なお、研究開発費については、技術・知財本部で行っている技術開発費用99億86百万円が含まれている。
オペレーティング・セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果および研究開発費は、次のとおりである。
(1) インダストリアルオートメーションビジネス(制御機器事業)
当セグメントは、製造業の生産現場や機械設備に関わる生産性や安全性の向上、品質歩留り改善に関して、さまざまな要素技術や生産技術を開発し、新商品を通じて価値提供をおこなっている。
生産現場の生産性の向上については、生産人材の不足という社会課題に対する解決策の一つとして、ロボットと画像センサの親和性を高め、ばら積みされた部品を自動で整列させるシステムを開発した。
機械設備の生産性と安全性の向上については、NC機能を付加した産業用コントローラを開発しサーボドライブの商品ラインナップを拡充することで、さらなる高速・高精度の加工を可能とした。また工場のIoT化の要求に対応するため、コントローラの通信機能を強化するとともにセキュリティ機能の強化を行った。加えて独自のAI技術を強化するとともにセンシング機器の拡充を図り、機械設備の故障の予知を行う機器群の拡充を図った。さらに生産現場において生産設備とセンサ機器の衝突による故障を防ぐために、磁気センシング技術を進化させ、世界最長の検出距離を持った近接センサを商品化した。品質歩留り改善については、画像センシング技術を進化させ、外観検査の自動化技術の改良を行った。
当セグメントに係る研究開発費は、210億7百万円である。
(2) エレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネス(電子部品事業)
当セグメントは、リレー、スイッチ、コネクタを中心としたエレクトロメカニカルコンポ商品および人・顔・顔器官等を検知する組込型画像ソフトや光・電磁界・MEMS技術などを用いたセンシングコンポ商品を有し、多様なコア技術と高度なものづくり技術を強みに、商品のQCD高度化や新商品開発を通じて価値提供を行っている。
進化するお客様のニーズに応えるために、核となる商品の標準化・シリーズ化や当社が保有する基盤技術の結合によるモジュール型商品の開発も行い、アプリケーションにフィットした新たな顧客価値創造を進めている。
MEMS技術関連では、人からの放射温度をビル等の部屋の天井から検出することで、人の数を高精度に検出できるMEMS非接触温度センサを内蔵したサーモパイル型人感センサを開発している。人の特徴点を捉えるアルゴリズムにより様々な熱源(人、OA機器等)から高精度に人数把握が可能となり、人数に応じた照明や空調換気、更には床の放射温度検知による快適な空調温度設定する省エネと快適性の両立制御が出来ると共に、災害時の在室者の把握による防災効果の向上にも貢献している。
当セグメントに係る研究開発費は、52億61百万円である。
(3) オートモーティブエレクトロニックコンポーネンツビジネス(車載事業)
当セグメントは、車の安全性やセキュリティ性を高める分野として、自動車の窓やスライドドア、ワゴン車などの後部扉であるテールゲートの自動開閉時に乗員の安全性を確保するためのモータ制御技術、快適性や燃費向上に貢献する分野としては、ステアリング操舵力をアシストする電動パワーステアリングコントロール技術、および利便性を向上する分野としてキー操作不要でドアの開閉やエンジン始動認証をおこなうシステムの商品開発に取り組んでいる。また、環境負荷低減に貢献する小型化、軽量化、省エネ化を実現する技術やアイドリングストップシステム用電圧制御技術、自動運転車に必要となる車内外監視用インテリジェントセンサなど、次世代商品のコアとなる研究開発を進め、商品価値のさらなる向上を目指している。
当セグメントに係る研究開発費は、104億81百万円である。
(4) ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(社会システム事業)
当セグメントは、駅や道路など、公共の場における利用者の安心・安全・快適に貢献する商品として、人や車の
動きを検知するセンサ・システムの開発に取り組んでいる。
また、近年大きな社会課題として注目されている、老朽化した構造物の状態把握や劣化診断をセンシングする研
究開発を、大学などと共同で進めている。
当セグメントに係る研究開発費は、20億63百万円である。
(5) ヘルスケアビジネス(ヘルスケア事業)
当セグメントは、マーケティング部門と研究開発部門が一体となり、真のユーザーニーズの把握・創出に努め、一層の開発スピードアップを目指している。また研究開発部門は、一人ひとりの健康ですこやかな生活の実現に向け、脳・心血管疾患の発症ゼロを目指す「循環器事業」、小児ぜんそく患者の重症化ゼロを目指す「呼吸器事業」、薬の力を借りずに痛みの緩和を目指す「ペインマネジメント事業」の3事業領域において新しい価値を提供できる新商品の創出を目指している。
当期の主な開発テーマとして、循環器事業においては、常時血圧測定が可能な腕時計型血圧計の開発に取り組んでいる。呼吸器事業においては、小児ぜんそく患者の発作の兆候を検知する喘鳴測定器の開発に取り組んでいる。ペインマネジメント事業においては、これまでにない新たな疼痛緩和技術を搭載した低周波治療器の開発に取り組んでいる。
当セグメントに係る研究開発費は66億84百万円である。
(6) その他
その他のセグメントは、主として新規事業の探索・育成と社内カンパニーに属さない事業の育成・強化を担当する領域であり、環境事業、電子機器事業、マイクロデバイス事業、バックライト事業が含まれる。
環境事業では、再生可能エネルギーへの関心や電力自由化の流れを受けた社会ニーズに応えるため、太陽光発電用パワーコンディショナの高効率化・小型軽量化、蓄電池の利用効率向上などの技術開発に継続して取り組んでいる。
マイクロデバイス事業では、長年培ったMEMS技術による小型センシング技術で環境や健康に関する情報を精度良く読み取り、センサネットワーク社会に新しいソリューションを創出することで、社会の継続的発展に貢献している。
バックライト事業では、ウェアラブル・VR・OA機器・アミューズ向け光制御技術と金型成形の技術開発に取り組んでいる。
当セグメントに係る研究開発費は、36億52百万円である。