有価証券報告書-第79期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/24 9:17
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69項目

研究開発活動

当社グループは、技術の育成・強化を目的に中長期的視野に立った技術戦略を定め研究開発を実行している。
自社の強み、コアコンピタンスとして「センシング&コントロール」を位置付け、これを技術戦略の核として、全社的観点から当社のコーポレート研究所である技術・知財本部が基盤的な技術開発を担い、各事業部門がその応用技術開発や商品開発を実施している。主力事業である制御機器および電子部品事業に重点的に研究開発費を割当て、製品開発およびものづくり技術の強化を実施している。
当期の取り組みとしては、センシング技術、制御技術、知識情報処理技術、パワーエレクトロニクス技術、ネットワーク技術、組込技術などの高度化を進めるとともに、自社のコア技術強化、社外との提携によるオープンイノベーション、中長期を見据えた新規技術の開発の推進に向け、仕組みを整備・実行してきた。
知的財産活動においては、長期的な視点に立ち、事業戦略及び技術戦略と整合した知財戦略に基づき、三位一体での知財活動を実行している。今年度は、経済産業省・特許庁が実施している平成27年度「知財功労賞」において、経済産業大臣表彰を受賞した。
グループ全体の研究開発に関する費用の総額は、第78期は479億13百万円、第79期は527億90百万円である。なお、研究開発費については、技術・知財本部で行っている技術開発費用75億83百万円が含まれている。
オペレーティング・セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果および研究開発費は、次のとおりである。
(1) インダストリアルオートメーションビジネス(制御機器事業)
当セグメントは、製造業の生産現場や機械設備に関わる生産性や安全性の向上、品質歩留り改善に関して、さまざまな要素技術や生産技術を開発し、新商品を通じて価値提供をおこなっている。
機械設備の性能・生産性向上については、世間の先端ICTや半導体技術などをもとに、厳しいFA環境に耐えうる信頼性やリアルタイム性を確保した高速高精度処理技術を開発・横展開し、生産機械の構成要素である入力~処理~出力~通信機能を受け持つ各種コンポの高速高精度化と商品バリエーション強化に取り組んだ。さらに、これら機械制御に安全制御を統合するコンポ群および設計環境を実現し、生産性と安全性の両立という顧客課題の解決手段を提供可能とした。さらに、IoTの進化、人と機械が協働する生産現場といった近未来のモノづくりを見据えて、情報ハンドリングやロボットなどに技術分野を拡大している。
生産設備の制御盤や機械・製造ライン周辺に用いる各種産機コンポ群においても、基本性能強化やユーザビリティ改善を進めて顧客の利便性向上に努めるとともに、新たな工法技術開発を通じて商品のコスト競争力強化を継続中である。
製品品質向上関連については、使用環境の変動に影響しにくい光学・画像検査計測技術の継続強化のほか、新たな市場トレンドである金属異物判別を可能にしたフィルム傷検査向け計測技術を開発し、商品化を実現した。
当セグメントに係る研究開発費は、181億80百万円である。
(2) エレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネス(電子部品事業)
当セグメントは、リレー、スイッチ、コネクタを中心としたエレクトロメカニカルコンポ商品および顔認証等の組込画像ソフト技術、光技術、MEMS技術などを用いたセンシングコンポ商品を有し、高度なものづくり技術を強みにお客様のニーズに応える新製品開発に取り組んでいる。
独自の顔画像センシング技術「OKAO Vision」を活用し、表情や性別、年齢、視線、ジェスチャーなど人の状態を認識してスマートフォン等へ送信、操作できるネットワークカメラセンサ「ヒューマンビジョンコンポ家族目線」を発売した。更に膨大な画像データから最適な顔写真を検索できる企業向けソフトウェア「画像検索ライブラリー」を発売した。家族やペットの見守り、病院や学校等での見守り、小売や飲食店等でのマーケティングなど”IoT”の進展による多様なニーズに応えるソリューションコンポで新たな価値と機会を提供する。
また、MEMS3軸加速度センサと独自のSI値演算アルゴリズムによる世界最小クラスのサイズと高精度な地震検知を実現した感震センサを発売した。地震の揺れの大きさを表す震度階級とも相関性の高いSI値を採用することで震度5強相当以上の揺れを高精度に判定し装置や設備の的確な停止を行う。加えて通信機能によりネットワーク化し建物などの被害状況を把握し、地震発生後の復旧対策や二次被害防止などへ活用し、安全、安心の確保に貢献する。
当セグメントに係る研究開発費は、48億80百万円である。
(3) オートモーティブエレクトロニックコンポーネンツビジネス(車載事業)
当セグメントは、車の安全性やセキュリティ性を高める分野として、自動車の窓やスライドドア、ワゴン車などの後部扉であるテールゲートの自動開閉時に乗員の安全性を確保するためのモータ制御技術、快適性や燃費向上に貢献する分野としては、ステアリング操舵力をアシストする電動パワーステアリングコントロール技術、および利便性を向上する分野としてキー操作不要でドアの開閉やエンジン始動認証をおこなうシステムの商品開発に取り組んでいる。また、環境負荷低減に貢献する小型化、軽量化、省エネ化を実現する技術やアイドリングストップシステム用電圧制御技術、電気自動車用電源監視制御技術、衝突予防や回避に必要な車外監視用インテリジェントセンサなど、次世代商品のコアとなる研究開発を進め、商品価値のさらなる向上を目指している。
当セグメントに係る研究開発費は、92億77百万円である。
(4) ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(社会システム事業)
当セグメントは、駅や道路など、公共の場における利用者の安心・安全に貢献する商品として、人や車の動きを検知するセンサ・システムの開発に取り組んでいる。
また、近年大きな社会課題として注目されている、老朽化した構造物の状態把握や劣化診断をセンシングする研究開発を、大学などと共同で進めている。
当セグメントに係る研究開発費は、21億54百万円である。
(5) ヘルスケアビジネス(ヘルスケア事業)
当セグメントは、マーケティング部門と研究開発部門が一体となり、真のユーザーニーズの把握・創出に努め、一層の開発スピードアップを目指している。また研究開発部門は、一人ひとりの健康ですこやかな生活の実現に向け、「血圧計を中心とした循環器領域」、「喘息やCOPDなどの呼吸器領域」、「低周波治療器を中止としたペインマネジメント領域」の3事業領域において新しい価値を提供できる新商品の創出を目指している。
当期の主なテーマとして、循環器領域においては、血圧測定の頻度をあげ、疾病リスクの管理に向けた本体カフ一体型の上腕式血圧計と、いつでも血圧が測定できる超小型手首式血圧計の開発に取り組んでいる。
呼吸器領域においては、家庭で高濃度の酸素を吸入することで、疲労回復や、呼吸器系の軽度疾患の治療を目的とした酸素発生器を開発、中国にて販売を開始した。
ペインマネジメント領域においては、血行を促進する温熱治療とコリや痛みを緩和する低周波治療の両方を行えるコンパクトなデザインの温熱低周波治療器を開発し販売開始した。
当セグメントに係る研究開発費は61億12百万円である。
(6) その他
その他のセグメントは、主として新規事業の探索・育成と社内カンパニーに属さない事業の育成・強化を担当する領域であり、環境事業、電子機器事業、マイクロデバイス事業、バックライト事業が含まれる。
環境事業では、太陽光発電用パワーコンディショナの高効率化、軽量化などの技術開発に継続して取り組んでいる。また、成長が期待される電力自由化市場に向けて、業界最小サイズの蓄電池ユニットを搭載したハイブリッド蓄電システムを開発し、商品化した。
マイクロデバイス事業では、長年培ったMEMS技術をベースにした環境や健康に関する情報を高精度に読み取る小型センサデバイスをもとに、センサネットワーク社会に新しいソリューションを創出することで、社会の継続的発展に貢献している。
バックライト事業では、変化の激しいスマートフォン市場のトレンドを捉えてお客様からのニーズに応えるため、高性能バックライトユニットのコア技術である薄型導光板の射出成型金型技術、圧縮成形金型技術、シート型導光板技術、狭額縁技術等の継続的なブラッシュアップに取り組んでいる。
当セグメントに係る研究開発費は、46億4百万円である。