有価証券報告書-第181期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/24 16:10
【資料】
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【項目】
95項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
NECグループは、企業理念、グループビジョンおよびブランドステートメントを次のとおり掲げています。
NECグループ企業理念
「NECはC&Cをとおして、世界の人々が相互に理解を深め、人間性を十分に発揮する
豊かな社会の実現に貢献します。」
NECグループビジョン
「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディング
カンパニー」
ブランドステートメント
「Orchestrating a brighter world」
NECグループは、企業理念、ビジョンおよびブランドステートメントに基づき、ネットワーク技術とコンピューティング技術をあわせ持つ類のない企業として、社会に不可欠なインフラシステム・サービスを高度化する「社会ソリューション事業」に注力しています。この事業活動を通じ、人が豊かに生きるための「安全」、「安心」、「効率」そして「公平」という社会価値を創造し、「人と地球にやさしい情報社会」を全てのステークホルダーと共創してまいります。
これらを実現していくために、NECグループ社員が大切にする価値観・行動原理を“NECグループバリュー”としてまとめ、実践に努めています。
NECグループバリュー
「ベタープロダクツ・ベターサービス」「イノベーションへの情熱」「共創」「自助」
イノベーションへの情熱を原動力として、個人一人ひとりが自ら動くと同時に、チームの一員として価値を共に創造し、創業以来共有してきた「ベタープロダクツ・ベターサービス」の価値観をもって、常により良い製品・サービスを提供することで、お客さまの満足と喜びを創造していきます。また、NECグループにおいて100年を超える歴史の中で培われ、受け継がれてきたこれらのバリューを実践していくことで、グループ企業理念、グループビジョンを実現していきます。
NECグループは、企業理念、ビジョン、ブランドステートメント、バリュー、企業行動憲章、行動規範を含むNECグループの経営活動の仕組みを体系化した「NEC Way」の実践を通して企業価値の最大化をはかり、社会と企業の持続的な成長を目指していきたいと考えています。そして、お客さま、株主・投資家の皆さま、取引先、地域社会、従業員をはじめとするステークホルダーの満足を追求していきます。
(2) 目標とする経営指標
NECグループは、売上収益、営業利益率、当期利益、フリー・キャッシュ・フロー、自己資本利益率(ROE)を経営上の目標として掲げ、これらの指標の中でも営業利益率を最重要視しています。
(3) 経営環境
当連結会計年度の世界経済は、米国が堅調に推移したものの、中国や欧州等が減速したことなどにより、全体では前期に比べて成長率が鈍化しました。
日本経済も、設備・雇用不足等を背景に設備投資が堅調だったものの、相次ぐ自然災害や海外経済減速などの影響により、前期に比べて成長率が鈍化しました。
(4) 中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
NECグループは、2018年1月に発表した「2020中期経営計画」のもと、①収益構造の改革、②成長の実現、③実行力の改革を経営方針として掲げ、その実現に向けて役員・社員一丸となって取り組んでいます。
① 収益構造の改革
当連結会計年度に実施した特別転進支援施策や生産拠点再編などにより相当の固定費削減を実現しましたが、今後もプロセスの最適化などの業務改革を通じて、さらなる固定費の削減を推進します。また、事業構造の改革に引き続き取り組むなど収益向上につながる施策を実施してまいります。
② 成長の実現
NECグループの生体認証技術とAI(人工知能)技術等を活かした「NEC Safer Cities」と「NEC Value Chain Innovation」の推進により成長を目指します。「NEC Safer Cities」は、人々がより自由に、個人の能力を最大限に発揮して豊かな生活を送ることのできる、安全・安心で、効率・公平な都市の実現に貢献するものです。また、「NEC Value Chain Innovation」は、人やモノ、プロセスを企業・産業の枠を超えてつなぎ、新たな価値を生み出します。そして、地球との共生、企業の持続的な成長と人が豊かに生きる社会を支え、未来創りを目指すものです。
世界中でデジタル技術が急速に浸透する中、デジタル化が起こすパラダイムシフトに対応しようとする動きが進んでおり、企業間や官民の連携のあり方など業界の構図がダイナミックに変化しています。NECグループは、デジタル技術がすみずみまで浸透した社会を「Digital Inclusionな社会」ととらえており、生体認証技術とAI技術等の強みを活かして実世界を見える化・分析・対処することで、全体最適の観点から社会のあらゆるものを高度化させてまいります。この「Digital Inclusionな社会」は、日本政府が提唱する「Society 5.0」の未来社会と同じ世界観であり、経済発展と社会的課題解決の実現に向けてスマートシティ、モビリティ、ファストトラベルおよびパブリックセーフティネットワークといったクロスインダストリー領域を軸に、官民連携や異業種連携による新事業開発を積極的に進めてまいります。
一方、AIの社会実装や生体情報をはじめとするデータの利活用にあたっては、プライバシーを含む人権の尊重、倫理観や社会的受容性に鑑みた活用原則・法制度への対応が一層重要となりますが、NECグループでは、2019年4月に制定した「NECグループ AIと人権に関するポリシー」に基づき、プライバシーへの配慮や人権の尊重を最優先して、事業活動を推進してまいります。
③ 実行力の改革
NECグループは、実行力の改革に向けて、最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦と社員の力を最大限に引き出す改革に引き続き取り組みます。まず、最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦については、ドットデータ社に続いて外部資金などの活用による新技術の早期事業化とNECエックス社を通じた事業創造を加速してまいります。また、NECグループでは、今後AI技術の活用が進むヘルスケア事業領域を次の成長領域ととらえ、最新技術を活用した医療システム事業に加えて創薬関連事業でのインキュベーションを推進するなど、新たな価値創造にも取り組んでまいります。次に、社員の力を最大限に引き出すため、スマートワークやオフィス改革など、働き方の変革を加速するための制度改革や環境整備を進めます。また、社員のやる気と組織の人材ニーズをマッチさせるための人事制度を導入し、NECグループ内の人材流動性を高めていきます。
これらの施策を通じて、2020年度に売上収益3兆円、営業利益率5%、当期利益900億円、フリー・キャッシュ・フロー1,000億円、ROE10%の達成を目指します。
NECグループは、2018年7月に、ESG(環境・社会・ガバナンス)視点の経営優先テーマを「マテリアリティ」として特定しました。具体的には、ガバナンス・コンプライアンスをはじめ、気候変動を核とした環境課題への対応、社会受容性に配慮したプライバシーなどの5テーマを、NECグループおよび社会のリスクを最小化し、NECグループが生み出す社会価値を最大化するための「持続的な成長実現の鍵」として、また、ステークホルダーとの対話・共創、イノベーション・マネジメントを「成長に向けた変革のエンジン」として位置づけました。NECグループは、「2020中期経営計画」で成長領域として設定した「NEC Safer Cities」と「NEC Value Chain Innovation」をESG視点からも優先的に取り組むべきテーマとし、これらに経営資源を集中することで経済価値・社会価値の最大化に努め、国連の持続可能な開発目標であるSDGsにも貢献してまいります。
また、NECグループがよき企業市民として社会の中で存在し続けていくためには、コンプライアンスの徹底が不可欠です。NECグループでは引き続きコンプライアンスの推進に取り組んでまいります。
(5) 気候変動への対応
持続可能な社会を築くためには、地球温暖化がもたらす気候変動問題に対して、温暖化が進まないように温室効果ガスの排出を削減する緩和策だけでなく、気候変動リスクに備え、その被害を未然に防止し、または最小限に抑えるための適応策にも取り組む必要があります。NECグループは、気候変動リスクを最小限に抑え、お客さまや社会の気候変動対策への価値提供を通じてNECグループの事業成長へと繋げるため、緩和と適応の両面から気候変動がNECグループの事業にもたらすリスクと機会を評価し、NECグループが目指すべき方向と長期目標を定め戦略的に取り組んでいます。具体的には、お客さまと持続可能な社会を共創していく姿を示した「2050年を見据えた気候変動対策指針」を2017年7月に策定し、気候変動対策の強化を進めています。本指針は、①サプライチェーンからのCO₂排出量ゼロに向けた削減、②サプライチェーンでの気候変動リスクへの対策徹底、③世界が目指す低炭素社会の実現、④気候変動リスクに強い安全・安心な社会の実現、という4つの要素から構成されており、このうち①の要素については、NECグループが自らの事業活動に伴い発生するCO₂排出量(Scope1, 2(*))を2050年までに実質ゼロとすることを目標として掲げています。
当連結会計年度の主な取組みとしては、サプライヤーの気候変動対策の推進状況の把握に向けた調査を開始しました。調査結果をもとに優れた取組みを表彰し、サプライヤー間で共有する制度を導入するなど、サプライヤーと連携して、サプライチェーンの排出量削減および気候変動対策の強化に向けた取組みを推進しています。また、NECグループは2030年に向けた温室効果ガス排出削減目標を定めていますが、国際的な環境団体「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」から、かかる目標が、パリ協定が目指す「2℃目標」の達成に向けた科学的根拠ある水準であるとの認定を取得しました。さらに、気候変動対策を核とした環境課題に対応することをESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」の1つに位置付けました。
NECグループは、ICTを活用した省エネ型製品・サービスの提供や再生可能エネルギーの導入拡大などを積極的に進めるとともに、洪水や土砂災害などの気候変動リスクに備えるソリューションの開発・提供を進めることで、緩和策と適応策の両面からお客さまや社会の気候変動対策に貢献していきます。
(*)Scope1:事業者が所有または管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出
Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出
(6) 株式会社の支配に関する基本方針
当社は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方は、株主が最終的に決定するものと考えています。一方、経営支配権の取得を目的とする当社株式の大量買付行為や買収提案があった場合には、買収提案に応じるか否かについての株主の判断のため、買収提案者に対して対価等の条件の妥当性や買付行為がNECグループの経営方針や事業計画等に与える影響などに関する適切な情報の提供を求めるとともに、それが当社の企業価値および株主共同の利益の向上に寄与するものであるかどうかについて評価、検討し、速やかに当社の見解を示すことが取締役会の責任であると考えています。また、状況に応じて、買収提案者との交渉や株主への代替案の提示を行うことも必要であると考えます。
当社は、現在、買収提案者が出現した場合の対応方針としての買収防衛策をあらかじめ定めていませんが、買収提案があった場合に、買収提案者から適切な情報が得られなかったとき、株主が買収提案について判断をするための十分な時間が与えられていないときまたは買付行為が当社の企業価値および株主共同の利益の向上に反すると判断したときには、その時点において実行可能で、かつ株主に受け入れられる合理的な対抗策を直ちに決定し、実施する予定です。