有価証券報告書-第182期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 15:53
【資料】
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【項目】
94項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、2020年4月1日にNECグループ共通の価値観であり行動の原点を示す経営理念「NEC Way」を改定しました。
「NEC Way」は、企業としてふるまう姿を示した「Purpose(存在意義)」「Principles(行動原則)」と、NECグループの一人ひとりの価値観・ふるまいを示した「Code of Values(行動基準)」「Code of Conduct(行動規範)」で構成されています。
「Purpose(存在意義)」はOrchestrating a brighter worldをもとに、豊かな人間社会に貢献する姿を示した宣言です。
0102010_001.pngNECは、安全・安心・公平・効率という
社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる
持続可能な社会の実現を目指します。

「Principles(行動原則)」は、NECグループとしての行動のもととなる原則であり、次の3つの心構えを示しています。
創業の精神「ベタープロダクツ・ベターサービス」
常にゆるぎないインテグリティと人権の尊重
あくなきイノベーションの追求

「Code of Values(行動基準)」は、NECグループの一人ひとりが体現すべき日常的な考え方や行動の在り方を示した行動基準です。
視線は外向き、未来を見通すように
思考はシンプル、戦略を示せるように
心は情熱的、自らやり遂げるように
行動はスピード、チャンスを逃さぬように
組織はオープン、全員が成長できるように

「Code of Conduct(行動規範)」は、NECグループの一人ひとりに求められるインテグリティ(高い倫理観と誠実さ)についての具体的な指針であり、次の章から構成されています。
1.基本姿勢
2.人権尊重
3.環境保全
4.誠実な事業活動
5.会社財産・情報の管理
コンプライアンスに関する疑問・懸念相談、報告

NECグループは、「Purpose」を全うするため、「Principles」に基づき、「中期経営計画」をはじめとする中長期的な経営戦略を実践し、社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化をはかっていきます。
また、NECグループの一人ひとりが、「Code of Values」に基づき、自らの働き方や組織のあり方を常に見直し、改善するとともに、高い倫理観と誠実さをもったよき企業人として「Code of Conduct」を遵守していきます。
お客さまや社会が期待する価値は常に変化し続けていることから、NECグループがこれからも社会から必要とされる存在であり続けるためには、何が価値となるのかを常に考え、新たな価値を創造していく必要があります。NECグループは、情報通信技術とさまざまな知見・アイデアを融合することで、世界の国々や地域の人々と協奏しながら、明るく希望に満ちた暮らしと社会を実現して未来に繋げてまいります。
(2) 目標とする経営指標
NECグループは、売上収益、営業利益率、当期利益、フリー・キャッシュ・フロー、自己資本利益率(ROE)を経営上の目標として掲げ、これらの指標の中でも営業利益率を最重要視しています。
(3) 経営環境
当連結会計年度の世界経済は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下「新型コロナウイルス感染症」という。)による影響等から減速しました。日本経済は、海外経済の減速や消費税率の引上げ等に加え、新型コロナウイルス感染症による影響から低調に推移しました。
(4) 中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
NECグループは、「NEC Way」の実践をとおして2020年度を最終年度とする「2020中期経営計画」のもと、①収益構造の改革、②成長の実現、③実行力の改革に役員・社員一丸となって取り組んでいます。
① 収益構造の改革
成長軌道に回帰するための必要な投資を実現するため、業務プロセス改革による社員のパフォーマンス向上や経費の効率的な運用をはかりSGA比率の低減を目指します。また、引き続き事業構造の改革に取り組むなど、収益向上につながる施策を実施してまいります。
② 成長の実現
デジタル技術が浸透し世の中の変革をもたらす「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が急速に進行する中、当社はデジタル技術が社会の隅々まで浸透した社会を「Digital Inclusionな社会」と捉え、生体認証技術とAI(人工知能)技術等の強みを活かして実世界を見える化・分析・対処し、全体最適の観点から社会のあらゆるものを高度化させることで、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。
具体的には、安全・安心で便利な社会基盤の構築や豊かなサービスを実現する「NEC Safer Cities」と、産業の枠を超えて人やモノ、プロセスをつなぎ合わせることで新たな価値を生み出す「NEC Value Chain Innovation」の2つの領域に注力し、スマートシティ、モビリティ、Digital ID、パブリックセーフティネットワーク等を機軸として、官民連携や異業種連携による新事業開発等を加速してまいります。
③ 実行力の改革
NECグループは、実行力の改革に向けて、最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦と社員の力を最大限に引き出す改革に引き続き取り組みます。
最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦については、2020年4月に中央研究所および知的財産・技術戦略部門を統合して新設した「研究・開発ユニット」を中心として、当社のコア技術の維持・拡大、業界をまたいだ共創による技術価値を最大化するビジネスモデルの創出および各ビジネスユニットが持つインフラ系技術の共通化を推進し、研究開発の成果である技術の事業化を加速します。
また、社員の力を最大限に引き出す改革については、2018年に開始した変革プロジェクト「Project RISE」の活動を継続し、社員一人ひとりがベストパフォーマンスを発揮するための働き方を柔軟に選択できるよう、スマートワークやオフィス改革など、働き方の変革を加速するための施策をさらに進めてまいります。
これらの施策を通じて、「2020中期経営計画」の達成を目指します。
NECグループは、2018年7月に、ESG(環境・社会・ガバナンス)視点の経営優先テーマを「マテリアリティ」として特定しました。具体的には、ガバナンス・コンプライアンスをはじめ、気候変動を核とした環境課題への対応、社会受容性に配慮したプライバシーなどの5つのテーマを、NECグループおよび社会のリスクを最小化し、NECグループが生み出す社会価値を最大化するための「持続的な成長実現の鍵」として、また、ステークホルダーとの対話・共創、イノベーション・マネジメントを「成長に向けた変革のエンジン」と位置づけました。社会と当社のサステナブルな成長に向け、マテリアリティで掲げたテーマを中心に、お客さまをはじめとした多様なステークホルダーのみなさまと対話し、ともに取り組みを進めることで国連の持続可能な開発目標「SDGs」の達成にも貢献してまいります。
また、NECグループがよき企業市民として社会の中で存在し続けていくためには、コンプライアンスの徹底が不可欠です。NECグループでは引き続きコンプライアンスの推進に取り組んでまいります。
(5) 気候変動への対応
持続可能な社会を築くためには、地球温暖化がもたらす気候変動問題に対して、温暖化が進まないように温室効果ガスの排出を削減する緩和策だけでなく、気候変動リスクに備え、その被害を未然に防止し、または最小限に抑えるための適応策にも取り組む必要があります。NECグループは、気候変動リスクを最小限に抑え、お客さまや社会の気候変動対策への価値提供を通じてNECグループの事業成長へと繋げるため、緩和と適応の両面から気候変動がNECグループの事業にもたらすリスクと機会を評価し、NECグループが目指すべき方向と長期目標を定め戦略的に取り組んでいます。具体的には、お客さまと持続可能な社会を共創していく姿を示した「2050年を見据えた気候変動対策指針」を2017年7月に策定し、気候変動対策の強化を進めています。本指針は、①サプライチェーンからのCO₂排出量ゼロに向けた削減、②サプライチェーンでの気候変動リスクへの対策徹底、③世界が目指す低炭素社会の実現、④気候変動リスクに強い安全・安心な社会の実現、という4つの要素から構成されており、このうち①の要素については、NECグループが自らの事業活動に伴い発生するCO₂排出量(Scope1, 2(*1))を2050年までに実質ゼロとすることを目標として掲げています。
当連結会計年度の主な取り組みおよび実績としては、2019年10月に国際的な環境団体「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」(*2)から、当社のCO₂排出量削減目標が「世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(well below 2℃)」であると評価されました。当社のCO₂排出量削減目標は、2018年10月にパリ協定が目指す「2℃目標」の達成に向けた科学的に根拠ある水準であるとSBTイニシアチブから認定を受けていましたが、今般の評価により、当社のCO₂排出量削減目標はパリ協定の求める水準に十分整合していることがあらためて国際的に認められたことになります。
また、当社は国際的なNGOであるCDP(*3)が主催する「CDPサプライチェーンプログラム」に加盟しています。当社はサプライヤーにおける気候変動対策の推進状況を把握するため、サプライヤーに対して当社の独自調査に加えて同プログラムを通じた調査を毎年実施し、優れた取り組みを行うサプライヤーを表彰するなど、サプライヤーと連携して、サプライチェーン全体の排出量削減および気候変動対策の強化に向けた取り組みを推進しています。2020年1月には、CDPから、当社の気候変動に対する取り組みとその情報開示が高い評価を受け、最高評価である「Aリスト」企業に選定されました。
NECグループは、ICTを活用した省エネ型製品・サービスの提供や再生可能エネルギーの導入拡大などを積極的に進めるとともに、洪水や土砂災害などの気候変動リスクに備えるソリューションの開発・提供を進めることで、緩和策と適応策の両面からお客さまや社会の気候変動対策に貢献していきます。
*1 Scope1:事業者が所有または管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出
Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出
*2 SBTイニシアチブ:世界自然保護基金(WWF)、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDPによって2014年9月
に設立された共同イニシアチブ
*3 CDP:投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営している
英国の慈善団体が管理する国際的なNGO。2019年度は全世界で8,400社以上の企業がCDPを通じて情報開示を行いました。