有価証券報告書-第103期(2025/04/01-2026/03/31)
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
1) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ80億3千3百万円増加し、1,323億8千1百万円となりました。流動資産が64億3千万円増加し、固定資産が16億2百万円増加しています。固定資産では、電子化学実装事業の製造棟新設等により有形固定資産が増加した一方、持分法適用関連会社の持分譲渡により投資その他の資産が減少しています。流動資産では、売上債権の増加及び上記持分譲渡に係る債権が計上されたことにより流動資産その他が増加しています。
当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末に比べ91億6千9百万円増加し、694億8千4百万円となりました。これは主に、仕入債務および有利子負債の増加によります。
有利子負債合計(短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・短期リース債務・長期借入金および長期リース債務の合計額)は45億3千4百万円増加し、384億8千4百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ11億3千6百万円減少し、628億9千7百万円となりました。その他の包括利益の計上により24億9千5百万円増加した一方で、自己株式の取得及び親会社株主に帰属する当期純損失の計上により35億5千3百万円減少しました。この結果、自己資本比率は47.40%となりました。
(自己資本比率は、純資産より新株予約権・非支配株主持分を控除して計算した比率を用いています。)
2) 経営成績
当連結会計年度(2025年4月1日~2026年3月31日)における、当社グループの事業に関わるエレクトロニクス市場は、生成AIの急速な社会実装を背景に、AIサーバー・データセンター関連の需要が拡大基調で推移しました。自動車関連は、EV普及の地域間格差が残るものの、車両の電装化進展に伴う安定的な需要が継続しました。産業機器関連は期を通じて低位で推移しましたが、足元では需要に回復の兆しがうかがわれます。
このような事業環境のもと、当社は2025年4月に始動した中期経営計画「One TAMURA for Next 100」に基づき、今後の成長に向けた基盤の構築(「成長の基盤づくり」)と効率的に収益を最大化できる体質への変換(「体質改善」)を推進しています。中期経営計画最終年度(2028年3月期)におけるROE 8%等の目標達成を確実なものとするために、当期においては事業ポートフォリオの構造転換を加速させ、将来の収益圧迫要因となり得るリスクを能動的かつ集中的に顕在化し、措置を講じました。具体的には、連結子会社である株式会社光波のネットワークソリューション事業の譲渡、中国生産拠点削減をはじめとする国内外拠点配置の見直し、体質改善に向けた転身支援制度特別措置など、痛みを伴う施策を実施しました。また、2026年4月8日には、長年にわたり放送・音響領域で顧客からの高い評価と信頼を獲得してきた情報機器関連事業を第三者に譲渡することを決議し、中期計画で注力を掲げる次世代パワーエレクトロニクス関連製品、電力インフラ、ヘビーインダストリー、次世代通信、モビリティなどのクリーンエネルギー関連市場に向けて、経営資源を集中する方向性を具体化しました。
その結果、当連結会計年度の売上高は、1,235億5千9百万円(前期比8.3%増)と過去最高を更新し、営業利益は52億8千7百万円(同1.8%増)、営業利益率4.3%と増収増益となりました。一方で、親会社株主に帰属する当期純損益は、13億8千5百万円の損失(前期は親会社株主に帰属する当期純利益27億8千2百万円)となりました。これは、転身支援制度特別措置の実施、拠点の再編、情報機器関連事業の事業譲渡など体質改善に関する特別損失を計上したことによります。
セグメントの業績は、次のとおりです。
なお、売上高はセグメント間の内部売上高を含めており、セグメント利益は連結消去(主に全社未来開発費)により合計が全社の営業利益と一致しません。
(電子部品関連事業)
生成AI関連需要が一段と拡大し、米国のデータセンター用PDU(電源分配ユニット)・UPS(無停電電源装置)向けを中心とした大型トランス・リアクタの好調な需要が、業績をけん引しました。また、電動工具向けチャージャが安定的に推移し、エアコン用リアクタや車載用リアクタも一定の需要を維持しました。産業機械向けトランス・リアクタは、国内外製造業における設備投資への慎重姿勢が継続したことで、売上は横ばいとなりました。
その結果、売上高は815億4千9百万円(前期比6.2%増)、セグメント利益は33億4百万円(同1.0%増)と増収増益となりました。セグメント利益は、中国生産拠点の再編に向けた生産移管や人員の適正化に係る費用の計上により、売上高の伸びに比して小幅な増加にとどまりました。
(電子化学実装関連事業)
ソルダーペーストは、車載用途が安定的に推移したほか、データセンター向けなど情報通信関連の需要が増加しました。また、連動相場制による価格設定のもと、素材価格の大幅な上昇に連動して売上が増加しました。一方、急激な上昇局面では改定タイミングが追い付かず、特に期の後半において収益性が低下しました。ソルダーレジストは、スマートフォン向けフレキシブル基板用ソルダーレジストの販売が好調であったことに加え、感光性カバーレイ(PICC)がAIサーバー等に採用されたことが寄与し、堅調に推移しました。実装装置は、国内外の顧客における設備投資の慎重姿勢が継続し、前年度並みの水準にとどまりました。
その結果、売上高は399億2千万円(前期比15.5%増)、セグメント利益は33億3千4百万円(同8.8%増)と、増収増益となりました。
(情報機器関連事業)
放送業界全般において厳しい設備投資環境が継続しており、売上高は21億3千6百万円(前期比25.4%減)、セグメント損失は5億6千6百万円(前期は1億8千1百万円のセグメント損失)となりました。
なお、当該事業につきましては、2026年10月1日付での事業譲渡を予定しています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)につきましては、前連結会計年度末に比べ13億8千2百万円減少し、180億9千6百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費が43億9千5百万円、税金等調整前当期純利益が13億3千2百万円となったことなどにより、28億5千1百万円の資金収入となりました。また、前連結会計年度と比べ、営業活動によるキャッシュ・フローは、資金収入が62億3千1百万円減少しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、電子化学実装事業の製造棟新設を中心とした有形固定資産の取得による支出が54億7千1百万円となったことなどにより、48億3百万円の資金支出となりました。また、前連結会計年度と比べ、投資活動によるキャッシュ・フローは、資金支出が9億2百万円増加しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の増加などにより、3億1千6百万円の資金収入となりました。また、前連結会計年度と比べ、財務活動によるキャッシュ・フローは、資金支出が39億5千6百万円減少しました。
③ 生産、受注及び販売の実績
1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
2) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。
3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合については、100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、売上高は1,235億5千9百万円と過去最高を更新し、営業利益も52億8千7百万円と過去最高(2018年3月期)に迫る結果となりました。しかしながら、親会社株主に帰属する当期純損益は13億8千5百万円の損失を計上しました。これは、次年度以降の資本効率向上を最優先し、将来の懸念材料に対し措置を講じるべく事業再編等の構造改革にかかる特別損失等を計上した結果です。
当社は、第14次中期経営計画「One TAMURA for Next 100」において、PBR1倍以上の定着および最終年度である2028年3月期の営業利益率7%以上、ROE8%以上という財務目標を掲げました。達成に向け筋肉質な企業体質への転換を進めており、中長期的な成長を持続し拡張していくため、中国拠点の再編と集約、国内事業の最適化、事業ポートフォリオの変革といった施策を推進しています。当連結会計年度は、これら体質改善策を前倒しで断行したことで一時的な利益減少およびROEの低下という調整局面となりましたが、完遂後は一過性費用の剥落と構造改革効果の発現により、利益項目での改善を見込んでいます。
中国拠点の再編と集約では、地政学リスクの低減と収益性の抜本的な向上を目的に、中国の拠点を最大で3割削減するという方針を掲げ、合肥や佛山の拠点の譲渡や一部電源製品の生産集約を行いました。生産移管、在庫整理、人員配置の見直しに関わる費用を計上した一方、有形固定資産の帳簿価額を約15%削減し、棚卸資産は約20%圧縮するなど、バランスシートの軽量化を進展させました。
国内事業の最適化として、戦略市場での売上拡大を見据え、生産体制の大規模な再構築を実施しました。電子化学実装関連事業においては、狭山事業所に新たな製造棟を2025年10月に竣工させました。入間事業所からのはんだ粉生産工程移管をはじめとし、今後の追加投資を含めた総額80億円を投じて生産移管を一層推進して生産能力を増強するとともに、原価低減やリードタイム短縮を実現させる方針です。電子部品関連事業では、若柳工場における航空宇宙・防衛産業向けおよび車載事業向け製品の生産能力を高め、収益性の向上を図ります。さらに地政学リスクを考慮し、欧米への確実な供給強化に向け、坂戸事業所でモジュール製品の生産を開始しました。また、組織活性化を目的に転身支援制度特別措置を実施しており、2026年3月末に計画通り完了しています。
事業ポートフォリオの変革に向けては、経営資源を成長領域に集中的に投下するため、事業および製品の選択と集中を厳格に実行しています。その一環として、光波ネットワークソリューション事業の譲渡を2025年6月に完了しており、情報機器関連事業についても2026年10月1日付で譲渡を実施する予定です。この譲渡により生み出されたリソースは、注力するクリーンエネルギー関連市場(電力インフラ・ヘビーインダストリー・次世代通信・モビリティの4分野)への取り組みに再配置します。
これらの事業戦略を支える経営基盤の強化に向け、ガバナンス、財務、株主還元の各側面から取り組みを進めています。ガバナンスにおいては、取締役会の監督機能をさらに高めるべく、モニタリングボードへの移行を推進しています。執行へのさらなる権限移譲、独立性の高い取締役会による監督機能の強化、客観的な実効性評価を継続し、経営の透明性と意思決定のスピードアップを両立させてまいります。株主還元では、資本効率の向上を最重要課題として掲げ、当連結会計年度に総額10億円の自己株式取得を実施いたしました。今後もDOE(株主資本配当率)3%を目途とした安定的な還元を目指してまいります。財務面の健全化に向けては、政策保有株式の縮減や本社資産の有効活用など、資産ポートフォリオの最適化を進めています。
これら施策の完遂により、次年度は売上成長が利益に直接寄与する構造へと移行することで、利益改善を見込むとともに、持続的な企業価値の向上を実現してまいります。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
(電子部品関連事業)
電子部品関連事業は、米国データセンター向けを中心に、PDU(電源分配ユニット)・UPS(無停電電源装置)用途で大型トランス・リアクタの需要が引き続き拡大しました。電動工具向けチャージャ、エアコン用リアクタや車載用昇圧リアクタも安定的に推移し、売上高は815億4千9百万円、セグメント利益は33億4百万円と増収増益となりました。
当社は、欧州の再生可能エネルギー市場において、主要メーカーが求める厳格な品質基準をクリアし、大型トランス・リアクタの採用実績を築いています。欧州で確立した大型トランス・リアクタの設計技術をグローバル標準として展開することで、急成長する米国のデータセンター市場への迅速な参入と拡大を実現しました。生成AIの普及に伴いデータセンターの電力需要は増大し、電源電圧は従来の低圧から中圧(Medium Voltage:MV)への高圧化が進んでいます。この技術的変化を事業拡大の好機と捉え、当社はMV領域で優れた技術を有する欧州企業と業務提携することでMV領域の新製品を追加し、事業を拡大してまいります。メキシコ工場では、この新製品の生産に向け、生産能力の増強を進めています。車載事業においては、米国市場等でのハイブリッド車への回帰が追い風となっています。若柳工場を増強し、現在よりも付加価値を高めた新しい車載用昇圧リアクタを投入して日米・アジアへの供給を拡大することで、当事業の収益性を改善してまいります。
(電子化学実装関連事業)
電子化学実装関連事業は、売上高は399億2千万円、セグメント利益は33億3千4百万円と、増収増益となりました。ソルダーペーストは、車載用途の安定的な推移やデータセンター向けなど情報通信関連の需要増加により拡大したほか、素材価格の大幅な上昇に連動した価格設定から売上が増加しました。一方、急激な上昇局面では価格改定タイミングが追い付かず、特に当連結会計年度後半は収益性が低下しました。ソルダーレジストは、スマートフォン向けフレキシブル基板用ソルダーレジストの販売好調に加え、感光性カバーレイ(PICC)がAIサーバー等に採用されたことが寄与し、堅調に推移しました。実装装置は、国内外の顧客における設備投資の慎重姿勢が継続し、前年度並みの水準にとどまりました。
電子化学実装関連事業でも、AIデータセンター、AIサーバー、高機能モバイル関連等の高成長・高収益領域へ経営資源を集中的に配分することで伸長を見込んでいます。さらに機能を高めた感光性カバーレイ(PICC)をはじめ、大電流・高放熱に対応した接合材、低反射・高解像度の絶縁材の開発を進めています。実装装置では、次年度よりメンテナンス性を向上した新モデルを市場投入します。それら高付加価値製品により中長期的に売上および利益を拡大してまいります。
生産面では、狭山事業所に新設した製造棟を今後生産の中心拠点化し、生産効率の改善や原価低減につなげコスト競争力を強化してまいります。
(情報機器関連事業)
放送業界全般において厳しい設備投資環境が継続しており、売上高は21億3千6百万円、セグメント損失は5億6千6百万円となりました。
情報機器関連事業は、放送局・鉄道向けを中心とする音声調整卓・無線インターカムなどの製品を通じ、長年にわたり放送・音響領域で顧客からの高い評価と信頼を獲得してきました。しかし、第14次中期経営計画「One TAMURA for Next 100」において、次世代パワーエレクトロニクス関連の注力製品および電力インフラ、ヘビーインダストリー、次世代通信、モビリティ等のクリーンエネルギー関連の注力市場に対し、経営資源の集中を推進する中で、2026年10月1日付での事業譲渡を予定しています。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、設備投資およびその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としています。しかし、成長投資や一時的な運転資金の充足のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からも調達できるよう多様化を図っており、現時点においては銀行からの借入を実施しています。不測の事態に備え、機動的な短期運転資金としてコミットメントライン契約を維持しており、手許流動性を高められるよう対応しています。
第14次中期経営計画においては、中国拠点の再編や国内事業の最適化、資産圧縮から生み出されるキャッシュ、および銀行借入やファイナンス・リースの利用により、本中期経営計画全体で、総額300億円から350億円の資金を創出します。創出した資金は、急拡大する欧米市場のAIデータセンターおよび再生可能エネルギー分野、国内生産体制の再構築などへの150億円から200億円規模の戦略投資や、50億円規模の株主還元へ配分してまいります。
③ 重要な会計上の見積り方針及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
1) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ80億3千3百万円増加し、1,323億8千1百万円となりました。流動資産が64億3千万円増加し、固定資産が16億2百万円増加しています。固定資産では、電子化学実装事業の製造棟新設等により有形固定資産が増加した一方、持分法適用関連会社の持分譲渡により投資その他の資産が減少しています。流動資産では、売上債権の増加及び上記持分譲渡に係る債権が計上されたことにより流動資産その他が増加しています。
当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末に比べ91億6千9百万円増加し、694億8千4百万円となりました。これは主に、仕入債務および有利子負債の増加によります。
有利子負債合計(短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・短期リース債務・長期借入金および長期リース債務の合計額)は45億3千4百万円増加し、384億8千4百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ11億3千6百万円減少し、628億9千7百万円となりました。その他の包括利益の計上により24億9千5百万円増加した一方で、自己株式の取得及び親会社株主に帰属する当期純損失の計上により35億5千3百万円減少しました。この結果、自己資本比率は47.40%となりました。
(自己資本比率は、純資産より新株予約権・非支配株主持分を控除して計算した比率を用いています。)
2) 経営成績
当連結会計年度(2025年4月1日~2026年3月31日)における、当社グループの事業に関わるエレクトロニクス市場は、生成AIの急速な社会実装を背景に、AIサーバー・データセンター関連の需要が拡大基調で推移しました。自動車関連は、EV普及の地域間格差が残るものの、車両の電装化進展に伴う安定的な需要が継続しました。産業機器関連は期を通じて低位で推移しましたが、足元では需要に回復の兆しがうかがわれます。
このような事業環境のもと、当社は2025年4月に始動した中期経営計画「One TAMURA for Next 100」に基づき、今後の成長に向けた基盤の構築(「成長の基盤づくり」)と効率的に収益を最大化できる体質への変換(「体質改善」)を推進しています。中期経営計画最終年度(2028年3月期)におけるROE 8%等の目標達成を確実なものとするために、当期においては事業ポートフォリオの構造転換を加速させ、将来の収益圧迫要因となり得るリスクを能動的かつ集中的に顕在化し、措置を講じました。具体的には、連結子会社である株式会社光波のネットワークソリューション事業の譲渡、中国生産拠点削減をはじめとする国内外拠点配置の見直し、体質改善に向けた転身支援制度特別措置など、痛みを伴う施策を実施しました。また、2026年4月8日には、長年にわたり放送・音響領域で顧客からの高い評価と信頼を獲得してきた情報機器関連事業を第三者に譲渡することを決議し、中期計画で注力を掲げる次世代パワーエレクトロニクス関連製品、電力インフラ、ヘビーインダストリー、次世代通信、モビリティなどのクリーンエネルギー関連市場に向けて、経営資源を集中する方向性を具体化しました。
その結果、当連結会計年度の売上高は、1,235億5千9百万円(前期比8.3%増)と過去最高を更新し、営業利益は52億8千7百万円(同1.8%増)、営業利益率4.3%と増収増益となりました。一方で、親会社株主に帰属する当期純損益は、13億8千5百万円の損失(前期は親会社株主に帰属する当期純利益27億8千2百万円)となりました。これは、転身支援制度特別措置の実施、拠点の再編、情報機器関連事業の事業譲渡など体質改善に関する特別損失を計上したことによります。
セグメントの業績は、次のとおりです。
なお、売上高はセグメント間の内部売上高を含めており、セグメント利益は連結消去(主に全社未来開発費)により合計が全社の営業利益と一致しません。
(電子部品関連事業)
生成AI関連需要が一段と拡大し、米国のデータセンター用PDU(電源分配ユニット)・UPS(無停電電源装置)向けを中心とした大型トランス・リアクタの好調な需要が、業績をけん引しました。また、電動工具向けチャージャが安定的に推移し、エアコン用リアクタや車載用リアクタも一定の需要を維持しました。産業機械向けトランス・リアクタは、国内外製造業における設備投資への慎重姿勢が継続したことで、売上は横ばいとなりました。
その結果、売上高は815億4千9百万円(前期比6.2%増)、セグメント利益は33億4百万円(同1.0%増)と増収増益となりました。セグメント利益は、中国生産拠点の再編に向けた生産移管や人員の適正化に係る費用の計上により、売上高の伸びに比して小幅な増加にとどまりました。
(電子化学実装関連事業)
ソルダーペーストは、車載用途が安定的に推移したほか、データセンター向けなど情報通信関連の需要が増加しました。また、連動相場制による価格設定のもと、素材価格の大幅な上昇に連動して売上が増加しました。一方、急激な上昇局面では改定タイミングが追い付かず、特に期の後半において収益性が低下しました。ソルダーレジストは、スマートフォン向けフレキシブル基板用ソルダーレジストの販売が好調であったことに加え、感光性カバーレイ(PICC)がAIサーバー等に採用されたことが寄与し、堅調に推移しました。実装装置は、国内外の顧客における設備投資の慎重姿勢が継続し、前年度並みの水準にとどまりました。
その結果、売上高は399億2千万円(前期比15.5%増)、セグメント利益は33億3千4百万円(同8.8%増)と、増収増益となりました。
(情報機器関連事業)
放送業界全般において厳しい設備投資環境が継続しており、売上高は21億3千6百万円(前期比25.4%減)、セグメント損失は5億6千6百万円(前期は1億8千1百万円のセグメント損失)となりました。
なお、当該事業につきましては、2026年10月1日付での事業譲渡を予定しています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)につきましては、前連結会計年度末に比べ13億8千2百万円減少し、180億9千6百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費が43億9千5百万円、税金等調整前当期純利益が13億3千2百万円となったことなどにより、28億5千1百万円の資金収入となりました。また、前連結会計年度と比べ、営業活動によるキャッシュ・フローは、資金収入が62億3千1百万円減少しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、電子化学実装事業の製造棟新設を中心とした有形固定資産の取得による支出が54億7千1百万円となったことなどにより、48億3百万円の資金支出となりました。また、前連結会計年度と比べ、投資活動によるキャッシュ・フローは、資金支出が9億2百万円増加しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の増加などにより、3億1千6百万円の資金収入となりました。また、前連結会計年度と比べ、財務活動によるキャッシュ・フローは、資金支出が39億5千6百万円減少しました。
③ 生産、受注及び販売の実績
1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
| 電子部品関連事業 | 80,395 | 104.3 |
| 電子化学実装関連事業 | 41,045 | 118.9 |
| 情報機器関連事業 | 2,311 | 79.9 |
| 報告セグメント計 | 123,752 | 108.1 |
| 合計 | 123,752 | 108.1 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
2) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
| 電子部品関連事業 | 77,153 | 96.6 | 45,830 | 91.3 |
| 電子化学実装関連事業 | 41,987 | 117.0 | 13,011 | 119.4 |
| 情報機器関連事業 | 1,797 | 78.8 | 1,041 | 75.5 |
| 報告セグメント計 | 120,937 | 102.4 | 59,883 | 95.8 |
| 合計 | 120,937 | 102.4 | 59,883 | 95.8 |
(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。
3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
| 電子部品関連事業 | 81,547 | 106.2 |
| 電子化学実装関連事業 | 39,876 | 115.8 |
| 情報機器関連事業 | 2,135 | 74.8 |
| 報告セグメント計 | 123,559 | 108.3 |
| 合計 | 123,559 | 108.3 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合については、100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、売上高は1,235億5千9百万円と過去最高を更新し、営業利益も52億8千7百万円と過去最高(2018年3月期)に迫る結果となりました。しかしながら、親会社株主に帰属する当期純損益は13億8千5百万円の損失を計上しました。これは、次年度以降の資本効率向上を最優先し、将来の懸念材料に対し措置を講じるべく事業再編等の構造改革にかかる特別損失等を計上した結果です。
当社は、第14次中期経営計画「One TAMURA for Next 100」において、PBR1倍以上の定着および最終年度である2028年3月期の営業利益率7%以上、ROE8%以上という財務目標を掲げました。達成に向け筋肉質な企業体質への転換を進めており、中長期的な成長を持続し拡張していくため、中国拠点の再編と集約、国内事業の最適化、事業ポートフォリオの変革といった施策を推進しています。当連結会計年度は、これら体質改善策を前倒しで断行したことで一時的な利益減少およびROEの低下という調整局面となりましたが、完遂後は一過性費用の剥落と構造改革効果の発現により、利益項目での改善を見込んでいます。
中国拠点の再編と集約では、地政学リスクの低減と収益性の抜本的な向上を目的に、中国の拠点を最大で3割削減するという方針を掲げ、合肥や佛山の拠点の譲渡や一部電源製品の生産集約を行いました。生産移管、在庫整理、人員配置の見直しに関わる費用を計上した一方、有形固定資産の帳簿価額を約15%削減し、棚卸資産は約20%圧縮するなど、バランスシートの軽量化を進展させました。
国内事業の最適化として、戦略市場での売上拡大を見据え、生産体制の大規模な再構築を実施しました。電子化学実装関連事業においては、狭山事業所に新たな製造棟を2025年10月に竣工させました。入間事業所からのはんだ粉生産工程移管をはじめとし、今後の追加投資を含めた総額80億円を投じて生産移管を一層推進して生産能力を増強するとともに、原価低減やリードタイム短縮を実現させる方針です。電子部品関連事業では、若柳工場における航空宇宙・防衛産業向けおよび車載事業向け製品の生産能力を高め、収益性の向上を図ります。さらに地政学リスクを考慮し、欧米への確実な供給強化に向け、坂戸事業所でモジュール製品の生産を開始しました。また、組織活性化を目的に転身支援制度特別措置を実施しており、2026年3月末に計画通り完了しています。
事業ポートフォリオの変革に向けては、経営資源を成長領域に集中的に投下するため、事業および製品の選択と集中を厳格に実行しています。その一環として、光波ネットワークソリューション事業の譲渡を2025年6月に完了しており、情報機器関連事業についても2026年10月1日付で譲渡を実施する予定です。この譲渡により生み出されたリソースは、注力するクリーンエネルギー関連市場(電力インフラ・ヘビーインダストリー・次世代通信・モビリティの4分野)への取り組みに再配置します。
これらの事業戦略を支える経営基盤の強化に向け、ガバナンス、財務、株主還元の各側面から取り組みを進めています。ガバナンスにおいては、取締役会の監督機能をさらに高めるべく、モニタリングボードへの移行を推進しています。執行へのさらなる権限移譲、独立性の高い取締役会による監督機能の強化、客観的な実効性評価を継続し、経営の透明性と意思決定のスピードアップを両立させてまいります。株主還元では、資本効率の向上を最重要課題として掲げ、当連結会計年度に総額10億円の自己株式取得を実施いたしました。今後もDOE(株主資本配当率)3%を目途とした安定的な還元を目指してまいります。財務面の健全化に向けては、政策保有株式の縮減や本社資産の有効活用など、資産ポートフォリオの最適化を進めています。
これら施策の完遂により、次年度は売上成長が利益に直接寄与する構造へと移行することで、利益改善を見込むとともに、持続的な企業価値の向上を実現してまいります。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
(電子部品関連事業)
電子部品関連事業は、米国データセンター向けを中心に、PDU(電源分配ユニット)・UPS(無停電電源装置)用途で大型トランス・リアクタの需要が引き続き拡大しました。電動工具向けチャージャ、エアコン用リアクタや車載用昇圧リアクタも安定的に推移し、売上高は815億4千9百万円、セグメント利益は33億4百万円と増収増益となりました。
当社は、欧州の再生可能エネルギー市場において、主要メーカーが求める厳格な品質基準をクリアし、大型トランス・リアクタの採用実績を築いています。欧州で確立した大型トランス・リアクタの設計技術をグローバル標準として展開することで、急成長する米国のデータセンター市場への迅速な参入と拡大を実現しました。生成AIの普及に伴いデータセンターの電力需要は増大し、電源電圧は従来の低圧から中圧(Medium Voltage:MV)への高圧化が進んでいます。この技術的変化を事業拡大の好機と捉え、当社はMV領域で優れた技術を有する欧州企業と業務提携することでMV領域の新製品を追加し、事業を拡大してまいります。メキシコ工場では、この新製品の生産に向け、生産能力の増強を進めています。車載事業においては、米国市場等でのハイブリッド車への回帰が追い風となっています。若柳工場を増強し、現在よりも付加価値を高めた新しい車載用昇圧リアクタを投入して日米・アジアへの供給を拡大することで、当事業の収益性を改善してまいります。
(電子化学実装関連事業)
電子化学実装関連事業は、売上高は399億2千万円、セグメント利益は33億3千4百万円と、増収増益となりました。ソルダーペーストは、車載用途の安定的な推移やデータセンター向けなど情報通信関連の需要増加により拡大したほか、素材価格の大幅な上昇に連動した価格設定から売上が増加しました。一方、急激な上昇局面では価格改定タイミングが追い付かず、特に当連結会計年度後半は収益性が低下しました。ソルダーレジストは、スマートフォン向けフレキシブル基板用ソルダーレジストの販売好調に加え、感光性カバーレイ(PICC)がAIサーバー等に採用されたことが寄与し、堅調に推移しました。実装装置は、国内外の顧客における設備投資の慎重姿勢が継続し、前年度並みの水準にとどまりました。
電子化学実装関連事業でも、AIデータセンター、AIサーバー、高機能モバイル関連等の高成長・高収益領域へ経営資源を集中的に配分することで伸長を見込んでいます。さらに機能を高めた感光性カバーレイ(PICC)をはじめ、大電流・高放熱に対応した接合材、低反射・高解像度の絶縁材の開発を進めています。実装装置では、次年度よりメンテナンス性を向上した新モデルを市場投入します。それら高付加価値製品により中長期的に売上および利益を拡大してまいります。
生産面では、狭山事業所に新設した製造棟を今後生産の中心拠点化し、生産効率の改善や原価低減につなげコスト競争力を強化してまいります。
(情報機器関連事業)
放送業界全般において厳しい設備投資環境が継続しており、売上高は21億3千6百万円、セグメント損失は5億6千6百万円となりました。
情報機器関連事業は、放送局・鉄道向けを中心とする音声調整卓・無線インターカムなどの製品を通じ、長年にわたり放送・音響領域で顧客からの高い評価と信頼を獲得してきました。しかし、第14次中期経営計画「One TAMURA for Next 100」において、次世代パワーエレクトロニクス関連の注力製品および電力インフラ、ヘビーインダストリー、次世代通信、モビリティ等のクリーンエネルギー関連の注力市場に対し、経営資源の集中を推進する中で、2026年10月1日付での事業譲渡を予定しています。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、設備投資およびその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としています。しかし、成長投資や一時的な運転資金の充足のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からも調達できるよう多様化を図っており、現時点においては銀行からの借入を実施しています。不測の事態に備え、機動的な短期運転資金としてコミットメントライン契約を維持しており、手許流動性を高められるよう対応しています。
第14次中期経営計画においては、中国拠点の再編や国内事業の最適化、資産圧縮から生み出されるキャッシュ、および銀行借入やファイナンス・リースの利用により、本中期経営計画全体で、総額300億円から350億円の資金を創出します。創出した資金は、急拡大する欧米市場のAIデータセンターおよび再生可能エネルギー分野、国内生産体制の再構築などへの150億円から200億円規模の戦略投資や、50億円規模の株主還元へ配分してまいります。
③ 重要な会計上の見積り方針及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。