有価証券報告書-第84期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/23 16:30
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループ(当社及び連結子会社)の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。この会計上の見積りは、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき行っています。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
①たな卸資産及び有価証券の評価
たな卸資産及び時価のない有価証券は主に原価法を、時価のある有価証券は時価法を採用しています。
有価証券は、その価値の下落が原則30%以上の場合は、評価損を計上しています。
たな卸資産では顧客の将来需要の減少等に伴う陳腐化、有価証券では将来の景気変動等によって投資先が業績不振になった場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
②繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。繰延税金資産の回収可能性を判断するに当たっては、将来の課税所得等を考慮しています。
すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用として計上することになります。逆に回収可能性がないとして未計上であった繰延税金資産が回収可能になったと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を計上し、税金費用を減少させることになります。
③退職給付に係る負債
従業員の退職給付に備えるため、当社グループは連結会計年度末における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計上を行っています。退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率等に基づいて算出されています。この前提条件には割引率、退職率、死亡率、脱退率、昇給率が含まれています。
この前提条件の変更等があった場合には、将来期間における退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼすことがあります。
④固定資産の減損
当社グループの保有する固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損処理の要否を検討しています。
事業用資産は、事業環境の悪化等により、これらの製品を製造する資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失としています。
遊休資産、賃貸資産及び処分予定資産は、時価の下落など資産価値が下落しているものや今後の使用見込みがないものについて、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失としています。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
①概況
当連結会計年度における世界経済は、米国では雇用環境の改善や個人消費の拡大を背景に、景気回復が持続しました。欧州では、英国Brexitによる不透明感が漂ったものの、ユーロ圏全体では概ね堅調に推移しました。また、中国では経済成長が緩やかなものとなる一方、新興各国では減速傾向ながら一部で底打ち感も見られるなど、まだら模様となりました。日本経済は、春先から円高傾向による企業業績への影響や個人消費の伸び悩みなど、2015年より一転して潮目が変わりましたが、堅調な雇用や年末以降の円安傾向を背景に、緩やかに持ち直しました。
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高7,532億円(前期比2.7%減)、営業利益443億円(前期比15.2%減)、経常利益427億円(前期比14.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益349億円(前期比10.5%減)となりました。
なお、当連結会計年度の米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ、108.38円及び118.79円と、前期に比べ米ドルは11.76円の円高、ユーロは13.79円の円高で推移しました。
②売上高
売上高は、7,532億円を計上し、207億円の減収(前期比2.7%減)となりました。
セグメント別では、電子部品事業の売上高は4,376億円となり、前連結会計年度に比べ36億円の増収(前期比0.8%増)となりました。車載情報機器事業の売上高は2,423億円となり、前連結会計年度に比べ252億円の減収(前期比9.4%減)となりました。また、物流事業の売上高は611億円となり、前連結会計年度に比べ8億円の増収(前期比1.5%増)となりました。
前連結会計年度に比べ、米ドル及びユーロ共に円高が進行したことにより597億円の減収要因となりました。
③営業利益
営業利益は、443億円を計上し、79億円の減益(前期比15.2%減)となりました。また、為替の変動については、137億円の減益要因となりました。
④経常利益
経常利益は、427億円を計上し、73億円の減益(前期比14.6%減)となりました。主な要因は、為替影響等によるものです。
⑤税金等調整前当期純利益
税金等調整前当期純利益は、495億円を計上し、183億円の減益(前期比27.0%減)となりました。主な要因は、関係会社株式売却益の減少によるものです。
⑥法人税等
法人税等は、前連結会計年度の211億円に対して、当連結会計年度は83億円となりました。主な要因は、課税所得減による法人税等の減少と、繰延税金資産の積増しによる法人税等調整額の減少によるものです。
⑦非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は、主としてアルパイン(株)と(株)アルプス物流の非支配株主に帰属する損益からなり、前連結会計年度の76億円の非支配株主に帰属する当期純利益に対して、当連結会計年度は61億円の非支配株主に帰属する当期純利益となりました。
⑧親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、349億円を計上し、41億円の減益(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は390億円)となりました。1株当たり当期純利益は、178.25円(前期における1株当たり当期純利益は206.64円)となりました。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、416億円(前期は539億円の増加)となりました。この増加は、主に税金等調整前当期純利益495億円、減価償却費330億円及び仕入債務の増加額95億円による資金の増加と、売上債権の増加額279億円、法人税等の支払額142億円、関係会社株式売却益76億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、379億円(前期は303億円の減少)となりまし
た。この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出474億円による資金の減少と、関係会社株式の売
却による収入93億円による資金の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の減少は、3億円(前期は363億円の減少)となりまし
た。この減少は、主に長期借入金の返済による支出127億円、配当金の支払額58億円による資金の減少と、短
期借入金の純増減額144億円、長期借入れによる収入83億円による資金の増加によるものです。
これらの活動の結果及び為替相場の変動が海外子会社の現金及び現金同等物の円換算額に与えた影響などに
より、現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ11億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,179億
円となりました。
②資産、負債及び資本の状況
当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度末と比べ401億円増加の6,029億円、自己資本は、利益剰
余金の増加等により、260億円増加の2,545億円となり、自己資本比率は42.2%となりました。
流動資産は、受取手形及び売掛金、たな卸資産、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末と比べ253
億円増加の3,797億円となりました。
固定資産は、機械装置及び運搬具、工具器具備品及び金型、無形固定資産及び繰延税金資産の増加等によ
り、前連結会計年度末と比べ147億円増加の2,232億円となりました。
流動負債は、支払手形及び買掛金、短期借入金、未払法人税等、未払費用及び賞与引当金の増加と、製品保
証引当金の減少等により、前連結会計年度末と比べ92億円増加の1,880億円となりました。
固定負債は、長期借入金の増加と、退職給付に係る負債及び繰延税金負債の減少等により、前連結会計年度
末と比べ14億円増加の537億円となりました。
③財務政策と資金需要
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フローにて調達しています。当連結会計年度末の借入金残高は632億円(前期比89億円増)となり、運転資金安定のための短期借入金が374億円(前期比25億円増)、将来の事業基盤確立に向けた研究開発や設備投資資金の確保などのための長期借入金が258億円(前期比64億円増)となりました。
(4)今後の見通しについて
米国政府による各種政策の影響、英国BrexitやEU主要国の総選挙等の動向、成長カーブが鈍化した中国経済、不安定なアジア情勢、更に為替の変動による景気下振れリスクが懸念される日本経済など、世界景気はまさに不確実性が高まっており、決して予断を許さない状況です。
このような環境のもと、当社グループでは、更なる成長に向けて、電子部品事業、車載情報機器事業、物流事業ともに緊張感を持って、着実な事業活動を進めます。
①電子部品事業
電子部品事業では、「持続的成長が可能な会社」を目指し、車載市場売上3,000億円、スマートフォンを含むモバイル市場売上2,000億円などを達成目標とした第8次中期経営計画の2年目を迎えます。車載市場では、モジュール製品での一層の収益改善を進めるとともに、センサなど各種デバイス製品の拡大を図ります。モバイル市場では、スマートフォンの高機能化による部品需要の拡大に対し、高品質な製品の確実な供給に努めるとともに、VRなど新たな市場向けも含めた新製品の開発に注力し、車載市場とモバイル市場での「収益の両輪化」を目指します。EHII市場向け事業は、固有技術を融合した特徴あるものづくりと他社との協業によりビジネススピードを加速させます。更に、インテリジェントカーやVR市場、IoTの拡大など、将来の電子部品の高度化や需要拡大に備えて、国内外での生産基盤の拡充も進めていきます。
②車載情報機器事業
車載情報機器事業では、2020年度に向けて策定した企業ビジョン「VISION2020」達成に向け、国内における技術開発子会社の吸収合併や製造子会社の統合などグループ再編による構造改革を実施し、より強固な事業基盤の構築を進めます。音響機器ビジネスでは、自動車メーカー向け純正品として高評価を得ているサウンドシステムの拡販に努めるとともに、燃費や環境に配慮した軽量・薄型スピーカーや、設置場所の自由度を向上させた軽量・小型の新製品レイアウトフリースピーカーの付加価値を訴求し、受注拡大を図ります。また、情報・通信機器ビジネスでは、新たな需要開拓を目指し欧米市販市場に投入した車種専用大画面ナビゲーションの拡販に注力し、好調な自動車販売が続く米国で引続きピックアップトラックやSUVにターゲットを絞ります。国内市販市場では、業界最大サイズの大画面ナビゲーションやリアモニターを搭載した、専用の車室内及び外観パーツをデザインしたカスタマイズカーによる売上拡大を目指します。
③物流事業
物流事業では、主要顧客である電子部品業界において、自動車の電子化の進展や新興国における携帯機器などの需要拡大により今後も成長が予想されます。一方、製品や市場の変化に対応した適地生産や海外シフト、電子部品の価格競争に伴う合理化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズはますます高度化かつ多様化しています。当事業では引き続き、主力の電子部品物流事業を中心に、成長・拡充エリアへの拠点・ネットワーク拡大と新市場の開拓を進めるなど、次の飛躍に向けた事業基盤の強化に取り組み、グローバルに業容の拡大を図っていきます。