有価証券報告書-第88期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 15:00
【資料】
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【項目】
149項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、電子部品事業、車載情報機器事業、物流事業を柱とし、各事業が密なる連携によるシナジーを発揮し、グローバルな事業展開を行っています。
目指す姿を「革新的T型企業“ITC101”」としています。コアデバイスを深耕して製品力を高める「縦のI型」と、広範なデバイスや技術をシステムに仕上げる「横のI型」を合わせた革新的な「T型」企業へと進化し、新たな価値を提供すべく取り組みを進めています。経営目標として、売上高1兆円、営業利益率10%を掲げ、この達成時期については、当初、第2次中期経営計画期間の2024年度としていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、1年後ろ倒しの2025年度としています。電子部品事業では「部品サプライヤーから機能デバイスパートナーへの進化」を、車載情報機器事業では「内製コアデバイスを持つモビリティライフクリエーターへの進化」を進めていきます。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界経済、社会生活への影響も不確実さを増しています。このような状況下において、当社グループは各国政府の指導に沿って事業活動地域での感染拡大防止に努めるとともに、従業員の安全を確保し各事業への影響を軽減すべく取り組んでいきます。
電子部品事業は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」という企業理念のもと、人とメディアの快適なコミュニケーションの実現を目指しています。その「ものづくり」の姿勢は、「美しい電子部品を究めます」との言葉に凝縮され、「Right(最適な)」「Unique(独自性)」「Green(環境にやさしい)」を兼ね備えたもの、すなわち洗練された外観のみならず、求められる機能を高い品質で実現し、かつ省エネルギーや省資源等環境への影響も十分に配慮した製品です。その実現には、微細加工技術や金型加工技術、ソフトウェア・IC設計技術、材料加工技術等、多彩な固有技術をベースとした先端のものづくりを常に追究しています。HMI(Human Machine Interface)、センサ、コネクティビティのコア技術、多彩な固有技術をベースとした先端のものづくりを追究し、スイッチやセンサ等のコンポーネント製品、モジュール製品をはじめ、新しい製品開発、事業分野にも挑戦しています。
車載情報機器事業では、電子部品事業の車載デバイス・モジュール製品と車載情報機器事業の強みであるシステム設計力、ソフトウェア開発力を活かした自動車メーカー向け製品等との融合により、これまで両事業が培ってきた技術と、それぞれの得意分野を組み合わせた相乗効果により、今後、人とクルマにかかわる安心・快適・感動を提案するサービス、上質な移動空間の実現に向けた独創的かつ革新的な製品開発に取り組んでいきます。
物流事業では、(株)アルプス物流が電子部品を主な取扱い貨物とし、「ものづくりを支える最適物流を追求し、豊かな社会の実現に貢献します」との企業理念を掲げ、事業領域を「電子部品を核とした総合物流サービス」と定めています。
グループ各社は企業理念のもと連携して、中期・短期の経営計画を推進し、業容の拡大と企業価値の最大化を図っていきます。
(2) 中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
当社は現在、2019年4月から2022年3月末まで、3年にわたる第1次中期経営計画に取り組んでいます。
電子部品事業では、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)に向けて、車載情報機器事業との統合シナジーにより生まれた「デジタルキャビン」製品群の開発活動に力を入れるとともに、スマートフォンの高機能化に対応した高付加価値領域の新製品開発を進めます。これらコア技術を組み合わせた独自の製品開発とともに、他社との協業による開発スピードの加速、更に「モノ」から「コト」へとニーズが変化する中で、新たなソリューションビジネスの確立も目指していきます。
車載情報機器事業では、ディスプレイやサウンド、更に各種デバイスなどを組み合わせるシステム設計力、ソフトウェア開発力を生かし、「デジタルキャビン」製品群の開発やソリューションビジネスなどへと展開していきます。
物流事業では、主要顧客である電子部品業界や新型コロナウイルスの影響により拡大した消費物流の新規拡販を継続して行い、海外における拠点・ネットワークの拡充を推進することにより、グローバルに業容の拡大を図っていきます。
(3) 会社の経営環境と対処すべき課題
当社グループを取り巻く環境は、近年、不確実性が更に強まる中で先行きを見通すことが大変困難ですが、エレクトロニクス製品・自動車の需要は、先進国における高機能・多機能化ニーズに加えて、新興国における需要の増加が牽引役となり、今後も拡大していくものと期待されます。
電子部品事業では、よりエレクトロニクスの重要性が高まる自動車市場、成長は鈍化したものの高機能部品の需要は高いスマートフォン市場、更にIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)の活用による新たなビジネスも生まれているEHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)市場と、今後も拡大が見込まれます。
車載情報機器事業では、100年に1度とも言われる自動車産業の大変革期を迎え、特にCASE領域においては、自動運転やEV化など日進月歩の進化が続いています。また、IT企業の進出など、業界の枠を越えた合従連衡の動きも格段に加速するなど、今後もCASE領域への経営資源の集中は自動車業界全体のトレンドであり、HMI等のサプライヤー各社には、モジュール製品の開発だけではなく、車全体のトータル・システムソリューションの提案が期待されています。
これらの事業環境において、当社は、HMI、センサ、コネクティビティのコア技術をベースに優位性の高い製品を継続して生み出すと同時に、電子部品事業と車載情報機器事業の強みを融合させた新製品の開発など、経営統合によるシナジーを創出することで、お客さまの期待に応えていきます。また、よりスピーディーな事業立ち上げと成果に結びつけるべく、他社との協業や提携なども積極的に進めます。更に、生産・販売・技術だけでなく、間接部門も含めた生産性並びに品質の向上により、収益性の強化にも繋げていきます。
物流事業では、主要顧客である電子部品業界において、さまざまな機器や自動車の電子化の進展、そして新興国需要の拡大によって、今後も成長が予想されています。一方で、商品やマーケットの変化に対応した最適地生産や生販合理化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しています。このような中、顧客ごとの「最適物流」を追求し、より多くの顧客に提供していくことで、更なるグローバル成長を図ります。
また、その他の事業についても、グループ外部に対する拡販活動の強化などにより、収益への貢献を果たしていきます。