有価証券報告書-第84期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/23 16:30
【資料】
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【項目】
132項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、電子部品事業、車載情報機器事業、物流事業を柱とし、電子部品事業は当社、車載情報機器事業はアルパイン(株)、物流事業は(株)アルプス物流を基幹として構成しており、各事業が密なる連携によるシナジーを発揮し、グローバルな事業展開を行っています。
電子部品事業の当社は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」という企業理念のもと、人とメディアの快適なコミュニケーションの実現を目指しています。その「ものづくり」の姿勢は、「美しい電子部品を究めます」との言葉に凝縮され、「Right(最適な)」「Unique(独自性)」「Green(環境にやさしい)」を兼ね備えたもの、すなわち洗練された外観のみならず、求められる機能を高い品質で実現し、かつ省エネルギーや省資源など環境への影響も十分に配慮した製品です。その実現には、微細加工技術や金型加工技術、ソフトウェア・IC設計技術、材料加工技術等、多彩な固有技術をベースとした先端のものづくりを常に追究しています。スイッチ、センサなどコンポーネント製品、モジュール製品をはじめ、グリーンデバイスなど新しい製品開発、事業分野にも挑戦しています。
車載情報機器事業では、アルパイン(株)がグループ連携により企業価値を最大限にすべく取り組みます。また、企業理念として「個性の尊重」、「価値の創造」、「社会への貢献」、そして2020年に向けた企業ビジョン「VISION2020」にて、「アルパインは、あなたのカーライフを豊かにするモービルメディア・イノベーションカンパニーを目指します」をビジョンステートメントとして掲げ、ものづくりメーカーとしてより創造的、革新的な価値創出に挑戦し、企業価値を高めていきます。
物流事業では、(株)アルプス物流が、電子部品を主な取扱い貨物とし、それぞれのお客様の「物流個性」に合わせた最適物流を追求し、高品質・高効率、かつ安全で環境に配慮したサービスにより、ものづくりを支えます。
当社グループでは、その他の子会社群も含めた事業間の有機的な連携による経営を推し進め、グループ全体の業容の拡大と企業価値の最大化を図るとともに、豊かな電子社会の実現に向けて、「ものづくり」で社会に貢献していきます。
(2) 中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
電子部品事業においては、2016年4月から2019年3月末まで3年にわたる第8次中期経営計画が進行中です。ここでは、目指す姿を「持続的成長が可能な会社になる」とし、約70年を超える歴史の中で培った固有技術をもとにした、HMI、センサ、コネクティビティの三つの技術領域を更に深耕するとともに、これらを融合することで、独自性の高い、競争力を持った新製品をいち早く生み出すことを事業方針としています。
注力市場は車載、モバイル、EHIIとし、車載市場ではコクピット周辺の各種操作入力用モジュールやコネクテッドカーに向けた各種通信モジュール、更に低燃費、安全性向上につながる各種センサなどコンポーネント部品を手がけます。モバイル市場では、各種スイッチなどの操作入力用部品をはじめ、主力のカメラ用アクチュエータを展開していきます。また、EHII市場ではセンサと通信モジュールを融合したIoTスマートモジュールや独自素材を用いた電源用部品、各種センサなどを投入しています。更に、フォースフィードバック技術によるハプティック®は、車載、ゲームをはじめ、今後さまざまな分野での応用を視野に入れ開発を続けています。
第8次中期経営計画期間中での売上目標を、車載市場では3,000億円、モバイル市場では2,000億円としました。また、EHII市場では、次期の第9次中期経営計画で売上600億円が達成できるよう土台作りを進めます。収益の確保については、これまで主であったスマートフォン向け製品に加え、車載市場向け製品の収益改善を進めることにより、スマートフォンなどモバイルと車載による「収益の両輪化」を目指し、更なる拡大を図ります。更に、今後スマートフォン市場の成長鈍化が見込まれる中では、これに代わる次の柱にEnergy、Healthcare、Industry、IoTといった新しい分野での事業開発を進めます。これらにより、第8次中期経営計画の事業目標である売上5,000億円、営業利益率10%の達成を目指します。
車載情報機器事業においては、2017年からの3年間を「VISION2020」達成に向けた企業変革実行の時期と位置づけており、中期経営目標達成及び2020年以降の成長に向けた基盤構築を加速するため、次の戦略をもとに諸施策を確実に推進し、企業体質の強化、収益力の向上及び独自性ある価値の創造を図り、企業価値の拡大を目指します。
①売上・利益の柱である情報・通信機器ビジネスには継続して研究開発投資を実施しつつ、更に進化したスマートフォン融合型商品や、新しいHMI(Human Machine Interface)といった新分野への比率を高め、新たな事業基盤の確立を図ります。②全社あげて製品構造改革、設計プロセスの改革及び「桁違いの搬入・市場品質」活動に取り組むとともに、生産マネジメント改革にむけた設備投資を積極的に行うことで品質の向上と価格競争力の強化を図ります。③グローバル(日本、米州、欧州、中国・アジア)で開発・調達・生産・販売の各機能を最適化し、顧客満足度の向上と収益・コストの構造改革に取り組むとともに、スクラップ&ビルドによる成長領域へのリソースシフトを進め、強い企業体質を作ります。④ますます複雑化する企業活動に関するリスクへの対応として、引き続きCSR委員会を中心として、内部統制の強化及びリスクマネジメント、コンプライアンス対応の強化を図ります。目標とする経営指標として、国内・海外関連会社を含む連結経営を重視し、連結売上高営業利益率5%超を目指しています。開発・生産・営業の各機能が一体となり、持続的成長及び収益力の向上に取り組んでいきます。
物流事業においては、2016年度より3ヶ年の第3次中期経営計画をスタートし、「お客様ごとの『最適物流』を追求し、グローバル成長を加速する」ことを掲げ、「連結売上高1,000億円の達成」と「次の飛躍に向けた事業基盤の強化」に取り組んでいます。重点戦略・施策として、①Next GTB(Get the Business/新領域への挑戦):成長・拡充エリアへのネットワーク構築、新ニーズの把握と新市場顧客の開拓、②Next GTP(Get the Profit/現場革・進と基盤強化):一人・時間当たりの生産性・付加価値の向上、③Next GTC(Get the Confidence/競争優位性の拡大):「感動品質」「環境物流」「最適物流」の追求、「感じのいい会社」の追求と「働き方改革」の推進に取り組んでいきます。目標とする経営指標として、中期・短期の経営計画で、事業別・地域別の売上高や営業利益など損益目標を定め、PDCAのサイクルにより計画達成を図っています。また、グローバル成長の度合いを測る指標として「外販比率(親会社であるアルプスグループ以外の売上構成比率)」、「海外売上比率」の目標値を設定し、達成に向けて戦略・施策を推進しています。
(3) 会社の経営環境と対処すべき課題
当社グループを取り巻く環境は、不確実性が強まる中で先行きを見通すことが大変困難ですが、エレクトロニクス製品・自動車の需要は、先進国における高機能・多機能化に加えて、中長期的には新興国における需要の増加が牽引役となり、今後も拡大していくものと期待されます。
電子部品事業では、よりエレクトロニクスの重要性が高まる自動車市場、依然として旺盛な需要が続くスマートフォン市場、また新たにVR市場が立ち上がりを見せるなど、今後も拡大が見込まれます。当社では、三つの技術領域から優位性の高い製品を継続して生み出し、これらニーズに応えていきます。開発スピードアップ、生産性並びに品質の向上に向けて技術・営業・製造部門が一体となった取り組みを更に強化し、First1、Number1製品を創出していきます。また、お客様がグローバル各地域に広がり、製品によって短期間での激しい需要増減もある中で、より強固でフレキシブルな生産体制の整備・確立が急務であり、国内外生産拠点の整備を進めるとともに、間接部門を含めた生産性向上により、収益性の強化にもつなげていきます。更に、EHII市場では幅広く、さまざまなビジネス形態がある中で、独自の製品開発と他社との協業や提携などによって事業基盤の確立に取り組みます。
車載情報機器事業では、核となるインフォテインメントシステムが、カメラ、センサなどを活用した安全機能との連携やメータークラスタパネルとの融合など、車室内における重要性がますます高まっています。コネクテッドカーの開発に伴う情報配信システムや地図データの高度化など、ハードウェアと制御ソフトウェアを組み合わせたシステムが重視される中、ソフト開発力の強化を重要課題と認識し、他社との業務提携や資本参加などにより先端技術開発を深耕するとともに、研究開発投資の効率化を図ります。また、先進のコンシューマーエレクトロニクス技術やADAS(先進運転支援システム)のコアとなるデバイスとインフォテインメントシステムとの融合に注力し、自動車メーカー向けにデジタルコクピットをはじめとする車載情報システムのトータルソリューションを提供していきます。
物流事業では、主要顧客である電子部品業界は、さまざまな機器や自動車の電子化の進展、そして新興国需要の拡大によって、今後も成長が予想されています。一方で、商品やマーケットの変化に対応した最適地生産・海外シフトや、電子機器・部品の価格競争に伴う合理化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しています。また、物流面では、機器の統合や小型化によって数量の増加に対し容積ベースの物量は増えにくい状況になっており、物流各社のサービスの同質化が進む中で、物流企業間の競争はますます厳しさを増しています。このような事業環境のもと、物流事業では、主力の電子部品物流事業を中心にエリアの拡大と新市場への取り組みを進め、グローバルに業容の拡大を図っていきます。
また、その他の子会社群についても、グループ外部に対する拡販活動の強化などにより、収益への貢献を果たしていきます。