有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/11 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
140項目

事業内容

当社グループは、当社、子会社29社及び関連会社1社で構成されており、電子楽器の開発、製造、販売を主たる事業とする、グローバルに幅広い製品群を提供する電子楽器専業メーカーです。
1972年の設立以来、エレクトロニクスの技術進歩にあわせ絶え間なく研究開発を行い、世界に先駆けた多くの技術や製品を生み出し、楽器市場へ新たな価値を提案することで、電子楽器の分野で世界的なブランドを確立してきました。現在では、電子ピアノ、電子ドラム、シンセサイザー、ギター関連機器等、様々な製品ラインを総合的にバランスよく展開しており、また「音」と「映像」の融合にもいち早く取り組み、映像関連機器の開発から販売までを事業として確立しています。海外展開については、創業当初の1970年代後半から販売会社の設立を積極的に行い、世界中のあらゆる地域において製品展開しており、当社グループの収益の85%は(2019年12月期現在、小数点第一位を四捨五入)日本国外から得ています。
特に、近年では、成長著しい新興国市場に対して、現地の音楽文化や需要に即した製品投入を行っていくことで、販売拡大に注力しています。製造については、海外生産を基本として、製品特性に応じて自社工場と外部委託から最適な拠点を選択することで、柔軟な体制を築いています。
当社グループは、「電子楽器事業」の単一セグメントで活動しており、その内容と主な関係会社は次の通りです。
・主要な製品カテゴリー
カテゴリー特徴
電子ピアノ世界初の、「鍵盤タッチの強弱」を表現できる電子ピアノを生み出したメーカーとして、木と樹脂のメリットを活かした独自のハイブリッド鍵盤や「スーパーナチュラル・ピアノ・モデリング音源」と呼ばれる当社独自のサウンド技術など、ピアノの命である「タッチ」と「音」にこだわった製品を販売しています。外観デザインにおいても本格的なグランドピアノタイプから家具調デザイン、コンパクトなスタイリッシュデザインまで様々なデザインを提案しているほか、Bluetoothによるスマートフォンやタブレットとの連携機能の搭載など、電子ピアノならではの、楽しみながら上達する機能も提案しています。
電子ドラムプロのライブステージでも使用可能な、アコースティックドラムのような外観の高性能モデルから、コンパクトで自宅練習にも最適なエントリーモデルまで、「V-Drums」シリーズとして充実のラインナップを揃えています。メッシュヘッド、サウンドクオリティ、センシング技術、発音スピードなど、総合的な技術力により、「V-Drums」は、電子ドラムの代名詞として、市場での高いシェアを維持し続けています。
シンセサイザー初心者でも扱いやすく、軽量で持ち運びが容易なエントリーモデルから、プロの音楽制作やライブにも対応可能なモデルまで、様々なユーザー層に対応した製品をラインナップしています。近年では新たな取り組みとして、当社の長年の音源技術を結集し新規開発した共通音源(ZEN-Core)を搭載した製品の販売を開始しました。
ダンス&DJ関連機器1980年代に当社が発表したリズムマシンは、ヒップ・ホップやエレクトロニック・ミュージックといった様々なダンスミュージック、カルチャーを生み出すきっかけとなったと考えています。そのDNAを引き継ぎ、最新のデジタル技術で進化したリズムパフォーマー、DJソフトウェアメーカーSerato Limitedと協業開発したDJコントローラーや、楽曲制作、パフォーマンスに必要な全ての機能を備えたグルーブボックスなど、幅広く展開しています。
ビデオプレゼンテーションやコンサート、イベント等で増加する映像演出ニーズを背景に、演出には欠かせない「映像ミキサー」や「AVミキサー」を中心に展開しています。異なる規格のビデオ信号をミックスできるマルチフォーマット技術や、長年培ってきた音響技術を活かした、音と映像を1台で扱える製品が当社の特長です。近年では、アマチュアによる動画投稿の機会が増えており、このようなニーズに対応する、お求めやすいライブ配信向け製品も展開しています。
エフェクター長年培われてきたアナログ回路及びデジタル信号処理の高い技術力が当社の強みであり、特に単機能型エフェクターの「コンパクト・シリーズ」はこれまでに累計100機種を超えるモデルを発売し、エフェクターの定番として高いブランド力を築き上げてきました。また、人の声にハーモニーや高品位な残響効果などを加えるボーカル用エフェクターや、録音したフレーズを繰り返し再生し重ねていく「ルーパー」と呼ばれる製品等も加え、製品展開を拡張しています。

カテゴリー特徴
楽器用アンプギターアンプを中心に、キーボード用や電子ドラム用まで幅広く製品展開しています。ギターアンプでは、自宅で使用できる小型アンプから、ステージでも使用可能な大型アンプまで幅広いラインナップを展開しています。近年では、独自のワイヤレス技術により、完全ワイヤレスギターアンプや、ワイヤレス・ヘッドホン型のギターアンプシステムなど、革新的な製品を生み出しています。

・電子楽器市場と当社グループの位置付け
Music Trades誌によると、各地域における楽器市場の規模は以下の通りであり、北米が最大の市場となっています。また、各地域の年平均市場成長率を見ると、日本は低迷している一方、中国をはじめとする海外市場においては伸びが見られ、楽器市場の成長は海外が牽引しているものと考えています。
当社グループは、創業当初より海外市場にフォーカスしており、高い海外販売比率を支えるグローバル・ネットワークを構築してきました。
(地域別楽器売上市場規模及び年平均成長率)
北米欧州中国日本
市場規模 (米ドル)(注2)83億37億18億9億
年平均成長率(%)(注3)+2.1+0.9+8.4-6.8

(注)1. 欧州はオーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イスラエル、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、 スウェーデン、スイス、トルコ、英国が含まれます。北米にはアメリカとカナダが含まれます。中国は中国本土を指します。
2. 2018年における市場規模です。
3. 2010年から2018年での年平均成長率です。北米以外について、2010年及び2018年12月末におけるIMFの為替レートを使用し、欧州についてはユーロ、中国については元、日本については円に、それぞれ当社にて米ドルから換算の上算出しています。
4.本調査結果は当社のために作成されたものではなく、また、Music Tradesは本調査結果の正確性及び完全性に対して責任を負うものではありません。
(出典)米国 Music Trades誌(2011年12月、2019年12月)
また、当社グループは電子楽器市場に100%フォーカスしていますが、電子楽器市場とアコースティック楽器市場の比較においては、最大の楽器市場である米国では、主力製品であるピアノ市場、ドラム市場について、電子楽器の成長率はアコースティック楽器の成長率を上回っています。
(ピアノとドラムにおける電子楽器比率(米小売市場))
ピアノドラム
電子アコースティック電子アコースティック
2010年(百万ドル)18528749418
2019年(百万ドル)28330769375
年平均成長率(%)+4.8+0.7+4.0-1.2

(注)1. 電子ピアノにはデジタルピアノと自動演奏ピアノ、アコースティックピアノはグランドピアノとアップライトピアノが含まれます。
2. 電子ドラムは電子ドラムのみ、アコースティックドラムは、アコースティックドラムセット及びアコースティックドラム関連楽器・ハンドパーカッション等が含まれます。
3.本調査結果は当社のために作成されたものではなく、また、Music Tradesは本調査結果の正確性及び完全性に対して責任を負うものではありません。
(出典)米国 Music Trades誌(2020年4月)
当社グループは、電子楽器市場では、下表の通り、重要かつ安定的な成長市場である米国において、主力製品で高い市場シェアを有しています。
(主要製品の市場シェア (米国))

(注)本調査結果は当社のために作成されたものではなく、また、MI Sales Trak は本調査結果の正確性及び完全性に
対して責任を負うものではありません。
(出典) 米国 MI Sales Trak Report(2019)
・組織体系
当社及び各関係会社の機能は、次のように大別できます。
まず当社は、当社製品の企画やR&D(研究開発)といった開発活動を担っています。また、グループ全体の監督、予算及び事業計画の承認も、当社の重要な機能の一つとなっています。他にも当社は、本社機能に加えて、主に映像関連機器の生産を担う製造工場としての機能や、日本国内市場に向けて当社製品を販売する販売機能も兼ね備えています。
次いで、当社製品の生産の大部分を担う製造子会社が2社あります。そのうち、2014年に設立されたRoland Manufacturing Malaysia Sdn. Bhd.は、主に電子ピアノや電子ドラム等の主力製品の生産を担っているマレーシア工場で、当社グループの主力生産拠点です。
また、当社製品の販売に携わる主要な販売子会社が計18社あり、内訳としましては、米州地域に主力販売子会社のRoland Corporation U.S.を含む4社、欧州地域に欧州販売会社を統括するRoland Europe Group Ltd.をはじめとする12社、アジア・オセアニア地域に2社を設置しています。北米、欧州、中国・アジア、日本という世界の主要市場を中心に販売活動を展開しており、それぞれの市場や商習慣に合わせた販売活動に注力しています。
他には、マレーシアで2017年に設立されたMI Services Malaysia Sdn. Bhd.が、製造子会社2社の株式保有及び事業活動統括を担っている他、製造子会社と販売子会社の間に立って当社製品の仕入販売及び物流管理の業務を担っています。
事業の系統図は、次の通りです。

*1:製造機能を有する連結子会社 2社
*2:電子楽器等の仕入販売、物流管理、子会社統括に関わる連結子会社 1社
*3:販売機能を有する連結子会社 16社
販売機能を有する持分法非適用非連結子会社 2社
販売機能を有する持分法非適用関連会社 1社
(その他)
・音楽/メディア制作者向けソフトウェアの開発及び販売に関わる連結子会社 2社
・ヘッドホン製品の販売に関わる連結子会社 5社
・電子オルガンの製造及び販売に関わる連結子会社 1社