有価証券報告書-第50期(令和3年1月1日-令和3年12月31日)

【提出】
2022/03/09 15:54
【資料】
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【項目】
139項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針 (経営理念)
ローランド・グループの経営理念は、以下の3つのスローガンに集約されています。これらは、ローランド・グループが何のために存在し、どのような企業であろうとしているのかを表した、創業時から変わらない考え方です。
- 創造の喜びを世界にひろめよう
- BIGGESTよりBESTになろう
- 共感を呼ぶ企業にしよう
「創造の喜びを世界にひろめよう」
いつでも、誰でも、どこにいても、自分にあった音や映像の楽しみ方に一人でも多くの人がめぐり合える。そんなワクワクする世界の実現を、私たちは目指します。新たな作品を創りだす喜び、仲間たちと楽器を演奏する時の充実感、そして、それを多くの人と分かち合うひととき―無限に拡がる喜びの可能性を、追求し続けます。
「BIGGESTよりBESTになろう」
お客様一人ひとりにとって、常にBESTで特別な企業であること。私たちはそのためにたゆまず努力し、最善を尽くします。日々成長し続け、お客様の想いにこたえる。そしてまた、新たな夢や期待を寄せていただく。そんな信頼関係を大切にしていきます。
「共感を呼ぶ企業にしよう」
私たちは、支えていただいているお客様、取引先様、そして株主様など多くの方々に愛され、応援される企業を目指します。新しい価値を創り出す中においてもこうした方々の信頼を決して裏切らず、事業活動をよりよく理解していただく。そうして皆様からの共感を力にかえ、すべてのステークホルダーにとっての事業価値を持続的に向上させていきます。
(2) 経営環境

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の浸透に合わせ経済活動が再開する一方で、新たな変異株の発生やブレイクスルー感染による感染再拡大が発生するなど、感染の終息を見通すことが難しい不安定な状況で推移しました。
電子楽器事業を取り巻く環境は、需要面では、Withコロナが長期化する中で新しいLifestyleが定着したことにより、余暇時間で楽器演奏に挑戦する方、また楽器演奏を再開される方が増加し、コロナ前より一段高い電子楽器需要が継続しました。一方供給面では、世界的な半導体不足や想定を上回る原材料コストの上昇など、調達において厳しい環境が継続しました。また生産においては、当第2四半期後半から第3四半期後半にかけて、当社主力工場の所在するマレーシアにおいて新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したことから、政府、当局の指示に従い、マレーシア工場の稼働制限や操業停止を行いました。輸送においては、米国の港湾混雑に代表される世界的な物流遅延によりリードタイムが長期化しました。
(3) 中長期的な経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社では2020年12月期からの3年間を対象とした、中期経営計画を策定しています。2014年の非上場化以降、当社は構造改革とともに将来のための成長投資も行い、業績を回復、向上させてきました。2020年12月期からの3年間は、「新たな成長ステージ」と位置付けています。
当社グループの継続的な成長には、顧客をより深く理解した価値ある製品・サービスの提供、欠品や過剰在庫が最小化されたSCM(サプライチェーンマネジメント)の構築、製品・サービスの真の価値を伝える顧客創造活動、そしてそれらを担う人材の育成、及びそれらを支える徹底した見える化とガバナンス強化が重要な課題であると認識しています。上記のとおり、本中期経営計画策定後、事業環境は大きく変化しましたが、重要な戦略に変更はありません。 引き続き以下の基本方針に則り、事業のさらなる成長を目指していきます。
なお当社では、株主価値や企業価値の向上を図る指標として、ROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)を重要な経営指標と位置付けています。中期経営計画の最終年度である2022年12月期は、当初計画を上回る売上高850億円、営業利益116億円、親会社株主に帰属する当期純利益87億円、ROE20%以上、ROIC15%以上の達成を予想しています。
・中期経営計画2020-2022 概要
<ビジョン>世界中の人々をワクワクさせる
<重点戦略>① <生み出す>当社にしかできない高付加価値な製品/サービスの開発
② <伝える>顧客創造と熱狂ファンの絆づくりによる市場開拓
③ <届ける>欠品/過剰在庫のない、商品供給を止めない世界一のSCMの実現
④ <支える>成長を支える人づくり、徹底した見える化とガバナンス強化
<基本方針>① 当社にしかできない高付加価値な製品/サービスの開発
当社の独自技術を結集した共通プラットフォームを積極的に活用し、鍵盤楽器、打楽器、ギター関連機器といった既存コア分野での開発効率の向上を図り、収益力を強化します。同時に、新たな市場の創造や、新規顧客の獲得を目指した、当社ならではの付加価値を持った「新機軸(ゲームチェンジャー)製品」の開発も積極的に推し進めます。また、製品発売後においても、更に魅力を向上させるアップデートやコンテンツの継続的な提供により、プロダクトライフサイクルを延長させることで、商品の廃棄を減らし、持続可能な生産、消費を目指します。ソフトウエア音源のサブスクリプションサービスであるRoland Cloudにおいては、会員数増加に向け、継続的なコンテンツ供給体制やアプリ開発体制を構築するとともに、共通プラットフォームを採用したハードウエアとソフトウエアのシームレスな連携により、これまで出来なかった更なる付加価値向上にも取り組んでいきます。
② 顧客創造と熱狂ファンの絆づくりによる市場開拓 -Marketing Driven Company-
デジタルマーケティングを活用し、真の顧客ニーズの把握や、かつて楽器演奏をしたことがあるものの現在は辞めてしまっている顧客層の掘り起しを通じて、顧客との絆づくりを強化します。具体的には、楽器市場の成熟した先進国、成長市場である中国・新興国それぞれへの最適なマーケティングを強化し、顧客創造を行っていきます。
③ 欠品/過剰在庫のない、商品供給を止めない世界一のSCMの実現
世界一のSCMとは、「効率的なSCM業務を通じて、顧客の求める商品を、顧客の求める場所とタイミングで、常に欠品/過剰在庫なく供給する」当社の考える理想的なSCMの在り方です。その実現に向け、SCM関連データの一元化、見える化を進めることで、需要変動へのタイムリーな対応を可能とした精度の高い生産計画の立案に取り組んでいきます。また、計画的な部材調達と在庫配置、高収益機種への絞り込みによる効率化を進めることで、リードタイムの短縮を図るとともに、BCP(事業継続計画)対策も強化していきます。
④ 成長を支える人づくりと、徹底した見える化とガバナンス強化
社員一人ひとりが安心して自分らしく働ける環境整備、社風づくりに加え、人と組織の活性化により、社員と会社の結びつき(エンゲージメント)の強化を図ります。また、生産・在庫・売上・経費データの徹底的な見える化、一元化を進めることで、生産性の向上を図っていきます。加えて、ガバナンスの確立した本社管理部門のグローバル本社機能を更に強化していきます。
・サステナビリティへの取り組み
ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)の視点に代表される「サステナビリティ(持続可能性)」への取り組みにあたり、当社は以下の認識のもと、環境・社会を含むすべてのステークホルダーの期待に応え、事業成長にもつながるテーマを中心に重要課題を整理しました。5つの活動指針のとおり一貫した「姿勢」で「意識」「実践」「開示」を一連のものとして課題対応を進め、当社の取締役会は定期的な報告を受けてその状況を「監督」し、必要に応じて助言と支援を行います。
1)認識と方針

当社の事業は、音楽・映像文化を通じて社会の持続的発展に貢献している一方で、環境や社会全体の安定と豊かさのもとに成り立っています。そして気候変動や人権などのさまざまな課題に真摯に向き合い、その解決に貢献することは企業としての重要な責務であると認識しています。
環境・社会の安定や持続性が損なわれ、音楽・映像文化や当社事業が存続しえなくなる負の連鎖を避けるため、それぞれのサステナビリティを高め合う好循環を生み出す活動を、経営の重要課題に位置付け、取り組んでいます。
<5つの活動指針>
2)重要課題
サプライチェーン・マネジメントの強化・サプライチェーンの効率改善
・製品供給体制の安定化
・製商品数の削減
・再生可能エネルギー活用拡大
・仕入先様、販売店様との関係強化
・サプライチェーン上の人権保護
・設計領域からの環境負荷低減推進
・CO2排出量の状況把握と削減策の検討
音楽・映像文化の発展支援・活動プラットフォームの提供
・アーティスト、業界の活動支援
・ゲームチェンジャー製品の投入
・音楽、映像及び近接領域での社会貢献
(障がい者支援、音楽療法、教育関連など)
人材の活力、能力発揮の最大化・女性活躍の促進
・多様な働き方の推進
・有効なインセンティブの維持
・グローバル人事マネジメントの強化
成長(無形資産)への投資・Roland Cloud事業の推進
(ソフトウエア、コンテンツなどの開発推進)
・最高の顧客満足、顧客体験の提供
(マーケティング・サポートでのデジタル技術活用)
・最適な製品供給のためのデータ活用
ガバナンスのたゆみない強化・ガバナンスのさらなる実効性向上
・情報開示の充実
・リスク管理とコンプライアンスの強化
・取締役会によるサステナビリティ対応の監督

かつ、すべて重要課題の取り組みを監督