有価証券報告書-第95期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 14:18
【資料】
PDFをみる
【項目】
167項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが入手し得る情報に基づいて判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、グループ経営理念である「私たちの約束」に基づき、新しい価値創造へのこだわりと挑戦を続けるとともに、お客様の期待に応える商品やサービスの提供をはじめとして、ステークホルダーとの約束を実現することを事業運営における基本方針としています。当社グループは、「私たちの約束」の実践を通じて、企業としての社会的責任(CSR)を果たし持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の向上を目指してまいります。
(2) 経営環境
当社グループの各報告セグメントの経営環境についての認識は、次のとおりであります。
(リテールソリューション事業)
リテールソリューション事業における国内及び海外市場の状況は、顧客である流通小売業において人手不足、ネット通販の拡大による店舗経営への影響、決済手段・ハードの多様化による店舗スタイルの変化などが進んでいることから、多様化する顧客課題に対応したソリューション提供へのニーズが高まっています。また、流通小売業においては、店舗運営効率化や買い物客の購入形態の多様化に伴い、ソフトウェアやサービス分野への投資比重が増えていることから、セルフチェックアウトシステムなどの省人化ソリューションへの需要シフトが加速しています。
当事業においては、国内外に幅広く顧客基盤及び販売網を有しておりますが、競合他社との競争激化が続く厳しい事業環境にあります。
(プリンティングソリューション事業)
プリンティングソリューション事業における欧米市場の状況は、主力であるオフィス向け複合機の市場が成熟状態にあり、フルカラー複合機の需要は増加傾向にあるものの、ハードウェア全体の需要は鈍化傾向にあります。
当事業における新興国市場の状況は、中国ではA3機市場でトップレベルのシェアを維持しているものの、先進国同様に景気減速の影響を受け、オフィス向け複合機市場の成長は減速傾向にあります。
当事業においては、国内外に幅広く販売網を有しておりますが、競合他社との価格競争激化が続く厳しい事業環境にあります。
なお、2020年1月以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、各報告セグメントの経営環境は次のとおり悪化しております。
(リテールソリューション事業)
外出機会の減少などにより、顧客である流通小売業を取り巻く環境が悪化するとともに、当社グループにおいても外出抑制措置や在宅勤務増加などに伴い営業活動が制限されたことから、主に海外市場においてPOSシステムの販売・保守サービスの売上が減少しております。
(プリンティングソリューション事業)
外出抑制措置や在宅勤務増加などに伴いオフィスにおける複合機の利用機会が大幅に減少するとともに、複合機の主要な製造拠点が存在する中国における生産活動の影響及び在庫の確保が困難な状況が続いたことから、海外市場向け複合機の販売・保守サービスの売上が減少しております。
(3) 中長期的な経営戦略と目標
上記の経営環境下において、当社グループは、2019年11月6日に策定した「中期経営計画(2019~2021年度)」での中長期ビジョンに基づき、「店舗・オフィスを起点に顧客現場の課題を解決するソリューションパートナー」を目指し、「ソリューション事業拡大」と「コアビジネス業容拡大」により成長路線を確立しながら、「原価低減加速、生産性向上による安定収益体制の構築」に努めてまいります。
この「ソリューション事業拡大」及び「コアビジネス業容拡大」の実現のため、当社グループは、以下の具体的施策に取り組んでまいります。
(リテールソリューション事業)
人手不足、ネット通販拡大、決済手段の多様化など、流通小売業を取り巻く課題の多くは国内及び海外で共通しています。店舗内の課題解決の実績を積み上げてきた当社グループは、店舗起点のバリューチェーンに対するトータルソリューションを提供し、多様化する顧客課題の解決に貢献することを目指します。
・人手不足対応
店舗決済の進化に対応した当社ソリューションにより、店舗の省人化を実現するとともに、新たな購買体験の創出により、買い物客にとって魅力的な店舗体験の提供を実現します。
・決済ソリューション
店舗決済やネット通販決済などのマルチ決済を一元的に可能とするソリューションの提供により、キャッシュレス決済への移行が加速し決済手段が多様化する状況においても、当社の強みを活かして店舗や消費者に対する利便性の提供を追求します。
・サプライチェーン横断のソリューションとデータサービスの提供
店舗を起点とした製造や流通などのバリューチェーンに対して、当社のビジネスアセットを活かして新たな価値を提供するソリューションやデータサービスを提供します。また、当社リソースと他社との協業により、当社以外も含めたPOSシステムのソリューションアプリを容易にプラグイン可能な次世代プラットフォームを運用することで、ソリューションやデータサービスをより効果的な課題解決につなげます。
・スマートレシート
買物客の利便性を高めるための電子レシートサービスとして開始したスマーレシートは、メーカーと店舗、買物客をつなぐマーケティングツールや、購買データ集積センサー、さらにはキャッシュレス決済ツールとしての活用が期待できる流通インフラとしてのポテンシャルを有しております。生活者の利便性向上や地域経済活性化の観点で検証を実施しながら、流通インフラとしての普及促進を加速させます。
・セルフ型ソリューション
グローバルに拡大する省人化流通市場において、セルフ型ソリューションは国内同様にグローバルでもニーズが高く、地域別や業態別で異なるニーズに対してきめ細かい対応ができる、多彩なバリエーションのソリューションを投入します。
(プリンティングソリューション事業)
コア事業であるオフィス向け複合機市場全体の成熟化が進む一方、人手不足等を背景に中小企業を中心としたオフィス業務の効率化が課題となっています。また、LMR領域(物流・製造・店舗)や付随するバックオフィスにおける効率化・生産性向上ニーズが高まっています。このような状況を受け、当社グループは、自らの強みを活かし、コア事業であるオフィス領域の強化、LMR領域への垂直展開による業容拡大、生産性向上の三軸を並立させることで、収益力強化を目指します。
・コア事業(オフィス領域)
複合機の戦略的新商品の投入や、中小企業に向けた文書管理システム等のオフィスソリューションの拡充、開発生産性や保守サービスの効率化によるコスト競争力強化をはじめとした施策により、収益性を改善し、事業基盤の強化に取り組みます。
・LMR領域(物流・製造・店舗)
幅広い課題を有するLMR領域に対して、当社の強みであるプリンティングや自動認識メニューと、現場課題を解決するソリューションやオフィスソリューションを組み合わせたLMR戦略により売上拡大を目指します。
・生産性向上
研究開発生産性や保守サービス効率改善などの固定費改善、調達・製造の効率化による原価低減、商品構成改善等により生産性を高め、利益率の改善を目指します。
また、当社グループは、店舗・オフィス・物流・製造各領域の課題解決に貢献するソリューションパートナーとして、お客様とともに、SDGs(Sustainable Development Goals)達成に向けた取り組みを推進し、持続可能な社会への貢献を実現してまいります。

2019年11月6日に策定した「中期経営計画(2019~2021年度)」における最終年度(2021年度)の計数計画は、売上高4,900億円、営業利益270億円、親会社株主に帰属する当期純利益160億円としておりましたが、当社グループの経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、この計数計画策定時に前提とした経営環境と比べ大幅に悪化しておりますので、この計数計画については、見直しを検討しているところであります。
当社は、現在、近時の経営環境を踏まえた新たな中期経営計画を策定中であり、今後の具体的な施策や計数計画については、決定次第、別途開示させていただきます。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営方針及び経営戦略を実行するに当たっては、各事業におけるバランスある利益の実現と長期的収益体制の構築が必要であり、その実現のために当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、次の重要施策の実行を加速することであると認識しております。
・各種新規ソリューションビジネスの収益化
リテールソリューション・プリンティングソリューションの両事業において、高収益性ソリューションサービスへのシフトを進めることにより、売上高の拡大を目指します。
・プリンティングソリューション事業の収益性回復
オフィス向け販売などのコア領域は維持しつつ、物流・製造・店舗など新規領域向けビジネスの拡大を推進いたします。
・海外リテールソリューション事業の競争力強化
省人化が進む流通市場に向けた戦略商材の早期投入により、既存顧客の維持及び新規顧客の獲得を推進いたします。
なお、上記の重要施策に加え、新型コロナウイルス感染拡大影響の顕在化による経営への影響を低減するため、徹底した間接経費削減や業務効率化による固定費削減、製造原価改善などのコスト削減施策とともに、消費動向や顧客動向を踏まえた売上リカバリー施策を実施いたします。
また、2020年度においては、当社グループ全体の事業基盤を強固なものとし、早期に収益力の回復を実現するために、人員削減を含む構造改革を実施いたします。
(5) 次期の見通し
今後の世界経済は、各国における経済対策の効果などが期待されるものの、新型コロナウイルス感染拡大の実体経済への影響が一段と顕在化・深刻化し、当面の間、先行きを見通すことができない未曽有の難局が続くものと予想されます。
このような状況下におきましても、当社グループは「店舗・オフィスを起点に顧客現場の課題を解決するソリューションパートナー」を目指し、「ソリューション事業拡大」、「コアビジネス業容拡大」及び「原価低減加速、生産性向上による安定収益体制の構築」に、グループ一丸となって取り組む所存でございます。
2020年度(第96期)における各報告セグメントの主要施策は、以下のとおりでございます。
(リテールソリューション事業)
主力商品である国内及び海外市場向けPOSシステム、国内市場向け複合機、国内市場向けオートIDシステム、並びにそれらの関連商品の拡販と、トータルソリューションの提供に向けて、マーケットニーズにマッチした新商品の開発・投入、地域に即した営業・マーケティングの展開、サービス事業・サプライ事業の強化、販売サービス網の最適化などにより、事業拡大を進めてまいります。
(プリンティングソリューション事業)
主力商品である海外市場向け複合機、海外市場向けオートIDシステム、国内及び海外市場向けインクジェットヘッド、並びにそれらの関連商品の拡販と、幅広い商品群・マーケットを活かしたトータルソリューションの提供に向けて、戦略的新商品の開発・投入、地域に即した営業・マーケティングの展開、販売サービス網の最適化、新興国事業の強化などにより、収益体質の強化に努めてまいります。