有価証券報告書-第94期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/20 14:49
【資料】
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【項目】
64項目

研究開発活動

当社は、2013年4月に策定した「デンソーグループ2020年長期方針」で「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい」をスローガンとして、「地球環境の維持」「安心・安全」にこだわり会社の使命として取り組んでいくことを宣言しました。この長期方針実現に向け、環境、安心・安全分野を中心に研究開発活動を強化し、社会に貢献する新しい製品、新しい価値を世界中のお客様にお届けすることを目指しています。
環境分野の開発体制としては、電動化分野における一層の開発強化と事業伸展を狙い、システム開発機能を集約し、エレクトリフィケーションシステム事業グループを新設しています。
排出ガス規制強化に対して、排出ガス浄化触媒の基材において、触媒の中心部と周辺部で断面積が異なるセルを一体成形した、世界初となる新設計「FLAD」(フラッド)基材をトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)と共同開発しました。「FLAD」基材は、トヨタ自動車の新型排出浄化触媒に採用され、2017年春頃発売される新型車に順次搭載される予定です。触媒内部の排出ガスの流れの均一度を向上させ、従来型排出ガス浄化触媒と同等の排出ガス浄化性能を維持しながら、貴金属使用量を約20%低減させるとともに、触媒容量の約20%小型化を可能にしました。また、設計・製造技術の革新により、世界初となる一体成形を実現したことにより、量産を可能としました。
安心・安全分野では、小型のステレオ画像センサーを開発し、ダイハツ工業株式会社より2016年11月に発売された「ダイハツ タント」の衝突回避支援システム「スマートアシスト3」に採用されています。
ステレオ画像センサーは、道路上の白線や前方の物体を識別するのに左右2つのカメラを搭載することで、対象物までの距離測定の正確性を向上します。製品の搭載スペースが限られる軽自動車においては、画像センサーにおいても車両への搭載性の向上が求められていました。新型のセンサーは、高精度なレンズ歪み補正とステレオマッチング技術の組み合わせにより、求められる測定距離を保ちつつカメラ幅を半減するとともに、センサーを制御するECUを一体化することで、更なる搭載性の向上を実現しました。
高度運転支援・自動運転分野での技術開発を加速させるため、画像センサーや人工知能の技術開発において社外との連携を進めています。人工知能については、自動車における画像認識、機械学習分野への適用と技術開発を一段と加速すべく、カーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授 金出 武雄氏と技術顧問契約を締結しました。当社は、高度運転支援技術の開発・実用化を通じて交通事故の防止に寄与し、安心・安全なクルマ社会の実現に貢献していきます。
市販事業・新事業分野では、自動車のセンサーおよび制御技術やロボットシステム技術を活用して産業用UAV(ドローン)、農業支援、地域情報配信などに関する製品・システムの開発を行っています。例えば、社会問題となっている道路や橋などのインフラ点検の負荷急増に対して、産業用UAVを用いたインフラ点検の効率化に取り組んでいます。当社は、自動車で培ってきた技術を活用して、環境にやさしく、健康で安心・安全な生活に貢献していきます。
開発体制としては、世界各地域の事情やニーズに合った最適な製品を開発するため、世界7地域にテクニカルセンターを整備し、グローバル開発体制を強化しています。特に日本においては、高度運転支援・自動運転分野を中心に協業を推進しています。例えば、株式会社NTTデータMSEに出資することで、予防安全分野におけるソフトウェア開発の効率的な取組みを実施しています。昨今、高度運転支援を補助するために、運転者に安全運転を促すための警告等を表示するHMIの重要性は一層増していますが、このHMIを制御するソフトウェアを共同で開発していきます。また、日本電気株式会社(以下、NEC)との協業も開始しました。この協業においては、当社が自動車市場で培った“高度な技術力とモノづくり力”と、NECがICTによる事業で培った“AI(人工知能)やIoT、セキュリティなどの先進技術とシステム構築・運用の豊富な実績”を生かし、高度運転支援・自動運転、セキュリティ、モノづくりに関する技術の共同開発を行っていきます。
連結会社は、世界各地域でその社会に貢献する製品とサービスを提供していくことを目指しています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は409,223百万円(資産計上分含む)、その内、日本セグメント344,459百万円、北米セグメント31,124百万円、欧州セグメント13,739百万円、アジアセグメント18,702百万円、その他1,199百万円となっています。日本セグメントが占める比率は約84%となっており、研究開発活動の中心を担っていますが、海外セグメントのリサーチ機能強化などを通じて、グローバルな先進モビリティ社会の実現を目指していきます。