有価証券報告書-第85期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 15:37
【資料】
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【項目】
86項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「独自の製品を供給して文化の発展に貢献する」ことを中核とした社是にもとづく経営を実践しております。当社グループの価値創造プロセスは、社是を共有する世界中の従業員が、CS(顧客満足)とES(従業員満足)を大切な価値観とおき、コアコンピタンスである「グローバルネットワークと顧客層の厚み」、「技術開発力」、「モノづくり力」を練磨し、それらを「組織連携力」により結び付け総合力を発揮していくことで新たな価値を創出し、社会から求められる製品を迅速かつ安定的に供給していくサイクルを回し続けることにあります。 技術、製品開発においては、「新しい電子機器は新しい電子部品から、新しい電子部品は新しい材料から」を基本理念におき、セラミックスなどの電子材料技術をはじめ、高周波技術、回路設計技術、薄膜・微細加工技術などのプロセス技術、生産設備の開発技術などの各種要素技術の研究開発に注力しております。その成果を有機的に融合して、通信機器、情報・コンピュータ関連機器からカーエレクトロニクスに至るさまざまなアプリケーションに不可欠な積層セラミックコンデンサや圧電製品、ノイズ対策製品、高周波デバイス、回路モジュール等の電子部品の創出に努めております。 当社グループは、これらを会社の経営の基本方針とし、その思いを込めたスローガン「Innovator in Electronics」を全従業員で共有し、協力者との共栄を図りながら、社会課題の解決に積極的に取り組むことで、豊かで持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
当社グループの価値創造プロセス
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(2)目標とする経営指標
営業利益率及びROIC(Return on Invested Capital)(税引前)を重視する経営指標としております。特に、資本効率の向上により企業価値の向上を図るためROICを重視しており、健全かつ持続的に成長するため目指すべき水準として、20%を目標値として設定しております。
※ROIC(税引前)= 営業利益 / 投下資本(固定資産+たな卸資産+売上債権-仕入債務)
※ROICの計算式の分子は、一般的には税引後営業利益が用いられますが、当社グループにおける事業部門の収益性の評価には税引前営業利益を使用していることから、それに準じるものです。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び経営課題とその対応
前連結会計年度を初年度とした3カ年の取り組み方針である「中期構想2021」では、通信市場・自動車市場を重点成長市場と位置づけており、成長機会を的確に捉え、競争優位を確立することで事業拡大を図っております。また、健全で持続的な成長を実現するために3つの全社方針を掲げて取り組みを行っております。第一に、ポートフォリオ経営による適切な経営資源配分を実践し、さらなる顧客価値の創造を目指します。次に、資本・労働生産性を飛躍的に向上させると同時に、需要変動に対応する安定的な供給体制を構築してまいります。そして、事業規模の拡大に対応できる強固な経営基盤を再構築するとともに、当社グループが及ぼす社会や環境への影響を十分に認識し、これらに配慮した事業運営を行ってまいります。
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(4)会社の経営環境と対処すべき課題
①成長市場での事業機会獲得
「通信市場での競争優位の追求」
スマートフォンを中心とするモバイル通信機器の生産台数の成長は鈍化傾向にありますが、機器の高機能化による電子部品の員数増加と新製品需要の増加に伴う高付加価値化が依然見込まれます。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により一時的な電子部品の需要停滞が見られたものの、想定よりも早い部品需要の回復が見られました。特に中国では5G(第5世代移動通信システム)対応端末の販売が増え、積層セラミックコンデンサや高周波モジュールなどの売上が伸びております。今後についても、5Gの性能を活用したアプリケーションに必要とされる高度な顧客ニーズを解決できる技術力、製品力の提供により、競争優位を保ち市場シェアの維持、拡大に努めます。
「自動車市場を次の収益の柱へ」
通信市場とともに今後の電子部品需要を牽引する自動車市場を次の収益の柱とすべく、注力しております。世界的な車載用半導体の供給不足など足元では調整局面が続いておりますが、中長期的に見れば電装化の進展に伴う電子部品の需要拡大の見通しは変わりません。顧客に安心安全をもたらす「高信頼性」を共通価値とし、センシング、通信、小型、ノイズ対策など、当社グループの強みを活かした幅広いラインナップを揃え、ビジネス基盤を強固なものにしてまいります。また、変化する業界構造や技術トレンドを捉え、電装化・電動化によって自動車に組み込まれる部品需要だけでなく、自動車IoT(Internet of Things)化やスマートシティなどモビリティとして広がる領域を事業機会と捉え、取り組みを進めてまいります。
②3つの全社課題に対する取り組み状況
「ポートフォリオ経営の実践」
この課題を解決して目指す姿は、顧客から1番に選ばれる「グローバルNO.1部品」で構成され、またそれぞれの技術や製品を組み合わせて設計し提案することにより、さらなる顧客価値を創造していることです。当社グループでは、持続的成長が可能な強固な組織づくりを目指し、ポートフォリオ管理を自律自浄的に運営するための事業性評価モデルを導入し、全社最適の視点でより効率的なリソース配分を行う仕組みの構築を進めてまいりました。今後はさらに経営管理の高度化を図り、超長期の視点でポートフォリオを捉え、多様なイノベーションを生み出し継続的に新たな価値を創出していくことに努めてまいります。
「飛躍的な生産性向上と安定的な供給体制の構築」
この課題を解決して目指す姿は、顧客の求める質を満たしながら、飛躍的な資本・労働生産性の向上と、需要変動に対応する安定的な供給体制を同時に達成できている状態です。IoTの積極的な活用とともに、制約条件やムダを排除し最適化、標準化も図りながら総合的に取り組み、モノづくりの効率を高めます。特に、自動車市場でのビジネス拡大のためにはさらなる品質への取り組み強化が必要となっており、要求される品質の変化を予知し、予防的な処置を通じて不良品を作らないモノづくり、不具合の是正をタイムリーに行えるモノづくりに挑戦しております。また、民生市場を中心とした激しい需要変動に追随し、安定的な供給体制を構築するために、サプライチェーン全体を一元的に管理し、意思決定から実行までを高速化、高精度化するための業務プロセスとそれをサポートするシステムの構築を進めております。
「人と組織と社会の調和」
この課題を解決して目指す姿は、社会から信頼される会社であり、従業員一人ひとりの成長と事業の成長に合わせて、仕事の仕組みや組織を進化させ、変化する事業機会に対応できていることです。当社グループでは、社会課題を起点とした重点的に取り組む領域として、当社グループとステークホルダーにとってのマテリアリティ(重点課題)を設定し、社会に与える影響を継続的に把握し、改善していく事業運営を行っております。2021年3月期には、2050年までに当社グループで使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指し、RE100に加盟しました。これまで国内外の事業所で進めてきた再生可能エネルギーの導入だけでなく、当社グループの製品やシステムも組み合わせた取り組みも加速してまいります。今後はさらに、社会課題解決への貢献を経営の中心に据え、当社グループのスローガン「Innovator in Electronics」に込められた「環境や社会に対して、主体的により良い方向に働きかけていく」ことを実践し、持続可能な社会の実現に貢献することでさらなる企業価値の向上を実現してまいります。引き続き、経営上の最も重要な課題の一つとして位置付けておりますコーポレート・ガバナンスにつきまして、会社が健全かつ持続的に発展・成長していくために常に最適な経営体制を整備し、機能するよう取り組んでまいります。
当社グループのマテリアリティ
事業を通した社会課題の解決(機会)と事業プロセスにおける社会課題への取り組み(リス
ク)に分け、11項目のマテリアリティを2019年7月に設定し、取り組みを進めております。
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③新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
当第1四半期連結会計期間において、新型コロナウイルス感染症の大流行と各国で実施された経済活動の制限により世界の経済情勢は一時的に悪化しました。当第2四半期連結会計期間以降においては悪化幅は次第に縮小し、ワクチン接種など各国の経済活動再開に向けた動きはあるものの、短期的には変異株の流行も懸念され先行きは依然として不透明な状況です。
一方で、当社グループが属するエレクトロニクス市場は、通信市場における5Gの導入、自動車の電装化の進展などにより、電子部品需要が中長期的に拡大する見通しは変わりません。
このような事業環境において、「中期構想2021」で掲げる「①成長市場での事業機会獲得」及び「②3つの全社課題」が今後も重要であり、継続して取り組んでまいります。
なお、当社グループが取り組んでいる新型コロナウイルス感染症の感染予防と感染防止策については、「2事業等のリスク (2)事業等のリスク ①外部環境リスク (7)災害・感染症等による事業活動の停止に関するリスク」をご参照ください。