訂正有価証券報告書-第84期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2022/09/09 15:52
【資料】
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【項目】
91項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「独自の製品を供給して文化の発展に貢献する」ことを中核とした社是にもとづく経営を実践しております。当社グループの価値創造プロセスは、社是を共有する世界中の従業員が、CS(顧客満足)とES(従業員満足)を大切な価値観とおき、コアコンピタンスである「グローバルネットワークと顧客層の厚み」、「技術開発力」、「モノづくり力」を練磨し、それらを「組織連携力」により結び付け総合力を発揮していくことで新たな価値を創出し、社会から求められる製品を迅速かつ安定的に供給していくサイクルを回し続けることにあります。
技術、製品開発においては、「新しい電子機器は新しい電子部品から、新しい電子部品は新しい材料から」を基本理念におき、セラミックスなどの電子材料技術をはじめ、高周波技術、回路設計技術、薄膜・微細加工技術などのプロセス技術、生産設備の開発技術などの各種要素技術の研究開発に注力しております。その成果を有機的に融合して、通信機器、情報・コンピュータ関連機器からカーエレクトロニクスに至るさまざまなアプリケーションに不可欠な積層セラミックコンデンサや圧電製品、ノイズ対策製品、高周波デバイス、回路モジュール等の電子部品の創出に努めております。
当社グループは、これらを会社の経営の基本方針とし、その思いを込めたスローガン「Innovator in Electronics」を全従業員で共有し、協力者との共栄を図りながら、豊かで持続可能な社会の実現に貢献するよう努めております。
当社グループの価値創造プロセス
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(2)目標とする経営指標
営業利益率及びROIC(Return on Invested Capital)(税引前)を重視する経営指標としております。特に、資本効率の向上により企業価値の向上を図るためROICを重視しており、健全かつ持続的に成長するため目指すべき水準として、20%を目標値として設定しております。
※ROIC(税引前)= 営業利益 / 投下資本(固定資産+たな卸資産+売上債権-仕入債務)
※ROICの計算式の分子は、一般的には税引後営業利益が用いられますが、当社グループにおける事業部門の収益性の評価には税引前営業利益を使用していることから、それに準じるものです。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び経営課題とその対応
当連結会計年度を初年度とした3カ年の取り組み方針である「中期構想2021」では、通信市場・自動車市場を重点成長市場と位置づけており、成長機会を的確に捉え、競争優位を確立することで事業拡大を図っております。また、健全で持続的な成長を実現するために3つの全社方針を掲げて取り組みを行っております。第一に、ポートフォリオ経営による適切な経営資源配分を実践し、さらなる顧客価値の創造を目指します。次に、資本・労働生産性を飛躍的に向上させると同時に、需要変動に対応する安定的な供給体制を構築してまいります。そして、事業規模の拡大に対応できる強固な経営基盤を再構築するとともに、当社グループが及ぼす社会や環境への影響を十分に認識し、これらに配慮した事業運営を行ってまいります。
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(4)会社の経営環境と対処すべき課題
①成長市場での事業機会獲得
「通信市場での競争優位の追求」
スマートフォンを中心とするモバイル通信機器の生産台数の成長は鈍化傾向にありますが、機器の高機能化による電子部品の員数増加と新製品需要の増加に伴う高付加価値化が依然見込まれます。特に、当連結会計年度では、中国を中心に5Gサービスが立ち上がり、基地局やデータセンター等の情報通信インフラ向け需要が拡大しており、大容量の積層セラミックコンデンサや多層デバイスチップ、通信機器用モジュールなどの売上が伸びております。今後についても、5Gの性能を活用したアプリケーションに必要とされる高度な顧客ニーズを解決できる技術力、製品力の提供により、競争優位を保ち市場シェアの維持、拡大に努めます。
「自動車市場を次の収益の柱へ」
通信市場とともに今後の電子部品需要を牽引する自動車市場を次の収益の柱とすべく、注力しております。自動車市場では電動化と自動運転化の進展に伴い、半導体の搭載個数が増加することで半導体周辺に使われるコンポーネントを中心とした電子部品の需要が拡大しており、車載用コンデンサの売上が増加しました。また、安全走行のためのセンサ、車外とデータ通信を行う無線モジュールの需要も確実な伸びが見込まれており、顧客に安心をもたらす「高信頼性」を共通価値とし、センシング、通信、小型、ノイズ対策など、当社グループの強みを活かした幅広いラインナップを揃え、成長をさらに持続させます。
②3つの全社課題に対する取り組み状況
「ポートフォリオ経営の実践」
この課題を解決して目指す姿は、顧客から1番に選ばれる「グローバルNO.1部品」で構成され、またそれぞれの技術や製品を組み合わせて設計し提案することにより、さらなる顧客価値を創造していることです。そのために、全社最適の視点でより効率的なリソース配分を行うための仕組みを構築する必要があり、施策として事業性評価モデルの導入に努めております。この導入により、ポートフォリオ管理を自律自浄的に運営し、持続的成長が可能な強固な組織づくりを目指しております。
「飛躍的な生産性向上と安定的な供給体制の構築」
この課題を解決して目指す姿は、顧客の求める質を満たしながら、飛躍的な資本・労働生産性の向上と、需要変動に対応する安定的な供給体制を同時に達成できている状態です。IoT(Internet of Things)の積極的な活用とともに、制約条件やムダを排除し最適化、標準化も図りながら総合的に取り組み、モノづくりの効率を高めます。特に、自動車市場でのビジネス拡大のためにはさらなる品質への取り組み強化が必要となっており、要求される品質の変化を予知し、予防的な処置を通じて不良を作らないモノづくり、不具合の是正をタイムリーに行えるモノづくりに挑戦しております。また、民生市場を中心とした激しい需要変動に追随し、安定的な供給体制を構築するために、サプライチェーン全体を一元的に管理し、意思決定から実行までを高速化、高精度化するための業務プロセスとそれをサポートするシステムの構築を進めております。
「人と組織と社会の調和」
この課題を解決して目指す姿は、社会から信頼される会社であり、従業員一人ひとりの成長と事業の成長に合わせて、仕事の仕組みや組織を進化させ、変化する事業機会に対応できていることです。これまでも独自の製品で文化の発展に貢献することで社会課題と向き合ってきましたが、当連結会計年度は社会課題と当社グループの関係性、貢献領域をあらためて見直す時期と考え、次項の「マテリアリティの特定における基本方針」に基づき、当社グループとステークホルダーにとって重要な課題(マテリアリティ)の洗い出しを行いました。これらについて、目標値を定め事業との調和を図りながら社会課題への貢献の取り組みを加速してまいります。また、当社は、経営上の最も重要な課題の一つとしてコーポレート・ガバナンスを位置づけており、会社が健全かつ持続的に発展・成長していくため、常に最適な経営体制を整備し、機能させるよう引き続き取り組んでまいります。
マテリアリティの特定における基本方針
世界中に広がる全従業員が共有するスローガン「Innovator in Electronics」で定義されている「環境や社会に対して、主体的により良い方向に働きかけていく」は、これまで社会課題について取り組んできた姿勢であり、これからも大切にし続けることです。当社グループは、事業を通した社会課題の解決に貢献することを基本方針としております。
当社グループのマテリアリティ
当社グループが重点的に取り組む領域をあらためてマテリアリティとして定義しました。事業を通した社会課題の解決(機会)と事業プロセスにおける社会課題への取り組み(リスク)に分け、重点課題を設定しております。当社グループの技術が創出するイノベーションによって社会課題の解決に貢献し、事業活動において社会に与える影響を常に把握し改善することで、企業価値の向上を実現してまいります。
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③新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
世界の経済情勢は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による実体経済の悪化が強く懸念されており、各国では急激な景気後退を防ぐために大胆な景気刺激策を講じることが検討されていますが、感染収束時期が見通せない中でその効果は不透明な状況です。
一方、当社グループが属するエレクトロニクス市場においても、短期的には新型コロナウイルス感染症の影響による電子部品需要の落ち込みが懸念されるものの、中長期的には通信市場における5G(第5世代移動通信システム)導入、自動車の電装化の進展などにより、電子部品需要が拡大する見通しは変わらないと見込んでおります。
このような事業環境が当社グループに与える影響は不透明ではありますが、次第に需要は回復すると見込んでおり、「中期構想2021」に掲げる「①成長市場での事業機会獲得」及び「②3つの全社課題」が今後も重要であることから、継続してこれらの課題に取り組んでまいります。
なお、当社グループが取り組んでいる新型コロナウイルス感染症の感染予防と感染拡大防止については、「2事業等のリスク (19)災害・感染症等による事業活動の停止について」をご参照ください。