有価証券報告書-第81期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/24 13:34
【資料】
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【項目】
115項目

研究開発活動

当社及び当社の関係会社は自動車及び各種産業用二次電池、電源及び応用機器メーカーとして、電気エネルギーの貯蔵・変換と高効率化に関する研究開発を推進し、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウムイオン蓄電池及びマグネシウム空気電池などの新種電池、それらの周辺機器及び電源装置の製品開発と環境対応技術の開発を行っております。また各種製品の品質・信頼性の改善並びに生産性向上とコストダウンを図るための基盤技術、生産技術、設備技術開発も積極的に実施しております。
当連結会計年度における研究開発費総額は1,427百万円であります。この中には,グループ外部からの受託研究等の費用10百万円が含まれております。各事業分野別の研究の目的、主要課題及び研究成果は次のとおりであります。
自動車用鉛蓄電池の分野では、顧客要求に応える現用電池の性能改善に加え、国内・海外の環境規制に対応して急速に普及・拡大しているISS(アイドリングストップ)車、マイクロハイブリッド車に適応したISS車用鉛蓄電池(キャパシタハイブリッド型鉛蓄電池「ECHNO[エクノ] IS UltraBattery」など)の性能向上、コストダウン、ラインナップ拡大による新車メーカー採用と市販展開の拡大を鋭意進めています。また、昨年度新車メーカーに採用されたハイブリッド車補機用制御弁式電池の市販展開拡大を進めると共に、EN規格(欧州統一規格)対応品の開発を鋭意進めています。
一方、厳しさを増す価格競争に対応するため、電池設計の見直しや活物質の利用率向上による材料のセービングなど様々なコストダウンに精力的に取り組んでおります。更に、生産技術、設備技術開発の取り組みとして、新設備・新生産技術の導入や新材料の適用による工程品質改善、材料ロスの低減、工程屑鉛のリサイクル、工程の見える化などを継続して推進しております。
産業用電池の分野では、現用電池の性能改善とコストダウンを進めるとともに、平成23年度に製品化したサイクルユース用制御弁式鉛蓄電池「FCP」シリーズと、平成25年度に製品化した次世代産業用キャパシタハイブリッド型鉛蓄電池「UltraBattery」を、風力/太陽光発電などの再生可能エネルギー分野、ピークシフト、ロードレベリングなどの電力分野のサイクル用途向けに適用できる長寿命鉛蓄電池として市場展開を進めております。平成27年度は、次世代産業用キャパシタハイブリッド型鉛蓄電池「UltraBattery」の小容量モノブロックタイプ「UB-50-12」を追加しラインナップ化を進めました。
「FCP」シリーズと次世代産業用「UltraBattery」は、数々の民間実証試験や、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、経済産業省などが進めるスマートコミュニテイ・スマートグリッド実証事業において、優れた性能を有する電池であることを実証しました。さらに、平成24年に当社の福島県いわき事業所内に構築したマイクログリッド蓄電システムにおいて、次世代産業用「UltraBattery」の実証、BMU(バッテリーマネージメントユニット)の開発と実証及び運用ノウハウの蓄積や最適な運用技術の開発を進めております。
ニッケル・カドミウム蓄電池では、鉄道車両用電池の拡販のため実車試験とベンチ試験を進めています。また、顧客要求に対応した電池関連機器の新製品開発や基盤技術・生産技術の向上とコストダウンに向けた取り組みを引き続き進めております。
電源機器の分野では、電源装置の品種拡大と性能向上及び特定用途電源の開発を進めています。平成27年度はAP3000インバータのリニューアルや蓄電池診断装置の拡販と海外展開への取り組みを行いました。風力、太陽光等の自然エネルギーの有効活用を目的としたBMUの開発にも取り組んでおります。
リチウムイオン電池では、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と次期衛星用電池の開発を継続的に進めると共に、小惑星探査機「はやぶさ2」、金星探査機「あかつき」の運用を支援しております。また、安全性が高く、環境負荷の低い水性ペースト式リン酸鉄リチウムイオン電池の開発を進め、スマートコミュニテイ・スマートグリッド用途に向けた実証試験を進めております。
新規事業核、新規事業領域の取り組みとして、平成26年12月に製品化した世界初となる紙製容器でできた非常用マグネシウム空気電池「MgBOX(マグボックス)」を、平成27年度に一般家庭向けに従来の約2分の1に小型化し、省スペースでの保管ができる「MgBOX slim(マグボックススリム)」として開発し、販売を開始しました。
また「MgBOX(マグボックス)」は、紙製容器でできていること、レアメタルや有害物質を使用していないこと、長期間保管が可能なこと、水を入れるだけで使用できることなど、環境にやさしく、ユニークな開発コンセプトであることから、第6回ものづくり日本大賞経済産業大臣賞や、第12回エコプロダクツ大賞推進協議会会長賞をはじめとする数多くの表彰を受け高い評価を得ました。
そのほか、コンピュータシミュレーション技術の活用では、シミュレーションによる鋳造技術向上、成形技術向上を支援すると共に、詳細な電池設計、熱分析、強度解析などの技術構築と熱流体解析ソフトの導入などを行い、新製造技術導入や製品製作前の設計段階における事前解析・品質確認、蓄電池特性の改善、鉛のセービング、工場での生産効率向上等に適用し、開発のスピードアップを図っております。