有価証券報告書-第53期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/19 15:11
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【項目】
81項目

研究開発活動

当社グループは既存の体外診断領域の拡充を図ると共に、個人毎の特性に応じた個別化医療の推進と、より患者様の近くで検査を提供するプライマリケアの推進に取り組んでおります。
個別化医療においては、医薬品の投与に関わるコンパニオン診断薬の開発や、血液からより多くの情報を得るためのリキッドバイオプシー技術の開発に取り組んでおり、プライマリケアにおいては、患者負担の少ない検査法の樹立や、装置の小型化、操作性の向上を目指した開発などに取り組んでおります。
当連結会計年度における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
(1) 2019年4月 マラリア原虫等感染赤血球の自動測定機能を搭載した血球計数検査分野の新製品「Automated Hematology Analyzer XN-31」が、欧州IVD指令に適合してCEマーク※1を取得いたしました。今後、本製品を欧州で発売すると共に、アフリカ・アジアにおいても各国許認可を取得次第順次発売予定であります。
※1 CEマーク:
欧州経済地域内で販売される特定の製品に対して、取得が義務付けられている基準適合マーク。
(2) 2019年5月 当社と国立大学法人大阪大学(以下、大阪大学)は、当社が有する診断技術と大阪大学が有する情報科学分野における知見を活用したヘルスケア分野における新たなイノベーション創出に向け、包括連携契約を締結いたしました。
(3) 2019年6月 2018年12月25日に製造販売承認を取得した「遺伝子変異解析セット(がんゲノムプロファイリング検査用)OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」が、がんゲノムプロファイリング検査用システムとして、日本で初めて保険適用を受けました。
(4) 2019年8月 RAS遺伝子変異検出キット「OncoBEAM™※2 RAS CRCキット」について、国内での製造販売承認を取得いたしました。リキッドバイオプシーによる大腸がんのRAS遺伝子変異検査に用いる体外診断用医薬品としては国内初となります。
※2 OncoBEAM™:
Johns Hopkins大学が開発したBEAMing技術によって血中の微量遺伝子変異を検出する当社の技術名称。
(5) 2019年8月 当社はフローサイトメトリー(FCM)を用いて白血病や悪性リンパ腫診断の詳細解析などを行うクリニカルFCM検査の市場において、その検体の前処理を自動で行う「Sample Preparation System PS-10」を北米市場で発売いたしました。
(6) 2019年9月 当社は臨床検査室の品質と能力に関する要求事項を定めた国際規格ISO 15189※3に基づいた臨床検査室の運営を支援するアプリケーションである「検査品質マネジメント運用支援システム Caresphere™ QM」)を発売いたしました。
※3 ISO 15189:
臨床検査に特化した品質マネジメントシステムのISO規格。
(7) 2019年9月 当社と国立大学法人京都大学(以下、京都大学)は、当社と京都大学 高等研究院 本庶佑特別教授が、2013年から共同で研究開発を行ってきた、可溶性免疫チェックポイント分子(sPD-1、sPD-L1、sCTLA-4)の全自動測定法を構築いたしました。
(8) 2019年10月 当社と国立大学法人神戸大学、神戸市及び公益財団法人神戸医療産業都市推進機構は、臨床情報が紐づいた生体試料(バイオリソース)の活用促進を目的に、産官学連携による一般社団法人 BioResource Innovation Hub in Kobeを設立いたしました。
(9) 2019年11月 当社と株式会社オプティムは、デジタル医療の事業化を加速することを目的に、合弁会社の設立を目指すことに基本合意いたしました。
(10) 2019年12月 当社とエーザイ株式会社は、米国で開催された第12回アルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer's Disease: CTAD)において、血漿中の脳由来アミロイドベータから、脳内アミロイド病理を把握できる可能性が示唆されたことを、当社が代表して発表いたしました。
(11) 2019年12月 体外診断用医薬品「リノアンプ™BC」が、中国国家薬品監督管理局(National Medical Products Administration:NMPA)の薬事承認を取得いたしました。OSNA™法を用いた乳がんリンパ節転移検査システムは、中国においてクラスⅢ※4として初めて薬事承認された分子生物学的手法によるリンパ節転移検査となります。
※4 中国におけるクラスⅢ製品:
中国国家薬品監督管理局(NMPA)は、医療機器及び医薬品のリスクレベルに基づいてクラスⅠからⅢを定めている。クラスⅢは、やや高リスクであり、特別な措置を講じて管理を厳格に制御し、安全性・有効性を保証する必要のある医療機器を指す。
(12) 2020年1月 当社は2018年12月19日に製造販売承認を取得した「ipsogen JAK2 DX試薬」の販売を開始いたしました。本製品は、血液のがんと言われる造血器腫瘍性疾患のうち、真性赤血球増加症(以下、PV)、本態性血小板血症(以下、ET)及び原発性骨髄線維症(以下、PMF)の診断に有用なJAK2V617F遺伝子※5の変異量を測定する遺伝子検査キットであります。また本製品は、日本で初めてPV、ET及びPMFの診断補助を目的とし、2020年1月1日付で保険適用を受けました。
※5 JAK2V617F遺伝子:
JAK2とは、チロシンキナーゼJAK2たんぱく質のことで、血液細胞の増殖や分化を調節するシグナルの伝達を行っている。このJAK2の617番のバリンというアミノ酸が、フェニルアラニンに置き換わる異常のこと。
(13) 2020年1月 当社とAstrego Diagnostics AB(以下、Astrego社)は、Astrego社が開発を進める尿路感染症※6を対象とした迅速薬剤感受性検査※7の製品化を目的に、当社がAstrego社へ出資することに合意いたしました。
※6 尿路感染症:
腎臓から尿の出口までを「尿路」と言い、尿路に細菌が進入し炎症が生じたものを尿路感染症という。膀胱では膀胱炎、腎臓では腎盂腎炎を引き起こす。
※7 薬剤感受性検査:
検体から検出された病原菌に対する各種抗菌薬の効能を調べる検査。
(14) 2020年1月 当社と株式会社理研鼎業は、国立研究開発法人理化学研究所の研究成果を新たな事業の創出につなげ社会へ還元することを目指し、共創契約を締結いたしました。
(15) 2020年1月 米国で開催された米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム2020(American Society of Clinical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium 2020: ASCO-GI 2020)において、聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学 砂川優准教授が、大腸がん患者さんに対する抗EGFR抗体薬の再投与判断における、「OncoBEAM™ RAS CRCキットを用いたリキッドバイオプシーによる大腸がんRAS遺伝子変異検査の有用性についての研究結果を発表いたしました。本研究は、当社と特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構が共同で進めるバイオマーカー研究であります。
(16) 2020年2月 当社と地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立神戸アイセンター病院は、遺伝性網膜変性疾患におけるゲノム医療の臨床実装に関する包括連携契約を締結いたしました。
(17) 2020年3月 当社は、「2019-nCoV検出蛍光リアルタイムRT-PCRキット」について、国内初の体外診断用医薬品製造販売承認を取得いたしました。本製品は、リアルタイムPCR装置と共に利用することで、上気道由来検体(鼻咽頭拭い液)または下気道由来検体(喀痰もしくは肺胞洗浄液)から抽出した新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 以下、SARS-CoV-2)のRNAを検出(SARS-CoV-2感染の診断の補助)することが可能となります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は21,761百万円であります。