有価証券報告書-第53期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/19 15:11
【資料】
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【項目】
81項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来の経営基本方針である「3つの安心」の価値観を受け継ぎ、内外環境変化に適応するために発展的に再定義した新たな企業理念「Sysmex Way」を2007年4月1日に制定いたしました。また、これに基づき、お客様、従業員、取引先、株主、社会に対する提供価値を示した「行動基準」を併せて制定いたしました。
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Mission ヘルスケアの進化をデザインする。
Value 私たちは、独創性あふれる新しい価値の創造と、人々への安心を追求し続けます。
Mind 私たちは、情熱としなやかさをもって、自らの強みと最高のチームワークを発揮します。

これからの当社グループの進むべき方向性と大切にすべき価値観を表した「Sysmex Way」をグループ全体で実践し、社会からのより厚い信頼とさらなる飛躍を目指します。
(2) 経営環境の認識
今後の見通しにつきましては、国内においては、新型コロナウイルスの感染拡大による日本経済の急激な減速が見込まれており、影響の長期化の懸念から先行きに対する不透明感が強まっております。また、海外においても、中国や一部地域にて経済活動の再開が見られるものの、新型コロナウイルスの影響を受け、経済規模が全体的に大きく縮小する見通しとなっております。家計や企業が資金不足に陥る事態を回避するため、各国とも積極的な金融財政政策を打ち出しております。
医療を取り巻く環境につきましては、先進国の高齢化進展、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大と医療の質・サービス向上へのニーズの高まりを受け、人口知能(AI)、情報通信技術(ICT)などの最新技術を取り込んだ構造的な変革が進展しつつあり、さらなる成長機会が見込まれております。ただし、グローバルでの新型コロナウイルス感染拡大を受け、今回のようなパンデミックにも対応可能な医療体制の在り方、公衆衛生の見直しを迫られ、医療環境自体が大きく変容する可能性があります。
当社においても、新型コロナウイルス以外の病気での病院の立ち入り、不要不急の検査の制限措置などにより、病院での検査数の減少など短期的な需要減少の可能性があり、売上高への影響を以下の通り認識しております。
2021年3月期第1四半期:各地域で検査需要減が想定されており、対前年同期で10%~15%減少
2021年3月期第2四半期:中国や欧米で回復傾向がみられ、減少幅が縮小し、対前年同期で微減程度
(注)新型コロナウイルスの感染が終息に向かい、経済活動も徐々に再開する前提であります。
こうした中、当社グループでは、2019年4月より新たな中期経営計画(2020年3月期から2022年3月期まで)をスタートさせました。長期ビジョンに基づくポジショニング目標達成に向けて、グループの力強い成長持続の実現とそれを支える経営の高度化に向けた変革を推進します。血球計数検査・尿検査・血液凝固検査・免疫検査分野における製品ラインアップの拡充、ライフサイエンス事業の拡大及び個別化医療に資する新たな診断価値創出により、成長力・収益力の強化を図ります。また、グループの目標実現に不可欠な人材の獲得・育成とともに、企業経営の効率化と新たな価値創造に向けたビジネスプロセスの変革を推進します。さらに、多様なステークホルダーから支持され続ける会社を目指し、環境へ配慮した製品ライフサイクルの推進、社会への貢献、ガバナンスやリスクマネジメントなどの強化にも取り組んでまいります。
(3) 目標とする経営指標
グループ中期経営計画におきまして、2022年3月期を最終年度として、連結売上高380,000百万円、連結営業利益78,000百万円を達成することを目指します。
(4) 中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題
当社グループは、特徴のある先進的なヘルスケアテスティング企業を目指して、グローバルに販売・サービスネットワークを構築するとともに、検体検査領域を中心とした製品ラインアップの充実に加え、IoTを活用した先進的なサービス&サポートをいち早く提供するなど、独自のソリューションを創出し続けることで継続的な成長を実現してきました。
引き続き、グループの力強い成長持続の実現とそれを支える経営基盤強化を推進するため、血球計数検査・尿検査・血液凝固検査・免疫検査分野といったIVD※事業における地域の特性に応じた製品ラインアップの拡充と販売・サービス体制の強化、ライフサイエンス事業における個別化医療に資する新たな診断価値創出に加え、高品質な製品のより迅速な市場導入を実現するバイオ診断薬拠点の稼働や、品質保証体制、薬事・臨床開発機能などの事業を支える体制強化により持続的な成長を実現します。
また、グループ目標の達成に不可欠な多様な人材の獲得と育成とともに、企業体質の強化と新たな価値創造に向けたビジネスプロセスの改革を推進します。
なお、経営戦略の実行における重要な課題は以下のとおりであります。
<ポジショニング目標達成に向けた取り組み>① IVD事業の成長力再強化
本グループ中期経営計画期間内に、さらなる商品開発力の強化を推進します。
各分野においては、血球計数検査分野では、マーケットニーズに合わせた製品の市場導入、販売体制の強化によるグローバルにおける高成長の実現を目指します。
尿検査分野は、尿定性検査製品のグローバル展開を加速し、尿沈査検査とあわせた尿検査の効率的なワークフロー実現により、事業拡大を目指します。
血液凝固検査分野は、全自動血液凝固測定装置「CN-6000/CN-3000」の導入加速、シーメンス社とのアライアンス、自社試薬のポートフォリオ拡充によりシェア拡大を目指します。
免疫検査分野は、主に肝疾患領域におけるユニーク項目の開発及び試薬項目の認可数増加により市場における存在感を高めるとともに、中国、アジアにおける機器設置台数の増加、肝臓の線維化検査用試薬であるHISCL™ M2BPGi試薬などの既存ユニーク項目を含む試薬の市場導入を加速することで事業拡大を目指します。また、2019年4月に稼働したバイオ診断薬の原材料、診断薬開発、生産、物流を一貫して行うバイオ診断薬拠点「テクノパーク イーストサイト」において、試薬製品の競争力向上、安定供給の強化を図ります。
FCM事業分野は、クリニカルFCMの早期事業化に向け、機器、試薬の開発・市場導入を加速するとともに、医療資源が限定される国や地域に対して、WHOの事前承認を取得した「CyFlow™ Counter System」の導入を推進します。
② ライフサイエンス事業化スピードの加速
OSNA™法を用いたがんリンパ節転移迅速検査のがん種拡大とグローバル展開に加え、FISH検査試薬を有するオックスフォード ジーン テクノロジー アイピー リミテッドとのシナジーにより事業の収益拡大を推進します。また、2019年6月に日本で初めて保険適用を受けた「OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」、理研ジェネシスにおける受託アッセイサービスによるがんゲノム医療の体制強化に加え、2019年8月に日本で初めて体外診断用医薬品として製造販売承認を取得したシスメックス アイノスティクス ゲーエムベーハーのOncoBEAM™ RAS CRCテストや、高感度HISCLのアプリケーション拡大によるリキッドバイオプシー検査市場への参入により、個別化医療に資する新たな診断価値創出を目指します。
③ 品質/品質保証機能の強化
お客様に信頼され続ける高い品質と安定供給体制の強化に向けて、品質保証体制の強化、商品開発段階における設計品質の向上、量産品質の更なる向上を図ります。
④ 事業を支える薬事/臨床開発機能の強化
関連法規制の厳格化が進む環境下でもタイムリーに新製品を市場へ導入し、早期の事業機会獲得を実現するため、グローバルでの製品性能評価体制の強化などに取り組みます。
⑤ デジタル化によるビジネスプロセス改革
企業体質の強化及び新たな価値創造に向けたビジネスプロセスの改革をグローバルに推進するため、次世代基幹システムやデジタル基盤の刷新に取り組みます。
⑥ 人材マネジメントの変革
持続的な成長を支える次世代リーダーと高度専門人材の獲得及び育成を強化するため、グローバルポリシーの制定など人材マネジメントの変革を推進します。
※ IVD(in vitro diagnostics):
一般的には、血液や尿などの検体を用いて身体状態を診断する体外診断を示す。ここでは、体外診断を行うために実施される検体検査の領域を示す。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。