有価証券報告書-第66期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/22 16:53
【資料】
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【項目】
114項目

対処すべき課題

当社グループでは、これまでニッチトップ戦略のもと、国内市場において多くの製品分野でトップシェアを獲得し、確かな事業基盤を構築してまいりました。しかしながら、国内全体の人口減少に伴い、現在のビジネスの延長だけでは今後の成長が見込めないことから、北米を中心とする海外市場と、新しい分野であるTMS(運行管理システム)への積極的な投資を進めてまいりました。現在は上記の基本的な方向性を維持しつつ、2016年4月よりスタートした中期5カ年計画(CA2020(ChallengeAgain 2020)(2016年度~2020年度)の中で、以下の4つの重点課題を掲げております。
① MaaSの実現に向けた新しい価値の創造
先進西ヨーロッパ諸国で広まりつつある移動に関する新しい概念MaaS(Mobility-as-a-Service)を念頭に、当社グループが国内並びに諸外国においてどのような役割を果たし得るのか模索しながら、新しい時代のニーズに即した製品・サービスを社会に提供してまいります。
※当社が考えるMaaSの概念
A地点からB地点に市民が移動する際に、鉄道・バス・タクシー・カーシェア・バイクシェア・徒歩等の様々な移動手段の中で最適な手段を最適な価格でシステム的に提供できるプラットフォームを、社会が市民に提供するという概念。当社グループとしては、全体のシステムの最適化に向け、下記の分野において貢献を果たします。
1) Ticketing & Fare Collection 発券及び運賃収受
2) Operation Support & Real-Time Passenger Information 運行支援及びリアルタイム乗客情報サービス
3) Planning, Reporting & Analyzing 計画、報告、分析
4) Fleet Management 車両管理
② 育成分野への経営資源のスムーズな移行
これまで当社グループは、輸送機器事業と産業機器事業の二つのセグメントを持ち、また両事業の中でも幅広い分野に製品・サービスの提供を行ってまいりました。短期視点においては今後も大きな変更は予定しておりませんが、中長期視点においては自動車も含めた広い意味での移動体サービスの分野により多くのリソースを投入してまいります。また技術分野として、これまで当社グループは、現金のハンドリング技術やICカードの処理技術、インバータ技術等をベースとしたハードウエア製品中心の事業展開を行ってまいりました。しかしながら、目指すべき方向性として、「① MaaSの実現に向けた新しい価値の創造」に掲げたような全体のシステムの最適化に貢献するため、現在はICT技術者の育成並びに採用を積極的に進めております。
③ 海外ビジネスの黒字化
当社グループでは、2010年以降、積極的な海外展開を進めており、各地域において以下の活動を展開しております。海外事業全体としては依然として投資フェーズにありますが、一部の海外子会社においては黒字化するなど各地域において事業基盤が固まりつつあるため、引き続き海外事業全体での黒字化の早期実現を目指します。米国においては、2016年7月に日本企業として初めて米国のバス事業者様に自動運賃収受システムを納入し、2018年3月にも2例目の実績を積み上げることが出来ました。この納入実績をベースに、今後も積極的な応札活動を進めます。また鉄道分野においても、日系車両メーカーとの繋がりをベースに車両用灯具の大型案件を受注し、2017年7月より現地にて量産体制に移行しています。欧州・スウェーデンにおいては、非接触クレジットカード決済対応の開発を進めており、2016年12月に標準規格であるEMVCO L1を取得いたしました。現在は新型ICカード読み取り機の開発を進めており、近い時期での上市を目指しています。シンガポールにおいては、同国の全バス車両を網羅した運行管理システムが安定稼働中です。また、シンガポール政府がEV化を含めたバス車両の更新を進めており、車両メーカー各社との連携を強化し、車内表示器等の受注に繋げています。タイにおいては、タイ並びにASEAN地区をターゲットエリアとして、バッテリーフォークリフト用充電器の拡販を行っており、順調にシェアを伸ばしています。
④ 業務プロセス改善による生産性の向上
営業、設計・開発、製造等の各部門において、従来システムの老朽化やサポートの終了に伴う各種システムの刷新を順次行っており、新システムの導入に併せた業務プロセスの大幅な見直しにより、作業の効率化と生産性の向上を進めております。また、人手不足が顕著な製造現場においては、従来からのIE手法による現場改善に加え、RPA(Robotic Process Automation)による自動化の範囲を広げることにより、製造工数の削減に努めています。加えて、働き方改革の一環として2017年4月よりテレワーク等の新制度を導入し、労働時間・職場環境に柔軟性を持たせるとともに、そのような働き方を可能にするITインフラ環境の整備に努めています。