有価証券報告書-第122期(2024/04/01-2025/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績等の状況
当連結会計年度の世界経済は、安定性を保ってはいるものの、米国の好調をアジア及び一部欧州の弱さが相殺するなど、その基盤の強さは国・地域により異なります。そのような状況下、米国の新政権が「米国第一」を方針に、相互関税の導入や不法移民対策等を矢継ぎ早に実施し、その保護主義的かつ予見不可能な政策で世界経済に影響を与え、特に米中対立は激化の様相を呈しております。一方、国内経済は、家計所得の改善による個人消費の持ち直しや企業業績及び設備投資の伸びなどによるゆるやかな回復を想定しておりますが、直接間接を問わず米国の政策から受ける影響は無視できない状況にあります。
当社グループの舶用推進システム事業と関連性の高い造船業界では、期近船台が完売し、商談が4年以上の先物まで進むなど、国内造船所は十分な手持ち工事量を確保しております。また、物流システム事業についても、米国では関税の影響が想定されるものの引き続き優位性は維持しており、アジア地域の物流需要も堅調、国内においても新設、増設に加え、老朽化更新などの需要が堅調と、主力事業の受注環境は総じて良好と認識しております。
ただし、米国の相互関税に対する各国の対応、金利・為替の急激な変動等、先行きの不確実性は高まっています。それぞれのリスクに対しては、有利子負債の圧縮や為替予約等を通じて適切に対応しておりますが、当面は予断を許さない状況が続くものと認識しております。
このような状況下、2024年6月に実施した三井海洋開発株式会社の株式の一部売却等によって得た約700億円の資金は、事業戦略、財務戦略、及びステークホルダーへの利益還元の3点から、以下の用途に段階的に充てて実行しております。
① 物流システム事業の米国含めた世界市場展開に必要な投資、舶用推進システム事業に関連する重要部品の技術開発や製造に必要な投資、及びサプライチェーンの強化に必要な投資
② A種優先株式の償還、有利子負債の大幅な圧縮による財務健全性の向上、並びにこれに伴う金融費用の大幅な低減
③ 一般株主への利益還元及び人材育成や住宅支援等の制度改革を軸とした人的資本への投資
①については、米国を含む海外向けクレーン・ビジネスの柔軟性向上と短納期対応の実現に向けクレーン輸送船の保有計画を進め、2025年4月に取得完了いたしました。②については、2024年7月にA種優先株式の全部取得及び消却を完了したほか、有利子負債の大幅な圧縮並びに借入金の短期から長期への一部転換を実施し、当社グループの流動比率は大幅に改善しました。③については、利益還元として2024年8月及び2025年2月に配当予想を上方修正し、人材育成の一環として博士人材向け支援制度を導入し、その他にも人事制度、教育制度の全面的見直し、当社並びに当社グループ内での人材流動化を図っております。今後も各種投資の継続的な実施、利益成長に伴う更なる財務基盤の強化や利益還元の段階的な拡大を可能とする好循環を生みだし、当社グループの進化と持続に向けた企業価値向上に繋げてまいります。
一方、為替や市況など当社グループをとりまく事業環境は大きく、かつ急激に変化を続けております。当社グループは、事業基盤の強化及び変化の激しい事業環境を踏まえ、3年後の姿を固定するのではなく常に更新し続け、成長し続ける姿を描くローリング式中期経営計画として「三井E&S Rolling Vision 2024」を2024年8月に策定しました。この計画のもとで、中核事業の舶用推進システム事業・物流システム事業を「グリーン」と「デジタル」の切り口で発展させる戦略を継続しております。
舶用推進システム事業では、アンモニア燃料について、当社を含む日本5社連合とMAN Energy Solutionsの6社間で、アンモニア燃料船の商用化に向けた共同開発を進めることに合意し、覚書を締結しました。また、当社の三井-MAN B&W エンジン生産量は累計1億2千万馬力を2024年11月に達成し、2025年2月には世界初アンモニア焚き大型低速二元燃料エンジン及び燃料供給装置商用機の試験運転を開始しました。今後も世界初号機となるMAN B&Wアンモニア焚機関及びアンモニア燃料供給装置等周辺システムを供給し、舶用推進システムサプライヤーとして海上物流分野で脱炭素社会の実現に持続的に貢献してまいります。
物流システム事業では、当社と当社の子会社パセコ社(本社:米国 カリフォルニア)が、ブルックフィールド社(本社:カナダ トロント)と、米国カリフォルニアにおいて港湾クレーンの最終組立を行うための検討を進めております。米国での新政権発足に伴い、脱炭素化の流れは一時的に後退する可能性はあるものの、港湾物流事業の米国市場環境は大きく変化しないものと想定しており、引き続き米国の港湾インフラの安全確保と脱炭素化の社会課題解決に当社が貢献できることを期待しています。その第一段として、2024年2月に米国政府が発表した重要な商業用港湾に配備されている中国製のクレーンに対するサイバーリスク管理対策にかかる指令文書公示後、当社初の米国のカリフォルニア州ロングビーチ港向けに、将来のゼロエミッション化を見据えたニアゼロエミッション型タイヤ式門型クレーン(三井パセコトランステーナ)8基を2024年11月に受注しております。
さらに、中核事業の周辺領域において新しい製品やサービスを推進する事業を成長事業と位置づけており、2024年10月に洋上水素ステーション用途の高圧大流量往復動圧縮機を1台受注しました。引き続き、脱炭素化を念頭に置いた新製品やサービスの開発に注力してまいります。その他、船体汚損管理サービス、港湾クレーンのドローンによる点検サービス及び港湾ターミナルの運営効率化など、デジタル技術高度化による保守メンテナンスサービスの分野でのビジネスを拡大させることにより人口縮小社会の課題解決に取り組み、更なる企業価値向上に取り組んでまいります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ179億27百万円減少の4,492億12百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ455億71百万円減少の2,750億58百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ276億43百万円増加の1,741億54百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、受注高は4,216億99百万円(前期比+25.1%)、売上高は3,151億12百万円(前期比+4.4%)、営業利益は231億30百万円(前期比+17.8%)、経常利益は277億56百万円(前期比+34.0%)、親会社株主に帰属する当期純利益は390億74百万円(前期比+56.0%)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりとなりました。
(成長事業推進)
受注高は459億53百万円(△1.9%)、売上高は400億17百万円(△1.9%)、営業利益は68億31百万円(+16.1%)となりました。
(舶用推進システム)
受注高は2,129億32百万円(+44.2%)、売上高は1,355億6百万円(+1.1%)、営業利益は74億76百万円(+16.2%)となりました。
(物流システム)
受注高は761億12百万円(+7.8%)、売上高は627億67百万円(+31.8%)、営業利益は59億54百万円(+94.9%)となりました。
(周辺サービス)
受注高は865億62百万円(+20.9%)、売上高は751億93百万円(+1.4%)、営業損失は16億15百万円(前期は23億54百万円の利益)となりました。
(海洋開発)
持分法による投資利益は、当社の持分法適用関連会社であった三井海洋開発株式会社及びその関係会社において、FPSOの建造工事の進捗による収益計上などにより、37億57百万円(△41.0%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて1億40百万円減少して333億76百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、148億52百万円(前連結会計年度は344億35百万円の支出)となりました。これは主として、売上債権及び契約資産の増加及び下請法代金支払遅延等防止法の運用改正に伴う手形サイト短縮に起因する仕入債務の減少などによる支出があった一方、税金等調整前当期純利益の計上及び契約負債の増加などによる収入があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の収入は、609億2百万円(前連結会計年度は3億54百万円の支出)となりました。これは主として、関係会社株式の売却などによる収入があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の支出は、765億66百万円(前連結会計年度は241億10百万円の収入)となりました。これは主として、長期借入れなどによる収入があった一方、短期借入金の返済及びA種優先株式の消却を目的とする自己株式の取得などによる支出があったことによるものであります。
[財政状態の推移:連結ベース]
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されていたため、生産実績は記載しておりません。なお、2024年6月に同セグメントを構成していた三井海洋開発株式会社及びその関係会社を持分法適用の範囲から除外しております。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されていたため、受注実績は記載しておりません。なお、2024年6月に同セグメントを構成していた三井海洋開発株式会社及びその関係会社を持分法適用の範囲から除外しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しております。
3.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されていたため、販売実績は記載しておりません。なお、2024年6月に同セグメントを構成していた三井海洋開発株式会社及びその関係会社を持分法適用の範囲から除外しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、主な内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項」に記載しております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
当連結会計年度末の財政状態の概況は、関係会社株式の一部売却により得た資金を有利子負債の圧縮に充てたことにより、総資産が圧縮されております。また、合わせて短期借入金から長期借入金への一部転換を行ったことにより、短期借入金は大幅に減少し、流動比率が大きく改善されております。
資産は、前連結会計年度末と比べ179億27百万円減少の4,492億12百万円となりました。これは、受取手形、売掛金及び契約資産が109億36百万円、繰延税金資産が74億40百万円それぞれ増加した一方、投資有価証券が464億62百万円減少したことなどによります。
負債は、前連結会計年度末と比べ455億71百万円減少の2,750億58百万円となりました。これは、契約負債が133億78百万円、長期借入金が330億12百万円それぞれ増加した一方、短期借入金が1,019億30百万円減少したことなどによります。
純資産は、A種優先株式の取得及び消却による資本剰余金の減少などがあった一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末と比べ276億43百万円増加の1,741億54百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の受注高は、前連結会計年度と比べて847億12百万円増加(+25.1%)の4,216億99百万円となりました。
売上高は、物流システム事業において大型工事が順調に進捗したことにより、前連結会計年度と比べて132億37百万円増加(+4.4%)の3,151億12百万円となりました。
営業利益は、物流システム事業の損益が改善したことなどにより、前連結会計年度と比べて35億円増加(+17.8%)の231億30百万円となりました。
経常利益は、持分法による投資利益の計上及び金融費用の大幅な減少などにより前連結会計年度と比べて70億44百万円増加(+34.0%)の277億56百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、関係会社株式売却益の計上などにより、前連結会計年度と比べて140億23百万円増加(+56.0%)の390億74百万円となりました。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(成長事業推進)
脱炭素分野では、中核事業の周辺領域で新しい製品やサービスを推進しており、水素燃料船に水素供給を行う日本初の洋上水素ステーション向けとして、新規に開発した高圧大流量水素圧縮機を国内で初受注しました。また、国内製鉄所向け高炉用送風機の大型案件を受注したほか、国内外のSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)製造プラント用途や水素関連用途での往復動圧縮機の引き合いにも多数対応中であり、世界的な脱炭素化の流れに当社の技術を活用し、水素関連市場への取り組みを強化していきます。
デジタル分野では、港湾における荷役業務の効率化を目的とし、コンテナターミナルの荷役計画や荷役機器に関する各種データの収集、整理、分析、及び運用手法を組み合わせることで、デジタル化による効率向上、持続可能な港湾維持、国際競争力強化を支援する港湾デジタルソリューションの開発を進めています。港湾機能の維持、生産性向上・強化の必要性は、今後ますます高まってくると予想され、これら製品・サービスの提供を通じて、労働人口減少対策や国際競争力強化へ貢献していきます。
受注高及び売上高は、産業機械製品や建設機械用エンジンの減少などにより、それぞれ、前期と比べて8億75百万円減少(△1.9%)の459億53百万円、7億92百万円減少(△1.9%)の400億17百万円となったものの、営業利益は、産業機械製品の採算が改善したことなどにより、前期と比べて9億48百万円増加(+16.1%)の68億31百万円となりました。
(舶用推進システム)
GHG排出量削減需要により二元燃料エンジンの受注が増加しており、二元燃料エンジンの受注割合は2023年度の10%から、2025年度は20%まで伸びる見通しです。
2024年度はメタノール焚きエンジンの受注が増加し、2015年以来となるメタノール焚きエンジンを納入しました。また、MAN Energy Solutions SE(MAN)のライセンスエンジンのみならず、Winterthur Gas & Diesel Ltd.(WinGD)のライセンスのメタノール焚きエンジンの需要も伸びており、玉野工場では両ライセンスのエンジンの試運転が可能な運転設備の増強を進めています。
アンモニア焚きエンジンに関して、2025年2月に世界初となる大型低速2サイクルエンジン商用機のアンモニア燃料による試験運転を開始しました。他社に先駆けて安全性や信頼性向上のための各種試験を実施し、ゼロエミッション船の普及に向けたエンジン並びに燃料供給装置を市場投入いたします。
また、当社玉野工場及び連結子会社である株式会社三井E&S DU 相生工場の一体運営により、両工場でMAN/WinGD両ライセンスエンジンの柔軟な生産体制を構築し、顧客ニーズに対応した高品質なエンジンを供給してまいります。
アフターサービスについては、環境規制対応の需要などにより受注・売上ともに好調で、2025年度以降も電子制御エンジンのドック工事の増加により、高水準が続くものと見込んでいます。
受注高は、大型エンジンや二元燃料エンジンの案件が増加したことなどにより、前期と比べて652億61百万円増加(+44.2%)の2,129億32百万円となりました。売上高は、前期並みの1,355億6百万円(前期:1,340億33百万円)となり、営業利益は、アフターサービス事業が好調に推移したことなどにより、前期と比べて10億45百万円増加(+16.2%)の74億76百万円となりました。
(注)「MAN Energy Solutions SE」は2025年6月に「Everllence SE」へ商号変更しております。
(物流システム)
ベトナムにおける大型案件の連続受注、バングラデシュのODA案件など、海外での受注は好調を維持しております。国内においても主要港、地方港ともに需要が堅調であり、国内外合わせ2期連続で過去最高の受注高となりました。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で実証を行っている世界初のゼロ・エミッショントランステーナ(水素燃料電池パワーパック駆動のトランステーナ)については、米国ロサンゼルス港にて実証事業を開始し、想定を上回る燃費効率を実現しています。国内においても、東京港及び横浜港にて既設トランステーナを水素燃料電池パワーパックに換装、神戸港では水素エンジン発電機に換装し、それぞれ稼働実証を行っております。引き続き、脱炭素社会へ向け製品の商業化を進めてまいります。
また、米国での港湾インフラの安全確保に貢献するために、Build America Buy America Act(BABA)への準拠に関して、既にクレーンを構成する調達品のうち55%の米国製品の採用及び米国におけるクレーンの最終組立については検討を終えましたが、米国の政権交代により戦略の見直しが必要となっていることから、米国の政策を引き続き注視し、事前検討・準備を進めています。
アフターサービス関連では、老朽化更新に伴う既設機の改修工事が好調なことに加え、国内及び米国・東南アジア・アフリカなど国内外のパーツサプライが受注・売上ともに好調で昨年に続き過去最高を記録しました。クレーンリモートモニタリングシステムは、国内の地方港を中心に既設の搭載に加え、新設クレーンにも搭載を開始しており、メンテナンスサービスの拡充を進めてまいります。
受注高は、国内を始めアジア諸国や米国など海外でも大型案件の受注が続き、過去最高の受注高を記録した前期と比べて55億39百万円増加(+7.8%)の761億12百万円となりました。売上高は、大型工事の順調な進捗などにより、前期と比べて151億30百万円増加(+31.8%)の627億67百万円となり、営業利益は、売上高の増加や大型工事の採算改善などにより、前期と比べて28億99百万円増加(+94.9%)の59億54百万円となりました。この結果、受注高、売上高及び営業利益いずれも過去最高を記録しました。
(周辺サービス)
周辺サービス事業においては、国内子会社におけるシステム関連の安定した受注と売上により牽引されました。しかし、海外子会社での受注契約時期の遅延や工事採算の悪化により、利益面で前期を下回る結果となりました。
受注高は、予定していた案件を順調に獲得した結果、前期と比べて149億44百万円増加(+20.9%)の865億62百万円となりました。売上高は、前期並みの751億93百万円(前期:741億41百万円)となり、営業損益は、海外子会社における長期契約工事の将来コスト増加分を反映した影響などにより、前期の23億54百万円の利益から16億15百万円の損失となりました。
(海洋開発)
当社の持分法適用関連会社であった三井海洋開発株式会社及びその関係会社において、FPSOの建造工事の順調な進捗による収益計上などにより、持分法による投資利益は、37億57百万円となりました。前期と比べて26億9百万円減少(△41.0%)したのは、2024年6月に三井海洋開発株式会社の株式の一部を売却し、持分法適用の範囲から除外したことに伴い、同社グループに係る持分法による投資損益の認識が2024年1月から3月までの3ヵ月分となったことによります。
c. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a. 資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、当社グループの製品製造のための材料費、外注費、人件費等の運転資金需要や、投資資金需要であります。このうち、運転資金需要については、今般の豊富な受注残高を背景に旺盛な状況が継続しております。投資資金需要は、主に中核事業のグリーン戦略・デジタル戦略を推進するために必要な成長投資資金及び製造工場を維持・増強するための設備投資資金になります。
当社グループでは、有利子負債の過度な増加を抑制する観点から、運転資金の増加を適切にコントロールしていくとともに、設備投資、投融資などの長期性資金については、主力事業への成長投資資金に集中させることで、一時的な多額の資金支出を抑制していく方針としております。
b. 資金調達
当社グループの運転資金需要、投資資金需要に対しては、事業活動で得たキャッシュ・フローにて賄うことを基本とし、日々の資金の動きで不足が生じた場合は、金融機関からの借入等により調達しております。借入金を適時調達できる状態を維持するため、取引金融機関とは長年にわたる良好な取引関係を維持・構築しており、加えて、一部の金融機関とはコミットメントラインを設定することにより、緊急の資金需要にも備えております。また、上場子会社を除いた国内連結子会社との間ではCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、グループ全体での資金効率を高め、安定的に資金の流動性を確保できる体制を構築しております。
なお、当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。
(単位:百万円)
※当社では、リース債務を別管理しております
④ 経営計画の達成・進捗状況
当社グループは、2022年5月に公表した2023年度中期経営計画において、有利子負債の削減や資産の有効活用を重視し、売上至上主義からの脱却を図るなど、健全な財務体質と堅実な利益の追求を目的として、連結営業利益率、自己資本比率及びNET有利子負債EBITDA倍率を経営指標として選定しました。2025年度を最終年度とする本中計では、連結営業利益率:6.0%、自己資本比率:26.0%、NET有利子負債EBITDA倍率:5.0倍を目標として設定しておりましたが、2023年度において、すべての指標を前倒しで達成いたしました。
一方で、為替や市況など、当社グループを取り巻く事業環境は依然として大きく、かつ急激に変化していることを踏まえ、3年後の姿を固定するのではなく常に更新し続け、成長し続ける姿を描くローリング式中期経営計画として「三井E&S Rolling Vision 2024」(以下、「RV2024」)を2024年8月に策定しました。本計画では、舶用推進システム事業及び物流システム事業を中核とし、「グリーン」と「デジタル」の視点から事業を発展させる戦略を継続しております。
更に、2024年度の業績がRV2024の計画を上回り進捗したこと、事業環境が変化していることを踏まえ、2027年度までの機能戦略(財務・人材)及び事業戦略をローリングした「三井E&S Rolling Vision 2025」(以下、「RV2025」)を2025年5月に策定しました。米国市場におけるビジネス環境の不透明性を考慮してその動向を慎重に見極めつつ、RV2025の数値計画達成に向け、中核事業のさらなる成長と新規事業の拡大を進めてまいります。
当社グループは、2030年に目指す姿の実現に向けて、必要な事業投資を着実に進めるとともに、適正な配当政策を通じた株主還元を行い、株主資本コストと負債コストのバランスを意識した企業価値の向上に努めてまいります。
RV2024、RV2025の各施策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。
※ ROIC=(営業利益-法人税等合計)÷(株主資本と有利子負債の前当期末平均)
① 財政状態及び経営成績等の状況
当連結会計年度の世界経済は、安定性を保ってはいるものの、米国の好調をアジア及び一部欧州の弱さが相殺するなど、その基盤の強さは国・地域により異なります。そのような状況下、米国の新政権が「米国第一」を方針に、相互関税の導入や不法移民対策等を矢継ぎ早に実施し、その保護主義的かつ予見不可能な政策で世界経済に影響を与え、特に米中対立は激化の様相を呈しております。一方、国内経済は、家計所得の改善による個人消費の持ち直しや企業業績及び設備投資の伸びなどによるゆるやかな回復を想定しておりますが、直接間接を問わず米国の政策から受ける影響は無視できない状況にあります。
当社グループの舶用推進システム事業と関連性の高い造船業界では、期近船台が完売し、商談が4年以上の先物まで進むなど、国内造船所は十分な手持ち工事量を確保しております。また、物流システム事業についても、米国では関税の影響が想定されるものの引き続き優位性は維持しており、アジア地域の物流需要も堅調、国内においても新設、増設に加え、老朽化更新などの需要が堅調と、主力事業の受注環境は総じて良好と認識しております。
ただし、米国の相互関税に対する各国の対応、金利・為替の急激な変動等、先行きの不確実性は高まっています。それぞれのリスクに対しては、有利子負債の圧縮や為替予約等を通じて適切に対応しておりますが、当面は予断を許さない状況が続くものと認識しております。
このような状況下、2024年6月に実施した三井海洋開発株式会社の株式の一部売却等によって得た約700億円の資金は、事業戦略、財務戦略、及びステークホルダーへの利益還元の3点から、以下の用途に段階的に充てて実行しております。
① 物流システム事業の米国含めた世界市場展開に必要な投資、舶用推進システム事業に関連する重要部品の技術開発や製造に必要な投資、及びサプライチェーンの強化に必要な投資
② A種優先株式の償還、有利子負債の大幅な圧縮による財務健全性の向上、並びにこれに伴う金融費用の大幅な低減
③ 一般株主への利益還元及び人材育成や住宅支援等の制度改革を軸とした人的資本への投資
①については、米国を含む海外向けクレーン・ビジネスの柔軟性向上と短納期対応の実現に向けクレーン輸送船の保有計画を進め、2025年4月に取得完了いたしました。②については、2024年7月にA種優先株式の全部取得及び消却を完了したほか、有利子負債の大幅な圧縮並びに借入金の短期から長期への一部転換を実施し、当社グループの流動比率は大幅に改善しました。③については、利益還元として2024年8月及び2025年2月に配当予想を上方修正し、人材育成の一環として博士人材向け支援制度を導入し、その他にも人事制度、教育制度の全面的見直し、当社並びに当社グループ内での人材流動化を図っております。今後も各種投資の継続的な実施、利益成長に伴う更なる財務基盤の強化や利益還元の段階的な拡大を可能とする好循環を生みだし、当社グループの進化と持続に向けた企業価値向上に繋げてまいります。
一方、為替や市況など当社グループをとりまく事業環境は大きく、かつ急激に変化を続けております。当社グループは、事業基盤の強化及び変化の激しい事業環境を踏まえ、3年後の姿を固定するのではなく常に更新し続け、成長し続ける姿を描くローリング式中期経営計画として「三井E&S Rolling Vision 2024」を2024年8月に策定しました。この計画のもとで、中核事業の舶用推進システム事業・物流システム事業を「グリーン」と「デジタル」の切り口で発展させる戦略を継続しております。
舶用推進システム事業では、アンモニア燃料について、当社を含む日本5社連合とMAN Energy Solutionsの6社間で、アンモニア燃料船の商用化に向けた共同開発を進めることに合意し、覚書を締結しました。また、当社の三井-MAN B&W エンジン生産量は累計1億2千万馬力を2024年11月に達成し、2025年2月には世界初アンモニア焚き大型低速二元燃料エンジン及び燃料供給装置商用機の試験運転を開始しました。今後も世界初号機となるMAN B&Wアンモニア焚機関及びアンモニア燃料供給装置等周辺システムを供給し、舶用推進システムサプライヤーとして海上物流分野で脱炭素社会の実現に持続的に貢献してまいります。
物流システム事業では、当社と当社の子会社パセコ社(本社:米国 カリフォルニア)が、ブルックフィールド社(本社:カナダ トロント)と、米国カリフォルニアにおいて港湾クレーンの最終組立を行うための検討を進めております。米国での新政権発足に伴い、脱炭素化の流れは一時的に後退する可能性はあるものの、港湾物流事業の米国市場環境は大きく変化しないものと想定しており、引き続き米国の港湾インフラの安全確保と脱炭素化の社会課題解決に当社が貢献できることを期待しています。その第一段として、2024年2月に米国政府が発表した重要な商業用港湾に配備されている中国製のクレーンに対するサイバーリスク管理対策にかかる指令文書公示後、当社初の米国のカリフォルニア州ロングビーチ港向けに、将来のゼロエミッション化を見据えたニアゼロエミッション型タイヤ式門型クレーン(三井パセコトランステーナ)8基を2024年11月に受注しております。
さらに、中核事業の周辺領域において新しい製品やサービスを推進する事業を成長事業と位置づけており、2024年10月に洋上水素ステーション用途の高圧大流量往復動圧縮機を1台受注しました。引き続き、脱炭素化を念頭に置いた新製品やサービスの開発に注力してまいります。その他、船体汚損管理サービス、港湾クレーンのドローンによる点検サービス及び港湾ターミナルの運営効率化など、デジタル技術高度化による保守メンテナンスサービスの分野でのビジネスを拡大させることにより人口縮小社会の課題解決に取り組み、更なる企業価値向上に取り組んでまいります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ179億27百万円減少の4,492億12百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ455億71百万円減少の2,750億58百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ276億43百万円増加の1,741億54百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、受注高は4,216億99百万円(前期比+25.1%)、売上高は3,151億12百万円(前期比+4.4%)、営業利益は231億30百万円(前期比+17.8%)、経常利益は277億56百万円(前期比+34.0%)、親会社株主に帰属する当期純利益は390億74百万円(前期比+56.0%)となりました。
| [経営成績の推移:連結ベース] | ||||||
| 受注高 (百万円) | 売上高 (百万円) | 営業利益 (百万円) | 経常利益 (百万円) | 親会社株主に帰属する当期純利益 (百万円) | 1株当たり 当期純利益 (円) | |
| 2025年3月期 | 421,699 | 315,112 | 23,130 | 27,756 | 39,074 | 385.39 |
| 2024年3月期 | 336,987 | 301,875 | 19,630 | 20,711 | 25,051 | 255.73 |
| 2023年3月期 | 322,351 | 262,301 | 9,376 | 12,532 | 15,554 | 177.47 |
セグメントごとの経営成績は次のとおりとなりました。
(成長事業推進)
受注高は459億53百万円(△1.9%)、売上高は400億17百万円(△1.9%)、営業利益は68億31百万円(+16.1%)となりました。
(舶用推進システム)
受注高は2,129億32百万円(+44.2%)、売上高は1,355億6百万円(+1.1%)、営業利益は74億76百万円(+16.2%)となりました。
(物流システム)
受注高は761億12百万円(+7.8%)、売上高は627億67百万円(+31.8%)、営業利益は59億54百万円(+94.9%)となりました。
(周辺サービス)
受注高は865億62百万円(+20.9%)、売上高は751億93百万円(+1.4%)、営業損失は16億15百万円(前期は23億54百万円の利益)となりました。
(海洋開発)
持分法による投資利益は、当社の持分法適用関連会社であった三井海洋開発株式会社及びその関係会社において、FPSOの建造工事の進捗による収益計上などにより、37億57百万円(△41.0%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて1億40百万円減少して333億76百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、148億52百万円(前連結会計年度は344億35百万円の支出)となりました。これは主として、売上債権及び契約資産の増加及び下請法代金支払遅延等防止法の運用改正に伴う手形サイト短縮に起因する仕入債務の減少などによる支出があった一方、税金等調整前当期純利益の計上及び契約負債の増加などによる収入があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の収入は、609億2百万円(前連結会計年度は3億54百万円の支出)となりました。これは主として、関係会社株式の売却などによる収入があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の支出は、765億66百万円(前連結会計年度は241億10百万円の収入)となりました。これは主として、長期借入れなどによる収入があった一方、短期借入金の返済及びA種優先株式の消却を目的とする自己株式の取得などによる支出があったことによるものであります。
[財政状態の推移:連結ベース]
| 総資産 (百万円) | 純資産 (百万円) | 自己資本比率 (%) | 営業活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) | 投資活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) | 財務活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) | 有利子 負債残高 (百万円) | |
| 2025年3月期 | 449,212 | 174,154 | 37.8 | 14,852 | 60,902 | △76,566 | 97,850 |
| 2024年3月期 | 467,140 | 146,510 | 30.4 | △34,435 | △354 | 24,110 | 162,012 |
| 2023年3月期 | 439,959 | 110,686 | 24.2 | △15,043 | △2,999 | 9,515 | 141,547 |
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前期比(%) |
| 成長事業推進 | 38,839 | △4.6 |
| 舶用推進システム | 139,270 | △3.2 |
| 物流システム | 62,007 | 38.1 |
| 周辺サービス | 73,526 | △6.0 |
| 海洋開発 | - | - |
| その他 | 1,470 | △70.8 |
| 合計 | 315,114 | 0.8 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されていたため、生産実績は記載しておりません。なお、2024年6月に同セグメントを構成していた三井海洋開発株式会社及びその関係会社を持分法適用の範囲から除外しております。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 前期比(%) | 受注残高 (百万円) | 前期比(%) |
| 成長事業推進 | 45,953 | △1.9 | 40,124 | 14.7 |
| 舶用推進システム | 212,932 | 44.2 | 161,819 | 91.7 |
| 物流システム | 76,112 | 7.8 | 95,884 | 17.8 |
| 周辺サービス | 86,562 | 20.9 | 188,789 | 4.8 |
| 海洋開発 | - | - | - | - |
| その他 | 137 | △53.4 | 104 | △93.3 |
| 合計 | 421,699 | 25.1 | 486,722 | 27.3 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されていたため、受注実績は記載しておりません。なお、2024年6月に同セグメントを構成していた三井海洋開発株式会社及びその関係会社を持分法適用の範囲から除外しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前期比(%) |
| 成長事業推進 | 40,017 | △1.9 |
| 舶用推進システム | 135,506 | 1.1 |
| 物流システム | 62,767 | 31.8 |
| 周辺サービス | 75,193 | 1.4 |
| 海洋開発 | - | - |
| その他 | 1,626 | △69.0 |
| 合計 | 315,112 | 4.4 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しております。
3.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されていたため、販売実績は記載しておりません。なお、2024年6月に同セグメントを構成していた三井海洋開発株式会社及びその関係会社を持分法適用の範囲から除外しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、主な内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項」に記載しております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
当連結会計年度末の財政状態の概況は、関係会社株式の一部売却により得た資金を有利子負債の圧縮に充てたことにより、総資産が圧縮されております。また、合わせて短期借入金から長期借入金への一部転換を行ったことにより、短期借入金は大幅に減少し、流動比率が大きく改善されております。
資産は、前連結会計年度末と比べ179億27百万円減少の4,492億12百万円となりました。これは、受取手形、売掛金及び契約資産が109億36百万円、繰延税金資産が74億40百万円それぞれ増加した一方、投資有価証券が464億62百万円減少したことなどによります。
負債は、前連結会計年度末と比べ455億71百万円減少の2,750億58百万円となりました。これは、契約負債が133億78百万円、長期借入金が330億12百万円それぞれ増加した一方、短期借入金が1,019億30百万円減少したことなどによります。
純資産は、A種優先株式の取得及び消却による資本剰余金の減少などがあった一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末と比べ276億43百万円増加の1,741億54百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の受注高は、前連結会計年度と比べて847億12百万円増加(+25.1%)の4,216億99百万円となりました。
売上高は、物流システム事業において大型工事が順調に進捗したことにより、前連結会計年度と比べて132億37百万円増加(+4.4%)の3,151億12百万円となりました。
営業利益は、物流システム事業の損益が改善したことなどにより、前連結会計年度と比べて35億円増加(+17.8%)の231億30百万円となりました。
経常利益は、持分法による投資利益の計上及び金融費用の大幅な減少などにより前連結会計年度と比べて70億44百万円増加(+34.0%)の277億56百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、関係会社株式売却益の計上などにより、前連結会計年度と比べて140億23百万円増加(+56.0%)の390億74百万円となりました。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(成長事業推進)
脱炭素分野では、中核事業の周辺領域で新しい製品やサービスを推進しており、水素燃料船に水素供給を行う日本初の洋上水素ステーション向けとして、新規に開発した高圧大流量水素圧縮機を国内で初受注しました。また、国内製鉄所向け高炉用送風機の大型案件を受注したほか、国内外のSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)製造プラント用途や水素関連用途での往復動圧縮機の引き合いにも多数対応中であり、世界的な脱炭素化の流れに当社の技術を活用し、水素関連市場への取り組みを強化していきます。
デジタル分野では、港湾における荷役業務の効率化を目的とし、コンテナターミナルの荷役計画や荷役機器に関する各種データの収集、整理、分析、及び運用手法を組み合わせることで、デジタル化による効率向上、持続可能な港湾維持、国際競争力強化を支援する港湾デジタルソリューションの開発を進めています。港湾機能の維持、生産性向上・強化の必要性は、今後ますます高まってくると予想され、これら製品・サービスの提供を通じて、労働人口減少対策や国際競争力強化へ貢献していきます。
受注高及び売上高は、産業機械製品や建設機械用エンジンの減少などにより、それぞれ、前期と比べて8億75百万円減少(△1.9%)の459億53百万円、7億92百万円減少(△1.9%)の400億17百万円となったものの、営業利益は、産業機械製品の採算が改善したことなどにより、前期と比べて9億48百万円増加(+16.1%)の68億31百万円となりました。
(舶用推進システム)
GHG排出量削減需要により二元燃料エンジンの受注が増加しており、二元燃料エンジンの受注割合は2023年度の10%から、2025年度は20%まで伸びる見通しです。
2024年度はメタノール焚きエンジンの受注が増加し、2015年以来となるメタノール焚きエンジンを納入しました。また、MAN Energy Solutions SE(MAN)のライセンスエンジンのみならず、Winterthur Gas & Diesel Ltd.(WinGD)のライセンスのメタノール焚きエンジンの需要も伸びており、玉野工場では両ライセンスのエンジンの試運転が可能な運転設備の増強を進めています。
アンモニア焚きエンジンに関して、2025年2月に世界初となる大型低速2サイクルエンジン商用機のアンモニア燃料による試験運転を開始しました。他社に先駆けて安全性や信頼性向上のための各種試験を実施し、ゼロエミッション船の普及に向けたエンジン並びに燃料供給装置を市場投入いたします。
また、当社玉野工場及び連結子会社である株式会社三井E&S DU 相生工場の一体運営により、両工場でMAN/WinGD両ライセンスエンジンの柔軟な生産体制を構築し、顧客ニーズに対応した高品質なエンジンを供給してまいります。
アフターサービスについては、環境規制対応の需要などにより受注・売上ともに好調で、2025年度以降も電子制御エンジンのドック工事の増加により、高水準が続くものと見込んでいます。
受注高は、大型エンジンや二元燃料エンジンの案件が増加したことなどにより、前期と比べて652億61百万円増加(+44.2%)の2,129億32百万円となりました。売上高は、前期並みの1,355億6百万円(前期:1,340億33百万円)となり、営業利益は、アフターサービス事業が好調に推移したことなどにより、前期と比べて10億45百万円増加(+16.2%)の74億76百万円となりました。
(注)「MAN Energy Solutions SE」は2025年6月に「Everllence SE」へ商号変更しております。
(物流システム)
ベトナムにおける大型案件の連続受注、バングラデシュのODA案件など、海外での受注は好調を維持しております。国内においても主要港、地方港ともに需要が堅調であり、国内外合わせ2期連続で過去最高の受注高となりました。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で実証を行っている世界初のゼロ・エミッショントランステーナ(水素燃料電池パワーパック駆動のトランステーナ)については、米国ロサンゼルス港にて実証事業を開始し、想定を上回る燃費効率を実現しています。国内においても、東京港及び横浜港にて既設トランステーナを水素燃料電池パワーパックに換装、神戸港では水素エンジン発電機に換装し、それぞれ稼働実証を行っております。引き続き、脱炭素社会へ向け製品の商業化を進めてまいります。
また、米国での港湾インフラの安全確保に貢献するために、Build America Buy America Act(BABA)への準拠に関して、既にクレーンを構成する調達品のうち55%の米国製品の採用及び米国におけるクレーンの最終組立については検討を終えましたが、米国の政権交代により戦略の見直しが必要となっていることから、米国の政策を引き続き注視し、事前検討・準備を進めています。
アフターサービス関連では、老朽化更新に伴う既設機の改修工事が好調なことに加え、国内及び米国・東南アジア・アフリカなど国内外のパーツサプライが受注・売上ともに好調で昨年に続き過去最高を記録しました。クレーンリモートモニタリングシステムは、国内の地方港を中心に既設の搭載に加え、新設クレーンにも搭載を開始しており、メンテナンスサービスの拡充を進めてまいります。
受注高は、国内を始めアジア諸国や米国など海外でも大型案件の受注が続き、過去最高の受注高を記録した前期と比べて55億39百万円増加(+7.8%)の761億12百万円となりました。売上高は、大型工事の順調な進捗などにより、前期と比べて151億30百万円増加(+31.8%)の627億67百万円となり、営業利益は、売上高の増加や大型工事の採算改善などにより、前期と比べて28億99百万円増加(+94.9%)の59億54百万円となりました。この結果、受注高、売上高及び営業利益いずれも過去最高を記録しました。
(周辺サービス)
周辺サービス事業においては、国内子会社におけるシステム関連の安定した受注と売上により牽引されました。しかし、海外子会社での受注契約時期の遅延や工事採算の悪化により、利益面で前期を下回る結果となりました。
受注高は、予定していた案件を順調に獲得した結果、前期と比べて149億44百万円増加(+20.9%)の865億62百万円となりました。売上高は、前期並みの751億93百万円(前期:741億41百万円)となり、営業損益は、海外子会社における長期契約工事の将来コスト増加分を反映した影響などにより、前期の23億54百万円の利益から16億15百万円の損失となりました。
(海洋開発)
当社の持分法適用関連会社であった三井海洋開発株式会社及びその関係会社において、FPSOの建造工事の順調な進捗による収益計上などにより、持分法による投資利益は、37億57百万円となりました。前期と比べて26億9百万円減少(△41.0%)したのは、2024年6月に三井海洋開発株式会社の株式の一部を売却し、持分法適用の範囲から除外したことに伴い、同社グループに係る持分法による投資損益の認識が2024年1月から3月までの3ヵ月分となったことによります。
c. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a. 資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、当社グループの製品製造のための材料費、外注費、人件費等の運転資金需要や、投資資金需要であります。このうち、運転資金需要については、今般の豊富な受注残高を背景に旺盛な状況が継続しております。投資資金需要は、主に中核事業のグリーン戦略・デジタル戦略を推進するために必要な成長投資資金及び製造工場を維持・増強するための設備投資資金になります。
当社グループでは、有利子負債の過度な増加を抑制する観点から、運転資金の増加を適切にコントロールしていくとともに、設備投資、投融資などの長期性資金については、主力事業への成長投資資金に集中させることで、一時的な多額の資金支出を抑制していく方針としております。
b. 資金調達
当社グループの運転資金需要、投資資金需要に対しては、事業活動で得たキャッシュ・フローにて賄うことを基本とし、日々の資金の動きで不足が生じた場合は、金融機関からの借入等により調達しております。借入金を適時調達できる状態を維持するため、取引金融機関とは長年にわたる良好な取引関係を維持・構築しており、加えて、一部の金融機関とはコミットメントラインを設定することにより、緊急の資金需要にも備えております。また、上場子会社を除いた国内連結子会社との間ではCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、グループ全体での資金効率を高め、安定的に資金の流動性を確保できる体制を構築しております。
なお、当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。
(単位:百万円)
| 合計 | 返済・償還 1年以内 | 返済・償還 1年超 | |
| 短期借入金 | 47,854 | 47,854 | - |
| 長期借入金 | 49,996 | 6,166 | 43,829 |
| 有利子負債 計※ | 97,850 | 54,021 | 43,829 |
| リース債務 | 7,393 | 2,050 | 5,343 |
| 総計 | 105,244 | 56,071 | 49,173 |
※当社では、リース債務を別管理しております
④ 経営計画の達成・進捗状況
当社グループは、2022年5月に公表した2023年度中期経営計画において、有利子負債の削減や資産の有効活用を重視し、売上至上主義からの脱却を図るなど、健全な財務体質と堅実な利益の追求を目的として、連結営業利益率、自己資本比率及びNET有利子負債EBITDA倍率を経営指標として選定しました。2025年度を最終年度とする本中計では、連結営業利益率:6.0%、自己資本比率:26.0%、NET有利子負債EBITDA倍率:5.0倍を目標として設定しておりましたが、2023年度において、すべての指標を前倒しで達成いたしました。
一方で、為替や市況など、当社グループを取り巻く事業環境は依然として大きく、かつ急激に変化していることを踏まえ、3年後の姿を固定するのではなく常に更新し続け、成長し続ける姿を描くローリング式中期経営計画として「三井E&S Rolling Vision 2024」(以下、「RV2024」)を2024年8月に策定しました。本計画では、舶用推進システム事業及び物流システム事業を中核とし、「グリーン」と「デジタル」の視点から事業を発展させる戦略を継続しております。
更に、2024年度の業績がRV2024の計画を上回り進捗したこと、事業環境が変化していることを踏まえ、2027年度までの機能戦略(財務・人材)及び事業戦略をローリングした「三井E&S Rolling Vision 2025」(以下、「RV2025」)を2025年5月に策定しました。米国市場におけるビジネス環境の不透明性を考慮してその動向を慎重に見極めつつ、RV2025の数値計画達成に向け、中核事業のさらなる成長と新規事業の拡大を進めてまいります。
当社グループは、2030年に目指す姿の実現に向けて、必要な事業投資を着実に進めるとともに、適正な配当政策を通じた株主還元を行い、株主資本コストと負債コストのバランスを意識した企業価値の向上に努めてまいります。
RV2024、RV2025の各施策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。
| 指標 | (参考) 2024年度計画 | 2024年度実績 | 2025年度計画 | 2026年度計画 | 2027年度計画 |
| 連結売上高 | 3,000億円 | 3,151億円 | 3,400億円 | 3,700億円 | 3,800億円 |
| 連結営業利益率 | 5.7% | 7.3% | 7.0% | 7.0% | 7.4% |
| 自己資本比率 | 37% | 37.8% | 39% | 40% | 42% |
| ROIC(※) | 6% | 9.9% | 9% | 9% | 9% |
※ ROIC=(営業利益-法人税等合計)÷(株主資本と有利子負債の前当期末平均)